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【万博イベント取材】シンガポールがMICE開催都市として選ばれる理由(後編)エドワード・コー氏に独占インタビュー in 大阪・関西万博シンガポール館

シンガポール政府観光局が発表したロードマップ「ツーリズム2040」。2040年までに、MICEによる観光収入を現在の3倍に引き上げるという目標が掲げられました。このビジョンを実現するため、シンガポールはいかにMICE戦略を進めていくのか。シンガポールのMICEを率いるエドワード・コー氏に尋ねました。

前編では、大阪・関西万博シンガポール館で開催されたビジネスイベントの様子をレポートしています。シンガポールが注力するヘルス・ウェルネス分野について知れます。イベントの様子はこちら。
https://micetimes.jp/singapore-mice2506-1

エドワード・コー(Dr. Edward Koh)

シンガポール政府観光局傘下のシンガポール・エキシビション&コンベンション・ビューローにおいて、Conventions, Meetings & Incentive Travel 部門を率いています。シンガポールを国際的な会議・コンベンション開催地としての地位に維持・強化するため、質の高い団体会議や企業イベントの誘致に関する戦略的助言を提供しています。また、シンガポールをビジネスイベント開催地としてさらに強固にするため、国内産業の成長も見ています。


MICEでGDP1%貢献、15%の関係者をどう増やすか

—シンガポールのMICEのポテンシャルについて教えてください。
2019年の数字ですが、シンガポールのMICE産業は、1%のGDPに貢献し、3万人以上の雇用を生み、38億ドルの売上をあげています。非常に大きなポテンシャルがあります。

日本は都市が非常に多く、一方でシンガポールは1つだけ。ICCAのランキングでも、国別では日本が1位。都市別だとシンガポールが1位です。お互いによく取り組んでいると思います。東京とシンガポールは「ベストシティーズ・グローバルアライアンスのメンバーでもあり、お互いに情報のシェアをする関係です。

ベストシティーズ・グローバルアライアンス(The BestCities Global Alliance)
国際会議誘致を拡大へ向けて加盟都市相互の知見や情報共有を行なうため、2000年に設立された団体
https://bestcities.net/

—「ツーリズム2040」では、MICEの観光収入を2040年までに3倍に拡大するという目標を掲げられました。どの程度本気で臨んでいきたいのかお聞きしたいです。
本気です。その理由としてMICE産業はグローバルであり、レジャー客にくらべて1人当たりの支出額が2倍というデータもあります。現在はシンガポールに来る方のうち15%がMICE関係者です。この数字はもっと増やせると考えています。

—”15%”をさらに増やすために、どのような取り組みが考えられますか。
パートナーシップが非常に重要だと思います。今回のイベントでは「青年会議所(JCI)」や「株式会社JTB」が登壇してくださりました。彼らを通じて、多くの企業や団体にアプローチしていきたいです。


なぜシンガポールに来るべきか、

—シンガポールの”課題”については、いかがでしょうか。
たくさんの課題があります。やはり新規・既存の関係において機会を探していきたいですね。
確実にマンパワーが足りなくなっているため、生産性を上げなくてはいけません。あとは”ストーリーテリング”が重要だと考えています。「なぜシンガポールに来るべきか」をもっともっと訴えていきたいです。

—人手不足は日本も深刻です。シンガポールではどのような取り組みをしていますか。
「SACEOS(サセオス)というシンガポールのMICE産業団体があります。団体では、MICEの魅力を伝える取り組みをしています。主に学生すでに働いている従業員の方に向けての2つのスキームを取り組んでいます。

1つは「インターンシップスキーム」です。インターンシップというと退屈な作業をさせられるイメージがありますが、戦略的な仕事に参画してもらい、面白い仕事だと感じてもらう取り組みを進めています。
もう1つは「メンターシッププログラム」です。経験者が若い人たちを導くことに取り組みたいです。20年後のキャリアプランなどを一緒に考えています。

MICE産業は一括りにはなっていますが、中国の漢方薬から、飲食、運輸、医療、金融、先端製造業など、様々な産業にわたって可能性があると考えています。

SACEOS(サセオス)
Singapore Association of Convention & Exhibition Organisers & Suppliersの略
1979 年に設立されたMICEの業界団体。シンガポール政府観光局(STB)やエンタープライズ・シンガポール(ESG)などの政府機関、業界関係者、大学、地域および世界の業界団体と連携しています。
https://saceos.org.sg/singaporemicechallenge/


日本の方がシンガポールに訪れるきっかけになれば

—大阪・関西万博で期待することとは
非常に素晴らしい万博だと思います。シンガポールだけでなく、様々な国が1つの場所に集まることは意義がありますね。日本には、1億人以上が住んでいて、昨年は約50万人がシンガポールを訪れましたが、まだまだ多くの日本人に来てほしいと考えています。こういった機会を通じて、日本の方にもシンガポールを知ってほしいと考えています。


Editor’s note:MICEは国境を越え、連携していくべきでは

エドワード・コー氏は、終始柔らかな表情と口調でお話される方でした。私が「若い方に知ってもらうために頑張っています」と伝えると、「シンガポールでもぜひやってください、必ず成功できる編集長だと思います」と、温かい応援の言葉をいただきました。

MICEは、グローバルな仕事につながり、人が集まり、より良い未来をつくるために支えている業界だと思います。編集部でも学生の方々をメンバーとして迎え、キーマンへのインタビューなど、作業にとどまらないMICEの核心部分に触れる機会を作っています。若い世代から見たMICEの姿を伝えることも、私たちの役割だと考えています。

またインタビューを通して、日本だけ・シンガポールだけで取り組むのではなく、アジア太平洋地域全体で面としてMICEに取り組むべきだと感じました。まずは地域として一緒にMICE誘致に挑み、機会やノウハウをシェアしていく。マンパワー不足という課題は、どこも同じだからこそ、業界全体で解決していく必要があります。

シンガポール。
いつか実際に訪れ、自分の目で見て、彼の地のMICEをさらに深く伝えると決意しました。


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