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イベントの取材・レポート

【レポート】京都モビリティ会議2024 イチョウ色づく京都・東本願寺前に次世代のクルマがズラリ・明日のクルマを考えます

京都・東本願寺門前広場でクルマ関連イベント「京都モビリティ会議2024」が開催されました。国内自動車メーカー各社のブースでは未来を感じさせるクルマを展示、ステージでは「次世代モビリティ」がテーマのトークセッションが展開されました。
東本願寺前の広場がユニークベニューとしてイベントに使われている様子もお伝えします。


出典:プレスリリースより

京都モビリティ会議2024 とは

自動車情報専門メディア『ベストカー』および『ベストカーWeb』(講談社ビーシー発行)は、2024年12月7日(土)、東本願寺緑地広場「お東さん広場」(京都府京都市)にて「京都モビリティ会議」を初めて開催します。自動車メーカー、自治体、若者、メディアが、「モビリティの未来」について語り合うイベントです。

ベストカーWebの発表より

開催概要

名称:京都モビリティ会議2024
会期:2024年12月7日(土)9:00~17:00 
会場:東本願寺緑地広場「お東さん広場」 (京都府京都市下京区常葉町他)
主催:株式会社講談社ビーシー 
後援:京都府、京都市
協賛:トヨタ自動車、レクサスインターナショナル、日産自動車、本田技研工業、マツダ、三菱自動車
協力:一般社団法人 公共事業研究開発


広場に並ぶブースを訪ねてみましょう

京都府および自動車メーカー各社のブースが広場に並びます。京都駅から徒歩5分ほどの東本願寺。観光客や市民が多く通る屋外でこういったイベントが開催されているのは新鮮な光景でした。

奥がekクロスEV、手前がアウトランダーPHEV

三菱自動車:PHEV・普段使いならGSでの給油は年に数回

展示されていたプラグインハイブリッド(以下PHEV)の「アウトランダー」。PHEVとはハイブリッド車に外部充電機能を追加したものです。自宅や旅先で充電でき、電気自動車(EV)とハイブリッド車(HEV)の両方の特徴を備えています。
ブースで担当者に「EVだけで100キロは走れるので、普段使いならほとんどガソリンスタンドに行かなくてもいい。自分も乗っているが年に5・6回しかガソリンスタンドに行かない」とお話いただきました。ユーザーの8割は3列シートを選んでいるそうです。隣に並んでいる軽自動車のEV「ekクロス」は後部座席がスライドする仕組みが自慢です。こういったモデルのクルマでも使いやすさを重視して開発されていることがうかがえます。
また、三菱が得意とする四輪駆動の技術とトルクの反応が早いEVは相性がよいとのことです。従来の技術がこんなところで活きてくるというのが面白いですね。

レクサス:ぐるぐる回さなくていい。LEXUS初となるステアバイワイヤ

レクサス(LEXUS)初のBEV「RZ」のスポーツモデルの展示されていました。BEVとは「Battery Electric Vehicle」のこと。バッテリー式の電気自動車です。バッテリーに電気を貯めて、モーターを駆動させて走行します。
展示車にはLEXUS初となるステアバイワイヤのステアリング(ハンドル)が搭載されていました。ステアリングの切れ角を電気信号で伝え、直接タイヤを動かす仕組みです。ハンドルを切る量が少なくなり、高度な制御も可能になります。ぐるぐるとハンドルを回さくても、手首と腕を少し動かすだけでいい。まるでゲーム機のコントローラーのようなステアリング、どのようなフィーリングなのか気になります。

トヨタ:燃料電池自動車のカットモデル

燃料電池自動車(FCEV)「MIRAI」のカットモデルがインパクト抜群。燃料電池自動車の仕組みがひとめでわかるようになっていました。FCEVでは水素と酸素を化学反応させて電気をつくります。5.6kgの水素燃料を搭載でき、800kmもの航続距離を誇ります。水素の充てん時間はわずか3分。見慣れた車体に大きな高圧水素タンクとモーターが収まっているのはなんとも不思議です。
(運転時の)「フィーリングをよくする」ことを大切にされているというお話が印象的でした。

日産:EVのパイオニア的存在の日産はEVモデルを2台展示

2010年に初代EV「リーフ」を発売し、日産はEVではパイオニア的な存在。並んでいたのは軽自動車のBEV「サクラ」とクロスオーバーSUVのBEV「日産 アリア」。サクラは「走る蓄電池」として、貯めた電気を家庭で使えることがわかるようにパネル展示されていました。アリアはNISMOのパーツが格好良く、スポーティなイメージを演出しているモデルでした。

車体から給電している様子

ホンダ:充電可能なプラグイン機能をもつ燃料電池自動車

2024年7月発売されたばかりの「CR-V e:FCEV」。燃料電池自動車ですが外部から充電可能なプラグイン機能を持っているのが特徴です。水素ステーションがまだまだ少ない中、家庭で充電して走らせることができることで、普段使いの不安や不便さを解消できます。充電だけでも約61Km走行可能ですから、近所へのちょっとしたお出かけなら充電だけでも足りてしまいそうです。


また、自治体向けや業務用途を想定した大型の外部バッテリーに給電できる仕組みも展示。従来の発電機に比べると音が小さく、振動や臭いも気にならないため、イベント会場や避難所などでの活用に適しているということでした。

編集長 藤井と初代ロードスター。車体のコンパクトさがよくわかります

マツダ:誕生から35年のロードスター「長く愛されることはウェルビーイング」

まず目を引いたのは鮮やかなブルーの「ユーノス・ロードスター」。登場から35年になる、ライトウェイトスポーツカーの代名詞のようなオープンカーです。次世代のエコカーが多く並ぶ中で異彩を放っていました。
ロードスター大好きな私としては、なぜここにロードスターがあるのか聞かないわけにはいきません。マツダの田中さん(国内商品マーケティング部)にお話をお聞きしました。

「同じ車に長く乗っていただくことも大切なことだと考えている。長く乗るほど、オーナーにとっての価値が高くなっていく。フェラーリは生産された台数の9割が現存していると聞く。メーカーとしてロードスターのレストア(自動車をきれいに蘇らせること)も引き受けている。レストア費用は安くはないが、長く愛していただけることはメーカーとしてもうれしい。
すでにパーツがないので、あらたに生産できるようにもした。それにより、オーナーに長く乗っていただけるようにもなる。ロードスターには多くの愛好家がいて、この車に乗ることでその仲間になることができるにも価値になる。そのことはウェルビーイングにつながるのではないか」

毎年、軽井沢で開かれるオーナーが集うイベントは参加するのに抽選になるほどの人気だそうです。最新の技術によるエコカーが環境面での貢献は高いのは確かですが、ウェルビーイングの観点からは、長く同じ車に乗るというクルマとの付き合い方ももっと注目されていいと思います。

マツダ MX-30 ロータリーEVのエンジンルーム。ユニットがコンパクトなのが特徴的

もちろん、マツダでは最新の技術の開発も進めています。マツダの象徴ともいえる「ロータリーエンジン」。そのロータリーエンジンとEVを組み合わせたREVを搭載する「MX-30 ロータリーEV」もユニークな魅力あるモデルです。ロータリーエンジンの技術を組み合わせたエンジンユニットはコンパクト。ロータリーエンジンは駆動用バッテリーの充電のために働きます。自社の技術を活かしたこの新しいエンジンは「2024-2025 日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会特別賞」を受賞しました。

PUES自動運転車両(BEV):どっちが前?運転席が見当たらない自動運転車両

独特のフォルムの自動運転車両が多くの人の足を止めていました。株式会社ピューズの次世代自動運転車両です。2025年以降の公道で走行できるモデルも準備されているとのことで、乗れる機会が訪れる日も近いかもしれません。

株式会社ピューズ https://www.pues.co.jp/jp/

京都府産業創造リーディングゾーン:京都府各地に産業を誘致する取り組みを紹介

「産業創造リーディングゾーン」は西脇知事のお話の中でも紹介されていました。世界的な課題や関心があるテーマを掲げ、それに沿った産業を誘致することにより、世界からも人材や資金を集めようという取り組みです。京都府全体に様々なゾーンが設定されています。たとえば映画発祥の地・太秦は、クロスメディア産業。大山崎にはアート&テクノロジーヴィレッジ(AVTK)が開設されました。日本最大の絹織物の産地の丹後地域は、シルクテキスタイル産業の集積を目指しています。

京都府産業創造リーディングゾーン Webサイト
https://leading-zone.kyoto/

■各社のブースを一気見して、見えたこと
これまでに培った各社の技術と、新しい技術が組み合わされることで、ユニークで実用的なモデルが次々と生まれていることが見えてきました。単にエコ性能が高いということだけでは差別化が難しくなっています。これからさらに普及していくためには日常での便利さ・使いやすさが重要になっていくのでしょう。単なる移動手段・運搬手段だけではなく、乗って楽しい、ワクワクする、といったことも各社が開発において大切にされているのが印象的です。


メーカー、自治体、学生、メディアが「モビリティの未来」を語るトークセッション

世代&業界を超えた関係者・有識者によるトークセッションを開催。9時から行われたトークセッションから内容を一部ご紹介します。(担当:藤井)

京都府『「EV(電気自動車)」と「自動運転」の次世代社会に向けた京都府の取り組み』

参加された方:西脇隆俊(京都府知事)、東田悠希(同志社大学院生)、寺崎彰吾(ベストカー編集局長)

京都府における自動運転取り組み
西脇知事より『ZET-valley構想』『自動運転』についてお話がありました。

西脇さん:「脱炭素社会の実現に向けて、脱炭素テクノロジー(ZET:Zero Emission Technology)関連スタートアップ企業等が集積し、まちづくりへの技術導入等を促進する拠点『ZET-valley』の形成を推進しています。2050年までにカーボンニュートラル社会を目指し、脱炭素テクノロジーをもつ産業を支援すること、そしてテクノロジーを実装したまちづくり構想の、両方を掲げています。
京都と聞いて、自動車産業を連想される方は意外と少ないです。しかしモーターのニデック、バッテリーのGSユアサ、ニチコン、それからロームなど、世界的に競争力を持つEV関連の産業の企業が集積しています。
大学のまちと言われているように、最先端の研究成果が多く出ており、ものづくりスタートアップ企業も輩出。ZET-valley構想はその強みを生かして産業振興に繋げようというのです」
「京都の南部、大阪と奈良にまたがる『けいはんな学研都市』で2018年から公道の走行実証実験を行っております(通称K-PEP)」

東田さんからは大学院での研究テーマ「自動運転における車の通信とプライバシー」について課題が提示されました。

東田さん:「自動運転では、自分の車のセンサーだけでは見えない死角が発生します。他の車のセンサーや位置情報を通信することで、安全性を向上させることができますが、その情報をハッカーなどが悪用し、プライバシー侵害の懸念問題発展の危険性もあります。悪用されない対策について研究しています」

寺崎さん:「非常に興味深いです。安全面に役立つと思います。交差点で見えない位置から来る相手に対し、知ることができれば止まれますよね。その場合は自分の存在を知らせないといけない。しかし、プライバシーは知られてはいけないという、二律背反なんですね」

西脇知事:「義務付けるかどうかの話になると思います。義務付けないと完全な安全が確保されません。実用化して法制化するときには課題になると思います」

社会とEVのかかわり

西脇知事:「京都府では急速充電器の設置を促進しています。また、日産自動車と京都府タクシー協会加盟3社と共同で、日産『サクラ』のタクシー使用『SAKURA EV TAXI』を走らせました」
「また『ZET-valley構想』の一環として、向日市で2025年2月4日〜5日に『ZET-summit2025』が行われます。

東田さん:「車が通信だけではなく、エネルギー面でも繋がれることは、地震大国である日本でも安心できる要素の1つになりますね」

【トークセッションタイムスケジュール】
9:15~9:50 京都府『「EV」と「自動運転」の次世代社会に向けた京都府の取り組み』
西脇隆俊 京都府知事が登壇
10:00~10:50 トヨタ『「伝統と挑戦」になぜ水素? 水素駆動とモビリティの「楽しさ」』
11:00~11:50 マツダ『マツダの考える環境とスポーツカー、ロータリーの過去、現在、未来』
13:00~13:50 日産『軽BEV(SAKURA)による電気自動車普及促進と走る蓄電池としての活用』
14:00~14:50 レクサス『レクサス流の電動化に向けた取り組み』
15:00~15:50 三菱自動車『PHEVの進化と可能性、災害時「給電」の重要性と意義』
16:00~16:50 ホンダ『水素社会実現のための課題と新型SUVのわくわくする未来』

東本願寺前の広場がユニークベニューに

東本願寺は浄土真宗「真宗大谷派」の本山、正式名称は「真宗本廟」。京都のひとには「お東さん」として親しまれています。重要文化財である御影堂門は木造建築の山門としては世界最大級で、木造建築の二重門としては、日本一の高さです。京都駅から北に伸びる烏丸通に面して広場が整備されました。フリーマーケットやマルシェのようなイベントだけではなく、京都モビリティ会議のようなイベントも開催されるようになりました。
京都に長く暮らす方に、こんなイベントをやっていると伝えると驚かれます。この場所はバス停やタクシー乗り場、自転車置場として使われていたことを知っている方からすると、驚くのも無理はないでしょう。御影堂門前の景観はいかにも京都らしいものです。京都のユニークベニュー・MICE会場としての今後の活用が楽しみです。

お東さん広場 Webサイト https://ohigashisan-hiroba.jp/
   

東本願寺境内より。重要文化財 阿弥陀堂門、お東さんはイチョウが見事なのです

■取材を終えて「Editor’s note」

クルマ好き・乗り物好きの私には様々な自動車メーカーの新しい技術を活かしたモデルを比較しながら見られて楽しい取材でした。お話をお聞きしていると出展されている皆さん、他社さんのことを意識していることが伝わってきました。これだけの数のメーカーが技術を競い、クルマづくりへの熱意を持っている日本だからこそ、できるイベントであると思います。
京都はもちろん、各地でこういったイベントが開催され、多くの方が新しい技術を知り、明日のクルマ、これからの社会を考えるきっかけになればと願います。

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詳しくはこちら(イベント開催に関するプレスリリース)

MICEインサイト:一気読みで振り返り!

特集:Japan MICE EXPO 2024

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