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イベントの取材・レポート

【レポート】大阪公立大学で3日間の「MICEセミナー」/受講学生の感想、大学の思い、MICE企業の狙い

学生がMICEを知る機会をつくる。どのように大学とMICE企業はしかけたのか

国際会議等の運営・裏側を学ぶ「MICEセミナー」が、大阪公立大学 I-siteなんばにて2024年 9月17日(火)~9月19日(木)の3日間に渡り開催されました。

MICE業界において人材の確保と育成は喫緊の課題です。令和2年度に観光庁から発表された『新型コロナウイルス収束後のMICEのあり方に関する調査等業務』では、MICE人材の確保について戦略的な確保と育成が必要であると述べられています。課題の解決のためには、未来を担う若い人材がMICEを知り、理解することが重要です。

今回のMICEセミナーは、学生がMICEを知り、理解するきっかけづくりを目的として開催されました。
当メディアでは、3日目のグループワークとプレゼンテーションを見学し、主催する大阪公立大学 国際基幹教育機構 高度人材育成推進センター、共催の日本コンベンションサービス株式会社、参加した学生にお話を伺いました。

国際会議等の運営・裏側を学ぶ「MICEセミナー」とは

MICEは国際会議・学会等の総称で、開催地において高い経済効果、ビジネス機会・イノベーション創出、都市ブランド・競争力向上等の様々な効果が期待されます。本セミナーでは、「MICEとは何か?」について、日本コンベンションサービス株式会社(以下:日本コンベンションサービス)の方々より経験に基づく体系的なレクチャー、国際会議運営ワークショップ等を実施いただきます。また「グローバルMICE都市」として大阪のMICE事業に関連の深い施設見学も行います。

日本コンベンションサービス株式会社
MICEにおける国際会議や学術集会などの企画・運営・事務局代⾏をはじめ、同時通訳や⼈材派遣、⾏政事務、施設運営など、コミュニケーション全体を担う事業を展開している企業です。

引用:【募集】国際会議等の運営・裏側を学ぶ「MICEセミナー」(9/17~9/19)参加者募集 のWebサイトより

MICEセミナー プログラム

1日目はMICEの講義、2日目はMICEの各施設に訪問、3日目にグループワークとプレゼンテーションが行われました。

日程内容場所
1日目 9/17MICEの概論、事例紹介、各論の講義大阪公立大学 I-siteなんば
2日目 9/18MICE事業関連施設の見学大阪国際会議場
リーガロイヤルホテル大阪
ANAクラウンプラザホテル大阪
3日目 9/19MICE事業関連施設の見学
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国際会議運営ワークショップ 
グループワークプレゼンテーション・評価
松竹座
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大阪公立大学 I-siteなんば



国際会議運営ワークショップ 大学でMICEを学ぶってどういうこと?

9月19日 3日目。国際会議運営ワークショップ グループワーク・プレゼンテーションが行われました。大阪公立大学の知的活動を展開する「場(サイト)」として活用されている I-siteなんばの「OMU リビングラボ」が会場です。

大阪公立大学・大阪市立大学・大阪府立大学・立命館大学の学生8名が2グループに分かれ、進行役、広報、書記、タイムキーパーの4役を決めて、1時間でスライド作成と発表準備を行います。

テーマは、施設見学で視察した中之島についてです。「中之島でどのようなイベントや会議をするのが良いか提案をしてください。その理由や根拠を明確にし、なぜそのイベント・会議なのかを発表してください」。このテーマ、学生にはかなりの難題のように思えました。

講師:日本コンベンションサービスの髙橋様

日本コンベンションサービスの髙橋様は、発表資料作成の手法として「PREP法」を紹介しました。結論・要点から伝える技法です。MICEの理解だけではなく、プレゼンテーションの経験値を積むのにも役立ちますね。

参加学生は、企画概要、ターゲット、商品・コンテンツ、中之島らしさ、差別化、マネタイズ、社会的意義の観点から、それぞれ考えた案をもとにまとめていきます。タイムリミットが近づくにつれて議論が進みます。お互いにしっかりと意見を伝え合っているのが印象的でした。


いよいよプレゼンテーション:中之島でどのようなMICEを行うのか

1チーム目は、【日本一 人が集まる島「中之島」】という題で発表。中之島バラ園での開放感ある学会開催を提案します。
「バラ園はフォトスポットにもなり、若い方も参加がしやすい、学会が終わった後にビアガーデン、学者、学生同士の交流の場として活用できると考えています。」
また周辺の企業が中之島の各施設に集まり、学生やビジネスパーソンに散策してもらい、採用やインターンシップの機会にするという案も出されていました。


2チーム目は、【中之島の土地を利用した屋内外で行われるアートイベント】の題で発表。街中でのプロジェクションマッピングやアート展示を提案します。
「コアなファンでなくても、ライトな層が気軽にアートイベントに参加できることで、中之島をひとつの観光地にできると思います。認知度が上がれば、中之島に人が集まります。」

聞き入る先生、講師の方々



プレゼンテーションへの講評

大阪公立大学 国際基幹教育機構 高度人材育成推進センター 特任講師 山田様


「発表を楽しく聞かせていただきました。3日間で皆さんが感じ取ったことを、どう活かそうかと考えている様子が垣間見れました。例えば、バラ園など屋外でイベントを行う場合だと、時期や天候に左右されますよね。アート分野だとすでに直島など、強烈なインパクトを持つイベントがあります。どう関わっていくのか、対策するのか。そういった戦略を考えてもらうと、次に進んで、皆さんが本当に自分たちでできるイベントを考えてもらい、実現できるようになると思っています。」

大阪公立大学 国際基幹教育機構 高度人材育成推進センター 特任助教 林(イム )様


「日本は目線が国内に限定されることが多いです。最初から国際的なターゲットに向けて考えると、見えてくるものや、見に行く、調べるところが変わると思います。」

日本コンベンションサービス 執行役員 松田様


「我々もMICEを企画するときに考えるのは、”何のためにやるのか(目的)”、”何を残すのか(レガシー)”です。昨今の目的で重要視されているのは、社会課題解決です。今回は、グループの4人で専門分野や興味のある分野も異なるので、ディスカッションできたのは大きな意味があると考えています。
MICEを通じて、今後の世の中にどういう風にプラスの影響を及ぼしていけるだろうかというのを考え続けないといけないんだろうなと思います。プラスの影響を与えるためにはビジネス的視点が必要です。事業として持続させるための資金調達や支出項目・金額などを考えます。」


その後、和やかなムードで修了証の授与が行われました。


学生の皆さんに感想をお聞きしました

(所属のみ記載いたします)
立命館大学 経営学部 2年生、大阪公立大学 経済学部 4年生 、大阪公立大学 農学研究科 修士課程 、大阪府立大学 工学域 4年生

イベントをどこで知りましたか

–大学の掲示を見て、無料で参加できるならと思ったのがきっかけですね。昆虫学会を見学できるというのも決め手でした。掲示を見るまではMICEという言葉を知りませんでした。
※第27回国際昆虫学会議。8月25日~30日まで国立京都国際会館で開催。

–MICEの言葉自体、掲示で初めて知りました。国際的な場に参加できるということが魅力的でした。小規模、大規模の学会に参加したことがありましたが、学会の裏側を知るということが興味深かったです。

–個人的にイベントの運営をしているのですが、大型運営に関わってみたいとかねてから思っていたので、参加しました。リーガロイヤルホテル大阪などを見に行けるのも魅力的です。

–私は1年間、ホテルで宴会スタッフのアルバイトをしていました。そのためMICEとして意識はしていませんでしたが、その片鱗は仕事で知っていて。手段としてのMICEが、社会にとって、どのような意味をもつのかを知りたくて参加しました。他のホテルを見に行けるのも参加を決めた理由です。

MICEセミナーに参加してみていかがでしたか

–プレゼン前のグループワークが難しかったです。もっと伝えたかったことがあるので悔しいですね。中之島についてディスカッションをすることで、魅力を再認識できたように思います。

–「街の活性化」というと、これまでは田舎中心のイメージでした。今回のお題である「中之島」は、観光にも問題はないと思っていた場所です。しかし、国際会議・MICEの開催場所として世界的に見れば、まだ弱い。立派な都市でも、世界に向けて発信するための工夫をしているのだと分かりました。

–普段の研究では1人でプレゼンテーションを行うことが多いです。そのため、グループでの発表はプレッシャーでしたね。皆さん素晴らしい意見を出してくださったので、それらを引き出して代弁者として伝えることが難しかったです。学年にかかわらず、しっかり意見を言ってくれたことで、軸が見えて発表ができました。

–今後、何かするときに学会運営のことをチラッとでも知っていると「裏側はどう動かしているから」という、知見を活かした活動ができるようになると思います。

MICEをどうしたら知ってもらえると思いますか

–大学という場所を活用をすることや、学会などに参加した学生に、その裏側や運営について伝える時間を設けるのはどうでしょう。1人が知ると複数人に広がり、より多くの人に知ってもらえると思います。これまで日本コンベンションサービスのようなPCO(Professional Congress Organizer。誘致・企画・運営を総合的に実行する専門会社)の存在をまったく知りませんでした。

–インセンティブ旅行などは、若い年齢層が関わることが少ないと思います。高校でビジネスを学ぶという機会も増えていますが、そちらで紹介することや、中高生向けのセミナーを増やすなどが良いかもしれません。

–MICE業界に携わるOB,OGが、母校で紹介するのも良いですよね。

–中学校、高校でMICEを学べるようなカリキュラムがないので、なかなか難しいと思います。しかし、誰しも何かしらのコミュニティには参加していて、コミュニティとコミュニティをつなぐのがMICEだと思うので、「皆さんが関わっているものがMICEだ」と伝えていくことが良いと思います。


大阪公立大学 国際基幹教育機構 高度人材育成推進センター長 
松井様

—なぜMICEセミナーを開催したのですか

MICEは国際観光都市を目指す大阪にとって、今後たいへん重要な分野になると思っています。一方で、学生にとってはMICEという概念すら理解できていない、ただ、それが正しく理解されれば、彼らは大きな関心が持てると感じますし、国際的な視野を拡げることにもつながると思い開催しました。

なお今回セミナーを実施した大阪公立大学I-siteなんば・OMUリビングラボは、産学官民が協働して多様な社会的価値を創造する空間でキャリアデザインやイノベーションに関わるセミナーやワークショップなどを開催しています。本セミナーもその一環として企画されたもので、新たな学びや体験を通して自身のキャリアを考える機会を日本コンベンションサービス様に提供していただいたと感じています。
I-siteなんばが様々な企業の方にとって、求人のためだけではなく、多様な価値創出の場として面白く使っていただける空間になればと思っています。


日本コンベンションサービス 人材企画開発部 髙橋様

—MICEセミナーを共催した目的を教えてください

目的はいくつかありますが、まずはMICE業界の認知拡大ですね。MICEをそもそも知らない方も多いので、MICEを知るきっかけにしてもらいたいと思います。

もちろん、就職志望の学生の増加につながることも考えています。当社のインターンシップに来る方の中でも、MICEを知る人は国際観光学部の学生など一部に限られます。学生の方にとっては当社に限らず、今後のキャリアを考える一助になれば嬉しいです。MICEの意義を理解をすることによって将来、学会やホテル業界に携わる方もいるかもしれません。そういった将来的なネットワーク構築も目的の1つです。

知見や経験を広げる学びの機会にするため、弊社が開催するセミナーでは講義だけでなく、現地視察を多く取り入れています。我々はPCOなので、グローバルな視点で実学を知ってもらうことにこだわっています。

MICEを認知いただくことはもちろん重要ですが、プレゼンテーションの時間を設けたり、PREP法などの技術を伝えること、グループ分けはあえて多様な学生の方が混ざるようにするなど、セミナーに参加した人たちの次のステップにつながればと思っています。

今後は、大学とも連携しながら、先生方にもご協力いただいて、競合する海外都市と比較した場合の優位性確立など、学術的な観点からのMICEの知見をお借りしたいです。同時に学生の皆さんへの認知が広がるような活動を進めていきたいです。


■Editer’s note 取材を終えて

今回は、主催する大阪公立大学 高度人材育成推進センター、共催の日本コンベンションサービス株式会社、参加した学生にお話を伺いました。

日本コンベンションサービス様からは、MICEや企業の認知度向上に加え、教育的視点からイベントを構成する工夫について伺いました。大阪のMICE事業に関連の深い施設見学を通じて、本物に触れる機会が提供されました。

最終日のプレゼンテーションでは、参加した学生から「難しさを感じながらも、グループでの発表の面白さも感じた」との声があり、発表の仕方やチームでの進め方を学ぶ良い機会となったようです。また、日本コンベンションサービスの松田様がおっしゃっていた「目的」と「レガシー」、さらにビジネスとしての「サステナビリティ(持続性)」という視点に触れることで、学生がMICEイベント運営における企業の考え方を理解するきっかけにもなりました。

現在、MICEの認知度は依然として高いとは言えませんが、特に若い人材への認知向上を目指した取り組みが大学や民間企業を通じて進められています。MICEを意識していなくても、このイベントを通じて「これがMICEだったんだ」と気づき、それに関連する仕事や企業を知ることで、将来のキャリアの幅が広がる可能性があります。まさにこのイベントがそのきっかけとなったのではないでしょうか。


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