
ロサンゼルス・オートショー(LA Auto Show)世界で最も影響力ある自動車イベントのひとつ 11月21日~30日開催 イベントの歴史と概要を知る
単に最新の自動車が集まる展示会ではなく、1世紀にわたり進化し続けてきたロサンゼルス・オートショー(LAオートショー)。このショーは「世界で最も影響力のある自動車イベントの一つ」として位置づけられ、ロサンゼルス・コンベンションセンターにとって最大の収益源であり、市経済に数億ドル規模の貢献をしています。開催地であるロサンゼルスの「世界のカーカルチャーの中心地」というアイデンティティを深く活用し、B2BとB2C双方のオーディエンスに戦略的に貢献していることが特徴です。本記事では、この重要な国際自動車イベントであるLAオートショーの歴史と、2025年の展望をします。

LAオートショーの歴史
1907年から。1世紀にわたる適応と発展
LAオートショーの起源は1907年に遡ります。初回はモーリーズ・スケートリンクで開催され、99台の車両が展示されました。初期はデパートの地下や公園のテントなど、型破りな会場を転々としました。特筆すべきは、1929年に壊滅的な火災に見舞われた後も、地域の支援によりわずか1日後にはショーを再開したという驚異的な回復力です。第二次世界大戦後の1950年代には、ヨーロッパ車への関心の高まりを受け、ショーの名称に「インターナショナル」が加えられ、世界経済の変動を映す役割を果たし始めました。1993年には拡張されたロサンゼルス・コンベンションセンターへ移転し、世界クラスの展示会としての地位を固めました。さらに、2006年には業界の製品サイクルに合わせて、開催時期を1月から11月へと戦略的に変更しています。このショーは、トヨタ プリウスやテスラ ロードスターの初期から現在に至るまで、電気自動車(EV)の台頭における重要なプラットフォームとして機能しています。

ロサンゼルスのカーカルチャーとの融合
このショーの成功の鍵は、ロサンゼルスという開催地との結びつきにあります。ショーは、単にロサンゼルスで開催されるだけでなく、ロサンゼルスの多様で活気に満ちたカーカルチャーを積極的に活用することで、「文化的な濠」と呼ばれる模倣困難な優位性を構築しています。カスタムカー文化が息づく「The Underground」は、この戦略を象徴する展示です。また、映像シリーズ「All Roads Stories」は、地元のビルダーや起業家の個人的な物語を伝えることで、ショーのブランドをイベント期間を超えて拡張しています。
2024年開催:EVと体験型プログラム
ヒョンデ、キア…韓国メーカーの台頭と電動化の潮流

2024年のLAオートショー(11月22日~12月1日開催)は、自動車業界が移行期にある状況を明確に示しました。特に注目されたのは、従来の高級車ブランドを追い抜き、ヒョンデ、キア、ジェネシスといった韓国メーカーがショーの主役となった点です。ヒョンデの3列EV SUV「Ioniq 9」のワールドデビューは、主流市場への普及に極めて重要なファミリーEVセグメントの成熟を示唆しました。キアは高性能EVの「EV9 GT」と「EV6 GT」を発表し、EVが効率性だけでなく、ドライビングの楽しさを提供する正当な高性能車としても位置づけられる戦略を示しました。カリフォルニア州が2035年までに新車販売をゼロエミッション車のみとする方針を掲げている背景もあり、電動化と先進技術への関心が特に高まりました。
試乗体験やカスタム文化の強調
2024年のショーは、実践的な体験型プログラムによって定義されました。参加者はEVやハイブリッド車の乗り心地を試乗コースで確認できたほか、「Bronco Built Wild」や「Camp Jeep」のような障害物コース体験によって、車両の能力を静的な展示よりも説得力のある方法で体感できました。カスタムカーの文化も重視され、「ガレージ・アフターマーケット」にはカスタムカーやローライダーなど200台以上が集結しました。来場者数も好調で、ヒスパニック系やアジア系、アフリカ系アメリカ人の来場者が増加し、多様なオーディエンスを惹きつけていることが示されました。

2025年開催の展望:未来のモビリティとアクセシビリティ
体験型コンテンツの革新と拡大 多くのモデルに試乗可能に
2025年のLAオートショーは、11月21日から30日までロサンゼルス・コンベンションセンターで開催されます。主催者は、来場しやすさを高めるためにチケット価格を引き下げるとともに、体験型コンテンツをさらに拡充する計画です。新たな取り組みとして「Creator Studio」が導入され、次世代のカーカルチャー・インフルエンサーとのコラボレーションを通じてオリジナルコンテンツの制作をショーフロアに融合させます。また、AI技術を活用した自動車エコシステムを展示する「SPARQ Experience」が再登場し、技術的な側面を消費者向けに統合します。EV、ガソリン車、ハイブリッド車の乗り比べができる試乗施設が拡張される予定であり、来場者は50以上のモデルを試乗できる見込みです。
モビリティ全体を網羅するB2B戦略
メディアおよび業界関係者向けの日程である「AutoMobility LA」は、その戦略的な意味を大きく拡大します。従来の陸上モビリティに留まらず、「空の未来:航空宇宙における電動化」や「海の未来:ARCによるボートの再発明」など、隣接する高成長技術セクターへのテーマ拡大が行われます。イベントを未来志向のテクノロジーカンファレンスとしての地位に固めるものです。
また、AutoMobility LAのオープニングパネルでは、ホンダとLA28オリンピック・パラリンピック競技大会との画期的なパートナーシップが特集されます。主催者は、ZEVの未来を提示しつつも、依然として市場の過半数を占めるガソリン車のラインナップも堅固に揃え、今日の消費者ニーズに応える現実的な市場戦略をとっています。

「見る」から「体験する」へ LAオートショーが強化する体験の拡充
LAオートショーは、1907年の創設から現在に至るまで、継続的な適応と、ロサンゼルスのカーカルチャーという本物の文化的な背景の活用により、その影響力を維持してきました。MICE戦略の観点からは、業界を形成するB2BイベントであるAutoMobility LAと、体験的なスペクタクルを提供するB2C一般公開ショーという、「デュアルプラットフォーム戦略」を巧みに使い分けることで、すべての関係者にとっての価値を最大化しています。
2024年は電動化とデジタル化の潮流が明確になり、2025年はクリエーター・スタジオや拡張された試乗体験を通じて、単に見るだけでなく「体験する」イベントへと進化することが見込まれます。LAオートショーは、モビリティの定義を拡大し、文化と技術の交差点となることで、21世紀における大規模展示会の成功例を示しているといえます。
LAオートショー 公式Webサイト https://www.eventim.com/campaign/la-auto-show
※画像は2024年開催のもの、公式提供