Casieが見据えるアート×MICEの可能性。ウェルビーイングで進化するイベント空間【MICEキャリアナビ】
MICEの場において、人と人との交流を深め、有意義な時間を生み出すためには空間づくりが重要な役割を担っています。参加者同士の対話や新たな気づきが生まれるかどうかは、会場の設計や雰囲気に大きく左右されます。近年、その質を高める視点として注目されているのがウェルビーイングの視点です。本記事ではアートを活用した空間づくりを手がける株式会社Casieの取り組みを通じて、MICEにおける体験価値の広がりと新しい可能性について見ていきます。

MICE空間に求められるウェルビーイングという視点
対話と体験を生み出す空間に必要なものとは?
MICEにおいて重要なのは、イベントを成立させることだけではなく、その場でどのような体験が生まれるかです。参加者同士の交流や新しい関係性の構築は、空間のあり方に大きく影響されます。しかし実際には、運営効率や機能性が優先され、参加者の心理状態まで踏み込んだ設計は十分とは言えない場面も見られます。特にネットワーキングや待機時間において、場の空気が固くなり、交流が生まれにくい状況は少なくありません。
心理的な状態がイベントの質を左右する
こうした課題に対して、空間が人に与える心理的影響に注目が集まっています。安心感や居心地の良さは、参加者の行動やコミュニケーションの質に直接関わります。この文脈でウェルビーイングという概念がMICEの空間設計にも取り入れられ始めています。人が自然に関係性を築ける状態をつくることが、結果としてイベントの価値を高める要素となります。
Casieのビジネスモデルと空間づくりへのアプローチ
株式会社Casieは2017年に創業し、アーティストの創作活動が継続する循環をつくることをミッションに掲げています。現在は全国1500名以上のアーティストから作品を預かり、16000点以上を管理しています。これらの作品を個人宅やオフィス、MICE・イベント空間に対して提供することで、アートを日常やビジネスの中に取り入れる仕組みを構築しています。
世界のアート市場は約9兆円規模といわれていますが、日本のシェアはその中のわずか1%程度にとどまっています。一方で、日本は美術系教育機関の数が多く、創作を志す人材が豊富な国です。毎年多くの学生が芸術分野から卒業していますが、その才能が活かされる機会はまだ十分とは言えません。つまり、日本は「つくる力はあるが、届ける仕組みが足りていない」という構造を抱えています。
同社が近年、力を入れているのが、レンタルではなく空間全体の体験を設計すること。空間の目的や訪れる人の状態を踏まえ、企業や施設の意図とアーティストの表現をつなぐ役割を担っています。作品の背景や意味を理解したうえで配置することで、空間に新たな意味を与えています。

アートがもたらすウェルビーイングへの影響
心理的効果と空間の変化
アートは空間の装飾にとどまらず、人の心理に働きかける要素として機能します。青や緑などの落ち着いた色味や自然を描いた作品は心を落ち着かせ、赤などの鮮やかな色彩は活力を与えます。多様な視点や構図で描かれた作品は思考の広がりを促し、創造性を刺激するきっかけにもなります。
こうした要素は、空間にいる人の状態に影響し、その場での過ごし方に変化をもたらします。MICEの場においても、参加者がどのような状態でその場に関わるかは重要です。アートは主役になるのではなく、人が自然にその場に入り込み、対話に向かう状態を整える存在として機能します。

多様な空間での活用とMICEへの接続
こうしたアートの活用は、医療機関やオフィスなどでも進められています。来院者の不安を和らげるために設置されたり、働く人同士の会話のきっかけとして機能したりと、その役割はさまざまです。
MICEの場においても同様に、待ち時間や交流の場でアートがあることで「見る」「感じる」という行為が生まれます。作品についての一言が自然な会話のきっかけとなり、場の空気がやわらぎます。Casieはこうした空間の意図と人の状態、そしてアーティストの表現をつなぐ存在として、アートを通じた体験を設計しています。

MICEにおけるアートの役割
対話を生み出すきっかけ
MICEの場において主役はあくまで人と人との出会いや対話です。アートはその主役になるものではありませんが、その場に自然な動きを生み出すきっかけとして機能します。たとえば待ち時間。何もない空間では、参加者は手持ち無沙汰になり、視線の置き場にも困ります。一方でアートがあることで、「見る」「感じる」という行為が生まれ、その場に対する関わり方が変わります。
交流の場でも同様です。初対面同士の関係では、何を話せばよいか分からないという状態が生まれがちですが、「この作品どう感じましたか」という一言が自然な会話の入り口になります。特別な仕掛けではなく、視線の先にあるものがきっかけとなって対話が始まる。この小さな変化が、ネットワーキングの質に影響します。
空間の空気を変える要素
アートはまた、空間の空気そのものにも影響を与えます。MICEの会場は目的が明確である分、緊張感のある雰囲気になりやすい側面があります。その中に視覚的な要素が加わることで、空間に余白が生まれ、参加者が少し力を抜いてその場にいられる状態が生まれます。
こうした状態は、単に居心地が良いというだけでなく、参加者が主体的に場に関わることにもつながります。会話が生まれやすくなり、その場での体験が記憶に残りやすくなる。Casieが提案しているのは、アートを装飾として置くことではなく、こうした空間の状態を整える要素として機能させることです。

MICEに新しい風を吹き込む外部からの視点
MICEはこれまで会議や展示会を支える産業として発展してきましたが、空間が人に与える影響や体験の質といった視点は十分に語られてきたとは言えません。だからこそ、アートやウェルビーイングのように、従来の業界の外側から持ち込まれる視点には意味があります。
Casieの取り組みは、MICEを単なる開催の場ではなく、人の感情や対話が生まれる空間として捉え直すものです。参加者数や運営効率だけではなく、その場でどのような体験が生まれたのかという視点が加わることで、MICEの価値は広がっていきます。
Casie自身も、日本の中では「アート」という言葉自体の認知はあっても、日常やビジネスの文脈においては、まだどこか距離のある存在だと感じています。だからこそ、アートをもっと身近なものにし、暮らしや仕事の空間の中で自然に文化と接続できる社会を目指しています。
アートとMICEが生み出す新しい体験価値
MICEの本質は、人と人が出会い、新しい関係や価値が生まれる場をつくることにあります。その質を高めるためには、機能だけでなく体験の設計が重要になります。アートは空間に意味を与え、参加者の感情や行動に働きかける要素として機能します。
Casieのように、ウェルビーイングやアートの視点をMICEに持ち込む取り組みは、業界の可能性を広げる一つの方向性です。従来の枠にとらわれない視点が加わることで、MICEはより多様で魅力的な領域へと変化していきます。
株式会社Casie について
Casie for business Webサイト https://forbusiness.casie.jp/
会社Webサイト https://casie.jp/代表者:代表取締役 藤本 翔 / 取締役共同創業者 清水 宏輔
本社:京都市下京区俵屋町218アートを定額制でレンタルできるサブスクリプションサービスを展開。約1,500名の登録アーティストによる16,000点以上の作品を保有し、作品がレンタルされることでアーティストに収益が還元され、創作活動を持続可能にする仕組みで、アーティストの支援や文化芸術活動にも貢献。
現在、法人向けサービス「Casie for Business」を強化しています。具体的な実績には、ルイ・ヴィトンやJEANASISといったブランド店舗の空間演出、ザ・プリンス 京都宝ヶ池や妙心寺でのイベント開催などがあり、単なる装飾にとどまらず、企業のブランディングや空間の「意味」を設計するパートナーとして活動しています。
こちらの記事もご覧ください:Casieが展開する法人向け事業について、CBO中島さんにお話をうかがいました
https://micetimes.jp/casie-for-business/

