【取材】宇都宮MICEのFAMツアーに参加(後編)大谷資料館、日光東照宮、若山農場…観光で人気のスポットをMICEで活用。この地でなければ体験できないアフターMICE、エクスカーションとは
2026年2月に栃木県宇都宮市で行われた、宇都宮MICEのFAMツアーに参加しました。東京から新幹線で約50分と好立地であり、ほぼ駅直結といえる距離感の大型コンベンション施設が開業、開催支援制度は充実、LRT・ライトラインも開業から成果が出るなど、好材料が揃っているように思える宇都宮。実際のところはどうなのか、FAMツアーを通して見えた「宇都宮を選ぶべき理由」はもちろん、課題についても触れていきます。
本記事は、宇都宮市郊外および日光のユニークベニューを巡った、ツアー2日目の様子をお届けします。
2日目の旅程:宇都宮市郊外から日光へ
(前篇)記事はこちらからご覧ください。
https://micetimes.jp/fam-tour-utsunomiya-1/
宇都宮東武ホテルグランデを発ち、若山農場、大谷資料館を巡り、午後には日光へ。星の宿でランチ、日光東照宮を訪ね、復路は東武・下今市駅からスペーシアXで東京に戻るという内容でした。

1)100年以上続く、竹専門農場・若山農場
「若竹の杜 若山農場」は、日光連山を望む宇都宮市北部に約24ヘクタールの広さを有する農場です。整然と手入れされた広大な竹林は、国内でも屈指のスケールを誇り、その静謐で象徴性の高い景観は数多くの映像作品のロケ地としても活用されてきました。『るろうに剣心』『キングダム』『梅ちゃん先生』などの有名作品のほか、あの伊藤園『お〜いお茶』のCMも撮影されています。

近年では、竹林という地域固有の資源を活かしたユニークベニューとしての評価も高まっています。自然に包まれた非日常空間は、レセプションやガラディナー、企業インセンティブのエクスカーション、屋外ミーティングなど、多様なMICEプログラムの演出に対応可能です。都市近郊に位置しながら、参加者の記憶に残る体験価値を創出できる点が大きな魅力です。

美しい金明孟宗竹。天然記念物に指定された場所もあるという、とても貴重な竹です。

竹の器でお抹茶をいただきます。器は持ち帰ることができます。
若山農場のMICEにおける強みと課題
【強み】
■圧倒的な景観価値と象徴性:竹林は国内でも屈指の規模です。手入れの行き届いた直立する竹の景観は視覚的インパクトが強く、「印象に残る会場」を演出できます。映像作品のロケ実績は、そのブランド力と世界観の説得力を裏付けます。
■都市近郊で実現する非日常体験:宇都宮市内中心部からアクセス可能な立地でありながら、会場に一歩入ると都市の喧騒から切り離された空間が広がります。移動負担を抑えつつ、参加者に強い印象を残せる点は企業インセンティブや海外ゲスト対応にも有効です。
■テーマ性のあるプログラム設計が可能:サステナビリティ、地域資源活用、日本文化体験といったテーマと親和性が高く、ストーリーを持った演出が組み立てやすい会場です。竹という素材は、環境配慮や循環型社会の文脈とも接続できます。
【課題】
■天候および屋外環境への依存:おもに屋外空間となるため、天候リスクへの備えが不可欠です。夏の暑さや、冬の寒さへの対策も必要でしょう。
若山農場は、汎用的な会場というよりも「体験価値を高める舞台」です。適切な設計と組み合わせることで、参加者の記憶に強く残るMICEを実現できるポテンシャルを備えています。

2)地下に広がる巨大な空間に圧倒される 大谷資料館
大谷資料館は、大谷石の地下採掘場跡を活用した圧巻の巨大空間を生かした博物館です。地上から階段を下りた先に広がるのは、高さ数十メートルに及ぶ石壁と、幾何学的に削り出された壮大な地下ホール。人工空間でありながら神殿のような荘厳さを備え、訪れた瞬間に強い印象を残します。
内部は年間を通じて温度が安定し、静寂とひんやりとした空気が幻想的な雰囲気を生み出します。広大な空間はコンサートや美術展、映像作品の舞台として活用されてきました。特に地下の教会ゾーンは、光と石壁が織りなす陰影が独特の世界観を演出します。

大谷石とは?
栃木県宇都宮市大谷町一帯で産出される軽量で加工しやすい凝灰岩です。やわらかな風合いと耐火性を兼ね備え、蔵や石塀、近代建築の外壁などに広く用いられてきました。明治期の旧帝国ホテル本館にも採用されたことで全国的に知られ、地域の歴史と建築文化を象徴する素材となっています。
歴史ある石材の原風景ともいえる地下空間に立つ体験は、他では得難い価値を持ちます。非日常性と歴史性、そして圧倒的スケールが融合した宇都宮ならではの唯一無二のユニークベニューです。

大谷資料館のMICEでの強みと課題
【強み】
■唯一無二の空間スケール:大谷石の地下採掘場跡に広がる巨大空間は、国内でも代替性が極めて低いロケーションです。高さと奥行きを備えた石壁空間は、レセプションやガラディナー、プロダクト発表会などと相性が良さそうです。
■高い演出性と象徴性:地下の教会ゾーンを含む幻想的な環境は、光・音・映像演出との相性が良く、ブランド体験を強化できます。コンサートや展示会の実績もあり、ビジュアル訴求力に優れています。
【課題】
■地下の広大な空間への対応:石壁に囲まれた空間は反響が独特です。スピーチや音楽演出では音響設計を事前に行う必要があるでしょう。広大な空間ゆえに誘導計画や非常時対応の設計が重要になります。事前の導線シミュレーションやスタッフ配置により十分コントロール可能です。

3)日光・星の宿の和食ランチで舌鼓
宇都宮から日光までは車で40~50分、軽く日帰りができる距離感です。昼食は神橋から徒歩2分の「日光・星の宿」でいただきました。和食素材を丁寧に活かした料理が揃います。中心となるのは名物の「湯波(ゆば)」。「ひきあげ湯波」は、湯波を専用の器で自ら引き上げて味わう体験型の料理で、豆乳やおぼろ豆腐も含めて楽しめる点が特徴です。日光は京都と並ぶ湯波の名産地として知られ、湯波自体が地域の食文化を感じさせる食材となっています。

ランチメニューは複数のコースが用意されています。季節の変化に応じた和の食材を幅広く楽しめます。こうした料理は、上品な味わいと季節感、素材の質の高さが感じられ、地域らしさを体験するには最適です格式ある懐石から気軽な御膳まで、和食の豊かな味わいとともに日光の自然や文化を感じられるでしょう。

すぐとなりにはクラシックホテルの日光金谷ホテルがあります。

4)日光東照宮 将軍着座の間で特別な体験
日光東照宮は、徳川家康を東照大権現として祀る神社で、1617年に創建されました。現在の豪華絢爛な社殿群は、三代将軍徳川家光の命により1636年に大規模造替が行われたものです。江戸幕府の権威を象徴する建築として、極彩色の装飾や精緻な彫刻が随所に施されています。
特に有名なのが、508体の彫刻で飾られた陽明門、人生訓を表す「見ざる・言わざる・聞かざる」の三猿、そして奥宮へと続く回廊にある眠り猫です。建築・彫刻・漆工など当時の最高水準の技術が結集され、単なる宗教施設を超えた総合芸術ともいえる存在です。1999年には「日光の社寺」の一部として世界遺産に登録されました。自然豊かな日光の山々に抱かれた境内は、歴史と信仰、そして日本美術の粋を体感できる場所として、国内外から多くの参拝者を集めています。
将軍着座の間 特別祈祷ツアーに参加
今回は一般の方が入室できない「徳川将軍着座の間」での特別祈祷を体験しました。神職の方に、境内をご案内いただき、その後ご祈祷を受けます。着座の間は江戸幕府の歴代将軍が着座した場所です。ご祈祷後は社務所で「直会(なおらい)」を行います。直会では、神事の終了後、神前にお供えした御神酒(おみき)や神饌(しんせん)を、神職や参列者一同で下げていただきます。
世界遺産の社殿で特別祈祷や将軍着座の間を体験できる点は、一般観光では得られない高付加価値プログラムです。歴史と精神性を共有する時間は、エグゼクティブ層の結束強化やインセンティブ旅行に強い効果をもたらします。日本文化の本質に触れる体験として、参加者の記憶に深く残るMICEコンテンツです。

5)東武鉄道・スペーシアX
2日間の日程を終え、東武下今市駅からスペーシアXに乗車して東京に向かいました。
乗ることが旅になる、東武鉄道のフラッグシップ・スペーシアX
東武鉄道が2023年7月15日に運行を開始した新型のフラッグシップ特急列車です。浅草と日光・鬼怒川温泉を結ぶ路線で、従来の「スペーシア」の伝統を受け継ぎつつ、デザイン・機能・体験価値を大幅に進化させています。車両は6両編成で、多様な座席タイプを備えており、個室やカフェラウンジ、贅沢な「コックピットスイート」など、旅行スタイルに合わせて選べる構成です。乗車そのものを旅のコンテンツにしています。

車内はプレミアムシートやソファ席を含む全6種類の座席が用意され、広々とした空間でゆったりと過ごせることが特徴です。車内カフェでは地元のクラフトビールやオリジナルコーヒーなど、地域色を感じる飲食も楽しめます。デザイン面では、江戸文化や日光の伝統要素を織り込んだ外観・内装が特徴で、移動中の風景や特別感を演出します。

最後に:宇都宮MICEを支える「ひと」の存在感
今回のツアーでは宇都宮観光コンベンション協会 MICE振興課の吉野さんと駒場さんが献身的にご案内くださいました。きっと、ご準備や調整の面でも相当な時間をかけられたのだと思います。本当にありがとうございました。いくつかのユニークベニューでは、協会の他のメンバーの方々や、宇都宮市の観光MICE推進課の方も合流して、ツアーをサポートされていました。
宇都宮観光コンベンション協会 Webサイト https://utsunomiya-convention.jp/

各地でご案内いただく皆さまも、街のことが好きで、土地に思い入れがあるのだろうと感じることばかりでした。施設の強みや課題を2記事にわたって、まとめてきましたが、何より大切な「ひと」に関しては間違いなく素晴らしいと自信をもってご紹介できます。
ツアーはファンを増やす絶好の機会
こういったツアーを行う大きなメリットは言うまでもなく「ファン」を増やせることです。施設やユニークベニューは全国に良いと思えるものが、多くあり、甲乙つけがたい部分もあるでしょう。◯◯さんがいるなら安心、◯◯さんのオススメなら間違いない、と「ひと」による判断も実際にはあるはずです。ツアーを通じて、多くの方に出会える場面が多くあれば、ファンを増やすチャンスも、その分だけ多くなるということです。
私もツアーに参加することで、人生二度目の宇都宮にして、また好きな街が増えた、とうれしく思っています。人は自分が知っているや触れたことのあることから、興味を持ち、好印象を抱きます。ツアーもやはりMICEのひとつです。

街の写真を見て、その街の人の顔を思い出せるなら、もう立派な推し街です!


