1. HOME
  2. MICEキャリアナビ
  3. MICE業界のことを知る
  4. 【海外の事例紹介】韓国の学生はいかにMICE実務を学ぶのか。慶煕大学コンベンション学会メンバーたちのリアルな活動レポート
MICE業界のことを知る

【海外の事例紹介】韓国の学生はいかにMICE実務を学ぶのか。慶煕大学コンベンション学会メンバーたちのリアルな活動レポート

学生自らが考え、動く。展示会出展・イベント運営、各地の視察まで多様な活動

韓国のMICE関連専攻の学生たちは、教室での理論的な学習にとどまらず、早い段階から実践的な経験を積むことに力を注いでいます。本記事では、韓国のMICE業界において若手人材育成の事例として、慶煕(キョンヒ)大学コンベンション学会の活動レポートから、次世代の若者たちが現場で何をどのように学んでいるのかをご紹介します。教員が書いたものでも、大学のPR記事でもありません。韓国のMICEを学ぶ学生の「リアル」を知っていただける貴重なレポートです。

参加メンバー

慶煕大学コンベンション学会が実践する現場中心の教育プログラム

韓国の大学では学業と並行して学生団体に所属し、産業の現場を直接分析して企画の主体となる実務型人材への成長がひとつの傾向となっています。MICE業界の学生団体のひとつが、2003年の正式発足から活動を続ける慶煕(キョンヒ)大学コンベンション学会です。MICE TIMES ONLINE編集部は、KOREA MICE EXPO 2025の取材時に彼らのブースを取材し、その活動に注目していました。

現在は約50名の学生が集まる学内で唯一のMICE関連団体として活動しています。彼らは自分たちの活動を、学術的な理論と実際の現場との間に存在する隔たりを埋めるための組織として定義しています。展示会や国際会議の現場に参加する未来の企画者として、座学を中心とした学びを脱却し、自ら行事を企画して主催する経験を重視しています。他の会場や関連団体との積極的な連携を主導し、業界の最前線にいる専門家たちと交流を深めていることも大きな特徴です。

KHCSの活動中の様子
KHCSの活動中の様子
ロゴ

キーワード:韓国の学生が所属して活動する「学会」とは?

韓国の大学で使われる「学会」は、日本でいう研究者中心の学術団体とは少し意味が異なります。ここでは、同じ専門分野に関心を持つ学生たちが集まり、授業外で研究や実践活動を行う学生団体を指します。慶熙大学コンベンション学会(KHCS)の場合は、MICEを学ぶ学生が、理論学習だけでなく、展示会やコンベンション施設の見学、現場分析、企画活動などを通じて実務理解を深める場となっています。日本語では「学生研究会」や「専門系学生団体」「学生団体」に近い存在です。

慶煕大学のキャンパス(学会メンバーが撮影)

キーワード:慶煕大学とは?

慶熙(キョンヒ)大学は、韓国・ソウルに本部を置く、中世ヨーロッパの建築を思わせる壮麗なキャンパスを持つ韓国の名門私立大学です。世界的な評価も高く、特に観光・ホスピタリティ分野は定評があり、MICE(国際会議やイベント)の人材育成や誘致に強いことでも知られています。人気の語学堂では、現地学生が支援する「トウミ制度」(チューター制度)で生きた韓国語を学べます。敷地内にはK-POPコンサートや国際会議の舞台となる聖地「平和の殿堂」も擁しており、学問と文化、最先端のビジネスが融合した環境です。
2026年度募集要項基準で23の単科大学、8学部、83学科を持ち、教職員数は約2,000人、在学生数は約34,000人。
慶煕大学Webサイト(日本語)https://iie.khu.ac.kr/jp/

KOREA MICE EXPOで慶煕大学ブースを取材、韓国の若手人材に向けた取り組みを取材

https://micetimes.jp/report-4-korea-mice-expo-2025/

2026年度の学習テーマである「Spot&Link」が意味するもの

同学会は毎週定期的な学習会を開催し、産業の最新動向や主要な課題について深く掘り下げる時間を設けています。2026年度の前期学習会は、「Spot&Link」というテーマのもとで進行されました。発見するという意味を持つSpotと、結びつけるという意味を持つLinkを組み合わせたこの言葉には、産業の動向と自分たち学生を新しい視点で結びつけたいという意志が込められています。

学生たちは運営陣が企画したカリキュラムに沿って、毎週異なるテーマで企画活動に取り組みます。成果物に関する発表や討論を重ねることで業界全体に対する視野を広げており、学習の直後には関連するクイズを取り入れるなど、専門知識を親しみやすく身につける工夫も行われています。MICE産業と次世代をつなぐ役割を果たすべく、多角的なアプローチで学習を深めています。

展示場とホテルが一体となり直結したCOEX麻谷の外観
展示場とホテルが一体となり直結したCOEX麻谷の外観

最新MICE施設の視察を通じた学びの機会

ソウルのCOEX麻谷(コエックス・マゴク)の複合施設における空間設計や収益化戦略

学生たちは現場を訪問する前段階として、対象となる施設に関する理論的な学習を必ず実施します。2026年4月にソウル西南部の新しい拠点として開館したCOEX麻谷を訪問する際にも、ソウル市の推進するデュアルハブ戦略について事前に学んでいました。既存のCOEX江南が大規模な貿易展示会を中心とする拠点であるのに対し、COEX麻谷は周辺の産業団地に集積するIT企業やバイオ企業と連携した、知識集約型の会場としての位置づけを持っています。

事前の理論学習の中で学生たちが注目していたのは、展示会と学術大会を同時に進行できる垂直的な建築構造でした。現場に足を踏み入れると、1階の展示場から4階のコンベンションホール、そして39の会議室へと続く動線が、参加者の移動の利便性を考慮して設計されていることが確認できました。この動線が専用のエレベーターで400客室規模のホテルと直結している点は、計算された設計です。主催者の立場から見ても、展示場の貸出とホテルの客室を一度にパッケージ化して提供することで、参加者の滞在満足度を高めることができます。

COEX麻谷に導入されたスマート床面マーキングロボット
COEX麻谷に導入されたスマート床面マーキングロボット

巨大な複合施設の特性上、展示場の内部には建物を支えるための柱が存在します。当初、学生たちはこれを空間企画上の欠点であると捉えていました。しかし事業団の実務担当者から直接説明を受けることで、企画者の視点では販売を促進するための戦略的な道具になり得ることを学びました。柱の有無によって組み立てブースと独立ブースの貸出単価に差をつけることで、構造的な制約を収益モデルへと転換していたのです。展示準備の初期段階である床のマーキング作業に最新のロボットを導入している点も確認し、スマートインフラの導入が主催者の運営負担を軽減する要素として定着していくと考えました。

大田コンベンションセンター
大田コンベンションセンターにて
清州コンベンションセンター
清州コンベンションセンターにて

地方コンベンションセンター視察を通して、地域特性を理解

視察の範囲はソウルの中心部にとどまりません。大田コンベンションセンターや清州コンベンションセンターなど、地方の拠点にも足を運び、それぞれの地域における産業特性に対する理解を深めています。二つの異なる地域を訪れた学生のキム・ダインさんは、COEX麻谷ではコンベンション施設単体の見学が中心となった一方で、大田の視察では実務担当者との質疑応答を通じて実務の知識を得ることができたと感想を述べています。大田地域の独自性を持つユニークベニューを巡り、学生自身が直接観光コースを企画してみる活動も印象深かったと語っており、地域と一体化した企画の重要性を実感しています。


KHCS

展示会のイベントテック、そして集客戦略の考察

現場訪問型プログラムを通じた産業の最新動向の把握

会場というハードウェアの特性を把握した後は、空間を満たすソフトウェアを読み解く段階へと進みます。学生たちが実践的な人材として成長できる背景には、独自の現場訪問型プログラムである「コンベンション博覧会支援事業」が存在しています。学生たちは会場を訪れて観覧するだけでなく、独自のビンゴボード型のミッションを通じて展示やカンファレンスなどの構成要素を分析し、産業の最新動向を把握して実務への理解度を高めています。前期の間には、オールザットトラベル、メガショー、プレイエキスポなど多様なテーマの展示会に赴き、行事の目的や特性に応じた来場者の規模、ブースの運営方式などを比較分析する時間を持ちました。

国際的な展示会「KOBA2026」における最新機器の体験マーケティング

韓国最大級の放送・映像・音響・照明分野の展示会「KOBA2026」の現場では、空間を満たすイベントテックと、主催者側が用意した展示運営のソフトウェアを調査しました。会場に配置された最新のカメラや放送機材に直接触れながら、現代のイベントに不可欠なメディアのインフラに触れます。学生たちが注目したのは、各カメラのブースにおいて製品の性能を来場者が即座にテストできるように、専属のテストモデルを被写体として配置していた点です。来場者が実際の環境に近い形で機器を操作するように誘導し、ブースでの滞在時間を延ばすという体験マーケティング戦略が実践されていることを確認しました。

現場で運営の課題を知る

優れた展示企画を学ぶと同時に、運営上の問題点についても学びます。一部の体験型ブースにおいて、参加者のために用意された特典の品物が想定よりも早い段階で尽きてしまったり、次の体験セッションまでのタイムテーブルがうまく噛み合わずに観覧客が参加の機会を失ってしまったりする状況が発生していました。学生たちはこのような事例を目の当たりにすることで、タイムテーブルの細密な配分や状況に応じた適切な在庫管理など、現場運営における細かな調整が来場者の満足度に影響を及ぼすという生きた教訓を得ています。

MICE-UPポスター
MICE-UPポスター

学生主導による大規模ネットワーキング行事の企画と運営

産学連携で実現した2026年MICE-UPの開催実績

団体内部でのプログラムだけではなく、より多くの関係者と交流するための開かれた場も学生たち自身の手で創り出しています。5月に慶煕大学で開催された大学生向けのネットワーキングプログラムである「第2回2026 MICE-UP」。同徳MICEアンバサダー(同徳(トンドク)女子大学の学生組織)や全国大学生連合のサークルとの共同主催という形で実現しました。業界に関心を持つ大学生約80名が一堂に会し、これまでの経験を共有してネットワークを形成しました。前年から始まったこの行事は、各団体の運営陣同士の継続的なコミュニケーションを通じて第2回を迎えました。参加者数が増加したことに加えて、今回は4社の企業からの協賛を取り付けることに成功しており、行事としての規模と質を拡大させています。

MICE-UP 集合写真
MICE-UP 集合写真

参加型プログラムを通じた実践的な企画提案プロセス

この行事は学生同士の親睦を深めるだけの場ではなく、参加者が自然に意見を交わし協力できる参加型プログラムで構成されています。初対面の緊張を解く時間を通じてお互いの背景を知り、関心分野や将来の進路について語り合うことで新しい関係を構築。行事の中心となる「ソリューションマーケット」というプログラムでは、グループごとにターゲット層を設定して一つのコンベンション行事を企画し、審査員であるバイヤーに対して自分たちのアイデアを提案して販売するという実践的な活動が行われました。

MICE-UP

参加したキム・ダウンさんは、共通の目標を持つ他大学の学生と交流することで多くの情報を得られたと語り、次回は運営チームとして直接行事を企画してみたいという意欲を見せています。前回は運営陣であり今回は参加者として参加したチョ・ハヨンさんも、行事の持続的な開催に希望があるということです。行事のテーマ選びからプログラムの企画、企業との協賛交渉から当日の現場運営に至るまで、すべての過程を学生たちが自らの責任で遂行することで、貴重な実務経験を積み上げています。秋以降の後期日程においても、企業と連携したコンペティションや企業訪問など、実務に直結したプログラムが多数予定されています。

慶熙コンベンション学会 上半期総会 集合写真
慶熙コンベンション学会 上半期総会 集合写真

若い世代に、MICEはキャリアを賭けるに値すると示せていますか

本記事で見てきたように、韓国の学生たちは教室の中で教えられる理論にとどまることなく、実際の現場に足を運びながら実務感覚を養っています。このような韓国の学生たちの行動力からは、日本の関係者にとっても多くの示唆が得られます。日本の大学や教育機関、そして受け入れる企業側においても、知識の提供や短期間の見学で完結させることなく、学生が業界の現場に入り込み、自ら課題を発見して解決策を提案できるような実践的な環境を構築することが問われています。

KME2025
KOREA MICE EXPO 2025 の慶煕大学ブース 編集部撮影

MICE TIMES ONLINE編集部では、昨年のKOREA MICE EXPOで慶煕大学ブースを訪ねて以来、たびたびオンラインでミーティングを行ってきました。そのなかで、当編集部から実際に記事を書く体験をする機会を提供し、レポートを作成してもらいました。私からは取材や記事の作成についての、実践的で厳しいフィードバックをしました。しかし、記事を作成することが初めてであるにもかかわらず、初稿の段階で完成度が高いものであったことも事実です。フィードバックを受けて、MICE TIMES ONLINEで掲載されるレベルになるまで記事を書き直したいという意欲を示した学生もいました。

7月に開催した「MICEワンダラーズ」には、メンバー2名を招待しました。(後列中央の女性2名)
7月に開催した「MICEワンダラーズ」には、メンバー2名を招待しました。(後列中央の女性2名)

業界の将来を考えるうえでは、受け身ではなく、自ら率先して考え、動き、形にしていく人材が欠かせません。今回、韓国の学生たちは取材や記事作成への厳しい指摘を受けながら、自ら内容を見直し、メディアでの記事公開に耐える形へ近づこうとしました。それは、日頃の「学会」活動があってこその粘りや意欲、姿勢ではないかと、私は考えています。学生の意欲を引き出し、MICEをキャリアを賭けるに値する面白い分野だと感じてもらうには、業界側も「学生向け」の扱いにとどめず、一人の担い手として本気で向き合う姿勢が求められます。


学会活動レポート作成:慶煕大学コンベンション学会 パン・ジョンギョンさん、イ・チェウォンさん
編集、本記事作成:MICE TIMES ONLINE(株式会社イザン)井上浩二

レポートをフィードバックしたときの感想
イ・チェウォンさん:学会活動をどう伝えるのかや、個人的な考え方を入れてしまうことについて悩んだものの、もう一度見返すことで、 学会への愛が深くなった。
パン・ジョンギョンさん: 記事を書く活動は人生で初めてであり、意味のある活動だったと感じた。

カテゴリー