プロデューサーを目指す方必見「地球規模で考え、足元(地域)から行動せよ!」BUZZPORT江藤さんが語る学生のキャリア【MICEキャリアナビ】
MICEやIRは、これからの日本で大きな成長が見込まれる産業です。一方で、AIの急速な進化によって、現場で求められる人材像も変わりつつあります。今回は、観光マーケティングのDX推進や新規事業開発を手がける株式会社BUZZPORTの代表・江藤誠晃さんにインタビューを行いました。AI時代の到来がMICE業界にどのような変化をもたらすのか。そして、これから社会に出る学生がどのように自分のキャリアを築いていくべきか。未来を見据えた視点から話を伺いました。

AI時代におけるMICE産業の変化とDXの本質
AIが変える、これからの仕事
江藤さんは、観光産業やMICE領域のプロデューサーとして、短期的な利益を上げることだけではなく、未来の社会をどうつくるかという視点を重視しています。特に、現在の学生がMICEやIRに関心を持ったとき、10年後の自分がどのような仕事をしているのか、さらにその先の2040年には社会がどう変わっているのかなどの未来図を描くことが重要だと語ります。
近年、AIは私たちの生活やビジネスに深く入り込んでいます。江藤さんは、今の学生世代は日常的にAIを使いこなすリテラシーを持っている一方で、現在ビジネスの現場を担う上の世代との間には大きな意識のギャップがあると指摘します。30年以上にわたり業界を見てきた江藤さん自身も、AIの台頭に大きな可能性を感じると同時に、従来の仕事がAIに代替されていく現実を強く認識しています。今後数年で、ホワイトカラーと呼ばれる事務作業や分析作業の多くが消滅する可能性があり、過去の延長線上で未来のキャリアを考えると取り残される危険があるといいます。
コミュニティとして働く時代へ
これからのメディアや企業のあり方も変わっていきます。会社という組織に縛られ、毎日オフィスに集まる働き方から、人々が生活の中で自由に動き回り、現場で感じたことを持ち寄って新しい価値を生み出す、コミュニティとしての働き方へ移行していくと江藤さんは見ています。情報の発信者と受信者の垣根がなくなり、参加する全員がワクワクしながら未来を共につくるコミュニティの形成が、これからのMICE人材には求められます。

江藤誠晃さんについて
PRODUCER・作家 株式会社BUZZPORT 代表取締役
1963年神戸市生まれ。関西学院大学経済学部を卒業後、情報出版会社を経て26歳で観光系プランニング会社を起業。国内外各地のマーケティングプロジェクトを手掛けると同時にトラベルジャーナリスト・ライターとして世界各地を取材しドキュメンリー作品やデジタルメディア向けコンテンツを多数プロデュース。
インバウンド・アウトバウンド市場の豊富なキャリアをベースに2014年に観光地経営の最適化を目指すマーケティングエージェントの株式会社BUZZPORTを設立し旅行会社の新規事業開発や自治体と連携した観光プロジェクトのプロデュースに携わっている。観光未来人材育成事業として「観光甲子園」の統括プロデューサーや「空飛ぶクルマ研究室」の代表などを歴任し、独自のマーケティングメソッドで観光プロデューサーを育成する私塾型コミュニティをベースに複数の観光系大学で客員教授・講師も務めてきた。
(下)実際にAIを用いた「AIキュレーター」の取り組みも始まっています。神戸のMICEをテーマに、主催者の立場を想定しながらAIと対話することで、企画や発想の広げ方を体験できます。

実際にAIを用いた「AIキュレーター」のKENさん。神戸のMICEについて、主催者になったつもりで、色々と質問してみましょう。
AIキュレーターはこちらから https://mf-kobe.jp/special/aiavatar/ja
BUZZPORTが携わった、神戸のMICEモニターツアー
https://micetimes.jp/monitor-tour-kobe-2512/

大阪IRの開業と、これからの人材に求められる視点
IRが求めるのはサービス人材だけではない
今後数年で、日本のMICE産業は大きな転換点を迎えます。その象徴が、大阪で開業予定の日本初のIRです。膨大な客室数を持つホテルや大規模な国際会議場が整備され、数万人規模の雇用が生まれるといわれています。しかし、そこで求められる人材は、従来型のサービススタッフだけではありません。
江藤さんは、空間づくりにおける「ハードウェア」、体験プログラムなどの「ソフトウェア」に加えて、現場で働く人々の能力や行動力を指す「ヒューマンウェア」の重要性を説きます。IRには、日本文化を世界に発信する施設が設けられます。世界中から訪れる人々に対して、誰が、どのように日本の魅力を伝えるのかが大きな課題になります。
実行に移すのは人間のプロデューサー
これまでは外国語を流暢に話せるガイドの価値が高く見られてきましたが、AIによる同時翻訳が高度化すれば、言語の壁は薄れていきます。また、来訪者の嗜好を分析し、最適な体験プログラムを提案する役割も、人間のマーケティング担当者からAIへ移行していく可能性があります。
そうした時代に人間に求められるのは、AIが出した答えをそのまま受け取るのではなく、クリティカルな視点を持って判断する力です。江藤さんは、AIを動かすナビゲーターやコーディネーターとしての役割が、これからのMICE人材には不可欠だと捉えています。データ分析の専門家になること以上に、現地でのリアルな反応を読み取り、AIにどのような問いを立てるかという力が重要になるという見方です。AIは膨大なデータを瞬時に処理し、最適なプランを提案できます。しかし、最終的にどのような体験を提供するかを判断し、実行に移すのは人間のプロデューサーです。
「ヒューマンウェア」という考え方
江藤さんが強調するのは、ハードウェアやソフトウェアだけではなく、現場に立つ人の感性や行動力そのものが価値になるという視点です。これからのMICEやIRでは、設備やコンテンツが整っているだけでは十分ではありません。現場の空気を読み、来訪者の反応を捉え、AIを使いこなしながら最適な体験へつなげる人材が重要になっていきます。

知的好奇心とアナログな体験が、キャリアの土台になる
映画と旅が育てたプロデューサーの原点
AI時代を見据えた未来志向のプロデュースを行う江藤さんですが、そのキャリアの根底には、徹底したアナログな体験と強い知的好奇心があります。ここには、これからの時代を生きる学生にとって大きなヒントがあります。
小学生高学年の頃から映画に夢中で、年間100本レベルの映画を観てノートに記録をつけていたそうです。テレビで放映される洋画を通じて世界各国の風景や文化に触れ、いつかその銀幕の世界に行ってみたいという憧れを持つようになりました。大学生になると、その知的好奇心は行動へと変わります。資金が限られている中で自らバイクに乗って日本全国を旅し、歴史的な舞台や建築物を自分の目で確かめていきました。

現場でしか得られない感覚
その現場主義は海外へも広がりました。1990年代以降の円高を背景に世界を巡り、これまでのべ120回以上の海外渡航を経験しています。有名な観光地を訪れるだけでなく、現地のカフェやレストランに足を運び、人々がどのように空間を楽しんでいるかを観察してきたといいます。インターネットで検索すれば多くのことが分かる時代だからこそ、自分の足で現場に行き、体感したことが価値を持つという考え方です。
アウトバウンド経験がインバウンドの視点を育てる
江藤さんの強みは、高度なマーケティング手法を駆使することだけではありません。世界中を旅して培ってきた人間としての感性や現場感覚にあります。AIがどれほど高度な論理やデータを提示するようになっても、人間が身体を通して得た体験や文化への理解は代替されません。インバウンド産業を育てるためには、まず若いうちにアウトバウンドで世界を見てくる経験が必要だと江藤さんは強調します。若い頃に蓄積したアナログな経験こそが、現在のビジネスにおける大きな財産になっているのです。
神戸ユニークベニューツアーにはMICE TIMES ONLINEも参加。ツアーの様子はこちらの記事でご覧いただけます

MICE業界を目指す学生へのメッセージ。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合された「Society 5.0」の時代だからこそ、ネットワークに依存せずアクティブに観光現場を訪れて歴史、文化、自然に触れてほしい
自分自身をプロデュースする視点
MICEやIRという新しい領域で自分のキャリアを築こうとする学生に対して、江藤さんは「自分自身をプロデュースすること」の重要性を語ります。大きな組織に入れば一生安泰という時代は終わり、自分の人生をどうワクワクするものにしていくかという視点が必要になっています。大学のキャリアセンターで最適な企業を探すだけではなく、自分が本当にやりたいことに対して、いま最も先進的な企業はどこかをAIに分析させるような主体性が求められるのです。
サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)が高度に融合された「Society 5.0」の時代だからこそ、ネットワークに依存せずアクティブに観光現場を訪れて歴史、文化、自然に触れてほしい、と江藤さんは語ります。その際には「観察者」と「報告者」というふたつの役割を意識して、自らの言葉で記録を残すことが大切です。
これからのMICE分野の人材に求められるポイントは?
1)プロデュース力を磨くこと
従来の観光業界に求められてきたのは「手配者(アレンジャー)」の役割でしたが、これからは特にMICE分野においては求められるのは「プロデューサー」の役割。顧客の課題や目的を理解し、実現のために最適な体験を設計し、「ROI(投資利益率)」を高める努力を継続できる人材が必要です。
2)観光DXの本質を理解する
高度情報化時代に不可欠なのが「観光DX」です。しかし、日本においては「DX」の本質的理解が進んでいません。IT化による効率化を超えて、生活や社会のあり方をより良い方向へ構造的に「変革」するビジネスモデルを構築できる人材が求められるでしょう。
3)AIと共生する発想
観光DXの最適化を誘導するのが「AI」の劇的な進化です。自動化やスピード化といった、「AIが担う」業務と並行して強化されるべき創造的かつ戦略的な構想力という「人間が担う」業務を理解し実践する人材が求められます。
未来の姿を思い描こう
具体的なアドバイスとして挙げられたのが、未来の自分の姿を仮説として描くことです。30歳、40歳になったとき、自分はどのような仕事をしていて、社会でどのような役割を果たしているのかを想像してみる。その際に、未来の日本社会やIR業界の動向をAIと対話しながら、自分のキャリアプランや未来の履歴書をAIと一緒に作ってみることも有意義だといいます。「未来の自分のプレスリリース」をAIに書かせることで、いま何をすべきかを逆算しやすくなるという発想です。
学びの姿勢についても言及しました。大学の授業を受け身で聞くだけではなく、自ら問題意識を持ち、行動を起こすことが重要です。なんとなく就職活動をして既存の企業を選ぶのではなく、自分が本気で情熱を注げることを見つけ、その目的のために今の環境や出会いをどう活かすかを考える必要があります。MICE産業が新たな段階に入ろうとしている今、この業界に関心を持つこと自体が大きなアドバンテージだと、江藤さんは学生に向けて力強いメッセージを送りました。

来たるべきAI時代のMICE、次世代を担う皆さんに求められること
江藤さんの話を通して見えてくるのは、テクノロジーの進化を恐れるのではなく、それを使いこなしながら、人間ならではの感性や経験を磨いていくことの重要性です。AIが当たり前に存在する社会で求められるのは、単なる情報処理能力ではなく、自ら現場に赴き、五感で感じ取った情報をもとに新しい価値を生み出す力です。
日本において、MICEやIRはこれから形づくられていく産業です。既存の枠組みの中で仕事をするだけではなく、自分たちの手で新しい働き方やサービスをつくっていく余地があります。これからのMICE業界を担う学生にとっては、世の中の常識や周囲の意見だけに縛られず、自分の知的好奇心に従い、さまざまな現場で体験を積み重ねていくことが重要です。そして、AIを良きパートナーとして使いこなしながら、自分だけのキャリアの物語をつくっていくことが、これからの時代を生きる力につながっていくのではないでしょうか。

株式会社BUZZPORT
観光・トラベル市場におけるマーケティングエージェント。自治体・DMOや企業向けのマーケティング支援や連携した事業開発、地域創生、人材育成などを展開。現在はインバウンド高付加価値市場の活性化をメインにMICEビジネスとAIドリブンな観光DX領域に注力している。
Webサイト https://www.buzzport.tours/