
【レポート】京都でOpen Game Fest 2025開催 学生と企業が交流『都市伝説解体』『コーヒートークトーキョー』『FUBUKI ~zero in on Holoearth~』『カセットボーイ』など 京都コンピュータ学院
専門学校のキャンパスが、ゲーム業界の交差点に──。
京都コンピュータ学院・京都駅前校で初開催された「Open Game Fest 2025」には、インディーゲーム開発者から大手ゲームメーカー、そして学生まで、多彩なメンバーが集まりました。来場者は遊ぶだけでなく、作る・学ぶ・採るを一度に体験できるイベントです。本記事では、イベント会場の熱気あふれる様子と出展者へのインタビューを通じて、企業とインディー開発者、学生、そして教育機関がどのように化学反応を起こしているのか、そのメカニズムに迫ります。
※2025年5月17日に取材

Open Game Fest 2025:セッション、プレイなど楽しめる5つのゾーンをご紹介
会場は京都コンピュータ学院・京都駅前校。JRの車窓からも校舎が見えますよね。ゲーム関連のイベントに足を運ぶのは今回が初めて。にわかは場違いじゃないかと心配していたのですが、入口でスタッフさんが元気よく「こんにちは!」と迎えてくださり、不安は吹き飛びました。受付でも丁寧かつハキハキと案内をしていただき、気持ちよく会場へと足を進めました。

来場者にはイベントロゴの入った、Tシャツとノベルティバッグを配布。パンフレットはなく、デジタルで確認するスタイルです。パンフレットがなくても手元では確認はできるので、十分かと思いました。

学内のホールや教室が、Open Game Fest 2025の舞台です。ゲーム開発者はもちろん、業界をめざす学生やパブリッシャー志望まで、ゲームに関わるすべての人が楽しめる5つのゾーンで構成されています。

1.プレイスペース(5階教室)

6つの教室を使ってインディー42ブース+学生作品18ブースが出展。奥行45×幅180cmの長机にモニターを置き、タペストリーなどで世界観をがっつり表現されています。
リリース前のゲームを試遊できるところも多く、気になるタイトル目当てにやって来る人の姿も。「これ面白そう!」と思ったら、遠慮せずに立ち寄ってOK。開発者さんと直接おしゃべりしながらゲームが遊べるので、熱量がそのまま伝わってきます。廊下でも名刺交換が始まり、あちこちで新しい出会いが生まれてました。プレイも交流もできる空間です。
インディーゲームとは 『マインクラフト』『8番出口』も実はインディー作品!
インディーゲームとは、大企業の資本や流通網に頼らず、少人数の開発者が自由な発想で制作するゲームを指します。近年はSteamやNintendo Switchなどダウンロード販売が普及し、開発環境も低コスト化したことで参入障壁が下がり、個性的な作品が次々に生まれています。
代表的なインディーゲームには、Minecraft(マインクラフト)、8番出口(The Exit 8)、Undertale、Among Us などがあります。
SNSやクラウドファンディングでファンと直接つながる文化も根付き、コミュニティ主体で盛り上がるのが特徴です。インディーゲームイベントでは開発者が自らブースに立ち、デモプレイや開発裏話を共有するため、プレイヤーは作品の背景や思いを体感できます。世界的な賞で評価され大手パブリッシャーと契約に至る例も多く、市場規模は年々拡大しています。こうした流れは地域イベントや観光資源と結び付いた新たなビジネス機会も生み出しており、MICEの視点でも注目すべき分野です。


※後半で出展企業インタビューを行っています。最後までお読みください。
2.スポンサースペース(6階大ホール ホワイエ)

本イベントのスポンサー企業が出展するエリアです。「コーラスワールドワイド」、「アクティブゲーミングメディア」、「CRI ・ ミドルウェア」、「NTT ドコモ」、「グラフィニカ」、「PhoenixxEpic Games Japan」の7つの企業が出展していました。テーブルは90x360cmとプレイスペースの2倍サイズ。最新技術デモやイベント告知…企業ならではの“見せ場”がずらりと並びます。
3.セッションステージ(6階大ホール)

オープンワールドゲームの制作過程の実例を紹介する講演や、メディアとパブリッシャーが登壇する複数名のパネルディスカッションなど、1回50分、計5セッションが大ホールで行われました。
オープンワールドゲームとは? 自由度が高く広大な世界を巡る体験ができる人気ジャンル
オープンワールドゲームとは、広大な仮想世界を自由に巡りながら自分のペースで物語やミッションを進められるゲームです。シームレスにつながったマップに昼夜・天候の変化が組み込まれ、多彩な物語が用意されているため、まるで生きた世界を旅しているような没入感を味わえます。近年は表現力が飛躍的に向上し、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などの大ヒット作が登場しました。自由度の高さは動画配信との相性も抜群で、コミュニティが攻略情報や二次創作を盛んに発信し、市場を大きく押し上げています。代表的なオープンワールドゲームには、グランド・セフト・オートV、エルデンリング、ゴースト・オブ・ツシマ、ゼノブレイドクロス などがあります。
私は、15時半 Epic Games Japanさんの「リアルで大規模なだけじゃない!UEで作られた世界中の様々なゲームのご紹介!アンリアルだけじゃない!Epic Gamesの様々なツール群 Epic Ecosystemのご紹介!」を拝聴。セミナー会場は100名ほどの熱心な聴講者がいました。

Unreal Engine(以下:UE)を知らない参加者向けに「Unityみたいなもんです」と一言紹介したのが、どっと沸く会場。業界の方には分かる笑いですね(笑)。UEは米国のEpic Games社が開発したゲームエンジンのソフトウェアです。ゲームに必要なものが揃っており、プログラミングなしでもゲーム開発ができる夢のようなソフトなのです。
テーマは「UEは大規模でリアルなものだけではない」。大ヒットとなった『8番出口』もUE。テレビアニメ『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』ではみんながUEを使い、従来の工程をまたいで作業する体制を築き、効率化を図りました。また、『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のようなHD-2D作品もUEで制作されることがあると話されていました。
出展:ASCll.jp 『第七王子』のEDクレジットを見ると、なぜ日本アニメの未来がわかるのか(https://ascii.jp/elem/000/004/203/4203718/)

タイムテーブルも載せておきます。
https://opengamefest.com/time-table/

4.ハンズオン
13時になると、プロ講師による90分のハンズオンがスタート。「今日から始める!3Dアクションゲーム制作ワークショップ」「猫でもわかるUnreal Engine—はじめてのゲーム制作—」でUEの世界に飛び込む回、さらには「プリビズパワー全開!次世代ワークフロー入門」と題し、企画段階から実制作までの流れを実践的に学べる回がありました。手を動かしながら、開発の楽しさや裏側のテクニックを直に体感できるのが魅力です。USBメモリ持参でデータを持ち帰れるようにされていました。
5.懇親会(6階ラウンジ)
イベントの締めくくりは、6階ラウンジでの立食形式の懇親会。イベント中は対応に追われていたという参加者も、交流会を通して、同業界のコミュニケーションがとれる機会です。
出展企業インタビュー:学生がプレイ、意見を交わせる場になっている
『東京ゲームショウ』『BitSummit』『東京ゲームダンジョン』など、全国にはたくさんのゲーム関連のイベントがあります。今回の出展者の多くも、実はそうしたイベントを何度も経験している常連ばかり。でも「ほかと比べてこのイベントってどうですか?」と聞いてみると、意外な答えが返ってきたんです。いい意味で“ちょっと違う”このイベントならではの魅力が、参加者の声から浮かび上がってきました。
墓場文庫:『都市伝説解体』『和階堂真の事件簿』
ピクセルアートの独特の世界観で、怪異を解き明かすミステリーアドベンチャーゲームです。代表作『和階堂真の事件簿』シリーズは、集英社ゲームクリエイターズCAMP賞を獲得。続く『都市伝説解体』は集英社ゲームズとのタッグで生まれたタイトルとして、大ヒットを記録しています。
あだP、きっきゃわーさん:

神戸を拠点に活動する私たちにとって、京都は距離的にも遠くはなかったです。これまでもさまざまなイベントに出展してきましたが、Open Game Fest 2025では、特に学生さんとのつながりが濃密に感じられたのが大きな違いです。ブースには入れ替わり立ち代わり、多くの学生さんが訪れてくれました。
私たちのゲームには、普段ゲームにどっぷり浸かる方より「あまりプレイしないけれど、やってみると夢中になった」というファンの方が多いのです。イベントにも、新しい層の来場者を呼び込む効果が期待できると思います。

学生さんからは、「ドット絵のゲーム制作なら、どのソフトがおすすめですか?」といった、これから一歩を踏み出す方ならではの質問も受けました。一方で私たち、40代のクリエイターとしては、10代の感覚を生で聞けたことは大変貴重な機会になっています。ある学生さんに「アクションゲームへの10代の感じ方」を聞いてみたんです。「僕はじっくりと遊ぶタイプのゲームが好きだけど、周りを見ると、短い間隔で快感を得られるゲームが好まれると感じる」と教えてくれて。貴重な意見を聞けました。あと、皆さんしっかり受け答えをされていて驚きましたね。
また、先生方の来訪もありました。とある先生は授業の一環として、シンプルなアクションゲームを遊ばせてみてから、構造を理解させ、学生に模倣制作させるカリキュラムを実践中。私たちのゲームも授業で使ってもらったそうなんです。学生さん、ましてや先生に会うイベントは他になかったので、非常に良い機会になりました。
墓場文庫 Webサイト:https://www.hakaba-bunko.net/

Chorus Worldwide:『コーヒートークトーキョー』『Tactics – Prologue 』『UNDEFEATED: Genesis』
Chorus Worldwide(コーラス・ワールドワイド)さんは、日本のゲームソフトのパブリッシャーです。3タイトルを試遊できるようにされていました。
『コーヒートーク』はインドネシアのToge Productionsが開発したノベルアドベンチャーゲーム。プレイヤーはバリスタとなり常連客との交流を深めていきます。1.2と出た作品のスピンオフがChorus Worldwideさんが関わる『コーヒートークトーキョー』。2025年発売予定のタイトルで、関西初のデモ版披露の場となりました。ユーザー層は20代後半から30代くらいが中心で、特に女性人気が高いのも特徴です。私もイベント後にシリーズ1作目をまるっとプレイしてみたんですが……正直、ハマりました。普段あまりゲームをしない人でも、シナリオがしっかりしてて読み応えがあるので、するっと世界に入り込める作品だと思います。
COO / 代表社員 二宮さん(写真 右側):

他ゲームイベントと同じように準備し持ち込みました。「東京ゲームショウ」にも出展しているのですが、あちらはの“がっつりゲーム好き”が多くて、タイトル目当てで試遊しに来てくれる印象が強いんです。一方、今回の会場は専門学校。卒業生や10代の学生がふらっと立ち寄って遊んでくれる場面があり、専門学校開催ならではの面白さを感じました。若い人たちが楽しんでくれるのを間近で見られて…。口コミで若い世代にも「このゲーム面白いね」と広がり、知ってもらえれば嬉しいですよね。
15時台には「コーヒートークを試遊したくて…」と大阪から女性の方が来てくださりました。グッズ展開やイベント展示を進めつつ、5月には渋谷と池袋PARCOでのポップアップイベント、さらに作品に登場するドリンクメニューが飲めるカフェやグッズ販売も予定しています!
Chorus Worldwide Webサイト https://chorusworldwide.com/
イベントサイト:https://art.parco.jp/otherspace/detail/?id=1729

Wonderland Kazakiri inc.:『カセットボーイ』
『みてないモノは、存在しない…”在る”を操るパズルアドベンチャー』
一見2Dのシンプルな世界に見えますが、実は3D!奥行きもある世界なんです。ないものは存在しない「シュレディンガー」の世界を舞台にしたパズルアドベンチャーゲームです。従来のパズルゲームをプレイする人も、すこし複雑に感じはずと、CEOの譽田(ほんだ)さんは言います。
数あるゲームイベントに出展してきた同社ですが、専門学校での開催はやはり珍しいようで、学生さんのリアクションが特に大きかったそう。また、東京のイベントで出会ったパブリッシャーや開発会社の代表との再会の場にもなりました。
いつまで経っても人だかりができている人気ブースの秘訣についても尋ねました。
CEO 譽田さん(写真 右側):

パソコンゲームだとどうしても「1人1台」になってしまって、誰かが遊んでいると他の人が体験できない…なんてこともありますよね。そこで、“待ち時間問題”を解消すべく、席は3人がけにして、Nintendo Switch Liteをなんと6台も用意しました。通りかかった人には声をかけて、立ったままでも遊んでもらえるようにしています。
今年中にリリースを予定していて、目的はSteam®のウィッシュリストに入れてもらうことです。
Wonderland Kazakiri inc. Webサイト https://wl-kz.com/



株式会社Phoenixx『OSAKA INDIE GAMES SUMMIT』『FUBUKI ~zero in on Holoearth~』
インディーゲームのパブリッシュ、企画・開発、アーティストやクリエイターのマネジメント、イベント運営など幅広くされている企業です。今回のブースでは、ホロライブの白上フブキを主人公にしたアクションゲーム『FUBUKI ~zero in on Holoearth~』と、オンラインで最大4人対戦が楽しめるアクションゲーム『TrhnityS』の2タイトルが試遊できます。

同社は2023年に始まった『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025』を主催しており、武蔵野市・吉祥寺をあげての大規模イベントは今年23,802人の動員を記録しました。入場料は1,000円、出展料は無料。「儲けよりもゲーム業界の発展を」という思いを教えてくださりました。
執行役員 野崎さん:
『サウス・バイ・サウスウエスト』(SXSW)のような、アートやカルチャーを伝えつつ、家族連れにも気軽に来てもらえるようなイベントにしたいですね。そして今年10月4日・5日には、関西初の開催となる『OSAKA INDIE GAMES SUMMIT』が新設のコングレスクエアグラングリーン大阪で行われます。Open Game Fest 2025では、関西の方にイベントを知ってもらいたいたいです。
アメリカのイベント『サウス・バイ・サウスウエスト』について詳しくはこちら
https://micetimes.jp/sxsw-2025/

東京だけでなく大阪でも、アートやカルチャーをクロスオーバーさせたイベント作りに挑むPhoenixxの次なる一手に、ぜひご注目ください。
株式会社Phoenixx Webサイト https://phoenixx.ne.jp/
イベント Webサイト https://funky802.com/osaka-indiegames-summit/
コングレスクエアグラングリーン大阪 会場レポートはこちら
Editor’s note:学生と先生と関係者にダイレクトに繋がれる“業界の交差点”
同人イベントのような熱気と距離の近さがありつつも、企業ブースやセッションが行われることでビジネスの要素もあるイベントでした。専門学校というロケーションは一般公開されるMICEイベントとしては珍しい例です。教室や大型ホールが揃う校舎は、他のイベントと比べても良い会場になります。学生に情報が届きやすいだけでなく、企業が足を運んで来てくれることで”学びの場”にもなっていました。
出展企業が最も喜んでいたのは、これまでリーチできなかった若い世代のリアルな反応を得られたこと。直接フィードバックをもらえる手応えは、次の開発やプロモーションのヒントになったといいます。採用を目的とした出展は取材した中では見受けられませんでしたが、今後の可能性として注目したいポイントです。
開催概要
開催日:2025年5月17日(土)
催事会場:京都コンピュータ学院 京都駅前校(〒601-8407 京都市南区西九条寺ノ前町10-5)
来場者数:500人以上を想定(開催前情報より)
主催:株式会社Indie-us Games
共催:京都コンピュータ学院、株式会社ディレクターズ・ユニブ、エムエスアイコンピュータージャパン株式会社
入場料:無料
ギャラリー






