【取材】万博のレガシーを神戸へ。グローバル人材と地域が交わった「KOBE GLOBAL LOUNGE」参加した大学生によるイベントレポート

大阪・関西万博は、開催期間中の来場者数や話題性だけで評価されるものではありません。今、注目すべき課題があります。会場運営や各国パビリオンを支えた人材、現場で生まれた国際的なネットワークを、閉幕後にどのようにつないでいくのか。2026年1月13日、神戸で開催されたKOBE GLOBAL LOUNGEは、万博で活躍したグローバルスタッフと神戸の企業、行政、地域関係者が集い、万博の経験を次につなげることを目的とした交流イベントです。参加した学生の方に現地を取材してもらいました。本記事では会場で生まれていた対話と空気をレポートします。(取材担当:石野、編集:井上)

イベントが掲げた目的と万博レガシー
KOBE GLOBAL LOUNGEは、「万博のレガシーを、神戸へ。」をテーマに開催されました。主催は日本テクノロジーソリューションズとGLOCATALYST(グローカタリスト)。万博で働いたグローバルスタッフと、神戸および兵庫の企業、行政、地域、空港関係者がフラットにつながる場として企画されました。
資料によると、本イベントを単なる交流会に留めず、万博を経験した人材と地域側が直接対話するネットワーキングの機会と位置づけています。神戸空港の国際化や、今後のグローバル需要の高まりを見据えた文脈も示されていました。名刺交換や企業説明が中心になりがちな従来型イベントとは異なり、関係づくりそのものを主役に据えている点が大きな特徴です。
開催概要
イベント名称:KOBE GLOBAL LOUNGE
会場:日本テクノロジーソリューション(ONE HUNDRED CAFE)神戸市
日時:2026年1月13日 16時~20時
※日本テクノロジーソリューションは神戸市中央区に本社を置く、神戸発の問題解決型「ものづくり×クリエイティブ」企業です。創業1976年、設立1981年。特許技術の熱旋風式シュリンク装置TORNADO®を核に包装機器を展開。映像制作(ものづくりの挑人®たち)や社外連携も推進。会社Webサイト https://www.solution.co.jp/
※GLOCATALYSTは、万博のレガシーである”人”を未来に受け継ぎ、日本のグローバライズと新しい日本愛を育むことを目的とした団体です。
取材を担当した学生 石野悠さん(神戸市外国語大学 外国語学部イスパニア学科3回生)
アイルランドでの約1年間のワーキングホリデーの後、ヨーロッパで1か月の一人旅を経験。2025大阪・関西万博ではポルトガルパビリオンのテイクアウトにて、名物商品エッグタルトをお客様にお届けしてきました。

会場の「ONE HUNDRED CAFE」とは?参加者の構成は?
会場は、日本テクノロジーソリューションズ社内にあるONE HUNDRED CAFEです。「100人集える空間を」をコンセプトとしたカフェテリアで、交流を前提に設計された空間となっています。

開催日は2026年1月13日。資料上では16時から20時までの開催で、17時からコンテンツがスタートしました。参加者は、万博経験のあるグローバルスタッフが約30名、神戸にゆかりのある企業や行政関係者、大学生などが約20名。国籍は問わず、10以上のパビリオンからスタッフが集まっていた点も特徴です。万博内のパビリオンで広報を務めた方は、イベントのために茨城からお越しでした。
地元神戸からは神戸経済同友会や、神戸市経済局国際課の職員や市議会議員の方の姿も見られました。
万博スタッフの多くはAD証のネックストラップを着用しており、「もう二度と使うことはないと思っていた」という声も聞かれました。小さなアイテムではありますが、半年間の万博業務をともにした時間の象徴として、場の空気を和らげる役割を果たしていたように思います。

万博の記憶を呼び起こすオープニング
イベントがスタートし、乾杯の準備に入る際、万博会場で日常的に使われていた「どんどん立ち止まらずに前にお進みください」という号令が再現されました。会場から笑いが起こります。万博の現場を経験した参加者にとって、記憶が一気によみがえる瞬間でした。

乾杯は様々な言語で、自然に会話が生まれていく
乾杯は日本語だけでなく、ポルトガル語、スペイン語、トルコ語など複数の言語で行われました。万博スタッフから各国のお土産が用意されていたこともあり、初対面同士でも自然に会話が生まれていきます。多国籍でありながら、日本語を共通言語とする点も、このイベントならではの光景でした。

マイクの声が届かないほど。体験談が行き交う歓談の時間
歓談が始まると、外国籍スタッフ同士が話す際にも日本語を使う姿が目立ちました。序盤は、万博スタッフ同士やゲスト同士での再会を喜ぶ声が中心です。万博終了後、スタッフ同士が集まる機会は限られており、「こういう機会に、また皆さんと会えてうれしい」という声も聞かれました。
時間が進むにつれて、スタッフとゲストの間での交流が増えていきます。特徴的だったのは、名刺交換で会話が終わらない点でしょうか。万博で働くに至った経緯や、現場での体験、半年間という限られた期間をどう過ごしたのかといった話題が、食事やお酒を手にしながら交わされていました。マイクの声が届かないほどの盛り上がりです。
万博スタッフの魅力として挙げられていたのは、半年間という「今」を楽しもうとする前向きな空気感、万博を成功へと導いた行動力、フットワークの軽さとバイタリティです。これらは説明ではなく、会話の端々から自然に伝わってきました。

音楽とトークがつくる交流のリズム
プログラムの一つとして、ポルトガルギターによるファドの生演奏が行われました。演奏時間は約30分。演奏者は月本一史さんで、リスボンでファド*を学び、万博ではポルトガルパビリオンで演奏されていました。
*ファド:ファド(Fado)は、ポルトガル発祥の民謡です。哀愁や郷愁、運命を感じさせる歌詞を、歌い手が情感豊かに歌い上げます。ギター(ポルトガルギターなど)の伴奏が特徴です。
歓談でにぎわっていた空間に音楽が加わることで、人の集まり方や会話のテンポが変わります。足を止めて演奏に耳を傾ける参加者、音楽をきっかけに声をかけ合う姿も見られました。
その後の万博トークでは、万博期間中の出来事や裏話が語られました。6か月の間だけ茨城から大阪に引っ越して働いていたというスタッフの話もあり、万博は一時的な業務ではなく、生活の変化を伴う経験だったのだとあらためて感じます。

「Saudade神戸」神戸PR企画から生まれた会話
後半に行われた神戸PR企画では、アメリカ、ドイツ、ブラジル、オーストリアなど、さまざまな国籍のスタッフが神戸の魅力を発表しました。その場で考え、ホワイトボードを使って共有します。


「もしあなたが神戸のPR担当だったら」という問いに対し、海と山に囲まれた港町という地形や、坂道の多さが母国に似ているといった視点が挙げられました。ブラジル人スタッフからは神戸ビーフの魅力が語られました。神戸牛を扱う企業との間で、世界での神戸ビーフのあり方について意見交換が行われた場面もありました。
続く「神戸の30秒CMを作るなら最初の一言は」というテーマでは、「Saudade!*神戸!」という言葉が挙がりました。集合写真の掛け声としてその場で採用。短いフレーズが参加者の共通言語となり、新たな会話のきっかけになっていました。
*Saudade:サウダージ。ポルトガル語です。失ったもの・遠い人や場所・過ぎ去った時間への強い思慕と、もう戻らない切なさが同居する感情を指します。郷愁、恋しさ、欠落感が重なったニュアンスです。


万博レガシーを地域に根づかせるKOBE GLOBAL LOUNGEが果たす役割
KOBE GLOBAL LOUNGEは、万博で活躍したグローバルスタッフと神戸の企業、行政、地域関係者が、肩書きや立場を越えて出会う交流の場でした。採用説明会や企業紹介を前面に出すのではなく、万博での現場体験や個人の言葉を起点に対話が進んでいた点が、このイベントの特徴です。

会場では、再会を喜ぶ声、万博の現場を振り返る笑い、神戸という街を外から見た率直な視点が交わされていました。ポルトガルギターの生演奏や即興の神戸PR企画といったコンテンツは、単なる演出ではなく、参加者同士の会話を生み出すための「材料」として機能していました。
万博のレガシーとは、施設や制度だけでなく、人が再び集い、経験を共有し、新たな関係を築くことでもあります。KOBE GLOBAL LOUNGEは、その具体的な形を神戸という場所で示した事例の一つでした。万博を経験した人材と地域がどのようにつながり続けるのか。その問いに対し、本イベントは一つの答えを提示しているようでした。
(取材担当:石野、編集:井上)
取材を担当した石野さんのコメント
今回のイベントも万博も、国籍問わず日本を愛する人によって支えられていたと思います。コンテンツ「神戸PR企画」が示しているように、世界と比較するからこそ明確に見えてくる神戸・日本の魅力と課題があります。近年、人種や国籍に関する問題が日本でも大きく取り上げられれるようになってきましたが、今回のイベントのように言語やバックグラウンドの垣根を越えて人と人が繋がれる場所が増え、私たちの住む場所がより魅力的になることを願っています。



