【MICEの基礎知識(6)】インセンティブ旅行(報奨旅行)とは
MICEの「I」はインセンティブの「I」。
報奨旅行、研修旅行のことです。今回は報奨旅行を「インセンティブ旅行」として詳しく見ていきます。社員のモチベーションアップや企業の活性化にとっても効果的な取り組みでもある「インセンティブ旅行」。
MICEと意識してなくても、実はすでに「インセンティブ旅行」をされている企業も多いと思います。
※この記事では従業員、メンバーのことを便宜上、社員としています。
インセンティブ旅行ってなに?
インセンティブ旅行とは、企業や組織が社員や取引先のモチベーションを高めるために実施する特別な旅行のことです。優秀な成績を収めた社員へのご褒美や、目標達成の報奨として企画されることが多いです。プロ野球の優勝チームが「家族と一緒にハワイ旅行へ!」なんてニュースをご覧になったことがあるかもしれませんが、まさにあれです。
ただ、楽しい旅行に行くだけではなく、視察や研修、パーティーなどをともなって企画される場合もあります。
企業が費用を負担し、普段では体験できないような特別なプログラムや場所を提供することで、社員のやる気や忠誠心を高める効果があります。
◎Point 「インセンティブ」とは「動機づけ」や「報奨」を意味する言葉です。たとえば、営業の好成績を収めた方への「インセンティブ」を支給する、といった使い方が多いかもしれません。
インセンティブ旅行の活用法
インセンティブ旅行はさまざまな形で活用されています。インセンティブ旅行は、優秀成績者や貢献のあった社員を対象に実施されます。社員全員を対象にする場合は、目標達成や大きな節目(創業何年など)で実施します。
企業が費用をすべて負担することで、特別な報酬やボーナスのような形となります。
- 社員のモチベーションアップ 目標達成者や優秀な業績を上げた社員を特別な旅行に招待することで、さらなる意欲を引き出します。
対象を絞ることで、特別なインセンティブという
具体的には、海外のリゾート地でのリラックスした時間や温泉や保養地への旅行、豪華なディナー、特別なアクティビティなどが用意されます。海外の有名IT企業本部への見学旅行、ホスピタリティを学ぶためにヨーロッパの有名ホテルへの旅、といった、仕事につながる旅程にすることもあります。 - チームビルディング 複数名のチームで旅行に参加し、共同作業やアクティビティを通じてチームワークを強化します。例えば、アウトドアでのアドベンチャー体験や、キャンプ、料理体験など、協力が必要なプログラムが効果的です。
- 取引先との関係強化 重要な取引先やパートナー企業を招待し、一緒に旅行をすることで信頼関係を深めます。ビジネスミーティングだけでなく、リラックスした環境での交流が新たなビジネスチャンスを生むこともあります。
一般の企業や国内企業でも取り組めます
インセンティブ旅行は大企業だけのものではありません。中小企業や国内企業でも工夫次第で効果的に活用できます。
- 国内旅行の活用 海外旅行は予算的に厳しいという場合でも、日本国内には魅力的な観光地や体験がたくさんあります。温泉地でのリフレッシュや、地域の伝統文化体験など、社員にとって新鮮で楽しい時間を提供できます。企業のある地元への貢献につながる内容でもいいですね。
- 日帰りや短期間のプラン 長期の休みを取るのが難しい場合は、日帰りや一泊二日など短期間で楽しめるプランがおすすめです。近隣の観光スポットやアクティビティ施設を利用して、気軽に実施できます。
- 家族参加型のイベント 社員の家族も一緒に参加できる旅行を企画することで、社員の満足度や会社への愛着を高める効果があります。家族ぐるみでの交流が、家族の職場への理解を深めます。バーベキューやスポーツを用いたレクリエーションなどメニューも多様です。
インセンティブ旅行がもたらす効果
インセンティブ旅行を取り入れることで、企業や組織には多くのメリットがあります。
- 社員満足度の向上 特別な体験を提供することで、社員の満足度やモチベーションが高まります。離職率の低下や生産性の向上が期待できます。あらかじめ企画内容を提示しておくことで、モチベーションにつながります。クイズ番組の優勝賞品のようなイメージでしょうか。
- 企業イメージの向上 社員を大切にする企業姿勢がアピールでき、採用活動や取引先からの評価にも良い影響を与えます。
- チームワークの強化 共同の体験を通じて、社員同士のコミュニケーションが深まり、職場の雰囲気の改善につながります。社員のコミュニケーション不足が危惧される昨今、コミュニケーションを深める場になることでしょう。
海外からの誘致
日本では、海外企業のインセンティブ旅行を誘致するためにさまざまな取り組みが行われています。インバウンド同様に高い経済効果が期待できます。欧米ではインセンティブ旅行が広く活用されていて、インセンティブ旅行を企画する企業もあります。
- 多様な観光資源のアピール 日本ならではの魅力として、歴史的な神社仏閣、美しい自然風景、四季折々のイベントなどがあります。これらを活かして、海外からの旅行者に特別な体験を提供しています。
- 旅行者向けにカスタマイズしたプログラム 企業のニーズや文化に合わせて、オーダーメイドのプランを提案しています。和太鼓や茶道の体験、地元の職人との交流など、ユニークなプログラムが人気です。
- 受け入れ環境の整備 多言語対応のガイドや案内板、ハラール対応の食事など、さまざまな国や宗教の方々が安心して滞在できる環境づくりが進んでいます。
◎Point ハラール対応とは、宗教上の戒律があるイスラム教徒向けに食品やサービスを提供することです。世界の人口の4人に1人を占めるといわれるイスラム教徒への対応は、インバウンド強化の鍵となっています。
インセンティブ旅行成功のポイント
インセンティブ旅行を成功させるためには、いくつかのポイントがあります。
- 参加者のニーズを把握 どんな体験を求めているのか、事前にアンケートやヒアリングを行い、プランに反映させます。
- 公平感を保つ 誰にどのようなインセンティブがあるのか、明確にしたうえで、実施しましょう。不透明な運用はかえってモチベーションにを下げることになります。インセンティブを受け取れなかった社員へのフォローも大切です。
- 予算と目的のバランス 予算内で最大限の効果を得るために、目的に合わせたプランニングが重要です。
- 安全面の配慮 特に海外旅行の場合は、安全対策や健康管理にも注意が必要です。現地の情報をしっかりと収集し、リスクを最小限におさえましょう。
インセンティブ旅行は無理強いするものではありません。旅行に参加しない社員の立場が悪くなるようでは逆効果です。社員の事情に配慮して、企画を進めましょう。また、あまりに贅沢な旅行にするのも考えものです。投資ではなく、インセンティブ(報奨)であることを踏まえた内容にするといいですね。
おわりに
インセンティブ旅行は、企業の規模や予算に関わらず、工夫次第で大きな効果を生むことができます。社員や取引先との関係を深め、企業全体の活性化につながる取り組みです。目的を明確にして、有意義なインセンティブ旅行を企画しましょう。