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イベントの取材・レポート

【万博イベント取材】シンガポールがMICE開催都市として選ばれる理由とは(前編)答えはヘルス・ウェルネスにあり?in 大阪・関西万博シンガポール館

2025年6月26日、大阪・関西万博のシンガポール館内で、MICE開催地として選ばれるシンガポールの魅力を主題にしたビジネスイベントが行われました。

国際会議協会(ICCA)の国際会議の都市別開催件数でシンガポールは、アジア大洋州地域で2023年に引き続き首位と、アジア有数のMICE都市として知られています。また2024年、シンガポールで開催された国際的なビジネスイベントの3分の1以上が、ヘルス・ウェルネス産業によるものでした。
なぜシンガポールがMICE開催都市として選ばれるのか、ビジネスイベントの成功をどう導くのかヘルス・ウェルネスに対してどう取り組んでいるのか…。その秘密に迫ります!

シンガポール政府観光局 傘下の「シンガポール・エキシビション&コンベンション・ビューロー」エクゼクティブ・ディレクターのエドワード・コー氏に独占インタビューしました。記事は後日公開予定です。お楽しみに。


イベント概要:シンガポールパビリオン内 ビジネスイベント

■日時:2025年6月26日(木)14:00~17:00
■会場:大阪・関西万博会場内 シンガポールパビリオン
■当日プログラム:
13:30 受付開始
14:00~14:05 開会のご挨拶
14:05~14:15 シンガポール政府観光局 プレゼンテーション
14:15~15:05 第1パネルディスカッション(20~30分)
        第2パネルディスカッション(20~30分)
15:05~15:45 パネリスト、政府観光局公式キャラクター マーリーとの集合写真撮影
15:45~17:00 グループに分かれて館内ツアー・ネットワーキングセッション
17:00 イベント終了


会場の様子:シンガポール館の緑に囲まれたイベントエリア

シンガポールグッズが参加者に配られる

入口では、参加者全員にシンガポールオリジナルのバッグが配られました。中にはシンガポールの公式マスコット”Merli(マーリー)”のぬいぐるみや、チョコレート・スナックなどのお菓子、冊子など、シンガポールらしいアイテムが入っていました。

Merli(マーリー)について

イベント会場の様子

土産売り場

会場はシンガポール館、土産売り場のすぐ近く。50人ほどが入れるイベントコーナーが設けられていました。

イヤホンで聴く翻訳ツール

英語での会話もあちこちで聞こえてきました。スマートフォンの翻訳ツールで多言語対応していました。各自QRコードを読み取り、イヤホンを用意します。すると、日本語・英語・中国語の音声が、ほぼ時差なく流れます。文字起こし機能もありました。

イヤホンで音声を聴くので会場は静か。周囲の邪魔にならず、パビリオン来場者にも配慮されています。

スマートフォンの画面


このツールは「GREEN TERP TECHNOLOGIES」という企業が提供しています。大阪・関西万博のシンガポール館でも、公式の多言語コミュニケーションパートナーに選ばれているとのことです。

GREEN TERP TECHNOLOGIES Webサイト:https://www.gtmeeting.com


開会のご挨拶:シンガポール政府観光局(STB)エドワード・コー氏

「2024年の観光収入は298億シンガポールドル(約3.4兆円)。日本からも多くの観光客の方々にお越しいただいています。2025年にはリーダーシップイベントなど、多くのパイプラインとなるようなイベントを開催しており、2026年にもイノベーションを呼ぶようなものを行っていく予定です。シンガポールはICCAにおいて、アジア太平洋地域でトップの地位を維持しています。

”グローバルに繁栄していくためには何が必要か”。”シンガポールでのビジネスイベントをどう成功へ導くか”について、お話ができればと思います」


シンガポール政府観光局 国際グループ 日本支局 大石洋介

「シンガポール政府観光局は、設立から50年の歴史を持ち、本部と連携しながら各地の支局を通じて活動を行っています。目指しているのは、世界最高のMICEシーンにシンガポールを選んでもらうことです」

シンガポールのMICEの強みとは

大石氏は、MICEにおいての”強み”を説明。

・コンパクトな国土
面積は約700平方キロメートルで、淡路島や琵琶湖と同じくらいの大きさです。

・チャンギ空港
年間6,000万人から7,000万人が利用するアジアのハブ空港で、アクセスの良さは抜群。

・入国のしやすさ
日本を含む多くの国からは、30日以内の滞在であればビザ不要。

・MICE施設の充実
IRや国際会議場、ユニークベニューや、エアショーが開催できる大規模施設も備えています。

・宿泊施設
手頃な価格のホテルから、スーパーラグジュアリークラスまで400軒以上が揃っています。淡路島の中に400軒のホテルがあることを想像してみてください。

・助成金支援制度
国際的なイベントかどうかに応じて、助成金支援も行っています。ぜひ、開催地を決める前に相談してください。

エアショー」:航空機をテーマにしたイベント

2つのトークセッションがはじまりました。ビジネスイベントに参加する側、主催する側からの考えを、述べられました。

パネル1:グローバルな団体が集い、ビジネスが発展する場所

登壇者

・シンガポール青年会議所(JCI Singapore) 会頭 安田哲氏
・International Conference Services(ICS)プロジェクトマネージャー 野本加奈氏

シンガポール青年会議所 安田氏

「僕は、企業の海外展開支援をしています。海外で事業を起こすとなると、2~3年はかかります。シンガポールはテストマーケティングの場として優れていて、パートナーも探しやすいんですよ。僕調べですが世界で1番と言えるほど、商品の輸出入が簡単で、ライセンスも明確。そして英語でやりとりできるのもシンガポールの強みです。

言葉の壁はなんとかなるものです。語学を理由に海外に行かないのはもったいない。A4ペライチの資料と日本からのお土産を持っていけば商談の場はつくれます。テンションも通常の2倍くらい上げて臨みましょう。文化の違いなんて、地球から火星に行くくらい違って当たり前ですから、異文化を認め合いながら交渉していくことが大事ですね」

ICS 野本氏

日本とシンガポールの比較についてわかりやすく示唆されていました。

「私たちICSは、国際会議の運営会社(PCO)です。世界に8拠点あり、シンガポールにもオフィスがあります。
シンガポールでの開催意義は、いくつかあります。肺がん研究の国際会議だと7,000〜10,000人規模で、アジア、北米、ヨーロッパからも参加者が集まります。アフリカ系の参加者がいらっしゃる場合、ビザ申請に時間がかかることが多く、満足度を下げる原因になることも。その点、シンガポールはビザが取りやすくスムーズです。

インフラやアクセスも整っています。総合複合施設『Suntec City(サンテック・シティ)』はアクセスも良く、ホテルやユニークベニューも充実。中心のイベントと、サイドイベントとを近距離で開催できます。まさにコンパクトシティです。

英語が公用語というのも大きいですね。日本だと言葉や文化の壁がありますが、壁がないのがメリットです。グローバルビジネスに慣れ、国際会議のスタンダードを理解している事業者が多いので、進行がスムーズだと実感しています。

学術協会を支える仕組みもあります。政府が力を入れている分野と直結しているからこそ、主催側も支援が期待ができる。分かっているから選ばれるんです」

■シンガポール青年会議所 安田氏
「国際会議の3分の1はヘルスやウェルネス系です。なぜシンガポールが選ばれるのか。それは日本に次ぎ、2番目に少子高齢化が進む国だからだと思います。”ヘルス”や”ウェルネス”は、お金がないと、先進的技術の施術は受けられないものです。お金を持っていれば、自然と”健康”にも興味を持つと思います。

ビジネスイベントの観点で言うと、現地の展示会に出展するのであれば、1度出ただけじゃ成果は出ないんですよね。3年くらいやって、ようやく認知されます。だから若者を連れてきてほしい。インターンシップビザを使うこともできます。

また展示会出展や視察をするだけでなく、一歩外に出て現地コミュニティとの接点をつくることが大事です。NPOや政府機関、学校、チャリティー団体に、ぜひ寄付してみてください。”どう現地に貢献ができるか”を考えれば、見方が変わります。また『来年も来てね』という双方向の関係性が生まれます」

■ICS 野本氏
「MICEというのは、強い変化をもたらすために人が集まる場所だと考えます。世界中の専門家がイベントに集まれば、現地の若手や研究者に知識やネットワークを与えられます。つまり、ポジティブインパクトを与えるのです。一方で人が集まると環境負荷もかかる。だから、代わりに何か残せないか(レガシー)と考える学会が増えています。

私たちは会議参加者から希望を募り、会議場の近くをランニングする取り組みを行っています。シンガポールは『ガーデン・シティ』。走ることで街並みに緑が多いことに気づいてもらえます。ウェルネスを発信することにも繋がります」


パネル2:ウェルネスとビジネスの出会い

登壇者

・日本アムウェイ株式会社 スペシャルイベント シニアリーダー 三輪剛臣氏
・株式会社JTB ツーリズム事業本部 事業推進部 国内海外政策チーム マネージャー 原周太朗氏

日本アムウェイ 三輪氏

「リーダーシップ・セミナーを2025年3月に開催しました。”ファミリー”で楽しめるをコンセプトに、実際に540組のご家族、1,400人が参加。シンガポールは昼でも夜でも安心して過ごせて、食事も日本人の口に合います。結果、子供から大人まで満足するイベントとなりました。満足度も2024年は80%で、2025年は90%以上に上がりました。

アムウェイ Webサイトより

会場はユニバーサル・スタジオ・シンガポール(USS)とマリーナベイサンズを使いました。トラムでのアクセスも良くて、『自由気ままに出かけられる』という声が多かったですね。

健康はサプリだけではなく、良い睡眠をとること、運動すること、食事を整えることも全部含まれると思います。シンガポールは、散歩をして気持ちを落ち着かせたり、人間のあたたかさを感じられる場所です」

JTB 原氏

「自動車メーカーの”100周年記念イベント”を担当したことがあります。もともと優秀な社員150名をラスベガスに連れていく予定でしたが、100周年ということで全社員を対象にすることに。結果、3,000人が1年をかけて参加するロングスパンのイベントにしました。15班に分けて100人ずつ、日をずらして参加します。パーティーは『マンダイ・ワイルドライフ・リザーブ』で開きました。社員の安全を担保しつつ、それぞれが楽しめるディスティネーションを選びました」


顧客が決定するうえで重要視していることは、5つの要素がバランスよく整っていることだと話されました。

https://www.mandai.com/ja/homepage.html

「ディスティネーション」:目的地、行き先

イベント後は視察・ネットワーキング

シンガポールパビリオン視察

グループに分かれてシンガポールパビリオンの視察をしました。

ネットワーキング

会場に残り、ネットワーキングをする様子も。カクテルやソフトドリンクも用意され、ドリンク片手に自由に交流していました。


Editor’s note:ウェルネスに注力したシンガポールの取り組み

MICEに関わる業界の人だけでなく、主催者の方も登壇されていたのは好例だと考えます。主催者の目線の考えが聞けたからです。

シンガポール政府観光局が発表したロードマップ「ツーリズム2040」では、MICEによる観光収入を2040年までに3倍にすると掲げられました。MICEを国家の成長戦略の中で重要産業として位置づけ、着実に推進しているシンガポールの姿勢は、日本にとっても学ぶべきことが多いでしょう。MICE先進地の「本気」の一端に触れる機会となりました。

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