
【リヤド万博2030】が描く未来都市の姿 サウジアラビアの国家戦略「ビジョン2030」の集大成 進化する首都リヤド
2025年10月13日、大阪・関西万博が閉幕します。そして、次は2030年10月から2031年3月まで、サウジアラビアのリヤドで大規模な国際博覧会が開催されます。リヤド万博2030は、国連SDGsやサウジアラビアのビジョン2030が終結する極めて重要な年にあたり、世界中の国や組織が集まり、より良い未来のための変革的なアイデアや解決策を形作るグローバルなプラットフォームとなることを目指しています。
リヤド万博2030の概要と重要性
開催情報とその目標
リヤド万博2030は、2030年10月から2031年3月にかけて開催される予定で、会期中にはのべ4,000万人以上の訪問者が見込まれています。このイベントの目的は、195カ国以上と29の国際機関を一堂に集め、共通の課題に取り組み、持続可能な未来に向けた先駆的な解決策を紹介することです。
選定理由:世界的な信頼とリヤドの変革
リヤドは、119票を獲得し、圧倒的多数で開催地に選出されました。(次点、釜山は29票)これは、博覧会史上最大の差の一つであり、サウジアラビアの準備と野心に対する世界的な強い信頼を反映しています。リヤドは「世界で最も急速に進化する首都の一つ」として、大規模なインフラ、イノベーションへの深い投資、そして戦略的な立地を誇ります。リヤドはアラビア半島の中心に位置し、文化、商業、イノベーションのグローバルハブとなっています。

リヤド万博のテーマと焦点
メインテーマ「未来への先見性」
リヤド万博2030の全体テーマは「未来への先見性(Foresight for Tomorrow)」です。このテーマの下、万博は長期的な思考力を活用し、グローバルな課題を解決しつつ新たな機会を切り開きます。そして、持続可能で包摂的、技術的に進んだ未来を形作るための協力とイノベーションを推進します。
サブテーマ
全体テーマを補完するために、三つのサブテーマが設定されています。
1.変革的テクノロジー:AIやロボット工学など、私たちの生活、仕事、つながる方法を再構築する画期的なイノベーションを探求します。公平性やアクセスといった課題にも取り組み、すべての人のニーズに応える包摂的な進歩を保証します。
2.持続可能なソリューション:再生可能エネルギー、生態系回復、循環型デザインといった気候変動対策戦略の推進に焦点を当てています。グローバルな協力が環境回復力を強化し、より持続可能な未来を築く方法を強調します。
3.豊かな人々:ヘルスケア、教育、機会へのアクセス拡大の重要性を強調し、ウェルビーイングと包摂性を促進します。万博は人々を中心に据え、彼らの日常生活の改善を目指します。

革新的なマスタープランと都市デザイン
LAVAによる自然との調和
マスタープランは、ドイツの建築スタジオLAVA(Laboratory for Visionary Architecture)によって設計され、生態学的再生、歩きやすさ、適応的再利用を優先しています。会場は、リヤド郊外のワディ・アル・スライ渓谷(乾いた川床)の地形に触発されており、再生されたワディを基盤として有機的で相互接続された空間ネットワークを形成します。これにより、木陰の歩行者通路が整備され、自然冷却の微気候が育まれ、砂漠気候に対応する上で不可欠な要素となります。また、自然界に見られるパターンにインスパイアされたフラクタル幾何学を応用し、接続性の最適化と訪問者の効率的な移動を確保しています。
長期的なレガシーグローバル・ビレッジ
リヤド万博2030の大きな特徴は、閉幕後に解体されることなく永続的なレガシーとなることを目指している点です。会場は、イベント終了後には「文化、イノベーション、持続可能な生活のための活気あるグローバル・ビレッジ」へと移行する計画です。このグローバル・ビレッジは、小売、飲食、コミュニティ体験を核としたダイナミックな拠点として機能し続けます。
リヤドの都市変革と万博の役割
ビジョン2030の究極目標として位置づけ
リヤド万博2030は、サウジアラビアの「ビジョン2030」という国家戦略の「世界的マイルストーンであり、究極の目標」として位置付けられています。万博は、インクルージョン、サステナビリティ、イノベーションをサウジアラビアの未来に組み込み、労働力の多様化や都市生活の再構築を推進します。リヤド市内では、AIを活用したインフラや大規模なグリーンイニシアチブといった都市全体のコミットメントを通じて、万博のテーマが具現化されています。
インフラとアクセス
リヤドは、スマートモビリティシステム、シームレスなメトロ接続、専用の万博駅を備えた高度なインフラを整備しています。キング・サルマン国際空港から万博会場まで、わずか10分で直接移動できるアクセスが確保される予定です。また、リヤドの都市変革の象徴であるKing Abdullah Financial District (KAFD)のようなプロジェクトは、世界クラスの商業施設やスマートシティソリューションを提供し、都市生活を再定義しています。

舞台となるサウジアラビアの首都・リヤドとは?
サウジアラビアの首都リヤドは、同国の中枢を担う政治・経済の中心地です。アラビア半島中央のナジュド高原に位置し、その名は「庭園」を意味する言葉に由来します。かつてのオアシス都市は、今や近代的な大都市へと大きく変貌を遂げました。2025年時点の推定人口は約795万人に達し、サウジアラビア国民のみならず多くの外国人居住者と共に発展する、中東有数の国際都市となっています。
経済面では、政府機関や主要な金融機関が集積する金融ハブであり、象徴的なキング・アブドゥッラー金融地区(KAFD)をはじめ、国内の製造業も支える産業拠点としての顔も持ちます。しかし、現在のリヤドを語る上で最も重要なのが、国家戦略「サウジ・ビジョン2030」がもたらす歴史的な変革です。このビジョンは石油依存型経済からの脱却を掲げ、リヤドをその実現を牽引するエンジンと位置付けています。これにより、観光、エンターテインメント、ITといった新興産業が急速に成長し、経済構造の多角化が進んでいます。この変化は社会にも及び、女性の社会進出が大きく促進され、市民生活もよりオープンでダイナミックなものへと変わりつつあります。
未来都市への変革は、首都近郊で建設が進むエンターテインメント都市「キディヤ」(Qiddiya)や、サウード家発祥の地を文化観光の拠点として再生する「ディルイーヤ」(Diriyah)、そして世界最大級の都市公園を目指す「キング・サルマン・パーク」(King Salman Park)といった数々の巨大プロジェクトに具体的に表れています。2030年の万博開催を一つの大きな目標としながら、リヤドは歴史と伝統を礎に、持続可能で魅力あふれるグローバル都市としての未来を力強く創造しています。
MICEの未来を切り開くリヤド万博
リヤド万博2030は、過去の万博が直面した「一時的なイベントとして終わる」という課題を克服し、革新的なマスタープランを通じて持続可能な都市モデルを世界に提示します。この万博は、アイデアのショーケースに留まらず、変革の触媒として機能し、国際的な協力と長期的な投資機会を解き放つことが期待されています。サウジアラビアの野心的なビジョン2030を推進しつつ、世界に向けて持続可能で包摂的な未来の実現に向けた道筋を示す、グローバルイベントとなるでしょう。
リヤド万博 Webサイト https://www.expo2030riyadh.sa/