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【海外出展体験レポート】ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦。セントレア隣接の招き猫の街が台湾で得た確かな手応え

愛知県常滑市は、中部国際空港(セントレア)の至近に位置しながら、外国人観光客に素通りされてしまうという長年の課題がありました。この課題を克服し、常滑の観光資源である「招き猫」や「焼き物」の魅力を直接発信するため、台湾最大の旅行博「台北国際旅行博2025」(台北國際旅展・ITF)に初めて出展いたしました。ITFは現地でツアーが直接販売されるという日本とは異なる特徴を持つ展示会です。常滑ブースの連日の賑わいから見えてきた確かな成果と、今後の観光戦略の鍵となる課題について、とこなめ観光協会としてレポートします。

【MICE TIMES ONLINEより】本記事は、とこなめ観光協会の竹内さんによる寄稿記事です。海外展示会・商談会に参加された際の体験記です。また、アジア最大級の旅行・観光展示会ITFはどういったイベントなのか、理解を深めていただけます。

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦

台湾最大の旅行博・ITFに出展した理由と戦略

中部国際空港隣接地の課題克服へ

常滑市は中部国際空港の所在する自治体でありながら、多くの外国人観光客が飛騨高山や立山黒部、上高地といった有名観光地へ直行し、常滑市への立ち寄りが少ないことが長年の課題でした。セントレアからの地理的優位性を活かし、立ち寄り機会を創出するため、海外出展を検討しました。

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦
旅行商品の販売は人気があります

ITFは、台湾で最も大きな旅行博であり、日本の旅行博と異なり、多くの旅行会社がその場でツアーを販売するという特徴があります。そのため、来場者も「次の観光地を探す」という具体的なマインドで来場されており、常滑の観光地を直接訴求する場として最適だと判断し、初出展を決定いたしました。常滑の観光の特色である「招き猫」や「焼き物」は、台湾の皆様と相性が良いという判断もありました。

招き猫を核としたブース設計と体験提供

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦

初めての海外出展だったため、ブースは1小間サイズ(3m×3m)という限られたスペースでの挑戦となりました。あれもこれも詰め込んでしまい、常滑が何がある街なのかがわからなくなることを避けるため、PRの焦点を「招き猫の街であること」と「中部国際空港からすぐの場所に観光地があること」の二点に絞り込みました。

来場者に立ち寄っていただくための工夫として、「アンケート回答によるオリジナルトートバッグプレゼント」と「SNS(InstagramまたはFacebook)フォローによるガラガラ抽選」を実施。トートバッグには招き猫がデザインされ、抽選の当選者には常滑焼の招き猫、外れた方にも招き猫が描かれた飴をプレゼントするなど、徹底して「常滑といえば招き猫の街」という点を訴求しました。

ITF 台北国際旅行博2025について詳しくはこちら


ITF現地での具体的な手応えと交流

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦
会場となった台北南港ホール

連日の大盛況と来場者の高い関心

ITFの会場は連日高い期待が伺えるほどの混雑ぶりでした。特に各日10万人目標の週末初日(Day2)は、朝から入場を待つ来場者の行列が長く、ブース前の通路が歩けないほどの盛況ぶり。常滑ブースにもひっきりなしにお客様がお越しになり、「嬉しい悲鳴」が上がるほどでした。特典企画を実施している時間帯は、ブースの前に大きな行列ができました。

アンケートの結果からは、「中部国際空港を利用したことはあるが、常滑を観光したことはない」という方が大半でした。一方で、「中部国際空港行きのチケットを持ってる人」や、「とこにゃんを見た人」「常滑牛乳が美味しかった人」も何人もおり、あと少し常滑の情報が浸透すれば、もっと多くの人に来てもらえるという期待の持てる状況を実感しました。過去に来たことがある方の満足度は非常に高い様子で、観光経験がない方であっても、やきもの散歩道などの観光地を紹介すると「次に中部国際空港を利用するときは行ってみたい」という声をいただき、台湾の皆様と常滑は非常に相性が良いことを改めて認識する機会となりました。

伊藤常滑市長の親密なトップセールスが話題に。地元紙で報じられる

今回の出展では、伊藤辰矢市長が開催日の前日から4日間の全日程にわたって帯同しました。市長は伝統的な法被姿でブースの最前線に立ち、来場者に直接資料や記念品を手渡すなど、親切な接客を自ら行いました。開催日の前日に行われた歓迎会でも、市長自ら常滑市をPR。

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦

この市長の積極的なPR活動は、台湾メディアにも注目され、「三立新聞網」の記事では「旅展現場驚見『日本市長打工中』親推招財貓之城 贈品狂送超親民」(旅行フェアで『日本の市長がアルバイト中』親しみやすい招き猫の街を自らPR 景品の配布もフレンドリー)として報じられました。市長が来場者に直接、町をPRする姿勢は、日本館で最も特別な一幕となったとのことです。

リンク先 三立新聞網の記事

伊藤市長は、常滑市がセントレアから電車と徒歩約10分でやきもの散歩道にアクセス可能であり、無料のシャトルバスも利用できることから、乗り継ぎや短期滞在の旅行客に最適な場所であると、利便性を重点的にPRしました。

ツアー造成に向けた旅行会社との確かな商談

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦
日本パビリオンは会場でもひときわ人気のエリアです
ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦
香川県のブースの様子

ITFの前日に行われた公式商談会では、私たちは20社以上の台湾旅行業者様と打ち合わせを行いました。多くの旅行会社が常滑に関心を持ってくださり、現在、数社とメールで企画提案を進行している最中です。

セントレアを日本への玄関口としてツアーを取り扱っている会社が多く、セントレアの「おひざ元」である常滑をツアーに組み入れることは、現実的な選択肢として捉えてもらえました。既に、台湾と日本市場を経営する旅行会社から、来年7月頃に計画されている愛知県へのツアーに常滑の行程を組み込む計画を伝えられるなど、具体的な成果も得られ始めています。また、この商談会を通じて、日本の生徒との交流や体験を組み入れる教育旅行のニーズが高いことも分かりました。

ITFで見えた常滑観光の次なる課題

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦

観光客受け入れ体制の早急な整備

現場の来場者からは、「ロッカーが必要だ」「飲食店の受け入れはフレンドリーか」など、具体的な課題をいただきました。これらの課題は、常滑市が国際的な観光地として成長するために、一つ一つクリアしていく必要があります。

常滑市では現在、外国人観光客歓迎店マップを制作し、海外からの旅行客を歓迎する飲食店などをPRすることで、受け入れ環境を段階的に改善する支援を行っている最中です。常滑で観光に携わる方々、旅行者の皆様双方がウィンウィンになれるような体制構築を目指します。

中部エリア周遊ツアーへの組み込みを目指して

ITFでの重要な気づきとして、多くの旅行会社がツアーを販売している中で、常滑がそのツアーに組み込まれることがプロモーションの最大の目標であると再認識しました。しかしながら、中部エリアのツアーを扱う旅行会社がまだ少ないこと、中部エリアのツアーであっても、ほとんどが白川郷や立山黒部を周る行程であるという課題が見つかりました。

今後は、中部エリアには他にも面白い観光地があるということを旅行会社へ継続的にPRし続け、ITFで販売されるツアーの中に常滑が組み込まれることを目指します。市長の希望通り、高山や白川郷、名古屋へ向かう前に常滑に立ち寄る理由を、より多くの方に提供できるよう努力してまいります。

今後の常滑観光プロモーションの展望

ITF 台北国際旅行博2025への愛知県・常滑の挑戦

今回のITFへの初出展は、常滑の魅力を台湾の皆様に直接お届けし、大きな手応えと具体的な改善点を得る重要な機会となりました。中部国際空港(セントレア)に到着後、すぐに訪れることができる”焼き物のまち”として、今後、現地の旅行会社との連携を深め、受け入れ体制の整備を進めることで、常滑市が中部国際空港を利用される台湾の皆様にとって欠かせない立ち寄り地となることを目指します。常滑観光の新たな一歩として、この経験を活かしてまいります。

寄稿者の紹介

とこなめ観光協会 竹内一将
2017年4月に常滑市役所に入庁。企画課、都市計画課、観光戦略課を経て、2025年4月からとこなめ観光協会に出向。

とこなめ観光協会 愛知県常滑市の観光サイト「とこなめ観光ナビ」 https://www.tokoname-kankou.net/
とこなめ観光協会Instagram https://www.instagram.com/tokonamekanko/

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