【取材】キャンプ場・リゾートの平日を企業研修に活用。JOWA × NTT Landscapeが広げるアウトドア研修
2007年、経営危機にあった富士山麓のキャンプ場とイベントホールはV字回復を遂げました。秘訣は企業・団体向けのアウトドア研修にあります。
株式会社JOWA(前身・日本野外研修ワークショップ協会)は、これまでに1,600社以上、累計で6万人を超える受講者と自然の中で向き合ってきました。2025年4月には株式会社NTT Landscapeとの協業を開始し、現在、両社は一体的にアウトドア研修事業を全国展開しています。研修会場はキャンプ場に限定されず、ホテル・旅館、リゾート施設、公共施設なども含めて全国39施設(2026年8月現在)と提携しています。
多くの企業・団体がリピーターとなるアウトドア研修とはどのようなものなのか。アウトドア施設の平日稼働・通年稼働にどのような効果があるのか。富士河口湖町の提携施設でJOWA代表の田中孝治さんにお話をうかがいました。
平日の稼働と季節性に悩むキャンプ場・屋外施設
日本全国にキャンプ場はおよそ5,000施設ほど存在しますが、一般利用者の多くは気候の良い季節の週末や休日に集中し、年間を通じた平日の稼働率向上に課題を抱える施設は少なくありません。山梨県富士河口湖町にあるアウトドアパーク「森と湖の楽園」も、かつては同様の壁に直面していました。

森と湖の楽園 Workshop Camp Resort 入り口駐車場(筆者撮影)
「森と湖の楽園は2005年にアウトドアパークとして開業し、2006年には500人収容の常設劇場(河口湖SHOW園)をオープンしました。当初は著名な出演者による公演などで賑わったものの、繁盛は長く続きませんでした。キャンプ場という特性上、平日は利用者がほとんど訪れず、2007年秋には経営危機に直面しました。社員数も40名から4名にまで縮小し、抜本的な事業の立て直しが急務となったのです」(JOWA田中代表、以下同じ)
学校向けの教育旅行から企業・団体向けの研修へと広がる

河口湖SHOW園とJOWA田中代表(筆者撮影)
演劇やテレビの世界で役者として活動してきた田中代表は、自社の持つ「平日の空きスペース」「劇場(イベントホール)」という遊休資産と、自身のファシリテーションスキルを組み合わせることで、新たな需要の開拓に乗り出しました。
「自然環境と平日の空き施設を活用するため、まずは小学校・中学校・高校向けの教育旅行や体験学習の誘致から着手しました。そして徐々に企業や団体の社員旅行や合宿研修へと対象を広げ、キャンプ場の稼働率も来場者数も劇的に増やすことができました」
年間を通じた季節ごとの企業研修ニーズ

キャンプ場でのチームビルディング(写真提供JOWA)
アウトドア施設における企業研修の需要は、一般レジャーの平日の繁閑や季節性とどのように補完し合うのでしょうか。田中代表によると、企業の年間スケジュールには明確な研修サイクルが存在するといいます。
「4月は新入社員研修、ゴールデンウィーク明けにはメンタルケアや配属前の結束強化、6月からは内定者やインターンシップ向けの研修が動きます。一般の観光・レジャー利用で平日も埋まる8月は企業研修の受け入れを抑え、9月以降は秋の社員旅行を兼ねたチームビルディング需要が高まります。10月の内定式・親睦会、11〜12月の合宿研修、年明けから年度末にかけての予算消化や歓送迎会を兼ねた研修など、一般利用が落ち込む時期にこそ企業の研修ニーズが存在します」
一般観光のピークシーズンと企業研修の需要期がずれることで、施設全体の年間稼働を平準化させる効果が期待できます。
標準的な1泊2日のアウトドア研修プログラム
企業研修において、屋外空間やアクティビティはどのように活用されているのでしょうか。標準的な1泊2日のプログラム構成は次のようになっています。
1日目
- オープニング・チーム編成:目的共有・自己紹介・アイスブレイク
- 個を知るアクティビティ:個人→ペア→チームへ広がる体験。自分と仲間の強みを発見
- 1日目の振り返り・対話:チームでの気づきと感謝のシェア
- 夕食・焚き火・懇親:焚き火を囲んで本音で語り合える夜がチームの壁を一気に取り払う

チームで焚き火を囲む夜(写真提供JOWA)
2日目
- チームで挑むアクティビティ:戦略・役割・コミュニケーションを総動員してチームで限界に挑む
- 2日間の振り返りワーク:体験を言語化し、職場との接続を整理
- クロージング:目標を達成するために定めた具体的な行動計画を各チームで宣言する

チームの行動計画を宣言しクロージング(写真提供JOWA)
企業組織の課題に応えるアウトドア研修の効果
新入社員・若手社員の離職が散発し、内定者の辞退もある。部門間の壁を感じて連携がうまくいかない。管理職と現場に距離があって社員のモチベーションが上がらない。── 企業が直面するこのような課題に対しては、組織開発やチームビルディングを目的とした研修サービスが数多く存在しています。そのなかでアウトドアという環境で行う研修にはどのような効果があるのでしょうか。
非日常の空間だからこそ気づく一人一人の個性
「人も部署も、それぞれ皆、自分の仕事に取り組んでいます。一人一人が主人公なんです。しかし、同じ人として相手のことを知らなかったり、認め合わないので、同じ目的のためのチームとしてまとまれていない。しかし、日常を離れた環境でのアクティビティによって、仲間への見方は変わっていきます。『うわ、おまえってそんな素晴らしい才能をもってるんや』とお互いに気づき合う。その掛け算で組織が変わり一つのチームになると、自分も頑張ろうと個人も成長するんです」

グランドでのチームビルディング(写真提供JOWA)
自然の力、焚き火の力
「JOWAが研修実施のために提携する施設は、キャンプ場だけでなくホテル・旅館、ゴルフリゾートなどにも広がっています。また、企業によっては、自社の研修所や保養所などを利用する場合もあります。しかし、会議室での研修と自然の中での研修の両方に参加した経験のある人は、やっぱり自然の中での研修がよい、と言っています。日中に自然の中で身体を動かしてチームビルディングをして、夜に同じ釜の飯を食べて、焚き火を囲んで語り合う。その体験から、退職を思いとどまったり、内定を承諾する人がいる。疎遠だった二人のマネージャーが協力し合うようになる。このような参加者の変化が、企業がアウトドア研修を選ぶ理由になっています」

焚き火を囲んで語り合う(写真提供JOWA)
地域の野外施設が企業研修を誘致するためのポイント
キャンプ場やリゾート施設が企業研修の受け入れを検討する際、どのような要素が求められるのでしょうか。
快適な宿泊環境と全天候型スペースの確保
「アウトドア研修のアクティビティや焚き火は野外が基本ですが、テント泊のキャンプではありません。参加者は一般的なビジネスパーソンですので、悪天候時にもプログラムを実施できる屋根付きスペースやイベントホールが求められます。宿泊については、キャンプ場が会場となる場合にも、内部に洗面所とシャワーを備えたコテージやトレーラーハウスを利用できると、アウトドアに抵抗のある人も参加しやすいと思います」

「森と湖の楽園」トレーラーハウスとJOWA田中代表(筆者撮影)
立地条件よりも受入体制と主体性
「自然の中であればあるほど、星が見えれば見えるほど、焚き火の効果も大きく、アウトドア研修は生きてきます。しかし、アウトドア研修の提携施設になれば集客できるという視点だけでは十分ではありません。企業や団体、学校、参加者の役に立ちたい、野外体験を通じて笑顔になってほしい、その想いから主体的に取り組むことが何よりも大切です」
旅行会社や研修会社とのパートナーシップ
また、企業の研修を地域の施設が単独で集客することは容易ではありません。
「アウトドア研修では、参加する企業との準備だけでなく旅行会社との連携も大切です。研修プログラムの内容をよく理解し、旅行会社や研修会社と連携して、セールスから運営までを共同で進めることのできる担当者がいること、体制づくりが成功の鍵となります」

円陣を組みチームとなる(写真提供JOWA)
NTT Landscapeとの協業を通じて全国に広げる
平日稼働の仕組みを全国の地域施設へ広げる動きも始まっています。
NTT東日本グループは2024年11月、「DXを活用してキャンプ場などの遊休資産の魅力を向上させ、人流を創出し、地域経済の活性化に貢献する」をミッションに株式会社NTT Landscapeを設立。同社は事業の柱の一つとしてアウトドア研修事業を掲げ、2025年4月よりJOWAとの協業を正式に開始しました。
この協業において、JOWAが培ってきた研修プログラムやファシリテーションのノウハウを提供し、NTT Landscapeが講師派遣や研修場所の提供、運営支援を担っています。さらに大手旅行会社と連携して、企業・団体・教育機関への販売を広げています。
JOWAの田中代表は、この協業のきっかけと意義を次のように語ります。
「地域振興や自治体の災害対策のためのトレーラーハウスがご縁で、両社は出会いました。NTT東日本のメンバーが実際にアウトドア研修を体験して、その効果を実感したところから協業が始まったのです。研修プログラム、コンテンツの中核をJOWAが担い、NTT Landscapeの社員は営業や運営だけでなく講師として研修にも参加しています。このパートナーシップを通じて、より多くの人にアウトドア研修を届けていきたい、というのが両社の想いです」

河口湖SHOW園でのアウトドア研修クロージング(写真提供JOWA)
取材を終えて ── 平日・閑散期の活用を地域連携で拓く
今回の取材を通じて、キャンプ場やリゾート施設が抱える平日・閑散期における余剰キャパシティという課題に対して、企業研修が有効な施策となり得る可能性が見えてきました。
企業の研修ニーズは、4月の新入社員研修から秋のチームビルディング、冬場の合宿まで、観光のオフピークと重なる形で年間を通じて存在します。しかし、それを一施設の努力だけで取り込むには、集客力やプログラム設計の面で限界があります。
快適な宿泊や屋内外のスペースを備えた「施設」、課題解決を導く「研修会社」、送迎や手配を担う「旅行会社」、そして全国に広がるネットワークをもつ「パートナー企業」が連携すること。一施設単体ではなく、地域や事業者間の連携を通じて需要を創出していくアプローチに、平日・閑散期の稼働に悩む多くの地域施設への実践的なヒントがありそうです。
取材協力 ── 株式会社JOWA
- 2007年「清水国明の森と湖の楽園」でスタッフ40名が4名になるほどの経営危機に直面。絶体絶命の状況から、野外研修を通じた組織再建でV字回復を達成。その実体験をもとに、体験型アウトドア研修の専門会社としてJOWAを設立。フランクリン・コヴィー社(米国)『7つの習慣®Outdoor研修』の世界初の認定実施機関となる。17年間で1,600社以上・6万人以上の組織を変える研修実績をもつ。
- 代表取締役社長 田中孝治
- 本部所在地:山梨県南都留郡富士河口湖町小立5660-1
- お問合せはホームページから:https://jowa.fun/