
「文化・スポーツの発信拠点を滋賀に」民間主導アリーナ構想の現在地。(公財)レイクスターズ坂井さん
滋賀で今、民間主導によるアリーナ建設の構想が進められています。その中心にいるのが、Bリーグ・滋賀レイクス(旧:滋賀レイクスターズ)の創設に関わり、長年スポーツ文化の発展に尽力してきた坂井信介さんです。
バスケも含め滋賀県内のアスリートの支援をしたいという思いから2012年に『公益財団法人 滋賀レイクスターズ』を創設。現在は理事長を務められながら、アリーナ構想にも挑んでいます。

この動きに注目せずにはいられない理由があります。当メディア『MICE TIMES ONLINE』の編集長・藤井も滋賀の出身。「滋賀にアリーナ? しかも民間主導で?」。そんな関心を抱き、話を聞きに行きました。
”文化・スポーツの発信拠点”を滋賀につくりたい
構想中のアリーナは、年間100興業以上、50〜60万人の来場者を見込みます。コンサートや展示会など、多目的に利用できる『エンタメアリーナ』を目指しています。特定チームのためだけでなく、滋賀の文化・スポーツの発信拠点をつくりたいといいます。
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アリーナ構想は、2015年から考えていたこと
坂井さん:「2015年にBリーグが発足し、リーグが求めるホームアリーナ基準として『県内5,000人以上の収容規模』が定められました。既存の施設を増床、増席することを考えましたが、なかなか難しく…。その頃から新設のアリーナは課題だと思っていました。
ただ、バスケットボールの試合は年間で30試合程度。年間100興業を想定した場合、その他の用途も想定しなければなりません。そんな中、『滋賀においても音楽興行を組めるかもしれない』という話を、お付き合いのある企業の方から聞き、真面目に考えるようになりました」
行政ではなく民間だからこそできる設計思想
坂井さん:「”競技目的”のアリーナは、すでに行政が国民スポーツ大会(国スポ)用として施設整備が済んでいます。一方で集客施設、いわゆるエンタメの施設は滋賀にはない。国体に合わせて施設も整備されましたが、多目的なものではないんです。私たちのようなニュートラルな組織がやるべきかと思い、今に至ります。
わたSHIGA輝く国スポ・障スポ2025
国民スポーツ大会(国スポ)とは、都道府県の持ち回り方式で毎年開催されている国内最大のスポーツの祭典です。正式競技では、都道府県対抗方式で、天皇杯(男女総合成績第1位)や皇后杯(女子総合成績第1位)の獲得をめざし、郷土の代表選手が熱い戦いを繰り広げます。また、正式競技の他に、特別競技、公開競技、デモンストレーションスポーツが実施されます。大会会期は令和7年(2025年)9月28日(日)~10月8日(水)の11日間です。
Webサイト:https://shiga-sports2025.jp/

エンタメの『集客アリーナ』では建設時の財源だけではなく、長期の稼働率が問われます。『競技用施設』は集客を想定していない設計が多く結果的に稼働率が上がらない。『集客アリーナ』では想定する集客や稼働率、収益性から設計を考えていくものと思っています。設計段階から柔軟性を持たせた施設をつくる必要があるんです。
設備もそうですし、利用料金、利用者目線であることなど、あらゆる面で集客や興行に関わるものは民間向きだと思うんですよ。料金設定も柔軟にしたいですね。条例で決められている施設だと、どうしても制限が生まれてしまう。音楽関係者やMICE事業者が使いやすい料金体系を実現するには、民営が理にかなっていると考えます」

”誘致”だけでなく”会場発”MICEを育てる
坂井さんは、ただ“誘致”をするのではなく、主催者としてイベントを生み出す体制が必要だと話します。
坂井さん:「正直、MICEを誘致するには滋賀は弱い。だから”会場発”で独自イベントを生み出すべきです。例えば、滋賀県立長浜ドームで行われていた『びわ湖環境ビジネスメッセ』は、決して集客に有利ではない場所でありながら、20年間、2〜4万人の人が訪れるイベントでした。僕は大成功だと思います」
その鍵となるのが『実行委員会』方式です。
坂井さん:「実行委員会をいくつか立ち上げ、活動を手助けする形にできないかと。会場発のMICEを複数持ち、それによって何十日かの利用をつくり出す。最初の10年で、まず5つは施設ならではのイベントができれば理想的ですね」

実現に向けて、着実に動き出している
現在は候補地選定と、事業スキームの設計を進めている段階です。
坂井さん:「1~2年以内には、候補地の決定と事業計画の骨格をまとめて、運営会社の設立まで進めたいですね。候補地は集客しやすいところが絶対条件です。県内・県外どちらからも来やすい場所を想定しています。駅近や駐車場の整備も含めて、検討しています」
目指すのは滋賀の「スマート・ベニュー」
坂井さん:「”活性化”という言葉は使い古されていて、何を指しているのか曖昧になっていると思います。目指すのは自然に人が集まる『スマート・ベニュー』としての中核施設です。間違っても、スポーツチームのためだけにアリーナを建てたいとは思っていません。”文化・スポーツの発信拠点”としての機能を備えたアリーナにしたい。
地元滋賀に初のプロチームを創設運営する機会に恵まれました。次は発信拠点を創り出す道筋をつけることが、財団でも個人でもミッションであり、滋賀に一番貢献できることだと考えています」

滋賀の未来をかけたアリーナづくりは、静かに、そして着実に動き始めています。
※スマート・ベニュー
周辺のエリアマネジメントを含む、複合的な機能を組み合わせたサステナブルな交流施設のこと。「スマート・ベニュー」は、株式会社日本政策投資銀行の登録商標(商標登録第5665393号)です。