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【現地レポート】APEC2025の舞台は韓国の古都「慶州」 釜山からKTXで約30分と手軽な日帰り旅が可能 慶州とはどんな場所?ビジネスパーソンが訪ねる価値について

日本で古都と聞いてイメージするのは、京都や奈良、鎌倉、金沢といったところでしょうか。韓国では慶州、開城、扶余が古都として知られています。日本と異なりそれぞれが各地が別々の王朝の都だった点が特徴です。韓国第二の都市、釜山から韓国の新幹線KTXに乗って片道わずか30~40分。韓国随一の古都・慶州(キョンジュ)に到着します。
今回は慶州日帰り旅のレポートで慶州とはどんな場所なのか、ビジネスパーソンが訪ねる価値についてお伝えしていきます。

※2025年4月取材

月精橋、2018年に復元が完成しました

慶州:朝鮮半島の統一王朝・新羅の都として長く栄える

韓国南東部に位置する慶州(キョンジュ)は、現在の人口は約25万人。古代新羅王朝の都として約1000年にわたり栄えた歴史都市です。数多くの古墳や仏教遺跡が残るこの地は、韓国人にとって単なる観光地ではなく、民族のルーツや精神的な原点を感じさせる「心のふるさと」として特別な存在です。仏国寺や石窟庵など世界遺産にも登録された遺産群は、韓国文化の源流を今に伝えています。修学旅行の定番地としても親しまれ、幼い頃に訪れた記憶を大切にしている人も多いです。慶州は、日本の京都に例えられることもあり、落ち着いた街並みと古典的な美しさが、現代人の癒しの場としても再注目されています。歴史、誇り、そして静かな時間を求めて、多くの韓国人がこの地を訪れ続けています。

御当地「セブン・イレブン」、現地の様式に擬態するおなじみのお店も見かけます

日本と新羅、慶州は歴史上の接点もあります。敵対する関係になることもありましたが、宗教、文化、技術などで多くの交流があり、日本に伝わったものは多くあると言われています。

近年では、歴史・文化・静けさを活かした滞在型ツーリズムやレトロ文化を活用した地域ブランディングが注目されており、国内外からの訪問者数も増加傾向にあります。慶州は、韓国の伝統と現代が融合する稀有なエリアとして、文化産業、観光開発、地方創生といった分野での新たなビジネス展開において大きな可能性を秘めています。

慶州駅前には大きなAPECのモニュメント

APEC2025の舞台に選ばれる。韓国では2005年釜山以来の開催

2025年のAPEC首脳会議は、韓国政府が2024年6月に正式決定したとおり慶州が開催都市となります。釜山で行われた2005年以来20年ぶりの韓国議長年で、メイン会場は「慶州ファベク国際コンベンションセンター」です 。文化とイノベーションを融合したMICEモデルを世界に示す絶好の機会となります。ユネスコ遺産群を生かしたレセプションや文化体験プログラムが用意され、地域経済への波及効果も大きく期待されています。釜山からKTXで約30分というアクセスの良さは各国代表団やビジネス来訪者の移動効率を高め、サイドイベントや企業交流を活性化させると見込まれます。

APEC2025 KOREA https://apec2025.kr/kor/


釜山駅

釜山駅からKTXに乗車。あっという間に慶州へ

釜山は交通の要衝であり、中央駅としての役割を果たすのが釜山駅です。駅舎はとても立派でまるで空港のようです。2004年、KTX 京釜線開通に合わせて建てられたものです。

KTX(韓国高速鉄道) は、韓国を代表する高速鉄道で、時速約300kmで走行する列車です。2004年に運行を開始し、ソウルと釜山・光州・慶州・大邱など、主要都市を短時間で結びます。日本の新幹線に似たシステムですね。全席指定の快適な座席・Wi-Fi・コンセントなども搭載、ソウル〜釜山間は最速約2時間30分ほどです。KTXを運行するのはKORAIL(韓国鉄道、韓国鉄道公社)。

切符売り場。オンラインで予約することもできます

釜山駅からKTXに乗れば最短約27分で新慶州駅に到着します。朝の商談後でも夕刻のネットワーキングに十分戻れる距離感です。トンネルが多く、車窓は多くは望めませんがとにかく速いので問題ありません。チケットはネットで購入でき、それほど難しいものではありません。座席指定も可能です。座席はエコノミーとプレミアム(グリーン相当)となりますが、驚くのはその料金。エコノミーなら11000ウォン、日本円で1000円ちょっとです。

数日間鉄道利用をするなら、外国人観光客専用のお得なコレールパス(KORAIL PASS)の利用も検討していいでしょう。KTXを含む鉄道が、期間中乗り放題となります。

エコノミー席の様子。プレミアムは2+1の3列シートです。

KTXの乗車は比較的わかりやすいです。大きな電光掲示板で案内されるホーム番号を確認して、ホームに向かいます。改札がない「信用改札(信用乗車)」システムです。自分の乗る列車を見つけて、シートに座ります。車内で検札が行われることがあるため、きちんと確かめて乗りましょう。車内では日本語のアナウンスもあるため日本の方は安心して乗車できます。韓国の鉄道や駅では多くの場合無料Wi-Fiの利用が可能です。仕事をしながらの移動も問題ありません。

慶州駅

慶州駅から観光地はやや遠い。バスなら中心地に近くて便利

KTXの場合、主要な観光スポットがあるエリアまでは距離があります。タクシーだと1500円、15分程度かかります。バスを使うと比較的中エリアの近くに到着します。乗車時間が長くははなりますが、料金面でも有利なのでバスでのアクセスも有効です。

韓国のタクシー運賃は日本で乗るよりも随分安く感じます

主要なスポットだけなら徒歩で3時間程度、ゆっくり回るなら1泊2日でも

主要な観光スポットは徒歩で回れる範囲に集まっています。主要スポットを巡り、雰囲気を楽しむのであれば、日帰りでも十分です。都会の喧騒を離れて静かな時間を過ごしたいという方は1泊2日の旅程で素晴らしい体験ができます。趣向を凝らした宿泊施設だけでなく、飲食店のレベルも高く、高い満足度を得られます。

こんもりした山のようなものは古墳です

韓国の京都に例えられる、と書きましたが、実際の感覚としては奈良や飛鳥を思い起こすものがありました。(私は京都生まれ育ちで、奈良にもよく行きます)
空が広く、緑に親しみ、いたるところに花が咲いています。甍の波を見ていると、古代の都であったことを実感させてくれます。この雰囲気が奈良や飛鳥を思わせるものがあります。


釜山発:午後からの日帰り 慶州訪問例

実際に釜山を午後に出発して、巡った内容をご紹介します。慶州は紀元前57年から935年まで約1000年に渡り、新羅(シルラ、しらぎ)の首都として栄えました。京都に匹敵する長さですね。7世紀に新羅が朝鮮半島の三国統一を成してからは、特に栄えたそうです。そのためか、慶州の観光エリアは広く、1日ですべてを回ることはできません。エリアを絞って訪れることで、ゆとりのあるプランを組むことができます。今回は慶州大陵苑一帯を巡ります。

KTXの列車

13:08 釜山発KTX乗車

30分ほどで慶州へ。2010年竣工の駅舎はとても大きく立派です。全体が待合スペースとなっていてコンビニなどがあるため、快適に過ごせます。

14:00~18:00 大陵苑エリアを散策

国立慶州博物館

国立慶州博物館までタクシーに乗り、ゆっくりと周囲を散策します。国立慶州博物館はAPECでも会場のひとつとして活用される予定です。

東宮と月池(雁鴨池):679年に造られた東宮。

月城:新羅王宮があった場所で、今は堀など一部残ります。一部、発掘調査されている様子も見られました。

瞻星台(チョムソンデ):天文観測に使われたとされる小さな塔のような建築です。想像を豊かにしてくれる不思議な形をしています。

大陵苑:大小23基の古墳が集まった場所です。古墳は円い山状です。皇南大塚は最大規模の古墳でふたつの山がつながった瓢箪形が特徴。

カフェで休憩:飲食店や土産物店が並び、観光地の賑わいが見られます。カフェは雰囲気のよいお店が多くて、思わず目移り。

慶州郷校

校村韓屋村:伝統的な瓦屋根と土や石の壁の家が並び、美しい街並みを形成しています。文化体験施設や飲食店が多くあります。村の一番奥にある郷校は韓国最古の大学ともいえる存在。

月精橋(ウォルジョンキョ):760年に建てられた橋、一度失われました。20世紀になって調査が進み、木造建築として2018年に公式完成。残された資料などが乏しく、橋梁と楼閣は復元にあたり議論されたようです。今は一般に開放され、ライトアップの美しい様子を見ることができます。

ライトアップされると幻想的に

18:30 夕食

校村韓屋村で夕食を取りました。静かで落ち着いた空間であり、大都会釜山とは違った韓国の表情を知ることができます。その後、20時台のKTXで釜山へ。

釜山に到着

京都を流れる鴨川を思い起こすような風景

世界遺産の町・慶州。ビジネスパーソンにぜひ訪ねていただきたい町

慶州は韓国最多のユネスコ世界文化遺産を抱え、とりわけ仏国寺は1995年に国内で初めて登録された象徴的存在です。釜山からKTXでわずか30分という近さながら、釜山とは異なる悠久の風情が広がり、そのコントラストが一層の魅力を生み出しています。
2025年にはAPEC首脳会議が開かれ、MICE拠点としてのポテンシャルに世界の視線が集まる見込みです。国際会議場や通信環境などのインフラ整備も加速しており、企画担当者にとって学びの多いベンチマークとなるでしょう。

千年王都の郷愁は、日本人にとってもどこか懐かしさや遠い記憶に触れるような不思議な体験をもたらすと思います。ビジネスの合間のショートトリップ、静寂を活かしたワーケーション、従業員のインセンティブトラベル──いずれのシーンでも唯一無二の体験価値を提供してくれるはずです。ぜひ今後の出張先やワーケーション先に慶州を加えてみてください。

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