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イベントの取材・レポート

【取材】海外バイヤーは地方の何を見ているのか。Japan Luxury Showcase 2026で見えた“選ばれる地域”の条件とは

商談のなかで問われていた地方に来る理由

インバウンド需要が拡大するなか、地方へ高付加価値旅行者を呼び込むことは重要な課題のひとつです。しかし、魅力的な自然や文化があるだけでは、海外の旅行会社に選ばれるとは限りません。商談の場で問われるのは、「その地域で何ができるのか」「なぜその土地へ行く必要があるのか」という、旅行商品としての説得力です。

JNTOが2026年5月に大阪で開催した「Japan Luxury Showcase 2026」には、世界16カ国から高付加価値旅行を扱う海外バイヤーが集まりました。会場では、日本各地のホテル、旅館、DMC、運輸事業者などが、限られた時間の中で自地域の価値を伝えていました。本記事では、商談会の様子と出展者へのインタビューを通じて、地方が海外バイヤーに選ばれるために何を言語化すべきなのかを見ていきます。

※2026年5月22日 取材

目次

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地方における高付加価値なインバウンド観光づくり

アジア太平洋地域の海外旅行消費額は、2029年までに2.5兆米ドル(約398兆円)に達すると予測されており、年平均成長率(CAGR)7%で成長しています。巨大なマーケットを前に、日本のインバウンド観光はいかにして「高付加価値旅行者」を取り込んでいくかが課題です。

高付加価値旅行者:消費額は1人あたり100万円超、消費額は14%を占める

観光庁「地方における高付加価値なインバウンド観光づくりに向けたアクション」によると、日本における「高付加価値旅行者」とは、訪日旅行1回あたりの総消費額が100万円以上となる旅行者(国際航空券代は除く)を定義します。訪日旅行者全体のわずか約1%に過ぎないにもかかわらず、その消費額は全体の14%を占めるとされています。彼らを誘客し、満足してもらうことが、観光産業の未来につながります。

地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりアクションプラン概要

地方訪問率は低水準。求められる”コネ”づくり

高付加価値旅行者の地域別の訪問率は東京76.7%、大阪32.7%など、3大都市圏は高い一方で、それ以外のほとんどの地域では訪問率が10%未満となるなど、地方訪問率は低い状況にあります。(2017年及び2019年にJNTOが実施した調査)。JNTOは、地方における高付加価値なインバウンド観光づくりに向け、「ウリ、ヤド、ヒト、コネ、アシ」の5つの軸から必要な取り組みを推進しています。

なかでも特に不足していると指摘されているのは“コネ”です。海外の旅行会社との強固なコネクションに加え、日本国内のDMC(Destination Management Company:旅行手配会社)、DMO、地方自治体、サプライヤーなどを適切につなぐネットワークの構築が急務となっています。


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ウォルドーフ・アストリア大阪

大阪で初開催「Japan Luxury Showcase 2026」

“コネ”不足の課題を解決する取り組みとして、JNTOが企画・主催するのが、海外のラグジュアリー旅行会社を日本へ招き商談を行う「Japan Luxury Showcase」です。2017年から継続して開催されています。
今回は初めて大阪が舞台となりました。背景には、大阪・関西万博を契機としたラグジュアリーホテルの相次ぐ開業や、インバウンドの新たなハブとして世界的に注目を集めていることがあります。

ヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア大阪」

会場は大阪・梅田の再開発エリア「グラングリーン大阪」のパークタワー上層階に位置する「ウォルドーフ・アストリア大阪」。2025年4月にオープンした新しいホテルです。日本初上陸となったヒルトンの最上級ラグジュアリーブランドで、ラグジュアリーと呼ぶにふさわしい重厚感と洗練された空間が、商談の舞台として選ばれました。
Webサイト https://micetimes.jp/waldorf-astria-osaka-open-250403/


世界16カ国から高付加価値旅行を扱う40の旅行会社が大阪に集まる

本商談会には、欧米豪およびシンガポールの旅行会社(バイヤー)40社が16カ国から招請されました。対する日本側(セラー)は、全国のラグジュアリーホテルや旅館、DMC、運輸事業者など60社が参加しています。

海外 バイヤー 40社
Remote Lands(米国)/ Furthermore Travel(米国)/ John Paul(カナダ)Destinology(英国)/ 360 Private Travel(英国)/ Avila Reizen(オランダ)/ 1000 Mile Travel Group(豪州)Uniq Luxe(シンガポール) など

日本 セラー 60社
Waldorf Astoria Osaka / Bvlgari Hotel Tokyo / The Ritz-Carlton, Osaka / Hoshino Resorts / XPERISUS Inc. /Beauty of Japan / Setouchi DMC / JR Kyushu Private Travel Service / JAL Business aviation Co., Ltd. / NYK Cruises Co., Ltd. など

(動画・音声が流れます)

1セッション12分、2日間で35商談

双方の希望をもとにマッチングが行われて、1セッションは12分間。3分間の移動時間を挟みながら、2日間で計35セッションもの商談が連続して行われます。会場内のスクリーンには常に時間が表示されており、終了1分前には鐘の音とアナウンスが入ります。限られた時間で効率よく商談が進められていました。

会場内の机は4名掛け。バイヤー1名に対し、セラー2名が着席するケースが多く見られました。
興味深かったのは向かい合うのではなく、隣りで商談を進めていたことです。パソコンやタブレット、紙資料を一緒に覗き込み、時には肩を揺らして笑い合っていました。ブースによってはお菓子を用意し、和やかな雰囲気づくりを行う工夫が見られました。

(動画・音声が流れます)

商談の合間や空き時間には、会場外のホワイエで待機ができます。コーヒーやスイーツがビュッフェ形式で用意されており、リラックスした空間の中で自然と会話が生まれていました。こうした空間での立ち話が、重要なコネ作りの一環となっています。

(動画・音声が流れます)
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【出展者(セラー)の視点】海外バイヤーが求める「真のラグジュアリー」をどう捉えたか

海外のバイヤーたちは日本のセラーに対して何を求め、どのような問いを投げかけているのでしょうか。出展しているセラーの方に、商談の手応えを聞きました。

「オーセンティシティ(本物)」と「センス・オブ・プレイス」

世界62ヶ国、約560の一流のホテル・レストランが加盟する組織「Relais & Châteaux(ルレ・エ・シャトー)」。日本国内14施設を代表して、西出さんが参加しました。

「海外のバイヤーたちは、ホテル単体を見ているわけではありません。彼らが求めているのは”エクスペリエンス(体験)”です。わざわざ日本へ行く価値があるのか、そこで何ができるのか。どのような滞在体験ができるのかを重視しています。日本はすでにデスティネーションとして人気を誇り、リピーターも非常に多い。だからこそ”なぜそこを選ぶのか”という理由が問われます。
その際にキーワードとなるのが”センス・オブ・プレイス(その土地ならではの個性、雰囲気)””オーセンティシティ(本物であること)”です。なんちゃって日本文化ではなく、古くからの伝統があり、本当に日本で行われている本物を体験したいと彼らは思っています。そのうえで、朝食に和食・洋食の選択肢があるのかなど、細かなサービス面も確認されます」
と西出さんは明かします。

 一方で興味深いのは、そうした伝統的な文化体験への関心だけでなく”ショッピング”や”食”に対する関心も高いことです。なかでも、ドン・キホーテのような日本独特の、多様で混沌とした現代カルチャーへの関心が強いようです。

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Relais & Châteauxの西出さん

ゴールデンルートから地方へ。問われる「そこで何ができるのか」

都心部のセラーと地方のセラーでは、バイヤーの反応にも違いが見られました。東京のホテル担当者は「関東ではある程度知られていると思いますが、関西や海外ではまだ知名度が高くありません。商談を通じて、彼ら(バイヤー)の熱量が常に高いと感じました」と手応えを口にしました。

一方、長野県・松本にあるお宿「扉温泉 明神館」の岡田さんは、地方への強い関心を感じ取っていました。「ゴールデンルート(東京・箱根・富士山・京都・大阪)で松本に来ていただくことを提案しました。圧倒的に多かったのはアクティビティに関する質問でした。『あなたのところで何ができるのか』と問われます」

都心部だけではない”地方に来る意味”を提示できるかが、勝負の分かれ目となっています。

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sankara hotel & spa Yakushima 梅下さん

秘境リゾートの挑戦。まずは「地域」を知ってもらうことから

九州の屋久島から参加した全29室のオーベルジュ型ラグジュアリーリゾートホテル「sankara hotel & spa Yakushima(サンカラホテル&スパ屋久島)」の梅下さんの話も印象的でした。

「海外のバイヤーには、まだ屋久島という場所自体を知らない方も多いんです。今回商談したバイヤーの方々も、“初めて日本へ来た” “九州のことを詳しく知らない”という方がほとんどでした。そのため、いきなりホテルを売り込むのではなく、まずは屋久島という地域を知ってもらうことから始めています。福岡から飛行機でアクセスできること、山登りや釣り、ウミガメの産卵といった手つかずの自然があることを丁寧に説明しています」


【バイヤーの視点】視察ツアー参加者に地方の魅力はどう映ったか

今回の商談会に参加したバイヤーたちは、商談に先立ち5月17日から20日にかけて、モデル観光地を巡る視察・体験ツアーに参加していました。日本の地方を訪れた彼らには、その魅力がどう映ったのでしょうか。

東北海道:手つかずの大自然を探訪する大地の旅 知床半島のウトロクルーズや、屈斜路湖でのカヌー体験に参加したバイヤーたち

一例をあげます。東北海道のコースでは、知床半島のウトロクルーズや、屈斜路湖でのカヌー体験などが実施されました。クルーズ中には野生のヒグマが姿を見せ、キツネや鹿といった動物たち、そして雄大な自然美に感嘆の声が上がったといいます。また、アイヌ文化ガイドツアーでは、アイヌの血を引くガイドが英語で森を案内しながら、その土地の歴史や文化、自然との共生の考え方について説明を行いました。

自然との共生という哲学や、その土地の歴史文化などここでしかできない体験に、バイヤーたちは強く惹きつけられていたようです。

そのほかモデル観光地を中心に10のコースを設定

コースは自然や文化資源を単に見せるのではなく、地域の歴史、信仰、職人技、食、暮らしを、体験として伝えるようにされています。

1.東北海道:手つかずの大自然を探訪する大地の旅
知床五湖トレッキングツアー、アイヌ文化ガイドツアー

2.山形:山伏の精神とサムライの文化に触れる旅
山伏による修行体験、上杉神社での書道体験

3.那須:世界遺産と里山が織りなす、歴史と自然の旅
里山サイクリング、地元農家との交流、日光東照宮

4.新潟:職人技と日本の田園風景を巡る旅
棚田ウォーキングツアー、玉川堂・鎚起銅器職人との交流

5.富士山麓:富士山麓の恵みを五感で味わう旅
湖上でのディナークルーズ、茶師との日本茶体験、青木ヶ原樹海ガイドツアー

6.松本:日本アルプスの自然と水の恵みに触れる旅
大信州酒造、乗鞍高原自然体験、松本城

7.伊勢志摩:伊勢神宮と海の文化を辿る旅
伊勢神宮プライベートガイドツアー、海女小屋体験

8.紀伊山地:日本の巡礼道と原風景をめぐる旅
高野山奥の院プライベートツアー、明日香村散策・醤油しぼり体験

9.せとうち:穏やかな多島美と文化が息づく旅
プライベートクルージング、上島サイクリング、下瀬美術館

10.山陰:神話と自然、祈りと共にある暮らしに触れる旅
大山ブナの森ウォーク、農漁業体験・生産者との交流、一畑薬師、出雲大社

ツアー参加者の声

「最初から最後まで本物の体験という感覚がありました。ガイドが細かく丁寧に説明してくれたのも非常に良かったです。階段を登る道のりは体力的に大変でしたが、やり遂げられて本当に良かったです。最後の祈祷も非常に興味深いものでした」(米国)

「文化・精神性・自然が融合した非常にユニークな体験でした。特に、山と信仰、地域文化の結びつきについて理解が深まりました。景色は美しく、地元の食事も素晴らしく、全体を通して本物らしさと心が整うような雰囲気がありました」(カナダ)

「森に入りアイヌ文化について学べる素晴らしい体験でした。案内してくれたアイヌのガイドの方は知識が豊富で、とても熱意がありました。森や動物、文化への理解が深まる、他にはない素晴らしい内容でした」(英国)


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海外バイヤーが知りたいのは「何ができるのか」。地方を選ぶ理由はそこに行く必然性

あえて地方へ足を運ぶ理由は、施設の豪華さだけではつくれません。海外バイヤーが見ていたのは、その土地でしかできない体験があるかどうかでした。自然、職人技、信仰、食、暮らし、人との出会い。地域の人にとっては日常の一部であっても、海外から訪れる旅行者にとっては、その土地でしか触れられない「本物(オーセンティシティ)」になります。

ただし、地域資源は並べるだけでは伝わりません。なぜその場所でその体験をする意味があるのか。誰が案内し、どのような背景を知ることで価値が深まるのか。海外の旅行会社が旅行者に提案できる形まで組み立てて、初めて地方へ行く理由になります。ラグジュアリーな宿泊施設も、その地域体験と結びつくことで、旅全体の価値を高める存在になります。

アジア太平洋地域の海外旅行消費額が、2029年までに2.5兆米ドル規模へ成長すると予測されるなか、日本の地方にも大きな可能性があります。地域資源を“本物のラグジュアリー”として磨く。海外バイヤーに伝わる体験として編集する。国内外の旅行会社や地域との”コネ”を築いていく。「Japan Luxury Showcase 2026」の商談会で見えたのは、地方が世界から選ばれるためには、”何があるか”ではなく”そこで何ができるのか”を語る力が求められているということでした。

取材・記事制作:藤井 編集:井上

MICE TIMES ONLINE編集部が体験した12の海外バイヤーとの商談会レポート

https://micetimes.jp/report-japan-mice-expo-2025-2/

2025年に京都で開催された商談会の取材記事はこちらから

https://micetimes.jp/report-kyoto-mice-tradeshow-2025/

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