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【取材】起業家・経営者・ビジネスパーソン80名が大阪に集結。参加者が「次回も開催してほしい」と語る「夢ビジネスサミット」に4時間参加してわかった5つの理由

「あなたの夢はなんですか。1分で、相手に届くように話してください。」
大阪城を一望できる会場で、起業家・経営者・ビジネスパーソン約80名がA4用紙に自分の“夢”を書き込み、次々と発表します。ベトナムへの事業展開や、海外とのコラボレーションに関心のある人たちが集まった交流イベント「夢ビジネスサミット~日越ビジネス交流の未来を拓く~」。

主催者のサイトでは、「今回の『夢ビジネスサミット』は、参加者の皆様から『ぜひ次回も開催してほしい』という温かいお声を多数いただき、大盛況のうちに幕を閉じることができました」と振り返られています。実際に4時間を通して参加してみると、「たしかに次も参加したくなる」と感じるポイントがいくつもありました。
本記事では、その中でも特に大きいと感じた5つの理由を、MICEの視点も交えながらお伝えします。

また参加したくなる理由1:名刺交換で終わらない「夢の1分ピッチ」とお役に立てるカード

夢ビジネスサミットの前半は、テーブルごとの交流セッションから始まりました。参加者一人ひとりに配られたのは、白紙のA4用紙。そこに自分の「夢」を書き、1人1分の持ち時間でピッチしていきます。
内容は、ベトナムで展開したいビジネス、日本とベトナムをつなぐアイデア、自分のスキルを活かしたいプロジェクトなどとても幅広いものでした。

ユニークなのは、話を聞いたテーブルメンバーが「お役に立てそうだ」と思ったときに、相手に渡す「お役に立てるカード」の存在です。名刺交換だけでは、「とりあえずご挨拶で終わってしまう」ことも少なくありません。ここでは、夢の内容を起点に、どこで協力できるか、どんな形で力になれそうか、を具体的に考えながら会話が進んでいきます。

一通りピッチが終わったあとは、各テーブルで代表者を選び、「どんな夢が語られ、どんなつながりが生まれそうか」を全体に共有する時間もありました。短時間ながら、夢を通じて参加者同士の距離が一気に縮まっていくのを実感。

自己紹介を単なる情報交換ではなく、「夢を言葉にする場」「共感と協業のきっかけをつくる場」として設計していることが、また参加したくなる一つ目の理由だと感じました。

当日のタイムテーブル

13:15 受付開始
13:30 開会あいさつ
13:40 自己紹介TIME
14:20 グループ発表
15:00 フリー交流タイム
16:00 大阪ベトナム友好協会によるベトナム舞踊・ベトナム歌謡
16:40 集合写真
17:00 終了


また参加したくなる理由2:ベトナム進出・海外展開を本気で考える多様な起業家・経営者が集まる

主催は、株式会社ブレインワークスと株式会社マザープラスの2社です。

ブレインワークスは、中小企業の経営課題をICTやリスクマネジメント、事業創造の面から支援し、20年以上にわたりベトナムでビジネスを展開してきた企業です。ベトナムでの経験をもとに、アジア・アフリカの新興国への事業進出も後押ししています。

マザープラスは、全国10万人以上のネットワークを持つコミュニティ「ママノユメ」を軸に、女性のスキルや視点を社会とつなげる事業を行っている会社です。ママ特化型のビジネスプラットフォームとして、学びや仕事の機会をつくってきました。

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左:ブレインワークス 代表 近藤さん/ 右:株式会社マザープラス 代表取締役社長 巽さん

日本では、女性の社会進出がまだ十分とはいえない一方、ベトナムでは女性の経済活動が非常に活発であると言われます。両社は、こうした背景をふまえながら、日本とベトナムの企業・人材が出会う場として、夢ビジネスサミットを企画しました。会場に集まっていたのは、マザープラスの巽代表の言葉どおり、自分の屋号・事業をしっかり持つ経営者層、すでにベトナムで事業展開をしている企業、これから海外進出の可能性を探りたい起業家、自分のスキルを海外でも活かしたい専門職・クリエイターといった、本気で海外展開を見据えている人たちでした。

ベトナムという成長市場をテーマにしながらも、業種・規模・バックグラウンドが多様であることが、このイベントの魅力の一つです。「自分にはどんなパートナーが必要か」「どんな人と組めば新しい展開が生まれそうか」を考えている参加者にとって、豊かな出会いの場になっているようでした。


また参加したくなる理由3:大阪城ユニークベニューとベトナム文化プログラムが特別な体験をつくる

会場となったTHE LANDMARK SQUARE OSAKAは、大阪城天守閣の再建と同じ時期に建てられた旧第四師団司令部庁舎を活用したユニークベニューです。

ユニークベニューとは

今回使用された「ロータス」は約235平方メートルのバンケットルーム。高い天井と大きな窓からは大阪城天守閣を望むことができ、クラシカルな階段や重厚な造りが、特別な場の雰囲気を生んでいました。ベトナムの国花もハスであることから、会場名からも縁を感じます。

会場の窓からは、大阪城を遮ることなく眺められます

司会を務める池田さんは、青色のベトナムの伝統衣装「アオザイ」を身にまとっていました。参加者の皆さんの服装は、まあ華やかなこと!着物、着物でつくられたドレス、きちんと仕立てられたスーツ。装いはその人の印象を強く残すものだと分かります。服装そのものが、互いの印象を強く残し、「今日は特別な時間を過ごすのだ」という気持ちを高めてくれます。

プログラム後半には、大阪ベトナム友好協会によるベトナム舞踊や歌も披露されました。ビジネスの話だけではなく、「文化」をともに体験する時間があることで、参加者同士の会話も自然と広がっていきます。

大阪城という歴史的なロケーション、ユニークベニューの非日常性、ベトナム文化を感じられるプログラム

これらが組み合わさることで、「またここでこのメンバーと会いたい」と思える体験になっていたことも、イベントの印象を強いものにしていました。


また参加したくなる理由4:海外ビジネスの「リアルなストーリー」を一度に聞ける

夢ビジネスサミットの魅力は、「海外ビジネスに挑む人たちのリアルなストーリー」を直接聞けることです。ここでは、会場でお聞きしたなかから、一部を紹介します。

京都発・テーブル茶道で世界とつながる

茶道裏千家助教授であり、京都観光サポーター、京都府文化観光大使などの肩書を持つ田中賀鶴代さんは、「盆略点前(ぼんりゃくてまえ)」を世界に広げたいと話していました。

盆略点前は、畳や正座に慣れていない海外ゲストでも椅子に座ったまま体験できる茶道の点前です。国際交流の場で要人をもてなすために考案された背景を持ち、現代でも「和の文化に気軽に触れてもらう」手法としての価値があります。「茶道は敷居が高い」と感じている人にも、テーブルスタイルで楽しめる形で広めていきたいという田中さんの想いは、日本文化を通じた国際交流の可能性を感じさせました。

難民からIT起業家へ。日越共創モデルをつくる

株式会社JV-ITホールディングス代表の井瀬さんは、9歳で難民として来日し、26歳でベトナムに戻って起業した方です。

現在、同社は約100名の社員を抱える企業へと成長。過去7年間の平均売上成長率は140%に達し、離職率もかつての4割から1〜3%程度へと大きく改善したといいます。その背景にあるのが、「評価ではなく感謝」「競争ではなく共創」といった経営哲学です。ベトナム人と日本人が互いを理解し、尊重し合う組織づくりを通じて、「日越が共に成功するビジネス」を目指している姿が印象的でした。

淡路島から文化交流。伝統芸能と農業でベトナムとつながる

人形浄瑠璃の伝承者であり、淡路島で玉ねぎ農家としても活動する鶴澤友吉さんは、自身を「芸農人」として紹介していました。

鶴澤さんは、ベトナムの伝統舞踊と日本の人形浄瑠璃を組み合わせた文化交流イベントを、2026年3月15日に南あわじ市で開催する計画です。芸術と農業、そして国際交流を掛け合わせたプロジェクトとして、協賛企業を募っていました。地域から国際交流を生み出そうとする姿勢は、「地方発のMICE」「ローカル×グローバル」の可能性を示しているように感じます。

サステナブル商材で東南アジア市場をひらく日本企業

プロダクトを通じて東南アジア市場への展開を目指す企業も、多く参加していました。貝殻を原料とした水性ネイルを開発する株式会社ネイルフォーオールは、「環境に優しい・身体にやさしいネイル」をコンセプトとしています。ツンとした匂いがなく、お湯で簡単にオフできるのが特徴で、サステナブル志向の高まりとともに海外でも受け入れられそうだと感じました。

木造注文住宅メーカーのヤマト住建株式会社は、地震に強く、省エネな家をベトナムにも広げたいとお話していました。環境に配慮しながら、光熱費を抑えられる住宅を通じて、未来の子どもたちにより良い住環境を残したいという思いがあります。

ごま製品を手がける九鬼産業株式会社は、添加物を使わない安全・安心な商品にこだわり、カフェインフリーで母親や子どもにも飲みやすい「黒ごまラテ」などを紹介。東南アジアでの普及を目指し、ベトナムでの展示会出展経験もあるとのことでした。

ベトナムで母子健康手帳を普及させたプロジェクト

国際母子手帳委員会 事務局長の坂東あけみさんからは、ベトナムで母子健康手帳を全国に普及させてきた経験が語られました。

一般社団法人の大阪ベトナム友好協会は、ベトナムの芸能音楽を通じて日本とベトナムを結ぶ活動を紹介

日本が1948年に作成し、現在は世界約50の国と地域で使われている母子健康手帳。坂東さんは、51歳で教師を辞めて大阪大学大学院で国際協力を学び、その研究の一環としてベトナム・ハナム省での導入に取り組みました。保健省の母子保健局と連携し、山岳少数民族が暮らす地域でも役立つことを確認しながら全国展開を推進。ミキハウスやライオン、ユニ・チャームなど日本企業の協賛も得て、最終的に全国普及へとつながりました。

坂東さんは、成功の要因として「各省の認識の高さ」と「ベトナム政府が本気で動き、政策・行政・システム・法律に反映したこと」を挙げていました。

こうしたリアルなストーリーを、同じ空間の中で一度に聞けることは、海外ビジネスに関心のある参加者にとって大きな学びになっていたはずです。「自分も一歩踏み出してみよう」と思える具体的な事例を直接聞けることは、特別な体験です。

軽食がサーブされます。ワンプレートにサラダ、パン、肉料理、ポテト。席に運ばれてくるため、会話を続けながら食事ができ、料理が残りにくい工夫です


また参加したくなる理由5:継続開催を前提とした「コミュニティMICE」として設計されている

夢ビジネスサミットは、単発のイベントというよりも、「継続していくコミュニティMICE」として設計されている点も特徴です。

ブレインワークスは、長年ベトナムでのビジネスを展開してきたネットワークを持ち、マザープラスは全国10万人規模のコミュニティ運営のノウハウを持っています。両社が協力することで、日本とベトナムをつなぐビジネス交流の場、起業家・経営者が継続的に集まるコミュニティ、新しいプロジェクトやコラボレーションが生まれる“土壌”をつくろうとしていることが伝わってきました。

主催者は、今後も日本とベトナムで年2回の開催を目指していると話していました。こうした「継続性の意図」があるからこそ、参加者から「次回もぜひ開催してほしい」という声が自然と出てきたのだと思います。一度きりの出会いではなく、「またここで会える」「次はこんな形でご一緒できるかもしれない」と感じられることが、リピート意欲につながるのでしょう。


Editor’s note:夢を言葉にすることから始まる海外展開

会場で印象的だったのは、参加者が自分の言葉で迷いなく「何をしているのか」「どこを目指しているのか」を語っていたことです。

夢ビジネスサミットの仕掛けは、海外展開のノウハウを一方的に教えるものではありません。むしろ、自分の夢や事業を言葉にしてみる、それを聞いた誰かが「お役に立てること」を差し出す、そこから小さな共創の種が生まれるというプロセスを、場全体で共有するものだと感じました。

私の夢

海外進出というと、「ハードルが高い」「準備が大変」というイメージが先に立ちがちです。ただ、今回のイベントを見ていると、その一歩目は必ずしも難しいものではなく、「自分は何をしたいのか」を口に出すところから始まっているようにも思えます。参加した私自身も参加者として夢を発表し、テーブル代表として登壇しました。私の夢は「MICE分野で日本と海外のキーパーソンをつなぐ存在になること」です。

夢ビジネスサミットでの出会いは、その実現に向けた一歩になったと感じています。次回開催が実現した際には、今回生まれたつながりがどのような形になっているのかを、また取材したいです。

(取材:藤井 編集:井上)

ワンポイント:急成長が続くベトナムは人口1.3億人・GDP6%超えの成長市場

ベトナムについて少し触れましょう。ベトナム社会主義共和国は東南アジアに位置し、首都は ハノイ(北部)です。面積は約33万km²で、日本の約0.9倍。人口はおよそ1億3,000万人にのぼります。世界銀行の発表した『Taking Stock』によると、ベトナムの実質GDPは2025年に6.8%、2026年に6.5%成長すると予測されています。成長への期待をされている市場です。


開催概要

名称:夢ビジネスサミット~日越ビジネス交流の未来を拓く~
開催日時:2025年11月17日(月) 13:30 ~ 17:00 
開催場所:THE LANDMARK SQUARE OSAKA (ミライザ大阪城内)
参加費:10,000円
主催団体:一般社団法人大阪ベトナム友好協会、株式会社マザープラス

Webサイト(当日のレポートも掲載されています)https://event.mamanoyume.net/detail/931

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