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【取材】映画『宝島』舞台、沖縄 コザ。挑戦の街が新しいMICEをつくる。スタートアップのイベント「KOZAROCKS」を主催するフォーシーズ株式会社

米軍基地の門前町、沖縄の「コザ」をご存じですか?

2025年9月に公開される映画『宝島』(主演・妻夫木聡)。その舞台となっているのが、沖縄本島中部に位置する「コザ」です。コザで見逃せないのは、ユニークな「コザスタートアップ商店街」。毎年、スタートアップイベント「KOZAROCKS」(コザロックが開かれ、2025年の開催時には5,000名が訪れるほどの盛り上がりを見せました。

KOZAROCKS

KOZAROCKSを主催する小川さんに話を聞く

そう語ってくれたのは「KOZAROCKS」を主催するフォーシーズ株式会社執行役員の小川さん。スタートアップのイベントは全国各地で盛んに行われていますが、「KOZAROCKS」がユニークなのは、コザが新しさを受け入れる姿勢があることと、運営チームの柔軟さにあるでしょう。そう確信できるお話を、現地取材にて伺いました。

KOZAROCKS

沖縄市「コザ」とは、異国文化が混ざるチャンプルータウン

本島中部に位置し、沖縄県では那覇市に次ぐ人口14万人を抱える沖縄市。「コザ市」と「美里村」が、1974年(昭和49年)に合併し、新しい市名として「沖縄市」が誕生しました。

KOZAROCKS

「コザ」とは、沖縄市の中心市街地であるコザ十字路から胡屋(ゴヤ)地区、中の町地区まで広がる文化圏の愛称。戦後、米軍基地の門前町として興隆した中心市街地は、60年代〜80年代にかけて県内随一の繁華街として賑わい、そこで多くの芸能が生まれ、民謡やオキナワンロックは全国的に一世を風靡することになる。

引用:沖縄市観光ポータルサイト KOZA WEB

今もなお、アメリカ文化の影響が色濃く残っていて、異国情緒あふれる独特な雰囲気を楽しめるチャンプルータウン。そのおかげで、新しい文化を受け入れ、変化を恐れない風土が根づいたのかもしれません。

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昼も夜も人が行き交う場所を目指して

店の看板には英語が多く、BARや居酒屋が点在しています。13時ごろに商店街に着きましたが、日中のアーケードは人通りが少なく、静けさを感じました。

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「コザは夜の街。週末の夜は、外で飲む人たちが現れるんです」と小川さん。夜になると街は一気に華やかさを増します。同社が目指すのは、昼も人が行き交う場所。いかにコミュニティを盛り上げるか考えた結果、イベントを行っています。


「昔は今より人通りが少なかった」世界にイノベーションを起こす挑戦者を生み出す商店街

かつてはシャッター街だったこの場所に、2016年「コザスタートアップ商店街」が誕生しました。起業をめざす人や新しい挑戦をしたい人たちが集まる拠点となり、今では“企業創業の聖地”としての存在感を放っています。

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周辺にはユニークな企業が集まっています。こちらも誘致されてきたのだそう。

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コザスタートアップ商店街事務局/コワーキングスペース
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OKINAWA INNOVATION LAB
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GEEK HOUSE OKINAWA
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起業家アート常設展
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HELLO WORLD!


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スタートアップイベント「KOZAROCKS」

スタートアップ商店街のオープンとともに始まった都市型成長カンファレンス「KOZAROCKS」。その面白さは街全体を使うことから生まれます。メイン会場の「コザ・ミュージックタウン」を中心に、商店街、拠点施設、飲食店などを連携させ、コザという街そのものを体感できる構成にされています。

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2025年の資料より

トークセッションやピッチといったビジネスプログラムに加え、マルシェやライブなど有料パスがなくても入れるエリアもあります。一般の方や地元の方がスタートアップの空気に触れられますね。

KOZAROCKS
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夜になると交流会「パルミラ夜市」が行われます。2024年は台湾がテーマだったため、商店街と相談をし、イベント限定で名付けたものだそう。地元の協力がとても力強いものだとわかります。

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コザ・ゲート通りというコザのメイン道路を、一部封鎖してキッチンカーが並ぶフードイベントが開催されています。

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コザに魅力を感じて訪れる人が絶えない コザに集まるのはどんな人?

飲み好きにすっごく愛される街

「県外から毎週、お客さんが来られるんですよ。“コザに行きたい”と。たとえば、仕事の打合せで来たついでに立ち寄ったり。コザを気に入って“今度は知り合いを連れてきたい”って、週末に一緒に遊びに来てくれたり。飲み屋が多いので、訪れた際に地域の色んなお店を回りたい方達から、すっごく好かれるんです。起業家や経営者ともマッチしやすいと思います」

普段の肩書きを脱いで。異国感&居心地の良さ

ここに集まるのは、経営者やいわゆるサラリーマンルートから外れて、自分の人生をおもしろく生きたいという価値観を持つ人たち。そんな人にとって、コザは肩書きから解放される場所でもあります。

「偉い方も日々来られます。夜一緒に飲みに行くと、ここでは肩書きを脱いで皆んなで乾杯し合えるんです。この前もコザのインターンシップメンバー(大学生)と乾杯して、楽しく飲んでました(笑)」

イベントがない日でも、人を惹きつけてやまないのがコザの魅力。訪れた人がファンになり、次は誰かを連れてくる。この繰り返しが街に活気を生み出しています。

KOZAROCKS

私たちがやりたいのは街の回遊と挑戦の街へ

コザのファンになって、誰かを連れてきてもらいたい

「この街にある資源をどう使うかを考えています。来訪者にお金を落としてもらうのはもちろん、好きになってまた来てもらいたいんです。たとえば「KOZAROCKS」に来て、コザを知って、また来たいと思って、誰かを連れてきてくれる。そんな循環をつくりたいんです」

”挑戦の街”だと私たちは言っていて

「ロックミュージシャンが世界に向けて挑戦したように、この場所からスタートアップなど、新しい今の時代の挑戦者を応援したいです。入居者は50社を超え、そのうち半分は県外・海外から。台湾をはじめアジアとの繋がりを増やしていく方針です」

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コザはユニークベニューであり、ミニMICEの舞台になる

コザに来る人が求めるのは”学び”

“ユニークベニュー”としてぴったりなんですよ。いわゆる沖縄のMICEとなると、“海の近くで夕日を見ながらチルする”みたいなイメージだと思うんです。それも良いと思っています。ただ、コザに来る人たちが求めているのは、学びを得ることだと思います。『なぜコザで活動しているのか』『コザとはどんな場所か』というストーリーや歴史を知ってもらう。そこから『自分は何ができるんだろう?』って考えてもらう。どちらかというと研修のような場面で、使われることが多いですね」

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行政、政治家の視察や、社員研修で訪れる

コザには行政関係が視察に訪れています。経産省などの自治体・行政や、政治家、企業の若手社員、役員クラスなど。スタートアップの現場を知るためや、既存の価値観を打破するためと、訪れる理由は様々です。

開発合宿、報奨(インセンティブ)旅行にも

開発合宿表彰式を兼ねた報奨旅行にも活用されています。2019〜2024年度の実績では、年間訪問者数はおよそ10,000名、総イベント数は556件にのぼります。

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コザは違いを出せるんじゃないか

イベントにおいて”地域”とは、単に会場として使うのではなく「街に何を残せるのか(レガシー)」という視点が大切だと小川さんは話します。

“ただ会場として使いたい”んだったら、何も残らないんじゃないかなって。実際、地域の方々に丁寧に説明しないと『何それ、うちらの資源を使いたいだけなんじゃない?』って言われることもあります。私たちは関係人口を増やし、事業を始める人を生み出していきたいと考えています。これからは、ただ“来たら受け入れる”スタイルから一歩進み、”MICEのプログラム”としてきちんと形づくっていきたいです」


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Editor’s note :MICEの挑戦者でありたい

従来、MICEといえば「国際会議」など大規模なものをイメージされる方が多いのではないでしょうか。しかし、MICE TIMES ONLINE編集部は地域のMICE、小規模なMICEのことも伝えていきたいと考えています。コザを訪れて強く思ったのは、様々な形の新しいMICEがここにはあるということです。コザの新しさを受け入れる姿勢と、運営チームの柔軟さ。コザをよく理解しているからこそ、街全体を舞台にしたイベントができる。その安心感と包容力を肌で感じました。

MICEの枠組みにとらわれず、新しいスタイルを提案していきたいと話す皆さん一緒に、私自身もMICEの変化を歩んでいきたい。そう思えた夏の終わりでした。


KOZAROCKS

コミュニティマネージャー 小川さん

実は京都ご出身。大学進学を機に東京へ上京し、仕事も含めておよそ10年ほど東京で過ごしました。その後、新型コロナ禍をきっかけにフリーランスとして各地を転々とし、最終的に沖縄・コザに腰を据えることを決めたそうです。もともとは「スタートアップ商店街」の施設を利用するフリーランスの一人だったそう。2022年に声をかけられ、コミュニティマネージャーとして関わることになりました。いまでは人と人をつなげる役割から、イベントの企画・運営まで幅広く携わられています。


映画『宝島』

2025年9月19日、真藤順丈による傑作小説『宝島』が劇場で見られる日が来ました。6年の歳月をかけて公開されます。主演は妻夫木聡さん、共演に広瀬すずさん、窪田正孝さん、永山瑛太さんなど豪華キャストが揃いました。『宝島』の舞台となっているのは「コザ」です。本土復帰前の沖縄、コザの歴史を知る上で観ておきたい作品です。
映画公式Webサイト https://www.takarajima-movie.jp


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