
【取材】海外ビジネスEXPO2025大阪 主催者・出展者が語る海外展開と中小企業が今すぐ挑戦すべき理由
6月27日、大阪のOMMにて開催された「海外ビジネスEXPO2025大阪」は、海外ビジネスに関心のある企業にとって好機となる展示会です。海外ビジネスの専門家によるセミナーや、具体的な経営課題を相談できるブースも多数出展されました。取材を行いましたので、どのような展示会なのかご紹介します。

開催概要
名称:海外ビジネスEXPO
日時:2025年6月27日(金) 10:00〜17:00
会場:OMM 2F展示ホールA
主催:海外ビジネスEXPO実行委員会(株式会社Resorz、一般社団法人 国際連携推進協会)
後援:外務省、出入国在留管理庁、近畿経済産業局、近畿農政局
独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)大阪本部、独立行政法人 中小企業基盤整備機構 近畿本部、独立行政法人 国際協力機構(JICA)関西センター、公益財団法人 大阪産業局、一般財団法人 大阪国際経済振興センター
公式Webサイト https://www.digima-japan.com/expo/osaka2025/


会場の様子:幅広い年齢層の来場者。パンフレットはペーパーレス
開場時刻の午前10時にはすでに来場者の列ができていました。担当の方によると「昨年はもっと列が長かった」とのこと。受付はスムーズですぐに会場は多くの参加者でにぎわっていました。
AIコンシェルジュによる案内や、パンフレットをQRコードで配布するペーパーレス化など、来場者が効率よく情報を得られる工夫が随所に見られました。公的機関やインバウンドビジネス関連のゾーンは、多くの来場者でひときわにぎわっていました。来場者は、若い世代から年配の方まで年齢層が幅広く、スーツ姿だけでなくカジュアルな服装の人も多いのが印象的でした。
出展者にはガーナ、ミャンマー、米国など海外の方もいましたが、会場内でのコミュニケーションは主に日本語で行われていました。

イベント総合プロデューサーにお話をうかがいます
株式会社Resorzイベント事業部「海外ビジネスEXPO」総合プロデューサー 菅井俊行 様
成長を続ける海外ビジネスEXPO、その背景と想い
「本イベントは大阪で8回目、東京では10周年を迎え、会場規模も年々拡大してきました。その背景には、海外ビジネス市場全体の盛り上がりがあります。今年は、新たに「インバウンドビジネスEXPO」を立ち上げました。大阪・関西万博も意識しており、来場者には万博パビリオンから参加したという方もいるので、万博開催中にできたことは意義があったと思っています」
「インバウンド・アウトバウンド・人材」は三位一体
「今年から始めた「インバウンドビジネスEXPO」はまだブースが少ないが、テーマに沿ったセミナーも用意しました。今後盛り上げていきたいです」
展示会前日に代表から発信されたメッセージにあった「これからの時代、インバウンドとアウトバウンド(海外展開)は切り離して考えるべきではない」とはどういうことですか?と尋ねると
「私たちが最も伝えたいのは、「インバウンド」「アウトバウンド(海外展開)」「グローバル人材」は全てリンクしている、ということです。来日する外国人に売るのは当たり前で(インバウンド)、それをアウトバウンドに切り替えていく。さらに、アウトバウンドからユニクロのようにわざわざ海外から買いに来るようなインバウンドにつなげていく。インバウンドとアウトバウンドは表裏一体です。そんな状態を我々が醸成していきたいと考えています。代表のメッセージにはそんな意味が込められています」
中小企業にこそ海外進出が「売上につながる」「やってみよう」という「気づき」を
「インバウンドビジネスEXPO」では、「旅マエ」「旅アト」といった形でどうつなげるかということが大切です。万博が始まり、外国人をどう呼び込むか、次に海外進出。当社代表が行うセミナーもまさにそのことがテーマでした。
「うちの商品が、海外の人にこんなに売れるんだ」という発見を、今まで海外ビジネスは無関係だと思っていた中小企業の皆様にこそ感じてほしい。これがイベント全体の大きなテーマです。かつて海外展開は大手企業のものでしたが、今は越境ECなどを活用し、手軽に挑戦できる時代です。
東京開催の場合、来場者の20%くらいが大手ですが、大阪だと12%くらい。社員50名以下の企業が6割を占めます。当社への相談も全国で増えていますが、特に大阪で増えていますね」
「MICEという視点で言えば、海外ビジネスは経済効果も大きい」
補助金・助成金といった、国のバックアップもあり、海外からこのイベントに来るお客さんも多いです。台湾、ベトナム、カンボジア、米国からの来場者もいるから、普段会えない方と会えるイベントになっていると思います。
海外でのイベントの認知度はまだまだだけど、出展者の間ではかなり認知度は上がってきていると感じます。そのおかげで規模が大きくなっています。
一番奥には自治体のブースを並べています。開催に協力いただいているのも、当イベントの特徴です。補助金の話まで会場で聞けるのもポイントです。セミナーもやっています」
ここでしか得られない「生の情報」と「具体的な支援」
「海外現地のスタッフもブースにいますから「生の情報」を直接聞けます。「海外ビジネスは自分には関係ない」という垣根を取り払い、来てもらえるように今後はもっと周知していきたいです」

【特別講演】Digima〜出島〜創設者が語る、25,000件の相談から見えた次の海外ビジネス戦略〜インバウンド×海外展開で導く“成功する企業“の新戦略〜
株式会社Resorz 代表取締役 兒嶋裕貴 氏
【セミナーについて】
今年の「海外ビジネスEXPO大阪」では、「インバウンド×海外展開で描く、新しいグローバル戦略」をテーマに、
関西から海外市場に向けてビジネスを仕掛けるための最新トレンドと成功のための実践ノウハウを発信します。そこで、本セミナーでは、主催者である兒嶋裕貴が登壇し、“インバウンドとアウトバウンドのこれからの海外ビジネス戦略について”という視点から、海外ビジネスを考える企業が今押さえておくべき国・地域別の動向、訪日外国人のニーズをどう自社の海外事業に活かすかなど、関西企業の海外展開成功に直結するヒントをお届けします。
公式Webサイトより
「何事も体験・体感しないと始まりません。これからは、誰もが得られる情報に価値がなくなる「経験消費」の時代になり、やがて海外ビジネスは当たり前になり、「海外ビジネス」という言葉自体がなくなると考えています。その中で、観光は最大級の産業の一つになります。
大阪は国際訪問者数ランキングで世界16位であり、「経験消費」市場の入り口にいます。ハブとなる都市は強く、今後、京都や奈良への観光が増えれば、大阪の訪問者数もさらに増えるでしょう。
文化は歴史の結晶であり、そこでしか体験できないものを持つ国は、観光客が増え続けます。だからこそ、大阪が大阪であり続けることが大切で、新世界(大阪の観光スポットとして有名)がきれいになっても意味がないのです。
アウトバウンドは、インバウンドに比例します。海外ビジネスを始める際のポイントは、優秀な現地人材をどう活用するのか、です。」
最後に「もっと詳しく聞きたい人は直接来てくれてもいいし、名刺を受付で渡してくれれば、私から連絡します」と呼びかけ、セミナー終了後は兒嶋さんが会場内を歩いて積極的に参加者とお話されていました。
出展ブースのご紹介

nexdigm:可能性あふれるインドへの進出を支援、登壇セミナーも盛況
ビジネス開発部 カントリーヘッド マーク・ケネディ様
ムンバイに本社を置くインド国内最大の会計・経営コンサルティングファーム。日本の中小企業を主な対象とし、インド進出の支援を行っています。日本の営業を担当されるケネディさんにお聞きしました。
「多くの日本企業にとってインドは未知の世界。古い発展途上国のイメージを持たれがちですが、今や世界第5位の経済大国であり、チャンスに満ちています」
同社は、市場調査や参入戦略の立案、提携先の探索、現地法人の設立までを全面的にバックアップします。インドの人口は14億人、平均年齢は28歳と若さに溢れ、市場は今後も伸び続ける見込みです。特に自動車や電子機器、医療分野はインド政府も歓迎しており、手厚い補助金制度があります。
「ものづくりのまち大阪の企業と協力関係を築きたい。このイベントで出会った企業と早速連携を進めたい」
ケネディさんはアメリカ出身、今は九州在住。全国どこにでも飛んでいくそうです。取材後、登壇されたセミナーも盛況でした。

Univis America:アメリカ進出を会社設立・買収から進出後のことまでサポート
代表取締役/マネージングパートナー 秦朋子 様
日米の公認会計士が在籍し、日系企業のアメリカ進出を支援する会計事務所。ニューヨークで設立しましたが、一昨年日本法人を設立。
「会社設立から買収、進出後の会計・税務・労務まで、バックオフィス業務をまとめてお任せいただけます」。スタッフは全員日本人で、言語の不安なく日本語で相談できるのが大きな強みです。
「円安を背景に外貨を稼ぎたいという企業も多く、アメリカが世界一の市場であるトレンドは変わりません」との考えを示します。州ごとに異なる複雑な税制やルールも一からサポート。「『アメリカ進出なんて大それたこと』と考える企業にこそ、段階を踏めば意外と簡単だと伝えたい」と述べ、顧客が本業に専念できるよう伴走する形で支援しています。大阪の来場者については「少しでも興味があれば必ず話を聞いてくれ、自社製品をアメリカで売りたいという熱気をものすごく感じます」と話しました。

COUXU:「大阪から京都へ行く感覚で」低コストで始める海外進出
執行役員 CPO/最高製品責任者 齋藤紀臣 様
主催者から「面白いブースがある」とご紹介いただいたのがこちらのブース。COUXUの代表は36歳、社員の平均年齢は29歳という若さが新しい発想の源にもなっているのかもしれません。
「スモールビジネスでも、大阪から京都へ行くような感覚で海外進出できる状況を作りたい」という、海外展開支援企業です。海外企業の営業先が不明、時間とコストがかかるといった日本企業の課題を解決することを目指します。
同社の特徴は、先にベトナムやタイなど東南アジアのバイヤーを開拓し、日本から何を仕入れたいかを聞いておく点です。事前に営業先が明確になり、効率的なアプローチが可能になるそうです。海外企業と繋がるツール「セカイコネクト」は月額3万円から利用でき、営業資料の作成支援なども含め「意志さえあれば始められる」環境を提供。
「まずはやってみて、自社の現在地を理解することが重要です。待っていても問い合わせは来ません。機会損失を防ぐため、コミュニケーションを取りながら段階的に準備を進めるべきです」

おわりに:海外進出には「きっかけ」が要る。イベントが生む「きっかけ」が企業の未来を変えることも
インバウンドが好調だからこそ、アウトバウンドにもチャンスが広がっている。展示会が発信するメッセージは、聞いてみるとまさしくそのとおりだと思います。しかし、実態として海外進出を支えるためのビジネスイベントは決して多くありません。支援側の事業者も展示会初出展という声があり、いかに機会が限られているのかがわかります。
海外から多くの方が日本を訪れるようになったことで、自社のビジネスの可能性に気づいたのと同様に、海外進出してみると、新しい可能性に気づくこともあるでしょう。当MICE TIMES ONLINE編集部も、ある企業とのお付き合いをきっかけとして、韓国とのご縁が生まれ、今は海外への進出を現実的に検討しています。「海外ビジネスEXPO」は、そんなきっかけを生む場になるのだと思います。
海外進出の際には、海外のMICEを活用することになるのも見逃せません。海外の展示会やイベント、商談会が足がかりになると容易に想像できます。しかし、会場では「MICEとは何ですか」と取材担当記者が何度か質問を受けたとのこと。当編集部も、MICE業界の外にいる多くの事業者に向け、もっとMICEを知ってもらう取り組みに力を入れていかなければと決意を新たにしました。
※取材担当:廣島
