1. HOME
  2. 取材・レポート・コラム
  3. MICEのひと
  4. 【現地取材】台湾と日本、MICEの構造はどう違う?産業成長を軸としたMICEを行う組織「TAITRA」の存在【台湾MICE回廊/3】
MICEのひと

【現地取材】台湾と日本、MICEの構造はどう違う?産業成長を軸としたMICEを行う組織「TAITRA」の存在【台湾MICE回廊/3】

日本から飛行機で数時間。身近な海外渡航先の一つである台湾ですが、MICEの開催をぐいぐいと推進する組織のことは、まだ多く知られていないかもしれません。トップダウンかつワンストップでMICEを推進する体制が整えられています。
中華民国対外貿易発展協会「TAITRA」のリリー・スー氏と、チャン・ルーフィ氏に話を聞き、日本との違いについて考えてみました。

TAITRAのお二人にお話を伺いました

taiwan-mice

リリー・スー(Lily Su / 蘇莉莉)氏
台北国際会議センター(TICC)のディレクターを務めるとともに、「MEET TAIWAN」の共同プロジェクト責任者も務めています。

チャン・シァンチン(Ruth Chang / 張向晴)氏

チャン・ルーフイ氏(Ruth Chang / 張如蕙)氏
台北南港展覧館(TaiNEX)のディレクター。大阪・関西万博ではパビリオン「TechWorld」の責任者も務めていました。


MICE開催地としての台湾、4つの強み

Taiwan Business Events Corridor-5 major MICE cities & exhibition - MEET TAIWAN

1. アジアの交通ハブとしてのアクセスの良さ

台湾は、東北アジアと東南アジアの中間に位置し、アジア各地からアクセスしやすい交通ハブとしての強みがあります。桃園国際空港、高雄国際空港、台中国際空港、台北松山空港の4つの国際空港があり、海外各地と直行便で結ばれています。日本からも直行便が多く、台湾までの飛行時間はおおむね3時間30分から4時間ほど。

COMPUTEX 2026

2.AI、IT、医療、エネルギー…産業のクラスター化が進む

世界の半導体受託製造(ファウンドリ)市場で6割以上のシェアを握る「TSMC」の存在は大きいですね。台湾では、半導体をはじめ、AI、IT、医療、エネルギーなどの産業の集積化(クラスター)が進んでいます。台中は精密工業・工作機械・自転車。南部はネジ・ボート。新竹はIT産業といったように、エリアが集中しています。

taiwan
提供:TaiNEX

リリー氏は「『COMPUTEX TAIPEI(台北国際コンピュータ見本市)』や『Energy Taiwan(台湾国際エネルギー・ネットゼロ展)』といったグローバルな展示会を開催し、世界的な規模に成長させることができるのも、こうした産業があるからです」と言います。

過去の『COMPUTEX TAIPEI』の記事はこちら


taiwan-mice

3.主要MICE施設をつなぐ「台湾MICE回廊」

台湾は、台北、桃園、台中、台南、高雄の主要施設を北から南へ結ぶ「台湾MICE回廊」を形成しています。各都市は新幹線にあたる高速鉄道(高鐵)で結ばれ、台北から高雄までは約90分!さらに都市には地下鉄(MRT)が整備されています。

リリー氏
「2026年6月に台北で開催された『国際ロータリー年次大会』では、約4万人もの人々が集まりました。彼らは台北ドームでイベントを行ったあと、台北南港展覧館(TaiNEX)に移動して会議を行いました。参加者は全員、地下鉄(MRT)を利用しました。大人数でも特に困ることはありませんでした」

taiwan-mice

4.安心・安全・便利さ・美味しさが揃う

チャン氏
「安心・安全・便利さが揃うことです。治安は良く、夜中に小腹が空いたとき、24時間営業のコンビニへふらりと出かけるのも全く心配ありません。食事も中華料理から、日本料理、イタリアン、アメリカンまで何でも揃います。しかも安くて美味しいのです。

また台湾は大きくないため、海に行くにも山に行くにも、大体半日以内に到着します。3,000メートルを超える山々や大自然、生物多様性、温泉地に恵まれており、インセンティブ旅行のデスティネーションとしての高いポテンシャルがあります」

taiwan-mice

台湾MICEを裏で支える「TAITRA」の3つの役割

MICEを担うのが「中華民国対外貿易発展協会(TAITRA)」。台湾政府と商工会議所が共同で支援・設立した貿易振興団体です。台北の本部を中心に、台湾国内に5つの支局、世界各地に60以上の海外オフィスを展開し、600名を超える専門スタッフが国際競争力強化や海外市場の開拓を支援しています。

taiwan-mice

リリー氏
「TAITRAは半官半民の組織です。台湾の製品を世界各地へ推し進めます。貿易振興のほかに重要な業務が”MICE(会展)”です。MICEでは主に3つを行います」

1.展示会を主催する
『COMPUTEX TAIPEI』や『台北国際自動車部品・アクセサリー見本市(台北AMPA)』など、世界的に有名な展示会を主催しています。

2.台湾内の展示会場の運営・管理
台北世界貿易センター1号館(TWTC Hall 1)、南港国際展示場、台北国際会議センター(TICC)、国際企業人材育成センター(ITI)

3.「MEET TAIWAN」の執行
台湾経済部から委託されたプロジェクト。台湾全体の展示会産業の推進、運営のサポート、専門人材の育成などを担っています。

※台湾経済部
台湾政府 経済部国際貿易署(TITA)。日本の経済産業省(経産省)に当たります。

taiwan-mice

日本との違い――産業振興を中心につながる構造

TAITRAは、日本における日本貿易振興機構(JETRO)によく似た貿易推進組織です。一方で日本とは組織構造が異なります。日本は国レベルでは、観光庁がMICE政策や基本方針を担い、日本政府観光局(JNTO)が海外へのプロモーションや国際会議の誘致・開催支援を行います。さらに各地域では、コンベンションビューローやDMO、自治体などが地域へのMICE誘致や開催支援を担っています。展示会については、会場の運営、展示会の主催、出展者の募集、開催地のプロモーションなどを、それぞれ異なる主体が担うケースが多くあります。

日本が「国・地域・施設・主催者など、それぞれのプレイヤーが役割を分担する構造」だとすれば、台湾は「産業振興が中心にあり、TAITRAが貿易振興と展示会・ビジネス交流の機能がつなげている構造」と見ることができます。


taiwan-mice

「台湾の産業を海外へ」が共通の目的に

チャン氏
「以前、私が他国で駐在していた時にみた展示館運営は、受動的だと感じました。案件が来てから対応するスタイルでした。営利目的で運営するのとは異なり、私たちは、国全体の産業を向上させるという”国家の使命”を背負っています。だから、台湾でMICEを開催してもらうために、寄り添うサポートを積極的に行っています。
主催する展示会は、海外のバイヤーを台湾に呼び込むBtoB形式が中心です。世界各地にある海外支局のネットワークを利用して、バイヤーを台湾の展覧会に連れてくるのです。このような機構を持っている国は他にほとんどありません」

TaiNEXを日本語通訳をしながら案内してくださった、TAITRAのジェイソン・リー氏
TaiNEXを案内・日本語通訳をしてくださった、TAITRAのジェイソン・リー氏

MICEを行う理由は営利ではなく、台湾企業とのビジネス機会をつくり、製品を海外に輸出し、自国の産業を成長させることにあります。これも日本では語られていない考え方ではないでしょうか。


taiwan-mice

20年にわたって積み上げてきた「MEET TAIWAN」というブランド

台湾のMICE推進を支える柱となるのが「MEET TAIWAN」です。MEET TAIWANはイベント名や施設名ではありません。台湾経済部国際貿易署が支援する「台湾MICE産業振興計画(Taiwan’s MICE Promotion Program)」の名称であり、台湾を国際会議、展示会、企業会議、インセンティブ旅行の開催地として海外へ発信する窓口です。国際会議の誘致・入札支援、台湾で開催されるビジネスイベントへの支援、会場や行程の提案、行政手続きの支援、現地事業者とのマッチングなどを行っています。

taiwan-mice

MEET TAIWANのディレクターとして関わるリリー・スー氏は、次のように説明します。
「この計画は2005年に始まり、これまで20年以上にわたり推進されてきました。20年前から一歩一歩、少しずつ積み上げてきました。だから今、フレームワークが比較的整いはじめ、スムーズに回るようになりました。やはり産業の推進にはかなりの時間が必要であり、そうして初めていくつかの成果を磨き出すことができるのです」

台湾MICEの現在の姿は、一朝一夕でつくられたものではありません。MICEの全体像を俯瞰して、計画して、積み上げてきた結果なのです。


「ぜひ台湾に来てほしい」――日台交流のこれから

お二人から、読者へのメッセージをいただきました。

リリー・スー(Lily Su / 蘇莉莉)氏

リリー氏
「第一に、日本のより多くの方々に、台湾で開催される展示会へ参加していただきたいと願っています。台湾には、日本とはまた異なる魅力を持った産業展が多くあります。『COMPUTEX TAIPEI』は非常に規模の大きな展示会です。これらは日本と台湾の産業が互いに補完し合える関係にあると考えます。ですから、台湾の産業やイベントに関心のある日本のビジネス関係者の皆様が、出展であれ視察であれ、多く台湾へ来てくださることを心から歓迎します。
さらに、日台の力を合わせて国際会議の誘致を勝ち取ることもできるでしょう。国際会議は日本で開催されたり、次は台湾で開催されたりと循環していくものです。そのような案件の情報を互いに共有し合い、国際会議をいかに誘致するかというノウハウや経験をシェアし合うことは、間違いなく双方にとって大きなプラスになります。日本と台湾、両国のMICE産業が共に手を取り合って、これからもますます発展していくことを期待しています」

チャン氏

チャン氏
「もし台湾でビジネスを展開したい日本のメーカーや企業がいれば、日本にある私たちの事務所、すなわちTAITRA日本支局(東京、大阪、福岡)を訪ねてみてください。現地のスタッフが、台湾で開催される最適な展示会を紹介してくれます。
台湾の展示会を活用することは、台湾国内の内需市場を開拓する上で効果的です。例えば『台北国際食品展』を例に挙げると、会場には日本館をはじめ、米国館、カナダ館、ヨーロッパ館など、多くの国別パビリオンが設けられています。展示会は本来、双方向のものです。私たちが海外へ製品を売るだけでなく、日本企業の皆様が展示会に出展し、会場にやってくる多くの台湾人バイヤーや来場者に対して、自社の商品を直接売り込み、販売ルートを確立することも大いに可能なのです」


taiwan-mice

台湾MICEを支えるのは産業、そして産業を支えるのがMICE

産業とMICEが切り離されていない構造が、日本との違いだと考えます。台湾では産業を起点にMICEを動かし、MICEを通じて再び産業を海外へ広げるという仕組みが組織としてつくられています。

産業があるから、世界から企業やビジネス関係者を呼ぶ理由が生まれる。そして、展示会やMICEを通じて台湾の企業や製品と世界がつながる。その交流が新たなビジネスにつながり、産業の海外展開を後押しします。

台湾MICEの強さを知るには、まず現地のMICEを実際に体験してみることが近道です。次の出張や視察の機会に、まずは一人の「参加者」として台湾の展示会や国際会議を訪れてみる。そこで会場だけでなく、交通、産業、街とのつながりまで見てみることで、日本との違いも見えてくるはずです。

台湾MICEを知ることは、台湾のMICEを見るだけでなく、日本のMICEの在り方を考えることにもつながります。

「台湾MICE回廊をゆく」は全7本の大型企画です
今後、台北、台南、高雄での取材記事を9月にかけて、合計7本公開予定です。台湾MICEの「いま」を知っていただける大型連載企画です。

※本記事の写真は特に記載がない限り、MICE TIMES ONLINE編集部の撮影によるものです。


あわせて読んでおきたい、台湾MICEの記事

カテゴリー