【レポート】大阪・関西万博へ向けたウェルビーイングの動きについて/未来モノづくり国際EXPO2024
2024年11月13日から15日にかけて、インテックス大阪で「未来モノづくり国際EXPO2024」が開催されました。イベントでは、大阪・関西万博を見据え、SDGsやウェルビーイングの実現をテーマにした展示やセミナーも同時開催されました。展示会の様子を詳しくお届けします。※2024年11月14日 に訪問
未来モノづくり国際EXPO2024とは
2025年大阪・関西万博は、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、デジタル・ロボット・GXなどの先端技術を活用するほか、SDGsやウェルビーイングの実現に向けた国際博覧会として開催されます。そのような中、未来モノづくり国際EXPO実行委員会は、(公社)2025年日本国際博覧会協会をはじめ、関係各所の協力のもと、2023年5月に『未来モノづくり国際EXPO』を大阪で初開催しました。本展は、大阪・関西万博と連携した国際見本市・展示会として、産業を支える優れた製品・技術を一堂に集めて国内外に発信するとともに、展示やフォーラムなどを通じて、商談と交流の場を促進していきます。
引用:未来モノづくり国際EXPO 公式Webサイトより
ウェルビーイングとは
ウェルビーイング(Well-being)は、「well(良い)」と「being(状態)」を組み合わせた言葉です。
世界保健機関(WHO)ではウェルビーイングを「個人や社会のよい状態。健康と同じように日常生活の一要素であり、社会的、経済的、環境的な状況によって決定される」。また厚生労働省は「個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念」としています。
さらにウェルビーイングは、SDGsとも関係が深く注目されています。
SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」。英語では「Good Health and Well-Being」と表記され、ウェルビーイングが含まれています。また、ベネッセ ウェルビーイングLabではこのようにまとめられています。
国際社会はSDGs(Sustainable Development Goals)を共通目標とし、誰一人取り残さない社会のための17の目標を掲げています。しかしSDGsが掲げる未来は2030年まで。次なる目標として、人々の主観的なウェルビーイングを重視した新たな国際目標をつくっていこうとする動きが日本でも始まっています。それが、さまざまな国際機関や企業で提唱され始めている「SWGs(Sustainable Well-being Goals)」であり、「みんなで持続可能なウェルビーイングの状態を目指す」という目標です。
引用:ベネッセ ウェルビーイングLabより
安全・健康・ウェルビーイングの未来の展示
展示会場ではウェルビーイングテックのコーナーが設けられ、特に「GISHW」が大きくブースを構えます。GISHW(Global Initiative for Safety, Health & Well-being at EXPO2025 and Beyond)とは、「働く人の安全や健康、ウェルビーイング(心身の健康)向上」を考える国内外の専門家などが集う連合体のことです。
ウェルビーイングテックコーナーで出展されている企業・団体の方にお話を伺いました。
一般社団法人セーフティーグローバル推進機構(IGSAP):安全・健康・ウェルビーイングを支える技術
「一般社団法人セーフティーグローバル推進機構」とは、働く人の安全・健康・ウェルビーイングを実現するために、最先端のソリューションを提供・推進する日本の団体です。生産現場における安全性と、生産性向上をテーマとした展示が行われ、来場者の足を止めていました。
IGSAPの展示の核となるテーマは、「安全で働きやすい、ウェルビーイングな生産現場をいかに実現するか」という問いです。現在、現場では安全対策が確立されていますが、それゆえ融通が利かない、使い勝手が悪いという課題が残っています。たとえば、ロボットの導入に際して、安全対策を優先するあまり、生産性が低下するケースが見られます。
IGSAPは「人間との関わりの中で安全を担保する」という提案をされていました。ロボットが高速で動作する際に伴うリスクを軽減するため、AI(人工知能)やカメラ、センサーを活用して危険を察知、人間に適切な警告を伝えるシステムを導入しています。
ウェルビーイングを重視した環境を整え、同時に生産性を上げることが可能になります。
セーフティーグローバル推進機構 Webサイト https://institute-gsafety.com/
日本認証株式会社:機械安全を通じたウェルビーイングに繋がる
製品工場や建設現場での安全を確保するために重要な概念である「機械安全」。同社はこの考え方を基盤として、講習会の実施、資格認証制度の運営、さらには製品認証の申請代行など、さまざまな支援活動を行われています。
ウェルビーイングには、職場で安心して働き、無事に家に帰るということも含まれています。「機械安全」を通じた取り組みで、安全が確保されることでウェルビーイングにも繋がりますね。万博でも「機械安全」をベースにした考え方を世の中に広めていきたいとのことでした。
日本認証株式会社 Webサイト https://www.japan-certification.com/
労働安全衛生に新たな視点を提案する展示会「JIOSH+W」
ドイツで2200社が出展、来場者数は62,000人を超えるイベント「A+A」。その成功を背景に、大阪でも新たな形で開催されるのが「JIOSH+W(はたらく現場の環境展)」です。「+W」はウェルビーイングの「W」です。労働安全衛生の向上に焦点を当て、やりがいをもって働けるウェルビーイングを推進します。
労働安全衛生の展示会は他にもありますが、従来のイメージが一変する展示会を行います。
基本的には事故を起こさない、命を「守る」という受け身の考え方が主流でしたが、JIOSH+Wはその粋を超え、主体的に安全を考え、快適に働ける環境づくりを紹介します。たとえば、ヘルメットを装着する煩わしいのを見越して装着しなくても守られる製品開発などです。現場3Kは「きつい」「汚い」「危険」とよく言われますが、やりがいと誇りを持って、気持ちよく働ける会社が増えれば嬉しいです。
JIOSH+Wはたらく現場の環境展 Webサイト https://jioshw.messe-dus.co.jp/
大阪・関西万博期間中の2025年7月に行う国際イベントの概要を発表
「未来への贈り物 80億人の安全・健康・ウェルビーイング」
GISHWは11月13日のイベントで、大阪・関西万博期間中の2025年7月に行う国際イベントの概要を発表しました。
世界中から訪れる人々に向け、多様なプログラムを複合的に開催します。主な会場は、万博会場とインテックス大阪で、サミット、世界大会、ILOユースコングレス、国際シンポジウム、フェスティバル、展示会などが予定されています。イベントの申し込みは12月3日より受付を開始します。
はじめに、エグゼクティブ委員会名誉チェアの向殿政男氏が主催挨拶を述べ、「GISHWの目標は、安全を基盤としたウェルビーイングの実現である。働く人々や企業を通じて、地球上の全人類の幸せを叶えることを目指している」と主張しました。
その後、エグゼクティブ委員会チェアの藤田俊弘氏により、以下3点のGISHWの特徴が言及されました。
1. 「安全・健康・ウェルビーイング」をテーマにした国際イベントを、万博170年の歴史において世界で初めて大阪で開催
2. 世界中の「安全・健康・ウェルビーイング」の専門家、国際機関、企業経営者、ロボットやAI技術の専門家、国際標準化の専門家が一堂に介し、将来に向かって「協創:Co-Creation」を目指すイベントを大阪で開催
3. 決まった団体や企業だけで行なっているのではなく、「安全・健康・ウェルビーイング」に関心のある機関、企業の人々が草の根的に拡大し続けている極めてユニークなグローバル活動
最後に、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の堺井啓公氏が「万博のテーマである『いのち輝く未来社会のデザイン』はGISHWの活動目的と合致する。万博を通過点の一つとして「安全・健康・ウェルビーイング」の考えが広がり、継続されることを期待する」とコメントし、プレス発表会が締められました。
草の根的に拡大を続けるGISHW。「安心・健康・ウェルビーイング」が地域や国境を越えて受け入れられる価値観であることは明らかです。国内外の参加者が見込まれる日本のMICEにおいて、普遍的なテーマを採用することはますます重要となるでしょう。
開催概要
名称:未来モノづくり国際EXPO2024
会期:2024年11月13日(水)~ 15日(金)10:00~17:00 ※最終日は16:00まで
会場:インテックス大阪
参加費:入場登録者、招待状持参者、中学生以下は無料
主催:未来モノづくり国際EXPO実行委員会
(モノづくり日本会議、大阪観光局、大阪府異業種連携協議会、大阪市産業経営協会、SKC企業振興連盟協議会(船場経済倶楽部)、大阪府経営合理化協会、大阪府経営支援ネットワーク、なにわあきんど塾同友会、日本ロボット工業会、ファインバブル産業会、セーフティグローバル推進機構、3S活動推進協会、SDGsソーシャルデザイン協会 、日刊工業新聞社)
共催:モノづくり日本会議、日刊工業新聞社(「TEAM EXPO 2025」プログラム/共創パートナー)
協力:公益社団法人 2025年日本国際博覧会協会
Webサイト:https://fmiexpo.nikkan.co.jp/
出展カテゴリー
1.モノづくり基盤技術 2.ロボット・ロボット関連技術 3.先端テクノロジー 4.水・ファインバブル・環境技術 5.ファクトリー建設 / 防災
■取材を終えて「Editor’s note」
ウェルビーイングはこれからのMICEのスタンダードのひとつに
今回の展示会で取り上げられた「安全・健康・ウェルビーイング」は、MICE業界にも新たな視点をもたらすものと感じました。国際展示会や会議において、参加者や運営者が快適かつ安心して活動できる環境づくりが求められています。文化や国境を越えた普遍的な価値観としてのウェルビーイングは、今後のMICEイベントの企画や運営における核となる要素として活用が広がるはずです。SDGsのその先にある「持続可能なウェルビーイング社会」の実現に向けて進むことになりそうです。
大阪・関西万博のテーマ「私たちの暮らしのための未来社会のデザイン」から、IGSAPは万国博覧会における初の安全・健康・福祉イベントの開催を決定しました。開催概要や次回のイベント情報にも注目し、MICEの観点からさらなる動きを追い続けていきます。
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