
札幌市 新MICE施設整備計画 – 札幌パークホテル跡地 中島公園駅周辺に大型施設 単館5,000人規模、2032年開業を目指す
札幌市は、新たなMICE施設の整備計画が発表されました。コロナ禍による延期や建設費高騰を経て、市と事業者が連携し、中島公園駅周辺に新MICE施設と新ホテルをそれぞれ建設する計画です。これは札幌の国際競争力強化と地域経済活性化に大きく寄与すると期待されています。
新MICE施設の必要性と期待される効果
グローバル都市としての遅れを解消
MICEとは、国際会議や展示会など、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントの総称です。コロナ禍以降、国際会議の開催件数は回復傾向にあり、対面開催へと回帰しています。しかし、国内の他都市がMICE施設の整備を積極的に進める中で、札幌市は他のグローバルMICE都市に比べて大規模会議の開催件数が遅れをとっているのが現状です。
既存施設では、ホテルや飲食店への近接性の不足、多目的ホールの併設がない、会議室不足といった機能不足により、大規模会議の需要を取りこぼしてしまっています。札幌コンベンションセンターもコロナ禍後も高稼働を続け、多くの申し込みを断らざるを得ない状況にあり、市内のバンケット会場(宴会場)も不足しています。これらの課題を解決し、大規模MICE需要を獲得するためには、新たな施設の整備が不可欠とされています。

10年間で5,000億円の経済波及効果と3,200人の雇用創出を見込む
MICEの誘致は、開催地域に大きな経済波及効果をもたらすだけでなく、ビジネス及びイノベーション機会の創造、学術・産業振興なども期待される重要な要素です。新MICE施設の年間MICE開催件数は1,220件が見込まれており、これにより札幌市内への経済波及効果は約492億円/年と推計されています。さらに、10年間では約5,000億円という巨大な経済波及効果が見込まれており、約3,200人分の年間雇用創出効果も期待されています。
整備場所の優位性と連携戦略
中島公園駅周辺の魅力
新MICE施設の整備場所として中島公園駅周辺が選定されたのには、明確な優位性があるためです。
このエリアは、第2次札幌市まちづくり戦略ビジョンにおいて「集客・交流機能や芸術・文化機能の強化を図る高次機能交流拠点」と位置づけられ、2025年3月策定の「中島公園未来への魅力継承プラン」では「国際都市としてのおもてなしの場」とされています。新千歳空港から中島公園駅まで地下接続が可能であり、屋外移動が不要な高い交通アクセス性を誇ります。周辺には宿泊施設が充実し、繁華街「すすきの」にも近接しているため、MICE参加者の満足度向上や観光消費額拡大に貢献するでしょう。近年ではラグジュアリーホテルや貸会議室・飲食機能を備えた高機能オフィスも整備され、エリアの魅力はより一層増しています。
札幌パークホテル

多角的な連携による機能強化
パークホテル建て替え後の新ホテルとは、新MICE施設と一体的に利用できる施設面の連携や、飲食、コンシェルジュなどのホテル品質サービス提供の連携が予定されており、各国の首脳級が参加する政府系国際会議の誘致も期待できます。また、周辺には大きな会議室を持つホテルが複数存在し、これらと連携することで、より大規模な会議開催が可能となります。札幌を代表する美しい中島公園に隣接している点も大きな強みです。北入口広場との一体的な利用や、歴史ある豊平館、文化施設kitaraの活用などにより、札幌ならではのユニークなMICE誘致提案が可能になるとされています。

施設概要と事業計画
単館で3,000~5,000人規模、ホテルとの連携で5,000人超の開催も可能になる規模
新MICE施設は、大規模学会などの需要に対応するため、会議と展示を同時に開催できる施設を目指しています。単館で3,000人~5,000人規模、周辺ホテルとの連携により5,000人超の学会開催も可能となる規模を目指します。具体的には、メインホール約2,000㎡、多目的ホール約3,200㎡、会議室(15室)約3,400㎡を確保し、ホール・会議室合計で約8,600㎡、施設総面積は約38,400㎡を予定しています。
スケジュールと事業費 2032年度の開業を目指す
事業スケジュールは、2025年度に基本計画策定と土地売買予約契約締結を予定し、2028年度から新築工事を開始、2032年度の開業を目指します。事業費合計は約592億円(建物整備費約487億円、土地取得費約105億円)と試算されていますが、今後の計画見直しや物価高騰の影響により変動する可能性があります。ライフサイクルにおける収支は、施設使用年数を80年と想定した場合、土地取得費と札幌コンベンションセンターの減収分を差し引いても約30億円のプラス収支となる見込みです。
札幌のMICEを牽引する整備計画 持続可能な都市戦略として成立するか
札幌市の新MICE施設整備は、MICE市場の回復と国際的な競争激化の中で、都市の魅力向上と経済活性化に不可欠なプロジェクトです。中島公園駅周辺という優れた立地条件、既存施設や周辺ホテルとの連携、そしてMICE施設としての高い機能性を備えることで、大規模な国際会議や展示会を誘致することが期待されます。一方で多額の事業費についての懸念もあります。現時点での試算は約592億円。事業費の負担を将来にわたってどうバランスさせるのか。持続可能な都市戦略として成立させるための試金石となります。
札幌市 新MICE施設整備基本方針について
https://www.city.sapporo.jp/somu/koho/hodo/202509/0908.html
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