会議室からスピーカーが消える?英国発MICEテック「Silent Seminars(サイレントセミナーズ)」が実現する新しいイベント体験
展示会や大規模なカンファレンスに参加した際、周囲の雑音がうるさくて講演者の声が聞き取りづらいと感じたことはありませんか。また、隣り合うブースの音が混ざり合って集中できないという経験を持つ方も多いでしょう。いま、世界のMICE業界で急速に普及し始めているのが、無線ヘッドセットを活用した「サイレントセミナーズ」(Silent Seminars)という画期的なソリューションです。従来のスピーカーに頼らず、参加者の耳元へダイレクトに音を届けるこの技術は、イベント空間の在り方を変えようとしています。

英国発のサイレントセミナーズ(Silent Seminars)とはどのような仕組みか
スピーカーを使わない没入型の音声体験 サイレント・セミナーズ。その名の通り会場内に大きなスピーカー(拡声器)を設置せずに行うセミナー形式のことです。聴衆は主催者から配布されるワイヤレスヘッドセットを装着し、登壇者の話を聴きます。ヘッドセットを外した状態では会場は静かですが、装着した参加者にはノイズのないクリアな音声が届きます。これにより、騒がしい展示会場の中であっても、まるで静かな会議室にいるかのような没入感のある体験が得られます。
開発・提供しているのは、イギリス・バーミンガムに本社を置く「Silent Seminars(サイレント・セミナーズ)」という会社です。
2018年に設立され、創業者はDuncan Strain(ダンカン・ストレイン)氏です。イギリス国内にとどまらず、ヨーロッパ、アメリカ、UAE(ドバイ)などに拠点を持ち、世界規模でサービスを展開しています。

最大45チャンネルで多言語対応もスムーズに
このシステムの大きな特徴の一つは、複数のチャンネルを切り替えられる点です。最大で45チャンネルまで設定可能な製品もあり、参加者は手元の操作で簡単に聞きたいチャンネルを選ぶことができます。これを利用すれば、同じ会場内で日本語、英語、中国語といった多言語の同時通訳を配信したり、ツアーガイドシステムとして利用したりすることがスムーズに行えます。

イベント主催者が導入する3つのメリット
その1:同じ空間で複数のセッションを同時開催できる
最大のメリットは、音響干渉を気にせずに空間を利用できることです。従来、同じ部屋で複数のセミナーを行うには、音が混ざらないように防音壁を設けたり、距離を大きく離したりする必要がありました。しかし、このヘッドセットシステムを使えば、隣り合うエリアで全く別の講演を行っても互いに邪魔になることはありません。一つの大きなホールの中に、最大で20以上のブレイクアウトセッション(分科会)エリアを作ることも可能になり、限られたフロアスペースを最大限に有効活用できます。
その2:騒音をカットし参加者の集中力を高める
展示会のようなオープンスペースでは、通路を行き交う人の声やブースの呼び込みなど、常に多くのノイズが発生しています。ヘッドセットを使用することで、参加者は周囲の環境音を遮断し、コンテンツだけに集中することができます。クリアな音質は聞き疲れを防ぎ、参加者のエンゲージメント(関与度)を高める効果があります。実際にIBTM Worldのような国際的な見本市でも、賑やかな会場内での小規模なセッションなどで活用され、質の高いコミュニケーションを実現しています。
その3:設営の簡素化とコスト削減
大掛かりな音響機材や防音設備が不要になるため、設営や撤収にかかる時間を短縮できる場合があります。会場を細かく区切るための壁を作る必要がなくなるため、造作コストの削減にもつながります。場所と時間を節約しながら、より多くのコンテンツを提供できる点は、主催者にとって大きな魅力です。
世界的な導入事例と信頼性、グローバル企業が採用する新しいスタンダード
サイレントセミナーズは既に多くのグローバル企業や大規模イベントで採用されています。GoogleやAmazon、Nike、Red Bullといった世界的なブランドが、自社のイベントでこのシステムを活用し、参加者に快適なリスニング環境を提供しています。展示会や会議以外のシーンでも活用が期待できます。ウェルネスとリラクゼーション(ヨガ・瞑想)、旅行・観光シーン(ツーリズムとガイドツアー)、エンターテインメント(サイレントディスコ)、ライブイベントなどがメーカーからは挙げられています。リチウム電池駆動で長時間使用できる高品質なヘッドセットは、長時間のカンファレンスでも安心して使用できる信頼性を備えています。

音の問題から解放。MICEイベントの未来を変える音声ソリューション
この無線ヘッドセットシステムは、単なる音響機器の代替品ではありません。音の問題で制限されていたイベント空間のレイアウトを自由に解放し、参加者一人ひとりに対してパーソナライズされたクリアな体験を提供する強力なツールになります。騒音対策、多言語対応、そして空間効率の最大化を実現するこのサイレントセミナーズは、これからのMICEイベントにおける新しいスタンダードとして定着していくかもしれません。
Japan MICE EXPO 2025の商談会でサイレントセミナーズのことを知ることができました。気になった方は、MICE TIMES ONLINEまでお問合せください。パトリック・リムさんをご紹介します!


【サイレントセミナーズの技術仕様と特徴】
オーディオおよび電源仕様
音声伝送方式についてですが、このシステムは従来のスピーカーシステムを完全に代替するものです。聴衆はワイヤレスヘッドセットを装着し、そこから直接音声を聴取します。音質は「クリスタルクリア」と表現されるほど鮮明で、ノイズのない高品質なオーディオ体験を提供するよう設計されています。電源にはリチウム電池が採用されており、長時間のイベントでも安心して使用できる駆動力を備えています。
チャンネルおよび多言語対応
システムの大きな特徴として、チャンネル数の多さが挙げられます。最大で45チャンネルまで設定することが可能。このマルチチャンネル機能を活用することで、単一言語の講演だけでなく、多言語でのコンテンツ配信や同時通訳にもスムーズに対応できます。さらに、通常の会議利用にとどまらず、展示会場内でのツアーガイドシステムとしても機能する仕様となっています。
同時開催能力(空間運用仕様)
空間活用の面では、同一の部屋(空間)内で、最大20のブレイクアウトセッション(分科会)を同時に稼働させることが可能。それぞれのセッションが同じ場所で行われても、混信や干渉が起きないよう設計されており、ヘッドセットを通じて各セッションの音声をクリアに届けることができます。
構成機材
基本的なシステム構成には、聴衆が使用するヘッドセットに加え、登壇者用のマイクも含まれています。これらを組み合わせることで、質の高い会話や講演を実現します。
【主なスペックまとめ】
・最大チャンネル数:45チャンネル
・同時セッション可能数:同一室内で最大20
・駆動方式:リチウムバッテリー駆動ワイヤレス
・対応機能:多言語配信、同時通訳、ツアーガイドモード
公式Webサイト https://www.silentseminars.com/