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ワーケーション

「ワーケーションのすすめ」(1)ワーケーションとはどんなもの?

ワーケーションのすすめ

「MICE TIMES ONLINE」では【ワーケーションのすすめ】と称して、現代のワーケーション事情について「MICE TIMES ONLINE」を運営する株式会社イザンの井上が発信してまいります。
実際に当社が行うワーケーションを通じて見えてきた「ワーケーションのいま」「企業経営におけるワーケーションの意義」「都市や地域がワーケーションを受け入れる意味」についても考えていきます。ワーケーションの導入に興味をお持ちの企業や、受け入れを進めていきたい自治体や施設の方の参考になればうれしく思います。

筆者撮影:盛岡・中津川の歩道。川を臨んでのノマドワークがお気に入りです

さらば、サービス残業。ワーケーションとの出会い

1999年からの会社員生活で私は、東証一部上場企業、地方の中小企業を経験しました。ともにロングワークかつハードワーク。
サービス残業が常態化していました。正確には「周囲と足並みを揃えた常識的な範囲で申請する時間外労働」「みなし残業という名のもとにその範囲を超える毎月数十時間の時間外労働が発生する(つまりサービス残業)」というのが実態。
体調やメンタルが原因で離職する従業員は多く、慢性的な人手不足や組織の硬直化を招き、悪循環が続いていました。そんななか、2010年当時、まだ珍しかったコワーキングスペースを立ち上げる業務を担当するにあたり、欧米の新しいスタイルの働き方を知ることで、場所と時間にとらわれない働き方に強く関心をもつようになります。

2011年、会社員としての働き方を終え、目指したのは「時間や場所にとらわれない働き方」の実現でした。
フリーランスとしてのスタートでしたが、1年のうち90日は旅先で仕事をしよう、と漠然と決めたことを覚えています。思えばこれが私にとってのワーケーションのはじめであり、まだその名を知りませんでした。

筆者撮影:京都、高野川の桜。こんな景色を見ながら、よくのほほんと屋外でノマドワークしていました

ワーケーションの定義を見ていきましょう

2008年に読んだ『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ 著)。リーマンショックを予言したと当時話題になった一冊ですが、私が衝撃を受けたのは各地を移動しながら仕事で成果を出す暮らし方としてデジタルノマドの時代が来るという”未来予測”です。
実際にはノマドという言葉が一般に普及するよりも早く、テレワーク、リモートワークという言葉が浸透し、ワーケーションという言葉が使われるようになっていったと個人的には感じます。ワーケーションという言葉はWorkとVacationを組み合わせた和製英語に見えますが、欧米で2010年代には使われ始めており、日本でたびたび耳にするようになったのは2010年代後半のようです。

2020年7月、コロナ禍。安倍政権の菅官房長官(当時)は「観光戦略実行推進会議」で「Go Toキャンペーン」の活用を呼びかけ、働き方の新しいスタイルとして余暇を楽しみながらテレワークで仕事をする「ワーケーション」の普及に意欲を示しました。大手企業がこぞってワーケーションの導入を進め、各地で受け入れ体制が整えられるようになります。

しかし、コロナ禍で移動は制限され、政府が主導することで、かえってワーケーションに対する「怪しさ」が漂わせることになったかもしれません。個人の働き方としてではなく、政府や企業が進める制度になってしまうのは、なんとも日本らしいです。

それから4年。
ワーケーションの現在地はどこにあるのでしょうか。ワーケーションの定義についていくつか引用してみましょう。

一般社団法人日本テレワーク協会 https://japan-telework.or.jp/workation_top/definition/ 

ワーケ―ションについて、「ワーク+バケーションの造語」という紹介をよく目にしますが、「休暇」とする認識もあれば、「チーム力や創造力を高める働き方」、「余暇を楽しみつつ仕事をすること」といった考え方もあります。JTAとしては、長めに休暇が取れる、仕事の成果が上がるなど、運用次第では生活と仕事の両面に好影響をもたらすものとの認識が共有されることを期待しています。

こちらのページではテレワークの類型を4タイプ紹介されています。

JR東日本 ワーケーション https://www.jreast.co.jp/travel/workation/

ワーケーションとは、普段の職場や自宅を離れて、旅先でリフレッシュしながら仕事(テレワーク)をする、場所と時間を選ばない新しい働き方・旅のスタイルです!

ワーケーションは、個人・企業・地域の三方にとってメリットがあります。旅行者である個人は心身のリフレッシュと多様性のある働き方の両立が可能になります。個人の所属する企業は、更なる生産性の向上が期待できます。旅先である地域は関係人口拡大や地域活性化を図ることができます。

一般社団法人日本ワーケーション協会 https://workcation.or.jp/workcation/

ワーケーションの本質は「場所を変えて豊かに暮らし働く手段」と、一般社団法人日本ワーケーション協会は考えています。

非日常の土地で暮らし、働くことで、生産性や心の健康を高め、より良いワーク&ライフスタイルを実施することができる手段が、ワーケーションです。

さらに7タイプのワーケーションのスタイルを提示されていて「ワーケーションとは、非日常の土地で仕事を行うことで、生産性や心の健康を高め、より良いワーク&ライフスタイルを実施することができる1つの手段です。その本質は、「場所を変えて豊かに暮らし働く手段」であると考えています。」と説明されています。とてもわかりやすいです。

観光庁(国土交通省) https://www.mlit.go.jp/kankocho/workation-bleisure/

 Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語。テレワーク等を活用し、普段の職場や自宅とは異なる場所で仕事をしつつ、自分の時間も過ごすことです。余暇主体と仕事主体の2つのパターンがあります。

こちらでは「Business(ビジネス)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語。出張等の機会を活用し、出張先等で滞在を延長するなどして余暇を楽しむことです。」という「ブレジャー」なるものも紹介されています。

北海道・大沼国際セミナーハウスのコワーキングスペース。この環境が1日300円なのです

日帰りワーケーションはワーケーションなのか

日常の職場や自宅を離れ、テレワークのスタイルで仕事をする、というものが基本形であり、いくつかのスタイルに分類できる、といったところでしょうか。PCやタブレット、あるいはスマホでもできる仕事であれば実現させやすいものともいえます。
ただ、全体的には日頃、オフィスに出勤する会社員を対象とした内容であって、日頃から自由に仕事をする環境を選べる方にはあいまいな定義かもしれません。

私は京都を離れて、ふらっと日帰りで奈良や神戸や琵琶湖周辺に出かけてカフェや公園や河原で仕事をすることもあります。これがワーケーションにあたらないのであれば、なぜ「宿泊」を伴う2日間以上のものをワーケーションと呼ぶのかはよくわからなくなります。確かにVacationであれば、長期の休暇を指すのですが、2~3日程度なら長期ではありません。それよりも「職場や自宅を離れる」「楽しい時間」を過ごすという意味合いを大切にしたいです。

いつもと気分を変えるために隣町のコワーキングスペースや、眺めのいいカフェでスイーツをご褒美にして仕事をするのも楽しいものです。日帰り旅のような、日帰りワーケーションも私はワーケーションと呼びたい、というのが個人的な思いです。

筆者撮影:宿泊するホテルのデスクもお仕事の環境そのもの。利用したホテルすべてでデスク周辺の撮影をしています

一般的に日本人の働き方は働き過ぎ、長時間労働、休みが少ない、休暇の過ごし方が下手と揶揄されることが少なくありません。OECDの2023年のレポートによると日本の年間労働時間は1611時間で世界31位、250日就業するなら1日あたり6.4時間程度。アメリカ1799時間、カナダ1865時間よりもずいぶん少ないようです。フルタイムの労働者に絞ると事情は変わってくるかもしれませんし、サービス残業の実態も反映されているかわかりません。ただ、すでに日本人はある程度、労働時間は少なくなってきてはいます。

少なくともワーケーションは「働き過ぎ」の日本人の労働時間を減らすために機能させるものではなく、「働き方」のひとつなのでしょう。ワーケーションを取り入れなくてもいいという方もいれば、そもそもワーケーションできない業態や職種の方が多いのではないでしょうか。「働き方」で考えるのであれば、様々な業態・職種で、それぞれの働き方について議論があり、試行錯誤されていくうちのひとつとしてワーケーションがあるのだろうと考えています。

「MICE TIMES ONLINE」では、ワーケーションも会議や研修、インセンティブトラベルというMICEの要素をもつものとして注目しています。「(国際会議・学会ではない)小さな規模のMICE」「地方都市・地域でのMICE」であり、働き方の多様化や地域の雇用を生むことにもつながっていく可能性を感じます。

株式会社イザン 井上

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