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【取材】アウトドア研修は社員の共感・定着に役立つのか?東京・葛西臨海公園での体験会に潜入

突然ですが、焚き火を囲んで語り合ったことはありますか。社員の相互理解やチームビルディングにオフサイト(日常を離れた集まり)を採り入れる企業が増えています。先日、東京・葛西臨海公園でアウトドアブランド「スノーピーク」のグループ会社が、企業の人事総務・管理職向けにアウトドア研修の体験会を開催しました。はたして焚き火を囲む時間は参加者の関係性を育むのか? 外資系企業に勤務して実際にオフサイトを経験してきた筆者がレポートします。

社員の共感・定着が多くの企業の課題

「職場の働き方を改革し、社内ポータルやコラボレーション・ツールなどのDXにも投資。社員はいつでもつながれる環境にあるのに、チームの一体感やパフォーマンスが上がらない」

――そんな課題を感じている企業経営者や管理職、人事総務担当者は少なくありません。

(Adobe Stock ライセンス)

国ごとに社員の熱意(エンゲージメント)を比較しているギャラップ社の2026年『グローバル職場環境調査』によると、日本の熱意ある社員の比率は8%でした。最高は米国の32%、世界平均は20%、中国を含む東アジア地域の平均は18%ですから、日本の社員エンゲージメントは世界でも最低水準にあるといえます。経済産業省の『人的資本経営の実現に向けた検討会報告書(令和4年)』では、「リモートワークにより、各部署の目標や、個々人の役割分担について認識を共有しづらい」「新たなツールに順応できない主に50代の社員と、若手の社員との間で、コミュニケーションの齟齬と価値観の相違が生じる」といった課題があげられています。

現在の日本では、労働人口の減少と転職市場の活性化が同時に進み、企業にとって優秀な人材の定着(リテンション)は最重要テーマのひとつになっているのです。

スノーピーク・グループが提供するソリューション

日本を代表するアウトドアブランド「スノーピーク」は、自然と人、人と人がつながる豊かな生き方のために、「衣食住働遊」の5つのテーマを掲げています。そのなかでグループ企業の株式会社スノーピークビジネスソリューションズ(以下 スノーピークBS)は、現代社会の「働く」課題を担当。そのソリューションのひとつが「アウトドア研修」です。

スノーピークBSは、エンゲージメントを「組織と個人が互いの成長に貢献し合い、高め合う関係性」と捉えています。良質な関係性を育める企業は、社員が定着して辞めにくくなり、新たな人材も惹きつけ、チームのパフォーマンスも高まる、という考え方です。

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それでは、なぜアウトドアなのでしょうか。筆者なりに理解したポイントは3つです。第1は、いつも勤務している職場から環境を変えることによって、役割や肩書きを手放して向き合いやすくなる「転地効果」。第2は、教室形式での知識の座学ではなく、共に身体を動かす「協働体験」。第3は、日差しや風といった天候のゆらぎや焚き火の揺らめきによって、デジタルにはない「人間らしさ」を刺戟すること。アウトドア研修は、こうした総合的な体験によって、参加者のエンゲージメントを高めることを目指しています。

はたして、そのような効果が実際に期待できるのか。2026年5月19日に東京・葛西臨海公園で開催された「アウトドア研修リアル体験会」に参加しました。

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葛西臨海公園でアウトドア研修を体験

都心を望む会場の開放感

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会場は、1985年に水族館とともに開園した都立葛西臨海公園です。東京湾の干潟に連なり、広さは約80ヘクタール、東京ドーム約17個分。東京駅からはJR京葉線で13分、東京ディズニーランド最寄りの舞浜駅のひとつ手前になります。

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公園入り口から森の中の道を12分ほど歩いて行くと、東京都心のビル群を遠景に芝生の空間が広がります。参加者は、カヌー・スラロームセンターに入場し、施設の会議室に集合です。

車座(サークル)になり研修キックオフ

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アウトドア研修を運営するスノーピークBSのスタッフは4名、この日の参加者は24名。大企業から団体まで幅広く、中小企業の社長や、幹部オフサイトの企画を任された若手社員もいます。各自、所属組織、名前、マイブームをハガキ大のカードに書いて胸に下げます。

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机はなく、椅子がサークルに並べられています。はじめて集まった人同士なので、「どこに座ろうか」とぎこちなさがあります。「車座(くるまざ)だと左右の人の顔が自然と視野に入って安心感があります。上下関係のない場づくりが大切です」とファシリテーターから説明があり、体験会が始まりました。

フィールドに出て、まず自分の椅子を用意

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スノーピークBSの企業紹介、組織開発におけるアウトドア研修の効果、プログラムの特徴など、全体像のプレゼンテーションが終わると、全員でフィールドに出ます。芝生広場には、スノーピークの大型タープが既に張られています。どれもピシッと安定して美しく展開されているのは、さすがプロの技です。

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フィールドでの第一歩は、自分が使うチェア(椅子)の確保です。スタッフが、折りたたみ式の展開方法を説明し、参加者に配っていきます。

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各自チェアを大型タープの下に置くと、スタッフに率いられて公園の森へ。初対面の人々の緊張感や、参加者の心の中にある不安や警戒心という「氷」を解きほぐす「アイスブレイク」セッションです。

風を感じる木陰でアイスブレイク

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この日の東京は気温30℃を超える地点もあり、直射日光の下では暑くて辛いですが、木陰にはいると吹き抜ける風が心地よいです。3つのチームに分かれて、輪になって身体を動かす簡単なゲームをします。

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次に、二人一組になっての協働体験。スタッフに続いて、ごそごそと皆で森の中を進んでいきます。この頃から、初対面同士の人も打ち解けてきて、笑い声も聞こえてきます。会議室での研修もアイスブレイクから始まることが多いですが、身体を動かしながら会話していくのがアウトドア研修の特徴です。

タープの下に集まりワークショップ

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タープの下に戻ると、チーフ・ファシリテーターの田口冬来さんを囲んでのワークショップ。田口さんは学生時代から「自然の中で人が育まれていくこと」に関心があり、卒業後は海外の先住民の地で数年を過ごした経験の持ち主です。カウンセリングの専門知識も活かして、スノーピーク BSのアウトドア研修に立上げから携わってきました。

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アウトドア研修で田口さんが最も大切にしているのは「対話」です。しかし、「さあ対話しましょう」と言っただけでは、参加者のコミュニケーションは広がりません。研修を行う組織の課題や目的をヒアリングした上で対話のトピックを設定します。今回の体験会は、「働く」が与えてくれたこと、「人の関係」についての問題意識、今日から変化したい自分、という3つがトピックでした。「問いを拡げる・深める」「自分と他者、視点を切り替える」といった、対話を拡げる質問の仕方もアドバイスがありました。

チームに分かれてトピックトーク

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次に、対話の実践として、4人ぐらいのチームに分かれて「トピックトーク」をします。2分間で自分の選んだトピックについて話し、次の5分間は他のメンバーが質問し、それに答えていきます。

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アイスブレイクで打ち解けたチームのなかには、都心とカヌーコースを望む土手の上に集まる人もいました。東京23区内でこの環境は、葛西臨海公園ならではの贅沢です。

焚き火を囲み自由な語り合い

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午後4時になると、3基の焚火台に着火。「皆さん、最後は自由に集まって『焚火トーク』を楽しんでください」、ファシリテーターから声がかかります。 最初に会議室に集まったときのようなぎこちなさはなく、自然と焚き火を囲むサークルになっていきます。

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焚き火を囲む輪は、大きかったり小さかったり。話題もそれぞれで、笑い声が響くサークルもあったり、じっと炎を見つめている人もいたり。しばらく話して、別の焚き火に移っていく人もいます。

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筆者が輪に入った焚き火では、体験会に参加した動機が話題になりました。「2つの会社が合併して今の組織になっているんだけど、考え方が違って会話が通じなくて」「経営企画から人事総務に異動してチームビルディングを任されて」「幹部が集まるオフサイト企画を任されたのですが、どの部長も自分の希望ばかりで、まとめるのが大変」などなど。所属企業の肩書きを下ろして本音を話せるのは、半日のアウトドア体験を通じて、なにか仲間意識と心理的な安全性を感じているからこそです。まさに、焚き火の力を実感しました。

目的はアウトドアではなく人と人との関係性

この「アウトドア研修」が目指していないものもあります。その視点で、参加した感想をお伝えします。

第1に、アウトドアという環境を活かした研修であって、キャンプやアウトドアについて学ぶ研修ではありません。タープは事前に張られていて、焚き火についても全てスタッフが行います。山岳渓流キャンプを経験してきたアウトドア好きの筆者にはものたりませんが、野外での活動に抵抗感のある人にはこのカジュアルさがよさそうです。会場となるスノーピークBSの「CAMPING OFFICE」には、悪天候時に室内で研修を行える施設が併設されているのも安心材料になっています。

第2に、企業リーダーが日常を離れて事業や戦略を議論するような、業務に直結するオフサイトミーティングではありません。「協働アイスブレイク」「トピックトーク」「焚火トーク」などを通じて、参加メンバーが所属や肩書きを横に置いて、人と人として良質な関係性を育むことを重視しています。

今回のイベントは、企業・団体の管理職や人事総務の方が「アウトドア研修」の全体像をつかむための半日の体験会でした。実際には、スノーピークBSのコンサルタントが組織の課題をヒアリングして、クライアントと共に目的に合った研修プログラムを個別に設計していきます。屋外でのアクティビティを充実したい場合には、チームで協働してテントを立てるプログラムも用意されています。

取材を終えて:MICE視点での企業オフサイト

今回の取材は「アウトドアでの研修はMICEなの?」という編集部内でのディスカッションから出発しました。

アウトドアでの研修は、広くとらえると企業オフサイトの一類型です。英語ではoff-site、「場所・拠点(site)を離れて(off)」という意味になります。オフサイトは、日常の環境を離れて組織の未来を議論したりチームビルディングを行う機会として活用されてきています。MICEでは、企業の戦略立案・組織開発・人材育成をはかるM(ミーティング)と社員の業績への報奨やモチベーション向上のためのI(インセンティブ)に含まれます。スノーピークBSの「アウトドア研修」は、社員相互の良質な関係性を高めることを目的としているので、MICEのMでした。

取材を通じて感じたのがアウトドア施設のMICE会場としての可能性です。葛西臨海公園のカヌー・スラロームセンターでは、競技会だけでなく、団体向けのカヌーやラフティングの体験プログラムも提供されています。芝生の広場もあり、屋内には広い会議室もあります。企業のレクリエーションやチームビルディングにも活用できそうです。皆さんは、この会場でどんなことができそうだと思いましたか。

最後に、アウトドア研修体験会の焚き火は、カヌー・スラロームセンターの施設営業時間に合わせて午後5時で終了です。また、カヌーやラフティングなどのアクティビティに参加する人は飲酒禁止。アウトドア好きの筆者としては、日暮れ後に焚き火を囲んで飲み物を片手に語り合う、そんなイベントが恋しくなりました。

アウトドア研修の会場と提供企業の紹介

カヌー・スラロームセンター(東京都江戸川区)

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カヌー・スラロームセンターは東京2020大会の競技会場として整備されました。現在は、競技会やアスリートの練習だけでなく、カヌーとラフティング(複数名が乗るゴムボート)の体験スクールや団体向けのプログラムが提供されています。
https://canoe-slalom.tokyo

株式会社スノーピークビジネスソリューションズ

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スノーピークは、1958年に金属加工業の集積地・新潟燕三条で創業し、現在は日本を代表するアウトドアブランドのひとつです。株式会社スノーピークビジネスソリューションズは、グループが運営する全国12カ所のキャンプフィールドと、提携する屋外空間のある施設(CAMPING OFFICE)全国12拠点を活かして、企業・団体の人材・組織開発を支援する研修プログラムを提供しています。
https://snowpeak-bs.co.jp

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