
【取材】FOOMA JAPAN 2025 レポートVol.1 熱気あふれる会場と老舗企業の挑戦
食品製造技術の「今」と「未来」を体感できる世界最大級の展示会、「FOOMA JAPAN 2025」が開幕しました。「Touch FOOMA, Taste the Future 次世代の食品製造の可能性に触れ、その未来を味わう」をテーマに掲げ、食品製造に関わる21分野を網羅し、約1,000社が集結して5,000を超える最新ソリューションを披露する「FOOMA JAPAN 2025」。
食品製造業界の最先端が集まる本展示会の様子を取材。まずはVol.1として会場全体の様子や展示会の概要、そして歴史ある企業の取り組みに焦点を当ててレポートします。

開催概要
名称:FOOMA JAPAN 2025
目的:食品機械・装置および関連機器に関する技術ならびに情報の交流と普及をはかり、併せて食品産業の一層の発展に寄与することとし、「食の安全・安心」に関心が高まる中、食品機械の最先端テクノロジー、製品、サービスを通して、「食の技術が拓く、ゆたかな未来」を提案する。
会期:2025年6月10日(火)~13日(金)4日間
時間:午前10時~午後5時
会場:東京ビッグサイト 東1~8ホール
テーマ:Touch FOOMA, Taste the Future
主催:一般社団法人 日本食品機械工業会
公式Webサイト https://www.foomajapan.jp/
FOOMA JAPAN は、一般社団法人日本食品機械工業会が主催し1978年誕生。
公式Webサイトより引用
食品製造に関わるソリューションを世界一取り揃える展示会を目指し成長を続けています。食品製造現場の川上から川下まで、幅広い出展・展示分野とあらゆるソリューションが揃うFOOMA JAPANは課題解決を発見する場・機会として食品製造業の皆さまに高い評価を得ています。

世界最大級の食品製造総合展の初日・会場の様子
会場を埋め尽くす来場者の熱気
取材に入ったのは初日6月10日。開場前から会場最寄りの国際展示場駅にはスーツ姿の人々が流れ込みます。開場直後は比較的落ち着いていたものの、11時ごろからは続々と来場者が増加。11時から16時頃にかけては多くの人で賑わいを見せ、非常に広大な会場にもかかわらず、その活気は閉場間際まで衰えることはありませんでした。
来場者の多くは日本人またはアジア系と見られ、会場のいたるところで中国語が聞こえてきたのが印象的です。欧米系の外国人の姿も散見され、企業関係者だけでなく、未来の業界を担う学生らしきグループも多く見受けられました。メディアの取材も多く見かけ、本展示会の注目度の高さがうかがえます。
ブースの集客においては、大型のデモ機を動かすだけのブースが閑散とする一方、小規模でも試食を提供しているブースには人だかりができる傾向が見られました。また、2本目の記事でご紹介する「スタートアップゾーン」は、限られたスペースながらも常に来場者が訪れ、高い関心を集めていました。
すべての技術が集まる「日本一のスケール」
主催の日本食品機械工業会が「食品製造に関わるすべての技術が集まる日本一のスケールの展示会」と位置づけるように、製菓や食肉といった特定の品目に特化せず、「すべての食材に対する形で集合する」点がFOOMA JAPANの最大の特徴です。
会場内には、多彩な企画が用意されていました。
- スタートアップゾーン: イノベーティブなスタートアップが集結
- FOOMAアワード: 最先端の食品機械・装置を表彰
- アカデミックプラザ: 産学官連携の最新研究を展示
- FOOD TOWN: 食品製造自動化に関する相談サービス
- 経営支援・輸出相談コーナー: 各種ビジネス相談に対応
このほかにも、各種セミナーやシンポジウムが連日開催され、来場者マイページや公式アプリ、無料Wi-Fi、休憩スペース「FOOMA東京バル」、ご当地駅弁販売など、来場者の利便性を高めるサービスも充実しており、多角的なニーズに応える工夫が凝らされていました。
歴史と革新―業界を支える老舗企業の挑戦
長年にわたり日本の食品製造業界を支えてきた歴史ある企業も、その技術と経験を活かした新たな提案を行っています。今回は特に、加工・包装分野で知られるムルチバックジャパン社と、ロボット技術を食品物流に応用するユーシン社に注目しました。

ムルチバックジャパン:50年以上の歴史が支える加工・包装技術
ドイツのムルチバック社の日本法人として50年以上の歴史を持つムルチバックジャパン社。包装機(パッケージマシン)で広く知られていますが、現在は食肉加工機やミキサーなど、食品の原料下ごしらえや加工を効率化する機械も幅広く取り扱っています。
FOOMAには20年以上、少なくとも25年以上毎年出展を続けているという同社は、喫緊の課題である食品工場内の「人材不足」への対応に注力しています。包装方法の工夫による食品のロングライフ化や、顧客の商品やフィルムに合わせた最適な包装の提案、大量生産を可能にする技術などを通じて、製造の効率化と持続可能性の向上を支援。特に、食肉などの動物性食品を無駄なく使い切る技術に長けているとのことです。


ブースには食品メーカーや流通関係者が多く訪れ、時間短縮や材料の無駄削減(歩留まり向上)といった課題解決策を熱心に求めていました。展示されていたミニクロワッサンをいただきました。バターの層が美しく、外はパリパリとした食感。コンピューター制御による均一な品質は、まさにテクノロジーが可能にする品質管理の好例です。
「人口減少が進む中で、いかに安全で美味しいものを安定的に提供できるか」を将来のビジョンとして掲げ、様々な技術を組み合わせて提案していく同社。食品工場の「裏方」として、日本の食の安心・安全を支える不可欠な存在であることを改めて感じさせられました。
ムルチバックジャパン 公式Webサイト https://multivac-jp.com/

YUSHIN:我々の新しいものを作り出す「進歩」が、お客様の「安全」「進歩」につながる
プラスチック射出成形用の取出ロボットで国内トップクラスのシェアを誇るYUSHIN株式会社。設立は1973年、京都の企業です。自動車部品からコンタクトレンズ容器まで、身近な製品の製造を支える産業用ロボットのノウハウを応用し、FOOMAでは出荷工程で活躍する「パレタイザー」を展示しています。
FOOMAへの出展は今年で3年目。食品業界からの導入ニーズの高まりを受け、「フロントマンとしてアピールしていくべき」との判断から、日本で一番大きな本展示会への出展を決めたといいます。
同社の提案は、今回のFOOMAのテーマである「次世代」に深く関連しています。人手不足や人件費高騰、労災リスクといった課題に直面する食品の出荷現場において、単純労働へのロボット導入は不可避な流れです。これを「日本の将来を見据えた働き方、物の賢い使い方」として位置づけ、ロボット活用を力強く推進しています。

ブースには、物流の「2024年問題」をはじめとする出荷に関する課題を抱えた食品関係者が多く訪れるのではないかとお話されていました。課題解決が思うように進んでいない企業に対し、現物を見てもらう機会としてFOOMAを捉えており、顧客の製品に合わせた柔軟なカスタマイズ提案も強みとしています。
「社長は『パレタイジングロボット以外の我々の製品に対して進歩と安全を掲げて物を売りなさい、開発する人間が売っていきなさい』と常々話しており、これは全製品に共通する姿勢です。我々が新しいものを創り出す『進歩』が、お客様にとっての『安全』に繋がります。それによってお客様の工場も効率化という『進歩』を遂げられる。お互いがこの共通テーマで切磋琢磨し、寄り添いながら共に歩んでいくのが我々の理想です。」
YUSHIN 公式Webサイト https://www.yushincompany.jp/
※旧社名 株式会社ユーシン精機

アストラ:大量の皮むき作業、手作業が大変なものほどニーズが高い
果物と野菜の皮を剥く機械を開発・製造するアストラは福島の企業。世界60ヶ国以上で利用されています。同社の製品は、フルーツ工場や学校・病院給食など、大量の皮むき作業が必要な現場で重宝されています。特に海外、中でも欧米や台湾での引き合いが多く、パイナップル、メロン、マンゴーといった手作業が大変な果物ほど、機械化へのニーズが高いとのこと。同社の技術の特徴は「横長のピーラー」による皮むき。難易度の高い皮むきとなりますが、仕上がりも美しく、無駄な削り過ぎも少なくなります。
今回の出展は、具体的な商談に繋げることが大きな目的。ブースにはカットフルーツ工場やスーパー、コンビニ、さらには手むきに苦労している個人経営の洋菓子店まで、多様な課題を持つ来場者が訪れていました。
同社が描くビジョンは、海外売上のさらなる拡大です。今後は大規模な工場や施設へのアプローチを強化していく方針で、食品製造現場の省人化・効率化に貢献する彼らの技術が、世界へと広がっていくことに期待が高まります。
アストラ Webサイト https://e-astra.co.jp/

寿司ロボット、ご飯盛り付けロボットの鈴茂器工(SUZUMO)のブース。1955年創業、1961年設立。世界初の寿司ロボットを1981年に開発した業界のトップメーカーです。
会社Webサイト https://www.suzumo.co.jp/

ロボット回転釜を展示する服部工業。創業はなんと1885年(明治18年)ですから、140年の歴史です。熟練のシェフの技術を再現する様子を実演、試食もされていました。
会社Webサイト https://www.hattorikogyo.com/
歴史と技術をもつ老舗企業と、スタートアップが共存する「FOOMA JAPAN」
歴史ある企業が培ってきた技術を応用し、現代の課題解決に挑む姿は、FOOMA JAPANの大きな見どころの一つです。会場では他にも多くの歴史と技術を持つ企業が、現代の課題に挑戦する様子が見られました。
もちろん、革新的なアイデアで新たな「食のカタチ」を創造しようとするスタートアップの存在も見逃せません。次回の記事では、「スタートアップゾーン」に焦点を当て、そこで出会った注目の企業や彼らが披露する最新技術について詳しくレポートします。どうぞご期待ください。
※取材担当:二宮
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