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【取材】Inter BEE 2025 出展企業インタビュー:目玉ブースばかり見るのではもったいない? 宝探しのように会場を歩き「次のスタンダード」を見つけてみましょう

メディアとエンターテインメントのプロフェッショナルが集う日本最大級のイベント「Inter BEE 2025」。11月19日~21日の3日間で34,072名が来場し、会場には映像や音楽で来場者を引きつける華やかなブースが数多く並んでいました。展示会に「情報収集」のために訪れる方は多いはず。目玉ブース以外のブースに、ユニークな商材やアイデアがあるのが、大型展示会の面白いところです。今回のInterBEEでも、世界初のシステムや、これから標準になっていきそうな技術が集まっていました。この記事を読むことで、そうした技術に触れられる出展企業の声を通じて、「目玉ブースだけを追いかけるのはもったいない」と感じていただけるのではないでしょうか。

では、さっそくブースで、お話を伺っていきましょう

ニコン

Nikon:大きなビリヤード台が奏功。ホール配置も味方につけた撮影体験ブース

株式会社ニコンは、子会社であるアメリカのRED Digital Cinema(RED)、イギリスのMark Roberts Motion Control(MRMC)と3社合同で出展していました。9月発売のRED「V-RAPTOR XE」、10月発売の「ニコン ZR」をはじめ、シネマ向けシリーズ「Z CINEMA」を中心に展示しています。

シネマカメラの良さを体感してもらうため、「肌がきれいに見えるオレンジがかった照明の中で撮影してほしい」という狙いで用意されていたのは、バーを再現したセットです。昨年の倍のコマサイズに拡大したことで、大きなビリヤード台も設置できるようになりました。

担当者は「REDのシネマカメラを含め、ここまで複数台の体験ができる場所はほとんどありません。3日間で多くの方にブースに来てもらうことができました」と話します。

ニコン

モデルを撮影するスタイルのブース自体は他にもありましたが、多くがホール4・5に集中していた一方で、ニコンのブースはホール8に位置していました。そこに大きなビリヤード台という大がかりなセットが加わったことで、めずらしさが際立ち、体験待ちの列ができるほどの賑わいになっていました。
ブースの世界観づくりだけでなく、ホール配置やコマサイズも含めて来場者の動線を考えることが、展示会での集客に大きく影響することを感じさせる事例です。


ケンコープロフェショナルイメージング

ケンコープロフェショナルイメージング:色の再現性にこだわる照明が展示会にもたらすもの

株式会社ケンコープロフェショナルイメージングは、プロ向けの照明機材や各種撮影機材を扱う会社です。ドラマや映画の現場で重視されるのは、カメラで撮影したときの「色の再現性」です。家庭用や一般的な展示会で用いられる「明るさ」を重視した照明とは、そもそもの考え方が異なります。

ただ、物をきれいに見せるという点では、高い力を発揮します。たとえば、化粧品や洋服を扱う展示会では、撮影用の照明を使うことも一つの選択肢になります。実際に、ヨーロッパの服飾メーカーが日本で展示会を行う際、撮影用照明を指定するケースもあるそうです。

ケンコープロフェショナルイメージング

担当者は「肉屋さんが『おいしそうに見える色』の照明を使うのと同じことです。色を意識すれば、より商品の魅力が伝わります。もちろんコスト面との兼ね合いはありますが、照明にこだわって展示する流れが来るかもしれませんね」と教えてくれました。
展示会のブースづくりにおいても、「どれだけ明るいか」だけでなく「どのような色で見せたいか」という視点を持つことで、商品やサービスの印象は大きく変わることが伝わってきます。


メディア・ソリューション部門で出会ったブース MICEやイベントで活躍しそうなソリューションも…

ここからは、メディア・ソリューション部門で取材したブースを紹介します。派手な演出ではなく、技術そのものを前面に出した小規模なブースが中心でしたが、そこには「次の当たり前」になり得るアイデアが集まっていました。

Flyby

Flyby:機能性とデザイン性を両立する“見えないコード” Luminary AR

東京農工大学発のスタートアップ企業である株式会社Flybyは、2025年7月にサービスを開始した「Luminary AR」を紹介していました。好きな画像の中にデータを埋め込む技術で、見た目は普通の写真のままですが、その画像を読み取ることで情報にアクセスできます。QRコードのようにコード自体が目立つことはなく、マップやカタログのように情報量が多いツールに用いれば、省スペース化にもつながります。機能性とデザイン性を両立した「見えないコード」として活用できる点が特徴です。

同社代表の中山悠准教授は、これまで可視光通信の研究開発を行ってきました。人の目に見えない形でデータを埋め込み、かつ正しく読み取れるようにする技術は難しく、3年かけて開発したといいます。

Flyby

公益財団法人東京観光財団の「TOKYO MICEテクノロジー導入ガイドライン」2026年版にも掲載される予定で、MICEの場面での活用も期待されています。中山さんは「説明するより実際に使ったほうがピンと来るので、この3日間でおもしろいと言ってくれる方にたくさん出会えました。QRコードの次の当たり前になってくれたらうれしいですね」と話していました。技術そのものだけでなく、「体験してもらうこと」で価値が伝わるタイプのソリューションであることがうかがえます。


株式会社ティーブイエスネクスト

ティーブイエスネクスト:省人化と汎用性に応えるオールインワンのスイッチャー T-Core(仮称)

株式会社ティーブイエスネクスト(TVSnext)は、ソフトウェアスイッチャー「T-Core(仮称)」を展示。メディアプレイヤー6入力、オーディオミキサー2系統、マルチビュー2系統、収録機能2系統を一体化し、これまでライブ中継に多くの機材が必要だった場面を、オールインワンでカバーできるようにした製品です。放送とは別に、YouTubeなどでのライブ配信を同時に行える機能も備えています。

放送業界では人手不足が課題となっており、省人化や汎用性のある機材へのニーズが高まっています。T-Coreは、放送局で使う大規模なシステムと、YouTube撮影や個人利用向けの小規模な機材の「いいとこどり」を目指したもので、コンパクトながら扱いやすいサイズ感が特徴です。

株式会社ティーブイエスネクスト

来春のリリースを予定しており、展示会のみならずアマチュアのスポーツ大会の中継や音楽ライブでの活用も視野に入れています。今回の展示会では、ケーブルテレビ局のスタッフから「地域スポーツやお祭りの中継にちょうどいいサイズ」といった声も寄せられていました。限られた人員と予算で配信や中継を行う現場が増えるなか、こうしたオールインワン型の機材は、イベント運営の現場における選択肢を広げていきそうです。


日本コントロールシステム

日本コントロールシステム:国内初展示の仮想広告システム Ultra-A

日本コントロールシステム株式会社は、バレーボールの試合中継に仮想広告を挿入するシステム「Ultra-A」を展示していました。モーションセンサーやマーカーといった事前準備が不要で、導入のハードルが低いことが特徴です。

日本の展示会でのお披露目は今回が初めてです。アメリカでは大学が独自に小さなケーブルテレビ局のようなものを持ち、学生の試合を発信する文化があるといいます。同社では「スポンサーを集めて収益が出せるという点で、国内でも利用場面を提案していきたい」と話していました。

日本コントロールシステム

最近ではメジャーリーグの試合などで使われていることもあり、仮想広告という手法自体の認知度は上がりつつありますが、本展では「初めて見た」という来場者も多かったそうです。「新しい看板のアイデアを探すために見てみた」という企業担当者もおり、新たなスポンサー表現のアイデアとして受け止められている様子がうかがえました。


ジャバテル

ジャバテル:世界初の「絶対時刻」タイムシフトを実装した Shift Cast48

「世界初」という言葉に惹かれて足を止めたのは、株式会社ジャバテルのブースです。同社が展示していた「Shift Cast48」は、世界で初めて「絶対時刻」のタイムシフトを実装したシステムです。

「本来、私たちは何時何分と表現される絶対時刻の中で生活しているはずなのに、これまで映像の世界ではその概念がありませんでした」と話すのは、同社の佐々木宏至CEOです。現在70歳で、今も現役で研究開発を続けています。今回紹介していたシステムでは、塾のオンライン授業や議会中継といった録画を、「開始時刻から何分後」ではなく、日時を指定して視聴できるようになります。一見単純にも思える仕組みですが、世界レベルの特許だといい、「いずれみなさんが驚く時代が来ると思います」と自信をのぞかせていました。

ジャバテル

ブースには数学理論と関連づけて壁掛け時計が多数設置されています。「絨毯を敷いていないのは、うちだけかもしれませんね」と笑う佐々木CEOですが、「展示会参加者の多くはエンドユーザーや機器のオペレーションをしている方です。うちのブースに注目するのは、技術的レベルの高い一部の人だけだと思います。発明とは常にそういうもので、今後スタンダードになったときに、なくてはならないものになります」と熱を込めて語っていました。
派手な装飾ではなく、技術とストーリーで来場者に向き合うブースの在り方が印象に残ります。

会場

取材を終えて:華やかな会場の中で光る「研究開発ハブ」としての顔

国内最大級のメディアイベントだけあって、会場内には映像や音楽で来場者を惹きつける華やかなブースが数多く並び、人だかりができている場所も少なくありませんでした。一方で、今回メディア・ソリューション部門を中心に話を聞いたブースは、どちらかといえば小規模で簡素なものが多く、装飾も控えめです。

それでも、そこには世界で初めてのシステムや、今後のスタンダードになり得る技術がいくつも並んでいました。Inter BEE は情報発信の場であると同時に、こうした技術が集まり、関係者同士が出会う「研究開発のハブ」としての役割を担っているイベントでもあると感じます。

大きくて目立つブースだけを追いかけていると見落としてしまうかもしれません、小路をゆくように様々なブースを訪ねてみると「次の当たり前」が潜んでいる。そんな気づきを得られる、Inter BEEでの体験でした。


会場

Inter BEE 2025 開催概要

名称:Inter BEE 2025
会期:11月19日(水)・20日(木)・21日(金)10:00~17:30 ※最終日は17:00まで
会場:幕張メッセ
入場:無料(全来場者登録入場制)

対象の業種:
放送事業者、放送ラジオ局、機器・製造メーカ、ポストプロダクション事業者、プロダクション事業者、映画・映像制作会社、ビデオソフト制作会社、レコード制作会社、音響・PA関連事業者、CATV関連事業者、舞台・演出・美術・照明関連事業者、コンテンツ制作関連会社、インターネット関連会社、通信事業者、コンテンツ配信事業者、施設・店舗関連事業者・官公庁・団体、商社、広告代理店、関連大学・専門学校
主催:一般社団法人 電子情報技術産業協会

公式Webサイト https://www.inter-bee.com/ja/

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