【取材】ユニークベニューを巡るツアーその2:まちの神戸編 100年ぶりの異人館での朝食/旧居留地ウォーキング・震災跡に学ぶ/ナイトツアーで知る動物園のサステナビリティ
MICE都市としての魅力を放つ神戸。その魅力を語るうえで外せないのが数々のユニークベニューです。
2026年1月、神戸市ミーティング&インセンティブ旅行誘致コンソーシアムによる実証事業として、2泊3日のモニターツアー「MUSEUM FICATION KOBE JAPAN」が行われました。神戸市が掲げる「神戸2025ビジョン」のテーマは”海と山が育むグローバル貢献都市”。ツアーは神戸のユニークベニューを巡り、海と山の神戸の可能性を探るものでした。本記事シリーズでは「うみの神戸」「まちの神戸」と題して神戸MICEの魅力をご紹介します。
その1・うみの神戸編
https://micetimes.jp/whykobe-water2601/

2005年に「第2回国連防災世界会議」が開催され、国際的な防災指針である兵庫行動枠組が採択
まちを歩いて見えたテーマは”震災と復興”。1995年1月17日未明、淡路島北部を震源とするマグニチュード7.3の大地震「阪神・淡路大震災」が都市直下で発生しました。死者は6,434人(関連死含む)、負傷者は4万人を超え、住宅の全壊は約10万棟に及びました。今回のツアーにおいても、この神戸の経験は重要なひとつのテーマと感じられました。

「まちの神戸」のユニークベニューをご紹介します

【旧居留地】”失われたもの”と”守りながら続いてきたもの”を見るウォーキングツアー
Why 旧居留地?
- 空襲と震災、2度の壊滅を経験したまち並み
- 守りながら継承されてきた歴史がいたるところに見える
- 日本の防災・減災について考える

1858年、日米修好通商条約を締結し、横浜・長崎・函館・新潟・神戸の5港が開かれます。港を窓口に、物資だけでなく人や文化が入ってきました。神戸外国人居留地は、当時の兵庫の市街地から約3.5km東、砂地と畑地だった神戸村に建設。ヨーロッパの近代都市計画に倣った126区画の美しいグリッド状のまちが整備されました。

1945年6月5日の神戸大空襲では、旧居留地の建築も約7割が破壊。そして1995年1月17日未明、阪神・淡路大震災が発生。旧居留地内にあった106棟の建築は大小さまざまな被害を受け、22棟は解体を余儀なくされました。それでも、旧居留地のまち並みを守りながら継承してきました。

【旧居留地十五番館】免震工法で足元がわずかに浮いている重要文化財
国の重要文化財に指定されている、居留地時代を復元した建築です。1995年の阪神・淡路大震災で全壊。地震の教訓から、地下にゴムを入れる免震工法が導入されています。足元から見るとわずかに浮いているんです。



【商船三井ビルディング】旧外壁が語り継ぐ神戸
空襲にも耐え竣工当時の様子を保っていましたが、阪神・淡路大震災で全壊。 1998年に同じ場所に新しく再建された高層ビルの低層部に旧外壁が残され、現在の姿となりました。


【東遊園地】震災のつどいが開かれる日本初の西洋式運動公園
1868年の開港とともに整備された日本初の西洋式運動公園です。かつては居留外国人がラグビーやクリケット、テニスに興じ、その姿を見た日本人を通じてスポーツ文化が広がりました。毎年1月17日に行われる「阪神淡路大震災1.17のつどい」や、震災の犠牲者の鎮魂と都市の復興を願い始まった光の祭典「神戸ルミナリエ」の会場です。


【神戸港震災メモリアルパーク】当時のまま保存される震災の跡
旧居留地から海側へ足を延ばしたメリケンパーク内にあります。崩れた岸壁や傾いた街灯が当時のまま保存されています。
フランス領事のde Lucy Fossarieu氏は、居留地返還の式典で次のように語りました。「居留地の歴史は、そのまま神戸の歴史を述べることになるでしょう。神戸の歴史を語らなければ、居留地の歴史も語れません」。


施設名:旧居留地
公式サイト:https://www.kobe-kyoryuchi.com/
アクセス:JR/阪急/阪神/地下鉄 三宮 徒歩10分

【風見鶏の館】異人館で味わう20世紀初頭ドイツの朝食
Why 風見鶏の館?
- 重要文化財で朝食をいただくのは100年ぶり
- 100年前の食文化を再現した「1909モーニング」
- 料理人が語るストーリーテリング
居留地はビジネスの拠点であり、北野異人館街は、外国人たちの暮らしの場でした。風見鶏の館は1909年頃、ドイツ人貿易商ゴットフリート・トーマス氏の自邸として建設されました。ドイツの伝統意匠が随所に見られます。
土地の歴史(ヒストリー)と食(ガストロノミー)を掛け合わせた体験ができます。

およそ100年ぶりに重要文化財で温かい料理が振る舞われる
重要文化財のため、通常は館内での飲食が厳しく制限されています。今回初めて正式な許可を得て、食事提供が実現しました。館内で温かい料理が提供されるのは、トーマス一家が実際に暮らしていた時代以来、およそ100年ぶりのことです。2階にある「朝食の間」でいただきます。

ドイツ人貿易商が食べていたであろう朝食を再現
神戸ポートピアホテルの岸本総料理長が監修し、20世紀初頭のドイツ人貿易商が食べていたであろう朝食「1909モーニング」と名付け、史料をもとに再現。料理長自身が“当時のコック役”として登場し、料理の背景や時代の食文化を解説されました。なんだかタイムスリップした気分。

「1909モーニング」の献立
肉料理:2種のソーセージ / 付け合わせ:ポテト / タンパク源としてのゆで卵(ボイルドエッグ)/ 3種のドイツパン(ライ麦配合率の異なる食べ比べ)など

モスクも教会もすぐ近くにある北野の多様性を感じる、北野のまち歩き
異人館が立ち並ぶエリア「北野」を、風見鶏の館 館長の明星守さんに案内いただきます。ゆっくりと坂を下ります。

キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、ジャイナ教など、様々な宗教施設が共存する独特なまち並みです。どれも大きく主張するような佇まいではなく、幼稚園に隣接していたり、住宅のすぐそばにあったりと、日々の暮らしのすぐ近くに溶け込みます。



施設名:風見鶏の館(旧トーマス住宅)
営業時間: 毎月第3火曜日除く / 9:00~17:00
公式サイト:https://kobe-kazamidori.com/
アクセス:JR/阪急/阪神/地下鉄 三宮 徒歩15分
新幹線 新神戸駅 徒歩15分
所在地:神戸市中央区北野町3-13-3

【竹中大工道具館】3万点の道具が語る、日本の木造建築の知恵
Why 竹中大工道具館?
- 日本建築の伝統的な技術や知恵に触れる
- 道具と人との関係性を通じて見える日本の精神
- 釘を使わない建築が、なぜ地震に強いのか、見て触って学べる
新神戸駅からほど近く、1984年にできた日本で唯一の大工道具専門の博物館です。今日までに収集された資料は3万点以上。ノミ、鉋(かんな)、鋸(のこぎり)、砥石(といし)など、時代も地域も異なる道具が並びます。


刃がすり減り、元の大きさの半分以下になった鋸(のこぎり)

使いやすい道具を繰り返し手に取り、研ぎ、直し、また使う。道具を消耗品としてではなく、長く付き合う存在として扱ってきた職人の姿勢が伝わってきます。


釘や金物を一切使わず、木と木を組み合わせる「継手・仕口」
金物で固定すれば、一見強そうに見えますが、錆びたり、木の収縮でガタが生じます。一方、木同士を噛み合わせることで、建物全体が少し歪みながら力を受け止め、また元に戻ろうとする強さが生まれます。

柱を地面に固定せず、礎石の上に柱を固定せず直に立てる日本の伝統構法「石場建て」
固定しないことで、揺れに合わせて建物がスライドし、エネルギーを逃がします。抗えない自然の力に対し、対立するのではなく、いなして共生するのだと思いました。


インセンティブツアーを企画する企業の方からは「京都や奈良の神社仏閣の事前・事後学習に立ち寄りたい」という声がありました。
施設名:竹中大工道具館
営業時間:月曜日除く / 9:30~16:30
公式サイト:https://www.dougukan.jp/
アクセス:新幹線 新神戸駅 徒歩3分
所在地:神戸市中央区熊内町7-5-1

【神戸どうぶつ王国】関西の動物園初、脱・使い捨てプラスチックを実践。ナイトツアーに参加しました
Why 神戸どうぶつ王国?
- 夜の動物園を貸し切れる特別感
- 環境面への取組を本気で進めている
- コンパクトで全天候型

参加者をゴールデンレトリバーのわんこと、大きなインコがお出迎え。「うちのペットはね…」など、参加者同士のアイスブレイクにもなっていました。

ナイトツアーでは、夜行性の動物たちが活発に動く姿が見られました。人気者のレッサーパンダや、王国のアイコンともいえる動かない鳥 ハシビロコウも健在。




解説はQRコードで英語に対応。

ノベルティまでサステナブルを徹底
2018年12月から、関西の動物園で初めて脱使い捨てプラスチックを実施。環境の負担の少ない紙製品や木製品、洗って再び使える金属製品にしました。

長崎県対馬の絶滅危惧種ツシマヤマネコを守るため、餌場となる田んぼの環境を支える「ツシマヤマネコ米」を園内で使用・販売。来園者が食べることで消費が増え、生息環境の保全につながる循環が生まれています。

ノベルティとしてペットボトルをリサイクルしてつくられたオリジナルバッグや、ツシマヤマネコ米ストローをプレゼントされていました。一時的な取り組みではない神戸どうぶつ王国の姿勢がうかがえました。

園内「花のキッチン」にて。花に囲まれてのディナービュッフェ
着座形式のビュッフェで行われました。料理は近くの神戸ポートピアホテルより提供されました。ビーフカツをはじめ、産地から仕入れたツシマヤマネコ米、ぼっかけといったメニューに加え、酒樽を開ける鏡開きのアクティビティ、料理長と寿司を一緒に握れる演出が用意されていました。



施設名:神戸どうぶつ王国
営業時間:木曜日除く / 10:00~17:00
公式サイト:https://www.kobe-oukoku.com/
アクセス:神戸新交通 計算科学センター駅 徒歩11分
所在地:神戸市中央区港島南町7-1-9

歴史を閉じ込めず、いまに手渡す神戸のユニークベニュー
神戸の魅力は、ユニークベニューの多さではなく、それらをひとつの体験としてつなげられる軽やかさにあります。旧居留地では、壊れた痕跡を見せるためではなく、守るべきものを守り、必要なところは更新してきた姿がまち並みに残っていました。
北野では、異文化が特別な演出としてではなく、暮らしのすぐ隣に自然に置かれていました。異人館での100年ぶりの朝食は、歴史を過去の記録に閉じ込めるのではなく、いまの時間へそっと引き戻す試みでした。竹中大工道具館が伝えるのは、自然に抗うのではない伝統建築のあり方。これも神戸の持つしなやかさといえます。
神戸どうぶつ王国のナイトツアーは、貸切の特別感と、サステナビリティが同居していました。参加者の会話が自然に生まれ、学びと遊びが分断されない。神戸は、海と山に囲まれたコンパクトさの中で、歴史・多文化・知の蓄積・体験設計がさらりと混ざり合うまちでした。
主催:神戸市ミーティング&インセンティブ旅行誘致コンソーシアム
行政と民間が一体となり、オール神戸で誘致に取り組む体制が築かれています。
- 一般財団法人 神戸観光局 神戸コンベンションビューロー
- 株式会社 アクアメント
- 株式会社 どうぶつ王国
- 早駒運輸 株式会社
- 株式会社 フェリシモ
- 株式会社 神戸 ポートピアホテル
- 株式会社ユニトラベル
- 株式会社 地域創生Coデザイン研究所
- 株式会社 BUZZPORT
神戸市ミーティング&インセンティブ旅行誘致コンソーシアム https://mf-kobe.jp/ja


