【インタビュー】愛知のスタートアップ支援施設「STATION Ai」現地で見つけた7つの特徴
「MICE TIMES ONLINE」編集長の藤井です。2024年10月1日に愛知県名古屋市の鶴舞公園に開業したスタートアップ支援拠点「STATION Ai(ステーション エーアイ)」はご存知でしょうか?開業を記念したオープニングイベントが、2024年11月1日~11月2日に行われました。そのイベントの様子とともに、7つの特徴についてお伝えします。入居を検討されている方、どんな場所か詳しく知りたい方におすすめです。
公共施設でもある、ビジネス創出を支援する国内最大規模のスタートアップ支援施設
STATION Aiは、名古屋 鶴舞にある国内最大級のオープンイノベーション1拠点です。
スタートアップ企業の創出育成およびオープンイノベーションの促進を目的に様々な支援サービスを提供しています。500社を超える国内外のスタートアップ企業、パートナー企業、VC等の支援機関や大学等がSTATION Aiに参画し新規事業創出に取り組んでいます。
また、STATION Aiには、スタートアップをはじめとする新規事業創出に取り組む人々のためのオフィス、フィットネスジム、テックラボに加え、一般の方も利用可能なカフェ・レストラン、ホテル、イベントスペース、あいち創業館が併設されています。
日本経済を牽引する産業の集積地である愛知・東海エリアの既存産業と新規事業の融合させ、新たな価値を生み出すハブとなることを目指します。
引用:STATION Ai Webサイトより(https://stationai.co.jp/stationai)
JR鶴舞駅から徒歩8分程度で会場へ到着。地上7階建て、延べ床面積は約2.3万㎡。愛知県が総工費150億円あまりをかけた国内最大規模のスタートアップ支援拠点です。施設の1~2階は一般の方が利用できるイベントスペースやレストラン、7階には宿泊施設などが入り、3階~6階はスタートアップなどが活用する会員ゾーンになっています。
我々は11月2日(土)のオープニングイベントに参加。この日は学生の方や家族連れなど、一般の方が多く来場されていました。10月31日(木)と11月1日(金)はビジネスマンが約2000名来場。イベント会場に空席がないほど混み合っていたといいます。
STATION Ai、現地見学で見えた【7つの特徴】
STATION Ai株式会社 経営企画部 部長の有賀さんに施設を案内いただき、お話をうかがいました。
【その1】一般の方が「創業」「起業」に触れられる機会をつくる
建物の1~2階までは一般の方にも開かれており、公共施設としての側面があります。2階には、50人近く収容できる開放感あるフリースペースが開放されています。
施設2階にある、愛知県にゆかりのある企業についてたのしく学べる「あいち創業館」を訪ねてみました。SFのような未来的なデザインです。タッチをすると映像が動いたり、クイズに答えられる仕掛けがあるため、大人はもちろん子供も楽しめます。他言語に切り替えられる対応もされていました。社会科見学など教育の場面にも良いですね。起業・事業を始めるとはどういうことなのかを知るきっかけづくりの場になります。
【その2】横の吹き抜けがつながりをつくる。M◯階があるのはなぜ?
全てのフロアがスロープでつながる構造になっていて壁がなく、入居している方々はもちろん一般の方々も含めて交流しやすいようにつくられています。
有賀さん:「M◯階2を設けています。別のフロアや隣のスペースにいる方が、何をしているのか見えるようにしています。これも交流、オープンイノベーションを生み出す仕掛けです。全階層につながっているスロープも『横の吹き抜け』を意識しています」
M4の表示。つまり「中4階」、3階と4階の間のフロアです
ほかの階で行われている楽しそうなイベントの声も吹き抜けを通して聞こえてきます。天井は高くはありませんが、天井板を抜くことで圧迫感が軽減されつつ、スタイリッシュな印象を受けます。
気になったのは、企業エリアには半個室の薄いカーテンで区切られたスペースがあったこと。こちらにも理由があるのでしょうか。
有賀さん:「交流のため、区切りを設けていません。もちろん、密閉されたセキュリティの高い会議室も用意しています。ご安心ください」
有賀さん:「企業側が自社の課題をピッチ、スタートアップが技術やアイディアを使ってマッチングできる『リバースピッチ』の取り組みもしています。当然、私たちがその間に入り何らかのきっかけづくりをすることが求められますが、理想は入居者同士で自然に交流してもらいたい。会話の中でアイディアが生まれる状態をつくれれば、コミュニティとしては成功です」
【その3】未来はすぐそこ、ロボットにもフレンドリー
デジタルサイネージを搭載したロボット、床掃除用のロボットなど、大きく3台のロボットが館内を巡ります。施設全体をロボットフレンドリーにして、ロボットの実証実験の場にもなるといいます。ロボットと共生する近未来ではこのような設計の建物が増えるのかもしれません。ロボットに優しい空間はバリアフリーで人にも優しい空間にもなりそうです。
有賀さん:「一般的なビルにロボットフレンドリー3を取り入れようとしても、充電スポットや、階層の移動のためのエレベーターとの連携、自動ドアが反応しないなどの問題があります。ビルを建てる当初からスロープなどの設計をしているため、ロボットフレンドリーが実現しています」
【その4】日本を代表する企業群の面々
プラチナムスポンサーには、株式会社アオキスーパー、株式会社十六フィナンシャルグループ、ソフトバンク株式会社、東海東京証券株式会社、トヨタ自動車株式会社、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行(SMBC)、株式会社三菱UFJ銀行 (五十音順)。
誰しも聞いたことがあるだろう企業名がずらり。41社のスポンサーのうちプレミアムスポンサーの8社のロゴです。レストランから2階を見上げると見つけられます。
50を超えるお祝いの花が贈られていました。この施設への期待が高い証拠ですね。
【その5】成長をスタートアップと共に。”異彩作家”から生まれる壁面アートの数々
スタートアップ企業「株式会社ヘラルボニー」の作品が施設のあちこちに見られます。2018年に岩手県盛岡で創業したヘラルボニーは、国内外のおもに知的障害をもつ作家とライセンス契約を結び、そのアートをさまざまなモノ・コトに落とし込んで、社会に届けている企業です。彼ら作家を”異彩”のある作家としてライセンス事業を展開しています。
株式会社ヘラルボニー Webサイト(https://www.heralbony.jp/about/story)
1階から2階へ向かうスロープの壁面で、早速アートがお出迎え。名古屋をイメージした作品たちです。何をテーマにしたものだろうと考えながら楽しむのもいいですね。
「異彩を、放て。」をミッションに掲げ、国内外の主に知的障害のある作家の描くアートデータのライセンスを管理し、さまざまなビジネスへ展開することで、新たな文化の創出を目指すスタートアップ企業「ヘラルボニー」と、その契約作家であるやまなみ工房在籍「大路 裕也」と共に、彼独自の視点で描かれた「名古屋」にまつわる7つのテーマと、人・動物・自然など「まち」を彩るモチーフを組み合わせ、アートで表現した。
企業の次なる成長を、スタートアップと共に。
引用:壁面アート作品の説明
有賀さん:「アートは、ビジネスにインスピレーションを与えるものだと考えています。また起業やビジネスに限らず、挑戦する人を応援する施設にしたいという思いをあらわすものでもあります」
施設の建設・運営には多くのスタートアップが携わっています。デジタルツインプラットフォームの「株式会社Liberaware(リベラウェア)」、DXを用いた次世代宿泊施設運営「株式会社SQUEEZE(スクイーズ)」、植物廃棄物から生まれたサステナブルな家具プロダクトを設置する「式会社Spacewasp(スペースワスプ)」などです。
実際にスタートアップの技術を活かしたプロダクトをいくつかご紹介します。
【その6】正解はないからこそ、”カッチリ”つくらない
この木のボックスは、決まった使い方はありません。パズルのように組み合わせられ、机や椅子といった様々な使い方ができます。「正解はないからこそカッチリつくらない」というコンセプトであると教えていただきました。
一見カフェを思わせるような入口。実は喫煙所です。しかし、ただの喫煙所ではありません。
CDラックが用意されており、好きな音楽をチョイスして聴くことができます。中山美穂や、工藤静香、WINKさらにはマライア・キャリーなどどこか懐かしいラインナップ。見学に来られた方は、ここで1時間ほど立ち止まってしまうこともあるようです笑
ただの床? いいえ、こちらにも仕掛けがあります。
カーペットの模様は、STATION Aiをモールス信号にしたものだそう。子供の頃の”遊びごころ”を思い出せそうです。正解はない、まずはやってみれば良い、そこから挑戦や事業がスタートするというメッセージをもらえた気がします。
【その7】岡谷鋼機名古屋公会堂(名古屋市公会堂)が目の前に!鶴舞公園を目の前にした開放的なテラス
目の前に鶴舞公園の緑が広がる屋外テラス。見晴らしが良く気持ちがいいです。こちらで有賀さんにお話を伺いました。
—広報としてはどのあたりに力を入れていきたいですか?
ビジネスをする方にとってのブランド、一般の方々含め発信するブランドの両軸があると考えています。この施設の魅力について、STATION Aiのブランドとコンセプトを伝えていければと思います。
■Editor’s note 取材をおえて
STATION Aiの取材を通じて、オープンイノベーションの推進と新規事業の創出に向けた環境がいかに重要かを実感しました。施設内には、自然な交流が生まれやすい設計が施されています。一般の方や、会員企業、スタートアップがフラットに意見交換できる空間が整えられています。「自然に交流が生まれ新しいビジネスが誕生すれば、コミュニティとしては成功」の有賀さんの言葉が、まさにコンセプトを象徴していると思いました。施設やコミュニティを運営に携わる方々にとっても、STATION Aiの取り組みは参考になることばかりではないでしょうか。
ベンチャーやスタートアップが不毛の地と言われた過去もある愛知・名古屋。近年はスタートアップの活躍も目立ち、STATION Aiができたからには、「あの会社もSTATION Aiにいる」「実はSTATION Aiから始まった」ということがあちこちで聞かれ、名古屋がスタートアップの聖地となる日が来るのではと楽しみになりました。
STATION Ai についてのプレスリリースはこちら