
【取材】JCCB創立30周年記念事業:MICE次のステージは”サステナブル”。一過性ではなく次世代に残すMICEへ(7月29日 幕張メッセ)
2025年7月29日(火)に、日本コングレス・コンベンション・ビューロー(JCCB)創立30周年記念事業が幕張メッセ 国際会議場の2階で開催されました。第1部と第2部の2部構成で行われ、コンベンションビューロー、コンベンション企画運営業、MICE関連サービス業、旅行業、運輸業、宿泊業、会場・展示場などの分野から参加者が集まりました。

テーマは「Moving Forward!~さあ、新たなMICEのステージへ~」。本レポートでは、イベントそのものと、現地で感じた「次世代」「サステナブル」についてお伝えします。
JCCBとは:MICEの誘致開催の促進やネットワーキング等を行う団体

日本コングレス・コンベンション・ビューローの略です。1960年から任意団体として「日本コンベンション・ビューロー」を設立。1995年には前身の財団法人 日本コンベンション振興(JCPA)から現在のJCCBへ。現在は、MICEの誘致開催の促進、人材育成、広報宣伝、ネットワーキングの支援を行っています。
日本政府観光局(JNTO)とともに「国際MICEエキスポ(IME/アイミー)」も主催しています。
コンベンション・ビューローとは:MICEを誘致・サポートする組織のこと
各地域でコンベンションの誘致や開催をサポートする専門機関のことです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
第1部:開会式/JCCB 猪口会長による挨拶からスタート
猪口会長による挨拶で幕を開けました。

”未来のMICEをデザイン!”をテーマに若手チームがピッチ
予選審査を経て選出された5チームが”未来のMICEをデザイン!”をテーマにプレゼンテーション。各チーム5分間の持ち時間でアイデアを披露しました。

【最優秀賞】MICEとこども食堂をつなぐ/日本コンベンションサービス
MICEで発生する大量のお弁当ロスや食品廃棄に着目し、未開封食品を地域のこども食堂とオンラインシステムでマッチングをする”えがおのはしプラットフォーム”を提案。目指すのは「お弁当ロスのないMICE」です。
「どこも食料調達に困っている、しかし現場では食料が余っている。大量に作り・大量に使い・大量に廃棄する、従来のMICEの在り方を変えたい」と強く訴えます。



【優秀賞】エクサマイス~走って、学んで、召し上がれ~/岡山観光コンベンション協会
会議や学会は「座って聞く」が常識となっていますが、長時間座りっぱなしによる心身の負担や印象に残りにくい点を課題に挙げました。1日30分の運動で健康リスクが下がることにも触れ、「動くことで人も会議ももっと生きる」をキーワードに、実際に会場で首を回す体験を交えて、記憶に残るMICEの形を提案しました。


【入賞】”MICEライセンス制度”の創設/コングレ
人材不足や業界認知度の低さ、育成機会の不足といった、長年のMICE業界の課題を背景に、階級ごとに取得できる「MICEライセンス制度」を提案。JCCBへ業界全体の底上げやキャリアアップ、提供されるサービスの質の向上のにつながると伝えます。「MICEを選ぶ若者が増える」未来を目指し、分かりやすく落ち着いたプレゼンテーションでした。


【入賞】MICE×地域住民から始まる多文化共生社会/仙台観光国際協会
各地域の多文化共生部門と連携し、地域の特色を活かしたいと発表しました。たとえば、地域住民が参加できる日本語講座ブースを設置するなど、イベント参加者だけでなく地域住民にも実用的な学びや交流の場を提供。MICEイベントを通じて、地域に新たな価値を生み出すアイデアです。


【入賞】「地元企業から始めるMICEの未来」~MICEの未来のカタチ 地産地学モデル~/松山観光コンベンション協会
一部の人だけがMICE誘致を頑張る従来の構造から抜け出すために「MICE御朱印アプリ」を提案されました。


猪口会長からの講評「MICEの知名度向上と身近さが広がることを期待」

「どれも創意工夫のある提案でした。視野の広さや温かさ、地域との関係性について深く考えられていました。かつては国際会議といえば“エリート向け”というイメージが強く、一般にはまだ十分に開かれているとは言えませんでした。MICEは限られた人だけのものではなく、”みんなのMICE”だと発表してくれたと思います。
発表された方は、どう実現するのか道筋を示して、夢と現実をつなぐアンビシャスなテーマを語ってくれました。素晴らしい能力だと思います。日本発の新しいMICEのあり方を提案していきたいですね。
今後、業界に就職した人が“それ何?”と聞かれるのではなく、“MICE業界に就職したんだね、すごいね”と認められるような、MICEの知名度向上と身近さが広がることを期待しています」

描きたい未来や、それに立ちはだかる課題を具体的に捉えつつ、新規性のあるものが受賞されていたように思います。
基調講演 NHKエンタープライズ 堅達さん/サステナブルなMICE戦略とは

NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサーの堅達京子さん
「次世代・地域・世界をつなぐ、サステナブルなMICE戦略」と題して講演を行いました。堅達さんは、環境問題をテーマにCOPなどを取材し、国連の「1.5℃の約束」キャンペーンを主導した経験や、万博イベントの制作実績を持つなど、幅広い専門知識を持つ人物です。
”サステナビリティ”は中心に据えるべきもの
2024年11月にアゼルバイジャンで開催された「COP29」を例に「どうビジョンにサステナビリティを組み込むか」について講演されました。

「サステナビリティは『頭の片隅』ではなく『会議や運営の中心』に据えるべきです。悠長にイベントを開くだけでなく、こうした視点を最初のビジョンから会議に取り込むことが大切。1人の小さな行動でも、大きな一歩になる」と参加者に、警鐘を鳴らしました。
今回の会合も「ペットボトルを当たり前のように机に出しておいてよいのか」、「室内温度の設定はどうか」など、自分事として考えられることがあるはず。ハッとさせられるお話でした。

質疑応答/海外との違いは”スピード感”
「日本の海外と比べ、十分なプログラムを実現できていない要因は何か」という参加者からの質問には、「違いは”スピード感”」と回答。

「できない理由を並べるのではなく、まずは国際会議を“実験場”としてチャレンジすることが大事。国際会議をきっかけに変えることです。縦割り組織の弊害を打破するためにも、責任者と権限を明確にし、若い人材を積極的に登用しながら、決断力とスピード感のある組織づくりが欠かせません」
次世代部会提言書発表/次世代部会からの提言書が発表
”次世代から動かすMICE”をテーマに、猪口会長に提言書が提出されました。

第2部:世代を超えた参加者交流
功労賞表彰・主催者挨拶、来賓挨拶・乾杯、歓談、記念写真撮影が行われました。


来賓の方々
- 独立行政法人国際観光振興機構 理事長 蒲生 篤実さん
- 国土交通省 観光庁 国際観光部長 中野 岳史さん
- 千葉県 副知事 黒野 嘉之さん
- 千葉市 市長 神谷 俊一さん
- 一般社団法人 日本コンベンション協会 代表理事 武内 紀子さん
- 一般社団法人 日本旅行業協会 訪日旅行推進部長 齋藤 浩之さん
- 一般社団法人 日本イベント協会 副理事長 寺澤 義親さん
- 一般社団法人 日本展示会協会 事務局長 勝野 宏さん
- MPI JAPAN Chapter 名誉会長 山本 牧子さん
- 公益社団法人 日本観光振興協会 副理事長 長谷川 豊さん





Editor’s note:MICEは消費するのではなく次世代に残すもの。それこそが”サステナブル”

サステナブルとは一過性のものではない
これまで参加したMICE関係者が集まるイベントと比べ、参加者の年齢層がとても若いことに驚きました。第2部の参加者との交流では、新卒で入社したばかりの方もいらっしゃいました。JCCB事務局の久保さんも「若手の積極的な参加を重視している」と話します。ピッチコンテストでも、同世代の現場で働く方がピッチし、心動かされるものがありました。
「一過性のものではなく、どうレガシーを残すのか。それこそがサステナブルです」という基調講演中の堅達さんのメッセージがありました。「若手が発表していた」「素敵な内容だったね」で終わらせるのではなく、業界全体がどう一緒に動くのか。本気で変え、未来に残そうとする姿勢こそが求められ、”サステナブル”なのではないでしょうか。
JCCB創立30周年記念事業 ギャラリー




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