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イベントの取材・レポート

【レポート】関西物流展2025:スマートロジスティクスは次の段階へ。省人化・自動化は当たり前、導入のしやすさ×コストパフォーマンスに焦点

2025年4月9日~11日、インテックス大阪で開催された第6回関西物流展2025。過去最大規模となる405社・1,289小間の出展に加え、26,270名の来場者を記録。物流自動化や省人化ソリューション、スマートロジスティクスを体感しました。本記事では、展示会全体の熱気、主要企業ブースの取材レポート、今後の業界展望をわかりやすく解説します。(2025/4/9 取材)

開催概要

名称:第6回 関西物流展(KANSAI LOGIX 2025)
会期:2025年4月9日(水)・10日(木)・11日(金)
10:00~17:00[最終日11日のみ16:00まで]
会場:インテックス大阪
主催:関西物流展 実行委員会
後援:経済産業省 近畿経済産業局、国土交通省 近畿運輸局、大阪府、大阪市、堺市、公益社団法人関西経済連合会、大阪商工会議所

公式Webサイト https://kansai-logix.com/

物流における最先端の情報が集まり、活発な商談や議論が行われる場が欲しいという業界関係者の声を受けて、運輸・倉庫・流通関係の団体・協会が主催者となり、2019年『関西物流展』が立ち上がりました。
物流業界の「生産性向上」、「環境改善」にスポットを当て、課題解決、更なる発展に向けた切っ掛けとなる場を創ることを目的に物流に関するあらゆる製品・技術・サービスを一堂に集め、インテックス大阪にて開催いたします。

公式Webサイトより

注目度の高いブース、実演に人だかり。ブースで注目度が見える

2025年4月9日(水)~11日(金)の3日間、インテックス大阪3号館、4号館、6号館A・Bにて第6回 関西物流展(KANSAI LOGIX 2025)が開催されました。過去最大規模となる405社・1,289小間が出展、来場者数は26,270名に達しました。開催初日、6号館A前の受付には開場直後から常時50人ほどの列が形成され、15時時点でも多くの方が並び続けていました。

会場内は常に熱気に包まれ、特に6号館Aでは「◯◯時から実演を行います」のアナウンスが随所で響き渡り、大勢の見学者が集結。6号館A・Bでは商談テーブルも終始埋まり、商談中の出展者がひっきりなしに来場者対応を行う活況ぶり。海外からと見受けられる来場者もいらっしゃいました。

大勢の来場者を集めるブースも

スーツ姿以外の来場者も見かけます。物流現場のリアルな担い手が多く来場している様子が印象的。平均して2~3個の紙袋を手にした来場者が次々とブースを後にしていました。この賑わいは、物流業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートロジスティクスへの関心の高さを如実に示していました。


注目のブース、ユニークな展示が見られたブースをご紹介します

ソフトバンクロボティクス:ノルウェー発・冷凍倉庫での効率化に貢献するモデルが日本上陸

ソフトバンクロボティクスは、これまでペッパーをはじめとした飲食店向け配膳ロボットや清掃ロボットを全国展開してきましたが、物流自動化分野は関東中心でした。今回、西日本有数の物流特化展示会である関西物流展に初出展し、関西エリアへのアプローチを図りました。主力製品のAutoStore(オートストア)は、小物系自動倉庫としてアパレルやEC、メーカーに幅広くマッチ。ノルウェー開発の製品を日本で初めて代理店販売し、ソフトバンクグループがAutoStore社株式の約40%を保有する強固な関係性が信頼を支えます。通常仕様で冷蔵帯まで対応可能なほか、海外実績のある冷凍モデルを日本市場にも投入し、冷凍倉庫での作業効率化に貢献します。

お話を伺ったのは、ロジスティクス事業統括 ロジスティクス事業本部の横山様。「(ソフトバンクロボティクスが)物流にも進出していたのか」という反響が多く、これまで接点のなかった層への認知拡大を実感しているそうです。今後は関西での実績を重ね、展示会で出会った企業との具体的な案件推進を進めていきたいとのことでした。

ソフトバンクロボティクス株式会社 Webサイト https://www.softbankrobotics.com/jp/

Rapyuta Robotics:1年半で10件超の導入!高まる自動倉庫需要

Rapyuta Robotics(ラピュタロボティクス)のMarketing Specialist 宮本様によると、「ASRS※を始めてから1年半ほどで、自動倉庫の引き合いが急増。昨年は10件超の導入が決まり、うち1件は数億円規模の大型案件で、物流業界全体で自動倉庫需要が確実に高まっている。人手不足対策やコスト削減ニーズが背景にある」とのこと。
同社の米国展開は2~3年前にオフィスを設立し、まずAMR(自律走行搬送ロボット)分野で進出。実績を積んだ後、1年強前から自動倉庫事業を開始し、米国内でも採用事例が増加しています。強みは柔軟性と生産性。構造物回避や顧客に合わせたステーションレイアウトが可能で、ピッキング生産性を向上。ステーション作業スペースが広く、オペレーターの効率も高い。多台数ロボット制御技術により、ロボット数を増やして生産性を伸ばせる点も評価されています。

関西物流展では自動倉庫への関心の高さを改めて実感。多くの来場者に製品を紹介し、引き合いも増加しています。
出展は2022年から4回目。AMRからAMRフォークリフト、自動倉庫へと製品ラインナップを拡充し、幅広い顧客に提案可能に。ブース規模も年々拡大し、市場からの期待と需要の高まりを反映しています。

※ASRS(Automated Storage and Retrieval System):倉庫内で自動的に入庫・出庫作業を行い、在庫管理とピッキング効率を大幅に向上させる自動倉庫システムです。

Rapyuta Robotics株式会社 Webサイト https://www.rapyuta-robotics.com/ja/

eve autonomy:雨天も段差もOK。建屋間搬送の課題を解決する小型モビリティ

eve autonomyは、ヤマハ発動機と自動運転ソフト開発のTIER IVによる合弁企業として、ゴルフカートサイズの車両にTIER IV製ソフトを搭載した屋外搬送サービス「eve auto」を提供しています。オートバイ製造技術を応用し、工場敷地内の車両・歩行者混在環境でも段差やマンホール、傾斜、雨天下で安全に運用可能な設計が特徴です。今回はeve autonomy 事業開発部マーケティンググループの廣岡様にお話を伺いました。

倉庫内自動化だけでは完結せず、建屋間の搬送工程が残るため屋外対応が必須。ヤマハ発動機の工場で、建屋間の部品搬送の停滞や労働力不足といった課題から開発が始まりました。誘導線不要で舗装状況や坂道もクリアする技術を搭載し、競合が少ない市場で差別化しています。2020年に実証実験を開始し、2022年11月に正式サービス開始。2024年12月時点で約40社で約70台が稼働、ENEOSやリコーなど大企業の広大な工場で稼働中。夜間・雨天でも運行可能(雪は未対応)で、工場自動化の最後の一歩を担います。

今後は静岡本社から関西の工業地帯にも展開し、西日本展示会初出展で「eve autonomy」の認知拡大を図ります。メイン通路から視認性の高い斜め看板やPC操作による常時デモで多くの来場者を集めているようでした。

株式会社eve autonomy Webサイト https://eveautonomy.com

山善:550mmの狭い通路もクリア。さらに100kg搬送できるモデルを開発中

山善の『カチャカプロ』は「小型・簡単・リーズナブル」をコンセプトにしたAMRです。従来のAMRは大型で工場・倉庫内の狭い通路を通行できませんでしたが、カチャカプロは幅550mmの通路もクリア。家庭用カチャカをベースに、一般ユーザーでも操作可能なアプリ制御や音声認識機能を搭載。通常200万円程度するAMRを100万円以下で提供し、月20時間分の作業人件費を1年で回収可能です。

産業ソリューション事業部戦略企画部商品開発室長の山中様によると、現在は製造業・物流倉庫向けに開発をシフトし、山善はものづくり専門商社として製造業向けにカチャカプロを代理販売しているそう。電子部品や医薬品、医療機器など軽量ワーク搬送にマッチし、顧客からは30kg超可搬の要望が多いため、2025年末リリース予定の100kg可搬モデルをタイトスケジュールで開発中。従来AMRの大きさ・価格・操作難の課題を解消し、導入ハードルを大幅に下げました。参考資料として本邦初公開の100kgモデルは『超目玉』だと山中様は自信を示します。この出展に間に合わせるために、なんとか動く形になるよう開発を進めたという力の入れようです。

山善株式会社 Webサイト https://www.yamazen.co.jp/

親和パッケージ:工具不要のスチールケースで倉庫コストを圧縮

親和パッケージの開発営業チーム長北山和隆様によると、主力製品『スチコン』は工具不要で簡単組立できるスチールケース。ボルト不要のため現場で素早く設置できるのが特長ということです。派生品『Lib‑BOX』も同様に工具なしで組み立て可能で、消防法改訂に対応。リチウムイオン電池を箱に入れるだけで倉庫ごとの保管制限を回避し、物流動線を確保しながら危険物倉庫借用コストを削減します。

メーカーは周辺倉庫への振り分けを統合保管に切り替え、倉庫業者は容量不足で断っていた受注を獲得可能に。関西物流展には4~5回目の出展で昨年からLib‑BOXを展示。リチウム電池関係者から「初めて知った」「今後検討したい」との声が多く、業界の関心の高まりを実感しているそうです。北山様は創業以来30年培った技術を背景に、木箱からの切り替えを促進したいと意欲。職人手配や燻蒸・虫害対策が不要で、同一仕様の箱を大量調達できるため、自動車・建機メーカーに最適です。電気自動車普及に伴いリチウムイオン電池需要はさらに拡大。今後もスチコンとLib‑BOXの市場拡大を目指します。

親和パッケージ株式会社 Webサイト https://shinwa-co.co.jp/

東莞市華珵包装有限公司:直接取引でコスト削減。来場者のニーズを展示会で実感

東莞市華珵包装有限公司は中国広東省で包装資材を製造しています。ここ10年ほど日本向け商品の需要が急増していることを背景に、従来の中国商社を介した販売体制から脱却し、日本のユーザーと直接取引する機会を模索して昨年から関西物流展へ出展をしています。

ブースでは東京駐在員事務所の三上様に詳しくお話をうかがいました。
取材時点で名刺交換した方は「全員、関西の方」。日本の展示会に出展すると、1回で2・3社は契約が取れているそうです。
「普段は中国商社とのやりとりが多く、最終的な日本のユーザーを知らなかった。日本ではEC、Amazon、メルカリ等での需要拡大に伴い、従来日本で生産されていた包装資材に比べ、コストパフォーマンスの優れた中国製資材が注目を集めている。印刷やサイズのカスタマイズにも柔軟に対応し、小売店やBtoC向け商品向けに最適な製品を提供。当社の包装資材は実際に自社工場で生産されるため、信頼性も高く、商社を介さず直接日本のユーザーと接することで、より詳細なニーズ把握と迅速な対応が可能になる」


今後の物流業界は…省人化フェーズを超えて「導入しやすさ」重視のトレンド

省人化・自動化がすでに当たり前のフェーズを迎え、各社の次なる焦点は「導入のしやすさ」と「コストパフォーマンス」に集約されているように感じました。大規模工場向けの屋外対応AMRや組み立て式自動倉庫、小規模現場に適した小型AMRなど、ニーズに合わせた製品群が並び、いずれも誰でも簡単に導入・運用できることを強調していました。

主催者が掲げた来場者利便性向上策としては、展示エリア間の動線確保(6号館A→3号館、6号館B→4号館の連絡通路設置)や、AI・IoT関連ブース配置、特別セミナー会場の集中設計などが挙げられます。カテゴリー別に展示エリアを分けることで目的別に回りやすくなる一方、来場者の興味が限定されやすい側面もあるかもしれません。

2024年4月から適用された時間外労働上限規制による輸送能力低下やドライバー不足、運賃上昇など、いわゆる「2024年問題」は現場に大きなインパクトを与えています。その解決策として、スマートロジスティクスによる自動化・省人化の推進は急務です。展示会では、ロボット・AI・クラウドを組み合わせたデータドリブンな物流管理や、梱包容器のレンタルサービスによるコスト最適化、海外包装資材の直接調達など、サプライチェーン全体を俯瞰した提案が目立ちました。

今後は、これらの先進技術をいかに迅速かつスムーズに実装し、法規制や環境変化に柔軟に対応できるかが、物流企業の競争力を左右する鍵となります。第6回関西物流展2025は、現場の声を反映した実践的ソリューションが揃う場として、業界の“今”と“未来”をつなぐ貴重な機会となりました。次回以降も、ここで得た示唆を各現場へ持ち帰り、物流の更なる進化を加速させる起点となることを期待したいです。

取材担当:MICE TIMES ONLINE編集部 廣島

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