第4回 「イベントはみんながプレイヤーの協力ゲーム」。1万人から2万人へ、来場者を2倍にする展示会のつくり方

「来場者2万人への挑戦は、協力ゲームと同じ。展示会は一緒に盛り上げていくお祭りです」
高橋さんは、”展示会”を、仲間と役割を分担し、協力しながら物語を進めていくゲームにたとえます。主催者だけが頑張ってもクリアはできません。出展者、来場者、スタッフ、それぞれがプレイヤーとして関わることで、はじめて展示会は成立します。
2026年1月末に2万人を目指す、国内最大級のボードゲームビジネスイベント「Board Game Business Expo Japan(以下:BGBE)」を主催する高橋さんらしい表現です。
編集部が高橋さんと出会ったのは2025年1月。1年間BGBEと高橋さんを追いかけてきました。BGBE開催まで残り2か月を切った今、来場者数を“倍”にするため、何を積み重ねてきたかを尋ねました。
2万人を集めるために。BGBE主催者の1年間の取り組み

1.全国10箇所、世界10箇所、自分の足で仲間集めに行った
「SNSで発信して待っているだけでは”足りない”と感じていました。まずは自分たちのことを知ってもらいたい。そのために、対面で思いを伝える機会を意識的に増やしました」
高橋さんは、国内外のボードゲームイベントや展示会に積極的に足を運び、出展や視察を重ねてきました。その数は、20回以上にのぼります。
訪れた地域
台湾(5回)、アメリカ(3回)、タイ(2回)、シンガポール(2回)、ドイツ(2回)、韓国(2回)、フィリピン、マレーシア、北海道、沖縄、京都、千葉、東京、神戸、名古屋、三重、神奈川、福岡など
2025年
— H1R0 ゲームプランナー 🔜BGBE2026 (@H1R0game) October 27, 2025
タイ(2回)、フィリピン、マレーシア
アメリカ、台湾、韓国と
いろんな国の
ボードゲームイベントに出展してみて
改めてシュピールエッセンを見て回ると
景色が違って見えました。
来年のフランスもたのしみです!#SPIEL25#essenspiel2025#世界ボドゲ旅 pic.twitter.com/vNrwMbnO1i
”自分の足で会いに行く”活動の積み重ねにより、出展者や関係者だけでなく、来場者からも「BGBEに行きたい」「絶対に行きます!」と言ってもらう機会が増えました。また、海外のメディアや、インフルエンサー、YouTuberからも取材を受けるように。BGBEの認知は少しずつ、確実に広がっています。






2.海外から来ても安心できる展示会をつくる
「読めない」をなくすために、英語のホームページを用意
各国のイベントに足を運ぶ中で感じた“違和感”がありました。
「アメリカやドイツのイベントでは、ほとんどの場合、英語表記があります。一方で、韓国やタイのイベントでは、英語表記がないことが多く、何が書いてあるのか分からなかった。これは日本語も同じです」
すぐに公式ホームページを英語に対応させました。

さらに、会場内のサインについても、できる限り英語を併記する方針をとりました。
「いちいち誰かに聞かなくてもある程度分かる状態は、安心感がありますよね。小さくても英語を表記したいと思っています。前回と大きく違う点のひとつです」
QRコードを活用したルールの多言語対応
海外の方が”日本語しかない”ことにがっかりする場面を、高橋さんは何度も目にしてきました。せっかく興味を持って足を運んでも、ルールが読めない、内容が理解できないという理由で、体験の質が下がってしまう。その課題を、BGBEでは改善します。
「無理にとは言いませんが、出展者さんには英語のマニュアルを用意するよう、呼びかけています。すべてを紙で対応する必要はありません。多言語対応を紙で行うと、量が膨大になります。私が海外イベントに出展した際には、ゲームルールを読み込めるQRコードを用意しました。こういったかたちであれば、主催者さんの負担も大きくはないと考えています」




聞けない、話せないを防ぐ通訳スタッフ
通訳サポートは、BGBEが始まった第1回目から実施している取り組みです。高橋さんは”言葉の壁”を放置しませんでした。
「海外から出展されるブースは、日本語が話せる方がいらっしゃるのが望ましいです。ただ、 出展者さんでは対応ができないこともあります。私たちが通訳できる方を面接し、希望されるブースの方にご紹介してきました。さらに、通訳の方がどの言語に対応できるのかを、一目で分かるような工夫を検討中です」


通訳者を手配するだけでなく誰を、どのブースに紹介するかまで、主催者側が関与している点が、BGBEの特徴です。出展者・来場者の細かなストレスを減らします。
海外参加者を迎えるための招待状とビザ発行の支援
「インドの出版社やフィリピンのメディアが、『イベントに行きたい』と言ってくれています。大使館への申請において、招待状だけでなく、正式にイベント側からの招待があったほうが手続きが通りやすくなります。私たちの企業情報や登記関連書類を提供し、ビザ申請のお手伝いをしています」
海外から人を呼ぶためには、”来たいと思ってもらう”だけでなく、”来られる状態をつくること”が欠かせません。実務面のサポートも含めて、海外参加者を迎える準備を進めています。
3.学生出展が増えた理由は、口コミと出展料半額
「2025年に比べ、初出展の方と学生さんの出展が増えています」


「学校への講演活動で知り合った方や、イベントに足を運んだ先生から『非常に良かった』『求人募集をしている会社があったよ』と学生さんに伝えられ、口コミで広がっています」
学生枠の出展料は、通常33,000円(税込)のところ半額の16,500円(税込)。

「あるイベントで、学生さんが出展される際には、顧問の先生が自腹で全て負担しているという実情を知りました。もしその先生が退職すれば、継続した出展は難しい。『チャレンジしたいけどお金がない』と聞いて、翌日には通常出展料の半額である”学生枠”を作ったんです」
学生出展が増えることのメリットがあると話します。
「学生さんが出展すると、友人や先生、保護者、親戚など、学生のコミュニティの人たちが『見に行こう』と来場してくれます。私たちが頑張っても、なかなか届かない層です」

高橋さんが見据えているのは、目先の来場者数だけではありません。
「クリエイティブな活動を行う若い世代が業界と関わることは、世界で活躍する人材を生み出し、業界全体の発展に間違いなくプラスになります。これは未来への”投資”です」
4.検定・大会(参加型企画)の開催予定
昨年にはなかった、「カロム検定」や「謎解き」など参加型企画の開催を予定。楽しむ、遊ぶだけではなく”挑戦する場”を用意することで、イベント体験そのものを広げる狙いです。

高橋さんにとって展示会とは「みんながプレイヤーになる協力ゲーム」
2026年のテーマは『挑戦』
「皆様の挑戦のきっかけとなる場にしたいという想いから、BGBE2026のテーマを『挑戦』に決定致しました。運営としても前回を大きく超え盛り上がるよう、挑戦する気持ちを持ち続けたいと考えております。
2025年は約1万人の方に来ていただき、2026年は2万人を目指します。運営だけでは到達できない大きな目標です。正直、私だけが発信していても届きません。
展示会は、来場者も一緒になって盛り上げていくお祭りだと思っています。達成できると全員勝利です! 難易度が高いほど、燃えるんですよね(笑)。自分ひとりでは達成できないことでも、それぞれの得意なことを持ち寄れば進めます。力を借りるというより、自身が“主催者のつもりで一緒に広めていく形”が理想的ですね。自分ごとして関わってくれる人が増えるのは、イベントにとって良いことです」
【素材配付】
— 竹﨑でめこ|Illust & Design (@demeco0w0_atwon) December 9, 2025
こちらの「制作相談WelcomePOP」のデータを作ったので配付いたします!
ゲーム関連(ボドゲ・デジゲー問わず)に限りどなたでもご自由にご利用いただいてOKとさせていただいてます。是非ご活用ください!
Googleドライブのリンクをリプ欄に記載しています。 https://t.co/hqpAIzSjIP
Xでは出展者の方が、ほか出展者に素材を提供する様子が見受けられました。
集客において、最も強力なのは口コミ。
「SNSでの発信では、どうしても届かない人がいます。でも、家族や友達から『こんなイベントあるよ』と言われたら『じゃあ行ってみようかな』って思いますよね。これが最強。昨年参加した1万人が、それぞれ1人以上連れてきてくれたら、2万人達成です。0から1万人を集めるのは大変ですが、1万人を2万人にするのは、”1人が1人を誘うだけ”で達成ができます。
設営業者の方から、『設営中から気になっていて、終わってからめちゃくちゃ買い物しました』というお声を割と多くいただいて。ボートゲーム以外の業界の方に知ってもらう、来てもらえる機会にしていきたいですね。
出展者の皆様、メディアの皆様、来場者の皆様と一緒に協力ゲームとして全員勝利を目指しましょう!」
クローズアップポイント
「来たいと思ってもらうこと」と、「来られない理由を一つずつ潰していくこと」。BGBEがここまで積み重ねてきた取り組みは、その繰り返しだったのだと感じました。その結果として出来上がった展示会には、高橋さんの考え方が色濃く反映されています。
「展示会は“運営者だけのもの”ではない」この言葉は、とても示唆に富んでいますね。高橋さんは、競い合う相手ではなく、仲間をつくりながら前に進んできました。主催者だけで集めるのではなく、参加者も一緒になってつくっていく。展示会は「みんなでつくるもの」という認識があるからこそ、出展者も来場者も、関係者も他人事ではなく、BGBEそのものを応援したくなるのだと思います。
イベント当日に参加するのも良し、前後に行われる交流会に足を運ぶのも良し。開催は2026年1月31日(土)~2月1日(日)。入場チケットは12月下旬から販売予定です。
【12/24更新】BGBE最新情報
「おかげさまで、出展者様は満員御礼となり、過去最大規模での開催が決定しました!
アンケートでいただいた内容をもとに来場者が目的のブースを探しやすくし、ビジネスタイムでのマッチングを行いやすくするためにエリア分けを行います」

学生エリア
学生割引で出展する学生や学校の出展エリア。未来を担う学生さんの挑戦を応援したいという想いからエリアを新設しました。
挑戦エリア
モルックや謎解き、カロム検定、レキシオ大会、ゴールデンボックス ボードゲームアワードなど、新しいことに挑戦してほしいという想いからエリアを新設しました。
海外エリア
海外からの出展や、海外のイベント情報などを発信するエリアです。海外と繫がりのあるブースも含まれています。海外のボードゲームやイベントにも興味を持っていただければという想いから、エリアを新設しました。
イベントエリア
日本全国に多くのボードゲームイベントが存在します。イベント情報を発信するブースや北海道、仙台、名古屋、岐阜、三重、九州で開催されるイベントの主催者様のブースもあります。日本全国のボードゲームイベントにも興味を持っていただければという想いからエリアを新設しました。
アートエリア
ボードゲームにとってパッケージやカードのデザイン、世界観、キャラクターなど、アートワークには重要な役割があります。BGBEではゲーム業界に参加したいアーティスト様とアートワークの相談がしたいゲームデザイナー様、出版社様とのマッチングの機会になりたいという想いからエリアを新設しました。
MICEクローズアップ
「BGBEが描く来場者2倍の夢。挑戦する人たちを1年にわたって追う」第4回
取材:MICE TIMES ONLINE 藤井真鈴
本企画は1年間に渡り「Board Game Business Expo Japan2026」までの長期連載企画となります。
※取材:2025年12月4日
BGBE Webサイト https://www.bgbe-j.com/
BGBE 公式Xアカウント https://x.com/BGBEJAPAN
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