【取材】歴史的建築をMICE・ビジネスの舞台に。京都・鮒鶴で語られたユニークベニュー活用の可能性(バリューマネジメント主催イベント)
参加者の記憶に残るMICEを実現したい。そう考える主催者にとって、歴史建築や景観を生かしたユニークベニューは有力な選択肢のひとつです。2026年3月5日、京都・鴨川沿いの「鮒鶴京都鴨川リゾート」で、ユニークベニューの活用をテーマにしたMICEセミナーが開催されました。主催は、歴史的建造物や文化財を舞台に、イベントの企画・プロデュース・運営を手がけるバリューマネジメント株式会社。
当日は、会場の空間価値に加え、交流、食の多様性対応、夜の演出など、体験に関わるさまざまな要素が紹介されました。本記事では、歴史的建築のユニークベニュー活用のヒントとして、その内容をレポートします。

鴨川沿いに佇む登録有形文化財「鮒鶴京都鴨川リゾート」
鮒鶴(ふなつる)さん。鴨川を歩いた方なら一度は見たことがあるのではないでしょうか。5層4階建の木造建築で、登録有形文化財(建造物)にも登録されています。灯りが川面に映り込む様子は、情緒があり、存在感がグンと増すのです。



エージェントとベニューの視点から語る高付加価値MICE成功のポイント
トークセッション、会場見学、試食交流会の3部構成で進みます。

登壇したのはTHE J TEAM株式会社 COOのジェームス・ケントさんと、バリューマネジメント株式会社 Party&MICE事業部の山元勝之さん。エージェントとベニューの視点から語られます。
THE J TEAMは、インセンティブ旅行や会議、商談会などを目的とした訪日外国人旅行を手掛ける企業です。インバウンド市場の拡大を背景に、海外ゲストに向けた特別な体験をどのように設計するか、またストーリー性のある高付加価値MICEをどのように提案するかが話されました。

ニーズは夜にあり。「YES we can」の姿勢と柔軟性をもつ
ジェームズさんによると、主催者は「昼は自由行動、夜は全員が集まりたい」と考えるケースが多く、ユニークベニューは重要な役割を果たすと話しました。バリューマネジメントでは、お城を貸し切って泊まれる「城泊/CASTLE STAY」を展開。特に夜にクローズドで使えることを重要だと捉えています。

一方で、休館日でしか利用できない施設もあります。わざわざ日本まで来たのに利用できない状況に、海外ゲストは疑問に思うかもしれません。主催者・会場側の理解を得ながら、日本ならではの柔軟性が持てるはずとジェームズさん。

なぜこの会場を選んだのか、なぜこの場所でイベントを行うのか。そうした背景をストーリーとして伝えることが重要だと語られました。あるイベントでは司会者が背景を説明したところ、参加者が深く理解・共感されていたというエピソードが紹介されました。
明日から意識できるポイントとして、ジェームズさんは「YES we can」の姿勢で取り組むことの大切さを挙げます。難しい条件であっても、できない理由を探すのではなく、どうすれば実現できるかの姿勢で取り組むということです。

文化財建築を生かした空間演出と会場活用を見ていきましょう
鮒鶴京都鴨川リゾートでは、文化財建築ならではの空間を生かしながら、MICEの場としてどのような演出や活用ができるのかが紹介されました。会場見学を通じて見えてきたのは、文化財建築の価値をそのまま見せるだけではなく、空間の使い方や過ごし方まで含めて体験を設計している点でした。
トークセッション会場「Gallery Room」
157㎡、着席90名・立食100名まで対応。今回は、シアター形式で着席。セミナーや講演会、集会に利用できる会場です。


天井には画家・小村大雲が描いた鯉の天井画が描かれています。

ブレイクタイム「Ceremony Space」
143㎡、着席100名程度。次の会場準備を待ちながら、参加者同士が交流。会場入口でシャンパンが用意されました。



中央にはハイカウンターテーブルが置かれ、立って会話をする人もいれば、座ってゆっくり話す人も。


東山をのぞむ最上階「テラス」
111㎡、70名程度。実は「Ceremony Space」とひとつづきになります。清水寺、東山、鴨川。京都の景色を一望できます。

筆者の藤井は、館内のRestaurant LE UN(ル・アン)を利用したことがあります。中秋の名月を眺めながら食事を楽しむプランで、舞妓さんの京舞の演出がありました。京都らしい景色、食事と交流をしたい方にはぴったりの場所です。



試食交流会「Grand Ball Room」
面積315.3㎡、着席168名・立食200名まで対応できるパーティスペースです。2部屋に分割することができます。


各会場の詳細はこちら(鮒鶴京都鴨川リゾート Webサイト)
https://www.funatsuru.com/party/agent/index.html
ヴィーガンやハラルに対応のビュッフェを試食
試食交流会では、ヴィーガンやハラルに対応したビュッフェが用意されました。参加者は料理を試食しながら交流し、食の多様性に配慮した提案の一端を体験しました。

一口サイズのフィンガーフードが中心。




交流の価値を語る参加者の声
交流会では、参加者同士が意見を交わす場面も見られました。参加者の声を紹介します。
「以前にもバリューマネジメントさんが主催するイベントに参加したことがあります。自社以外の意見を聞く機会がないため、交流できることはとてもありがたいです!」
「トークセッションやパーティーなど、開催されている様子を見て、こういうふうに使えるんだなと気づくことがありました。やはり現地を見ることで分かることがありますね」


バリューマネジメント COO笠さんが語る、MICE発信の手応え「自信を持ってMICEを発信できる準備ができている」
2026年2月にCOOに就任した笠正太郎さんに、今回のイベント開催の狙いと、同社がMICE発信を強化する背景について話を聞きました。
これまで同社では、施設紹介を目的としたイベントは開催してきたものの、明確にMICEをテーマに掲げた取り組みは今回が初めてだったといいます。情報発信もウェディングやパーティーを中心とする内容が多く、企業イベントをはじめとするMICE利用の実績が十分に伝わっていなかった面がありました。今回のイベントは、そうした活用の広がりを知ってもらう機会として企画されたものです。
笠さんは、マーケティング部門から12年ぶりにMICEの現場に戻り、自社の対応領域の広がりにあらためて驚いたと話します。
「めちゃくちゃできることあるやんか。すごい広がってる。MICEの実績が揃っているから、自信を持って世の中に発信する準備ができている」
2026年には自社主催のFAMトリップも予定しているといい、今後はMICE領域での発信をさらに強めていく考えです。

Editor’s note:歴史的建築をMICEでどう生かすか。その先行例を体験したセミナー
今回のイベントは、歴史的建築をMICEにどう生かすかを、実際の会場体験を通じて示す場となっていました。空間の魅力を伝えるだけでなく、交流の設計や食の多様性への対応まで含めて見せたことに、この取り組みの特徴がありました。
歴史や文化を持つ施設は全国にありますが、それらをMICE市場に向けてこのように明確に発信し、体験の形に落とし込んでいる例はまだ多くありません。バリューマネジメントの取り組みは、歴史的建築ユニークベニュー活用を考えるうえで、ベンチマークすべき事例のひとつといえそうです。