【レポート】西日本最大級のボードゲームイベント「Board Game Business Expo Japan2025(BGBE2025)」ビジネスとして無限の可能性を感じるボードゲームの豊かな世界
1月18日・19日にインテックス大阪で開催された「Board Game Business Expo Japan2025(BGBE2025)」。2回目となる本イベントを取材し、ビジネスとしてのボードゲームの可能性、MICEイベントとしての可能性を探ってきました。長い記事ですので、お茶などご用意いただき、ごゆっくりお読みください。
次のような方には特におすすめです。
・エンタメ分野のビジネスイベント、どんなものか知りたい
・アナログゲームのビジネスの可能性を知りたい
・大人が夢中になる、今どきのボードゲームとはどんなもの?
・これまでにない分野のMICEイベントの成功例を覗いてみたい
開催概要:BGBE2025は国際交流の舞台にもなる、ボードゲームの販売とビジネス交流ができる日本初のイベント
名称:「Board Game Business Expo Japan2025」(BGBE2025)※ボドゲエキスポ
開催日時 :2025年 1月18日(土)12:00~17:00
2025年 1月19日(日)13:00~17:00
会場:インテックス大阪1号館
主催:株式会社ReAkku/フリースタイルクリエーション/妄想ゲームズ☆
後援:公益財団法人 大阪観光局
出展数(予定):300ブース
公式Webサイト: https://www.bgbe-j.com/
来場者数(主催者提供)
1日目:5826人 2日目:3909人
合計:9735人
【キーワード】ボードゲームについて
さて、ここで「ボードゲームとは?」という基本的な部分にも触れておきましょう。ボードゲームの市場は大きく、歴史のあるものです。将棋や麻雀、トランプ、人狼ゲーム、すごろくといったものであれば、普段から遊んでいる方も多いのでは。UNO、モノポリー、人生ゲームなどは定番になっていますね。ビデオゲーム(コンピュータゲーム)にも「桃太郎電鉄」「いただきストリート」「Civilization」シリーズのようにボードゲームの要素をモチーフにした人気作品があります。
急成長するボードゲーム市場:研修ツールとして活用されることも
ボードゲーム市場は世界的に拡大しており、2024年の市場規模は約143億7,000万米ドル(FortuneBusinessInsightsより)、2032年までに320億米ドルへ成長すると予測されています。日本でもボードゲームカフェの増加やクラウドファンディングによる新作登場が市場の活性化を後押しし、プレイ人口の増加が続いています。背景には「デジタル疲れ」からのアナログゲーム回帰やSNSでの拡散、コロナ禍の「おうち時間」需要があり、企業や教育機関の研修ツールとしての導入も進んでいます。特に、マーダーミステリーやTRPG(テーブルトークRPG)といったテーブルトップゲームが人気を集め、YouTubeやTwitchでの配信を通じて新たなファン層が拡大中です。
ボードゲームにはどんなものがあるの?多様なジャンル、遊び方も色々
ボードゲームとは、物理的なコンポーネント(ボード、カード、駒、サイコロなど)を使用し、ルールに従って複数人でプレイするアナログゲーム全般を指します。一般的には「盤上でプレイするもの」とされますが、必ずしもボードを使わないものも含めて「ボードゲーム」と広義で捉えられることが増えています。
ボードゲームにはさまざまなジャンルがあります。クラシックゲームには、チェス、将棋、囲碁、トランプなど、昔から親しまれる定番が揃います。ドイツゲーム(ユーロゲーム)は、カタン、カルカソンヌなど戦略性が高く、じっくり遊べるのが特徴です。アメリカンボードゲームでは、協力型のパンデミックや、ホラー要素のあるアーカムホラーが人気。マーダーミステリーは人狼ゲームや九頭竜館の殺人のように、推理とロールプレイを楽しむ体験型ゲームです。TRPG(テーブルトークRPG)は、クトゥルフ神話TRPGやダンジョンズ&ドラゴンズなど、自由に物語を進めるゲーム。カードゲームには、UNO、ポケモンカード、マジック:ザ・ギャザリングなど、手軽に遊べるものが多くあります。パーティーゲームは人狼ゲーム、ディクシットなど、大人数で盛り上がるものが豊富です。
いざ突撃!BGBEのワクワクポイントを3つにまとめました
1)遊べる、体験できる!その場で買えてワクワク
ゲームのクリエイターの多くは個人や小さな団体の方です。テーブルに制作したゲームたちを所狭しと並べています。ひとつひとつ見ていくのは、まるで宝探しのようでワクワクします。同人と侮るなかれ、市販のゲームと変わらないクオリティと、ユニークなアイデアであふれています。
丁寧に作られたゲームのアートワークはとても美しく、クールなものから可愛いものまで目でも楽しめます。コレクションしたくなる気持ちがわかり過ぎます。もちろん、その場で気になったゲームは購入できます。人気のゲームは初日に完売になってしまうものもあるそうです。お目当てがある方は勝負は初日ですね。
2)クリエイターと!海外の方と交流ができてワクワク
ブースの多くにはゲームのクリエイターがいらっしゃいます。どんな思いで作ったのか、どんなルールなのか、本当に丁寧に熱心に教えていただけます。自分たちの作ったゲームを知ってほしい、という気持ちが伝わってきて、セールスされているわけではないのに、すぐに買ってしまいそうになります。自分が買うもの・遊ぶものを誰が作っているのかがわかるというのは貴重な機会です。
海外から出展されている方も多く、ゲームの楽しさ、面白さを通じて交流ができるのも魅力です。
3)ビジネスタイムで業界の発展につながってワクワク
イベントでは一般の方が入場できないビジネスタイムが設けられているのが特徴。ボードゲームイベントではこういった取り組みは国内でBGBEが初めて。出展者同士の交流、海外のクリエイターとの交流が促進される場として貴重な機会となっています。ゲームのクリエイターだけではなく、彼らを支える事業者もブースを並べていて、会場のあちこちで名刺交換や意見交換が行われていました。
これだけ多くのブースが並びます。ひとつひとつ見ていくことで、お気に入りのゲームにきっと出会えます
紹介しきれないのが悔しい‥!お話を伺った多くの個性的なクリエイターさんとゲームたちをご紹介
計陣事務所:タワー式麻雀?「タワマン」のネーミングも一度聞いたら忘れない
ジェンガのような見た目ですが、これが麻雀でいうところの「山」になります。「タワマン」はタワー式の麻雀のようなゲームです。崩さないように気をつけながらひとつ抜き取り、自分の手札にして、役を作っていく。手札を捨てるときは河ではなく山の上に戻します。アナログゲームならではの感覚を楽しめるゲームです。カードやボードやサイコロ(ダイス)を使うものだけがボードゲームではない!と初っ端からガツンとパンチを食らったような感覚でした。
X アカウント https://x.com/KeijinOffice
日本机戦連盟:ついていける人にはたまらない「架空世界」の作り込み
お隣には架空世界創作者「えすわい」さん、どこかで見たことのありそうな文字が並んでいますが、これらはすべて「創作」です。
言語を創作して、その文化も創作して、その文化で楽しまれている遊びという作り込んだ設定のゲームを出品されていました。ゲームのお話よりも、創作される世界観の話が面白くて、ゲームのお話はあまり聞けていませんでしたが、アプローチがとてもユニークで興味を惹かれました。着ている服から、話す言葉や名刺まで徹底的に作り込んでいる様子に「指輪物語」のJ・R・R・トールキンを思い出します。
X アカウント https://x.com/cet2kaik
雅ゲームス:天体を体験する。天文学会でも大評判の重量級ゲーム
満天の星空のようなボードが目を引いていたのが雅ゲームスさんのブース。星の一生をテーマにした「Star Formation BoardGame」。壮大なスケールのゲームは、天文を研究されている先生方にも大好評とのこと。ブースでは普段はプラネタリウムにお勤めのアストロコミュニケーター三浦さんがゲームの魅力を熱心に教えて下さいました。普段は他のお仕事に携わられている方が、ブースに立っているというのが、一般的なビジネスの展示会と違います。三浦さんに限らず、どのブースの方も個性的で熱量に圧倒されっぱなしでした。
また、2,000円から利用できるボードゲーム撮影プランというサービスを展開されていました。ゲームをよりきれいに見せたいというときにプロの撮影が必要になるかもしれません。BGBEではこういったビジネスの芽が様々なところに見られます。
X アカウント https://x.com/MiyabiGames
Im Karton:旅行者目線の海外アナログゲームイベント旅行ガイド
海外では20万人以上の来場者を集める大規模なアナログゲームのイベントが開催されています。それらのイベントに実際に参加し、とても詳細なガイド本にされているのがIm Kartonさんです。「行くことはできないから、これを買って行ったつもりになる」とお買い上げになる方もいるそうです。拝見しましたが、とても細かく丁寧な内容で、展示会のレポートとしても素晴らしいものです。いずれ世界のイベントで出展したいという方にも参考になりそうなものでした。
X アカウント https://x.com/im_karton
Design crew racde:お米に見えるひらがな?隅々まで和の美しさが宿るゲーム
遠目には枡に入ったお米?でしたが、近寄ってみると、それらは精巧なつくりの「かな」文字でした。「かなあつめ」はかな文字をお箸で持って並べて、言葉を作る遊びです。5文字以上、動物の名前といった具合に自分たちでルールを決めて文字並べをして言葉を作っていきます。ルール上、迷い箸、刺し箸のようなお箸使いの不作法はご法度。遊ぶことでお箸使いの勉強にもなりそうです。
京都を拠点に活動するracdeのおふたりは日頃、デザイナーとしてお仕事をされているそうです。隅々にまでデザインの精神が宿った美しさがあり、インテリアショップや百貨店の店頭に置かれていそうです。外国の方や日本文化に関心がある方にも、受けそうなゲームでした。こういったイベントから、どこかのバイヤーさんの目に止まって店頭にといったストーリーが生まれてくる、といった可能性を感じました。
X アカウント https://x.com/racda_
滋賀パビリオン「たのし~が」:地元商工会議所のサポートあり。滋賀から発信する地域合同ブース
「滋賀パビリオン」は滋賀県の長浜市や野洲市などでボードゲーム制作をされているサークル(RESPAWN、アソビ舎、ケンチャンヌ、ツマヤ)の合同出展ブースです。ボードゲームカフェの運営の傍ら、ゲーム制作をされている方もいらっしゃいます。
ブースには他には長浜商工会議所の職員の方の姿が。商工会議所がこのような分野の出展をサポートしているというのはとても珍しいため驚きました。ソフト産業を盛り上げるべく、こんな支援は全国でいくらあってもいいですね。
Xアカウント https://x.com/tanoshiga
株式会社バーチャルパーティー:VRアナログゲームの体験
VRとボードゲームはとても相性がよいものです。離れた相手とテーブルを囲むことができるのは、遊ぶ仲間となかなか集まれない大人にとってはうれしいことでしょう。会場ではVRゴーグルをつけて体験されている様子を見ることができました。
ブースではVtuberのグリーティングイベントも行われていました。アナログゲームのイベントの中、デジタルなブースがあるのが不思議な感じでした。
会社Webサイト https://virtualparty.jp/
HEY!:国旗を使った誰にでも楽しめるカードゲーム。販売多数の人気タイトルで遊んでみる
大阪で活動をされているボードゲーム制作チーム位。「国旗王(こっきんぐ)」は国旗が並ぶ華やかなパッケージで、ブースでの試遊をされている方もいて、会場でも目立っていました。
王様の姿の制作者さんと遊んで勝つといいことがある、ということで我々は2名で挑みましたがあえなく敗戦…。
国旗の裏には人口や面積といった様々なデータが記載されています。お題のカードに従って国旗だけでどれが「面積が大きいか」「国名が長いのかどれか」と考えるゲームです。カードを出す順序や相手のカードを見ての判断の要素もあり、データを知っているだけでは勝てないというゲームとしてちゃんと面白いのが素晴らしい。幅広い年齢の方、ボードゲームに慣れていない方にも楽しく遊べそう。調べてみると発売9ヶ月で3500個も販売された人気タイトルとのこと。キャッチーなネーミング、デザイン、わかりやすいゲーム性などヒット商品の要素が備わっています、納得。
うちのメンバーの勉強にもなりそうなのでしっかり1個購入しました。会社にボードゲームがあるの、いいと思いますよ。
X アカウント https://x.com/h_e_y_team
株式会社MIRISE(ミライズ):福祉のためのボードゲーム。ボードゲームが就労困難な方の未来を切り拓く
こちらのブースはBOARD GAME BUSINESS EXPO JAPAN代表の高橋さんにご紹介いただきました。京都のMIRISEさんが運営されている「ALBUM」は就労支援事業所です。「働きたくても働けない人に働ける環境を。」を理念に、たとえば病気や障害がある就労困難な方の雇用創出・就労支援をされています。
所長の小島さんから「ボードゲームや動画制作、デザインのお仕事を、お勤めの方のそれぞれのできることを活かして、担当していただいている」とお聞きしました。ボードゲームが持つ可能性のひとつを教えていただきました。
会社Webサイト https://mirise-album.com/
TANSAN:1プレイ120日以上…どんなゲーム?
京都のボードゲーム制作会社さんです。ご紹介いただいたのは1プレイに120日もかかるというゲーム。変わり種のゲームに多く出会えるBGBEでも1プレイの時間でいえば突き抜けた存在でした。どんなゲームなのか気になる方はぜひプレイをということでしたので、ますますどんなゲームなのか気になってしまいますね。
会社Webサイト https://tansan.co/
OBOtto:飾っておきたいほどの素敵デザインのカードたち
OBOtto(おぼっと)さんはゲームのアートデザイナー。展示されていたオープンワールドカードゲーム「OCTOPAS QUEST」…よりも黒ずくめのウサギ姿の印象が強すぎました。とにかくカードのデザインがキュートでラブリィで、これはRPG、ファンタジーファンにはたまりません。ちなみにタコが主人公なので8本の腕に装備ができるそうです。
こんなカードなら遊ぶだけではなく、飾っておきたいなと思います。アートワークが素晴らしいゲームは商品力も高いだろうなと想像ができます。
X アカウント https://x.com/OBOtto_
ゆるキャラとの交流もしっかりめに可能です
秋葉原出身のコツメカワウソの妖精「ちぃたん☆」は秋葉原観光推進協会公式キャラクター。編集長の会いたいキャラランク上位だったようで、かなりのはしゃぎよう。私が名刺交換して「社長」だと名乗ると、とても丁寧な対応をしてくれたちぃたん☆。お子さんにも大人気でした。
こちらは「すたぴ」。ボードゲーム専用マッチングアプリ「ボドゲゴー」のキャラクター。ボードゲームで遊ぶ相手を探す、そんなニーズもビジネスにつながります。
ボドゲゴー Webサイト https://bodogego.net/
MICEメシもウマウマ。グルメとボドゲは相性◎なのです
来場者が一日楽しめるようにと、キッチンカーコーナーは力を入れているそうです。地元大阪の味をはじめ、人気のシマウマバーガーさんなど6台が勢揃い。私たちは豚丼と焼きそばとコロッケをしっかりいただきました。
ボードゲームはみんなでワイワイと楽しみながらお菓子やお茶を楽しめますから、グルメとの相性はぴったりです。イギリスのサンドイッチ伯爵がカードゲームを楽しみながら食べられるものをと、サンドイッチをオーダーしたとかしないとか、そんな話も有名ですね。(諸説あり)
【インタビュー】主催者にお聞きしました!(後日公開予定)
BOARD GAME BUSINESS EXPO JAPAN 代表 高橋宏佳さんにたっぷりお話を伺いました。
ボリュームがあるので、こちらは後日公開の別記事といたします。
お楽しみに!(2月公開予定です)
取材を終えて「Editor’s note」:よいイベントは出展者・主催者、そして来場者がいて盛り上がる。BGBEはまぶしいイベントでした
MICEについて「MICEって何?食べられるの?」(これダブルミーニング)、「もっとMICEの地位向上、認知度アップに努めてくださいね」なんてMICEをご存知ない方にしばしば言われるのですが、そんなことどうでもいいのです。私たちがやりたいのはそんなことではありません。
熱い思いをもって、アナログゲームの分野で世界の大きな展示会に匹敵するイベントに育てようという方や、これだけの同人の方がいる世界があって、豊かな可能性につながっているということを、少しでも多くの方に知っていただくお手伝いができればいいのです。
面白そうなイベントがあるから行ってみたくなるのです。それをMICEと呼ぶかどうかは問題ではありません。きっと出展されている方も、主催されている方も「何をボードゲームと呼ぶか」に興味がないだろうと思います。
これまでの出展・取材の経験から、いいイベントは「出展者の思いと、主催者の思いが高次元でマッチングしている」ものだと確信しています。そこに熱心な来場者がいて、人が集まって盛り上がるわけですね。
来場者がいなくて閑古鳥なイベントも残念ながら少なくありません。出展者がどんな思いでいるか、主催者にはもっと真剣に向き合っていただきたいです。とにかくブースにいて惨めなんです。経営者・出展者として幾度となく経験していますので、ここは偉そうに申し上げます。BGBEは大切なお金を払って出展する個人やサークル、企業の期待を裏切らない、イベントとして運営されているのが何よりまぶしかったです。関係者がみんな幸せになれる。
あと、私が声を大にして言いたいのは「MICEや展示会メディアでこれだけいっぱいアナログゲーム見て、遊んだのはうちだけやろ?」ってことだけですね。来年はもっともっとボードゲームについて詳しくなって帰ってきます。個人的にはゲームも作ってみたいですね。絶対面白いに決まってます。
最後にとっておきの情報!
次回開催日、決定!2026年 1月31日(土)2月1日(日)です。