【韓国取材】韓国最大の展示会場「KINTEX」ソウルから高速鉄道で30分圏内。KINTEXと高陽市のMICE戦略 現地開催中の展示会も取材【韓国2025秋特集2】
韓国最大規模の展示コンベンションセンターであるKINTEX(キンテックス)は、アジア有数のMICEイノベーションプラットフォームとして位置づけられています。国内展示産業の国際化と面積不足解消という国家的使命のもと、政府と自治体の共同出資事業として2005年4月29日にオープンしました。その巨大な施設概要と環境にやさしい設計、そしてKINTEXが位置する高陽市が進めるMICE戦略について、現地で見たKINTEXの様子とともにお伝えします。

KINTEXの設立経緯と概要 総展示面積は10万㎡超
国内展示産業の国際化を目指して KINTEXは、展示・コンベンション面積の供給不足を解消し、韓国の展示・コンベンション産業を国際化するために、政府と自治体が共同出資して進められた事業です。全3段階の計画があり、2005年のオープン時には1段階事業として、6万8000坪の敷地に地上3階の展示・コンベンション施設が設置されました。KINTEXの一番の特徴は、既存の国内展示市場では収容が難しかった大型の重量物の展示やイベント開催が容易になった点です。世界有数の巨大展示面積 KINTEXは、韓国最大規模であり、アジアで4番目に大きい展示面積を誇ります。総展示面積は108,011平方メートルに達します。

ホールの配置がよくわかる案内図。中央部下は幹線道路が走る
KINTEXの施設機能と特徴
KINTEXの施設は、第1展示場と第2展示場に大きく分けることができます。第1展示場は地下1階から地上2階まで、第2展示場は地下1階から地上15階までで構成されています。来場者の利便性を高めるため、第1展示場と第2展示場の間には幅100メートルに及ぶムービングウォークが設置されており、両建物を便利に移動することが可能です。駐車場の収容能力も高く、専用駐車場4,200台に加え、臨時駐車場4,000台を収容可能であり、快適な観覧環境を提供しています。

環境に配慮した設計と地域貢献
KINTEXは、日光、地熱、雨水などの新再生エネルギーを活用した空間として設計されており、環境にやさしい展示・コンベンションセンターであると言えます。この設計により、年間10億ウォンを超える費用節減と同時に、4千トン以上の温室効果ガス排出量減少効果を実現しています。KINTEXには展示機能だけでなく多数のオフィスが入居しており、経済活性化と雇用創出をもたらすことで地域社会に貢献しています。その広々とした多彩な空間は、各種CM、映画、ドラマ、ミュージックビデオのロケ地としても利用されています。


高陽市が推進するMICE戦略
KINTEXが所在する高陽市は、「Asia MICE Leading Destination」(アジアMICEリーディングデスティネーション)として位置づけられています。高陽市はMICE開催地として、サステナビリティを重視した取り組みを行っています。高陽コンベンションビューローはISO20121認証を取得しており、持続可能性パフォーマンスレポートやGDS-Iパフォーマンス改善レポートなどを公開しています。また、MICEスタートアップリーグやMICEサステナビリティワークショップといった事業を通じて、産業の革新と持続可能な発展を推進しています。
高陽コンベンションビューローによるイベント支援体制
高陽コンベンションビューローは、高陽市を訪れるMICE主催者や訪問者を支援しています。ミーティングプランナー、イベント専門家、インセンティブ主催者などに対し、最初の連絡から最終決定に至るまで支援を提供。KINTEX自体も、展示会、会議、ツアー、ホテルに関する情報提供や、東北最大級の宴会サービスを含むケータリング、イベント向けのレストラン、イベントを円滑に進めるためのサポートサービスなど、充実したサービスを提供しています。
KINTEX Webサイト https://www.kintex.com/web/en/index.do
高陽コンベンションビューロー https://goyangcvb.com/
◎KINTEXとその周辺の様子。第1展示場と第2展示場の横に第3展示場がこれから新設される計画
高速鉄道・GTXでソウル駅からKINTEXはわずか3駅、1時間→17分に短縮

KINTEXは、ソウル駅からGTX(広域急行鉄道)を利用すれば約17分という非常に優れたアクセス性を誇ります。担当者によると実際にGTXの開通によって、KINTEXを訪問するお客様が増加しているという実績もあるそうです。この利便性の高さから、既存の展示場(第1・第2)に対しても、これまで他地域で開催されていたイベントをKINTEXで開催したいという問い合わせが多数寄せられています。

ソウルに導入された首都圏広域急行鉄道(GTX)大深度を高速で移動
ソウル首都圏の深刻な交通渋滞を解決するため、首都圏広域急行鉄道(GTX)プロジェクトが導入されました。ソウル中心部と郊外を高速で結ぶ新しい交通システムです。GTXの最大の特徴は、地下40m以上の大深度空間をほぼ直線で結ぶ点にあります。最高時速は180km(営業時速約100km)に達し、従来の地下鉄(時速30~40km)と比べて移動時間を劇的に短縮します。T-moneyカードなどのIC乗車券で利用でき、日本人旅行者にも使いやすいシステムです。
2024年から段階的に開業したGTX-A線の開通により、MICE施設であるKINTEX(韓国国際展示場)へのアクセスが革命的に改善されました。従来、ソウル駅からKINTEXへは公共交通機関で1時間以上かかっていましたが、GTX-A線ではわずか17分程度で到着可能になりました。KINTEX駅は第1展示場の目の前にあり、利便性が飛躍的に向上しています。
運賃は広域バスより高価ですが、タクシー料金と比較すれば9分の1以下と、時間短縮の価値を考えれば非常に合理的です。ただし、GTXは深い地下を走るため、駅構内のエスカレーター移動などを含めた実際の所要時間(ドアツードア)は、25分から30分程度を見積もることが現実的。将来的にはソウルの江南エリア(サムスン駅)とも接続が予定されており、GTXはソウル首都圏の人の流れを大きく変え、KINTEXの競争力をさらに高めるプロジェクトとして期待されています。


第3展示会場を建設開始、さらに規模を増す

KINTEX(キンテックス)の未来:第3展示場によりアジア有数のMICE拠点へ
KINTEXは現在、MICE市場におけるさらなる競争力強化のため、大規模な拡張計画を進めています。特に2027年から2028年までの完成を目指している「第3展示場」により、アジア有数の大規模展示場となる見込みです。私たちは取材中に工事現場を見ましたが、既に非常に大きなスケールで建設が進められていることが確認できました。総展示面積17万~18万㎡という規模感になるとされています。
新しい第3展示場はAとBに分かれており、展示スペースと会議室の二つの機能を含んでいます。これは、来場者や主催者の方が、より楽に、より便利にご利用いただける施設となることを目指しているためです。また、第3展示場の建設にあたっては、設備や会議室も新しい最先端の施設を導入する計画です。

ホテル建設による利便性の向上
KINTEXは、第3展示場を建設するのに合わせて、利用者の利便性を向上させるためにホテルも一緒に建設しようとしています。工事が完了するまでには時間を要するため、それまではアクセスがしやすいような対策も検討しているとのことです。
第1展示会場

第1展示場はオーソドックスな展示会場といえます。一階は大きなホールとなっています。写真右の通路は第2展示場とを結ぶムービングウォークです。

エントランスから入ると空港のような開放的な空間が広がります。左手にはおしゃれなカフェ、インフォメーションの上には大きなLEDの表示。表示が鮮やかです。

ホール1~5は一体的に使うことができます。二階、三階にはミニホールや会議室などが並びます。

ホワイエ部分は天井が高く気持ちのいい空間。飲食店、コンビニなどが多く入居しています。縦の移動はエスカレーター、エレベーターがわかりやすく配置されています。

カフェの様子

二階の会議室エリア。通路は広いガラス面のおかげで明るいです。

二階会議室のひとつ。

三階の広い通路部ではイベントの準備が進められていました。
開催されていた展示会「G-FAIR」の様子
第1展示場 ホール4-5で開催された展示会にプレス登録して、展示会の様子を見て回りました。「G-FAIR」は食料品、キッチン用品、美容、スマート製品など、多岐にわたる分野の製品や技術を一堂に集めた大規模なイベントです。一般の来場者も来場する、BtoB、BtoC両方の側面があります。韓国の展示会の様子を知っていただくのにもピッタリのイベントです。

こちらの展示会の様子はいずれ別記事で。ここではKITEXホールでの展示会の様子を写真で少しご紹介します。




第2展示会場

この日は完全に停止していたムービングウォーク。第1展示場と第2展示場を結びます。

この日は日本の男性シンガーソングライター「優里」による、アジアアリーナツアー(海外公演)の会場のひとつとして公演が開催されるところでした。公演はホール10だったようです。

第2展示場は翼を広げたようなガラス張りの外観に圧倒されることでしょう。

ホールの配置も特徴的。一階中央は大きな通路になっていて、お店が並んでいます。

コンビニや飲食店が集まっているから、便利です。

一階入口前を見下ろす。奥に見えるのが第1展示場。

二階に上がるとがらんとした空間。韓国の大きな展示会場は広いガラス面をうまく取り入れているところが多いです。


GTXの整備、第3展示場の建設により、さらに韓国MICE産業での存在感を増すKINTEX
KINTEXは、韓国最大規模、アジアで有数の展示面積を誇るコンベンションセンターです。政府と自治体が共同出資して進めた事業であり、国内の展示・コンベンション面積の供給不足を解消し、産業の国際化を達成するため、現在第3展示場の建設を進めています。
単に巨大な施設というだけでなく、KINTEXは地域社会への多大な貢献を果たしています。各種展示・会議の開催を通じて経済活性化と雇用創出を促進するほか、日光や地熱などを活用した環境にやさしい設計によって、費用節減と温室効果ガス排出量減少効果を実現しており、高陽市の持続可能性(サステナビリティ)への取り組みをインフラ面から支えています。
観光面においては、その巨大で洗練された外観と多彩な空間が、CM、映画、ドラマ、ミュージックビデオといった各種映像作品のロケ地として活用されています。KINTEXを起点として、周辺の連携観光地へのスムーズな移動が可能であり、高陽市を訪れる観光客にとって重要な目的地となっています。GTXの整備により、ソウル中心部からのアクセスも良好です。今後も韓国MICEの重要拠点として、韓国MICE産業を牽引し続けることでしょう。