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【主催者インタビュー】伝統を守り発展する場にしたい/京都インターナショナル・ギフト・ショー2025/ビジネスガイド社 今井さん

※2025/3/13(水) 取材

ゼロから立ち上げた京都のギフト・ショー

「最初は社内で理解を得られませんでした」
当時のことを語る今井さんの表情は、柔らかく感慨深げです。

『ギフト・ショー』は、ビジネスガイド社が主催する、パーソナルギフトと生活雑貨の国際見本市です。京都のほか、東京、大阪、福岡で開催されています。「京都インターナショナル・ギフト・ショー」(以下:京都ギフト・ショー)は、2019年春に開催され、今回で6回目を迎えます。

京都ギフト・ショーの立ち上げ、運営に尽力されてきたビジネスガイド社の今井珠加さんにインタビュー。京都ならではの展示会がなぜ求められ、どのように育ってきたのか。そこには伝統工芸を守り、発展する場にしたいという熱い想いがありました。


1.京都では”価値”を伝えたい

大阪に出展する作り手の声から、京都開催を決断

今井さんが京都ギフト・ショーを始めるきっかけとなったのは、大阪ギフト・ショーに出展する作り手たちの声でした。同じ関西でもまったく別の価値観を持っていたのです。

「大阪では価格面でしか判断されないケースがあって。丁寧に作られた高価なものでも価値を理解してもらえず、単に”高い”と思われてしまうんです。でも関西で商談会はやりたかった。その価値を理解してくれる場所を探していたときに、”京都”が思い浮かびました」

その強い意志が、京都ギフト・ショーの歴史の幕を開けました。


周囲の予想を覆し初回は大成功!
京都ならではの”価値”を求める「出展者」、本当に良いものを求める「来場者」

初回の京都ギフト・ショーは、意外にも大阪の2倍となる300社以上の出展者が集まりました。「今では完全に大阪のギフト・ショーと棲み分けができています。大阪は低価格帯や企業向けのOEM、ノベルティ中心。京都は土産物やインバウンド、高額だけど価値ある商品を集める場所になりました」

ブルネイのブース。ブルネイ手織物と日本の職人技が活かされたバッグ

「たとえばブルネイでは、王室御用達品の織物や銀・真鍮製品があります。京都でも同様の文化がありますよね。職人が丁寧に作り上げた何十万円もするような商品は、京都ギフト・ショーだからこそ価値が伝わるんです。『京都ギフト・ショーに出てよかった』という声が多く、明らかに大阪と違う価値を感じてくれるファンが多いと思っています。来場者は、ミュージアムやラグジュアリーホテルなど“本当に良いもの”を探す方が多い。だから、出展者からすると効率的に商談が進むんです」

“価格”より”価値”を大切にする土地柄が、大阪とは異なる成果を生み出しました。

毎年開催される「おみやげコンテスト」。2025年グランプリ「折鶴箸置」


2.伝統工芸の未来を守りたい

伝統工芸を活かしたブースが多く見られるのも特徴です。

今井さんの背景:高野山の伝統とともに育ち、祖父は畳職人、弟は雅楽師

伝統工芸が徐々に失われる現実を身近に感じてきた今井さん。

「私の実家は高野山の山上にあります。需要が減り廃業しましたが、祖父は山内で畳作りをしていました。また、弟は雅楽師(ががくし)であり雅楽楽器職人です。楽器づくりの職人の高齢化で技術が失われつつあったため、今では楽器製作にも携わっています。京都にはこうした伝統工芸が山ほどあります。ギフト・ショーは物や人が集まる場所だからこそ、伝統工芸が発展する場所として役立てると思いました」

伝統の継承を妨げる大きな課題は、高齢化と後継者不足です。 京都の技術の中には、後継者を育てる余裕もなく、静かに消えつつあるものも少なくありません。その現実を変えるためには、新たな市場を開拓し、職人が持続可能な形で技術を活かせる環境をつくることが重要です。

京都での展示会開催にあたり、京都の各関係団体(京都府、京都市、京都商工会議所など)に説明に行きました。同じ課題意識を持たれていたんです。伝統工芸の未来を守りたいという想いが、関係団体からの後押しを生み、立ち上げられたと思います」と語ります。

雅楽師(ががくし):雅楽の演奏を行う人

学生参加で後継者問題に光、ものづくりの現場を肌で感じる「オープンファクトリーデイ」

京都ギフト・ショーのプレスリリースより

京都ギフト・ショーは、伝統工芸や地場産業の後継者問題解決の場にもしたいと今井さんは言います。
イベント後の3月14日(金)に実施されるオープンファクトリーでは、出展企業の中で工房やスタジオ、工場、ショールームを公開してもいい企業を募り、バイヤーに公開しています。さらに、“学生歓迎シール”を導入し、出展者と学生の交流を促しました。

「後継者がほしいけど、募集をすることは難しい。そんな方に向けて学生の受入を始めました。他府県のギフト・ショーはビジネスイベントのため学生や一般の方は入場できないですが、京都だけは学生さんも入場できます」
学生さんがオープンファクトリーで訪問し、お友達を後日連れて、商品に対しての意見交換会などをしているという声も聞いているそうです。

OPEN FACTORY DAY(オープンファクトリーデイ)https://www.giftshow.co.jp/kigs/factory.htm


Editor’s note 取材を終えて:消えゆく技を、次の世代へつなぐ

千年以上の歴史を持つ京都という土地には「伝統」と「革新」が共存し、多くの技や品が受け継がれてきました。しかし、伝統を受け継ぐ後継者不足は深刻です。また、職人たちは日々ものづくりに向き合いながら、営業や販路開拓の負担も抱えています。

その現状を理解した上で主催者である今井さんは、今後の目標を語ります。

「職人がものづくりに専念できるよう、今後はサポート体制を充実させたいです。たとえば交換した名刺をデータ化し、定期的に情報を配信する仕組みを取り入れるなど」。
”出展して終わり”ではなく展示会後も関係が続くことで、途切れず、より多くの人に届ける可能性が広がります。結果イベントの満足度も上がります。

”価値のあるものが正しくマッチングされれば、伝統は続いていくのではないか”。取材を通して、京都インターナショナル・ギフト・ショーは、単なる商談や売買の場にとどまらず、作り手(職人)と市場を結びつけ、技術や文化の継承を支える場としての役割を果たしています。


開催概要

名称:第6回京都インターナショナル・ギフト・ショー2025
開催場所:京都市勧業館みやこめっせ(〒606-8343 京都府京都市左京区岡崎成勝寺町9番地の1)
開催日時:2025年3月12日(水)・13日(木) 10:00~18:00(最終日は17:00まで)
主催:株式会社ビジネスガイド社 インターナショナル・ギフト・ショー事務局(大阪支社)
入場:無料(事前登録制)
後援:京都府/京都市/京都商工会議所/(一社)京都知恵産業創造の森/(公社)京都市観光協会/(公財)京都文化交流コンベンションビューロー/(公財)京都伝統産業交流センター/(公財)京都産業21/(地独)京都市産業技術研究所/日本貿易振興機構(ジェトロ)京都/国際機関日本アセアンセンター/在日ドイツ商工会議所/ポルトガル投資・貿易振興庁/KOTRA大阪貿易館/タイ王国大阪総領事館商務部/台湾貿易センター大阪事務所/香港貿易発展局大阪事務所/(一財)対日貿易投資交流促進協会(ミプロ)/(一社)日本百貨店協会/日本チェーンストア協会/(一社)ジャパンショッピングツーリズム協会/(公社)インテリア産業協会/(公社)日本インテリアデザイナー協会/(公社)日本ジュエリーデザイナー協会/月刊ぎふとPREMIUM


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