【実行委員長に聞く】出展者満足の秘訣?「新しい時代に合わせた展示会を目指す」DX総合EXPO2024 冬 大阪/ほか記者注目のブース3選
2024年末にインテックス大阪で開催された「DX 総合EXPO 2024 冬 大阪」。
業務効率化・働き方改革・経営基盤強化を実現するためのDXソリューションが一堂に集う西日本最大級のDX総合展です
引用:https://www.bizcrew.jp/expo/dx-osaka
前回のレポートでは「どんな展示会なのか」「AIがDX化のトレンド」の2点をテーマにお伝えしました。
本記事では、主催企業インタビューと、記者が注目した出展ブースを詳しくご紹介します。
まずは主催企業インタビューです。エバーリッジ株式会社 萩原雄輔様にお話を伺いました。萩原様は「DX 総合EXPO 2024 冬 大阪」の実行委員長も務めています。
DX総合EXPOを含めて、計4つの展示会を開催するエバーリッジ株式会社。
- BUSINESS INNOVATION JAPAN
- Japan Contents Week
- Japan Web3 Week
様々な展示会を数多く主催する同社が、展示会運営の課題にどのように向き合っているのかをお聞きしました。
「展示会主催のプロ」が持つ課題の解決に「紙の宣伝」を活用
──展示会の開催、運営で課題に感じていることはありますか。
我々の生命線である、熱量の高い来場者をどう増やしていくかです。出展企業が本当に会いたいのは、受注につながる方です。受注につながる熱量を持った方を増やすにはどうしたらいいか。常に課題として感じている部分です。我々の展示会を知っていただけてない方もたくさんいらっしゃるので、認知拡大が重要だと考えています。
──認知拡大のためにどのようなことに取り組んでいますか。
デジタルマーケティングはもちろん徹底して行っています。その他、紙の招待券やDMの発送、重要なお客様には電話で誘致もしています。ただ、現状として「これをやればいいんだ」というクリティカルな施策は見つかっていません。今もいいソリューションがないかと探している最中です。今回の「DX 総合EXPO 2024 冬 大阪」では、新聞の折り込みチラシを使いました。
──規模の大きいウェビナーも同時に開催されていますが、こちらも認知拡大を目的としているのでしょうか。
ウェビナーの目的は大きく二つあり、一つは今おっしゃっていただいた認知拡大。集客につなげるためです。もう一つは※ナーチャリング目的です。出展いただく企業様の情報を事前に確認して、気になるブースの目星をつけていただく。「この会社いいな、話を直接聞きに行こう」みたいな。事前の下調べに使っていただくケースも多いんです。
やはりブースの全てを見て回るのは難しいので、限られた時間でしっかり情報収集できるように事前の下調べは重要だと考えています。下調べをして来場された方との出会いが成果に繋がっているんです。要は、ある程度興味を持った方に来ていただけると、話も早いじゃないですか。
※ナーチャリング:見込み客を育成して購入意欲を高める営業施策のこと。
ー事前にブース訪問を予約できるシステムにもつながってくるのですね。
そのとおりです。ウェビナーで興味を持った方がブースを予約して来場されるケースがめちゃくちゃ多くて。東京開催の場合、3日間で大体2600件のアポイントが入ってきています。平均すると1社当たり大体10件ぐらいのアポイントを提供できている状態ですね。
ウェビナーがあることでブースの目星がつきやすくなり、課題解決のスピード感を早めながら、展示会に足を運ぶきっかけになってほしい思いもあります。
2025年には福岡でも。初の地方開催も決定
──2025年の春夏、東京での開催は決定していますよね。大阪での開催はいつ頃でしょうか。
2025年の5月、8月、12月を予定しています。
これは東京の次回申し込み状況のボードで、完売間近です。2025年5月の大阪開催分もリピート出展の企業様で埋まりつつあります。ありがたいことにリピート出展の方が非常に多いです。
成果にご満足いただけているから出展も継続していただけているのだと思います。新規出展者も回を追うごとに増えているので、会場の規模も拡大しました。2026年には福岡開催も決定しています。
──なぜ福岡での開催を決めたのでしょうか。
展示会というのは、地域性がかなり強いビジネスです。基本的に東京の展示会に来ていただける方の8割ぐらいは東日本の方で、大阪開催であれば8割が西日本に向けた形になる。
そこにしか来場いただけない方がいる、その地域でしか会えない方に出会えるという意味では、地方開催の意義は大きいと考えたので福岡での開催を決定しました。
──今後の展望をお聞かせください。
我々は従来型の展示会を漫然と開催したいわけではなく、新しい時代に合わせた新しい形の展示会を目指しています。具体的にはリアルとデジタル、両方の力を使って価値提供を最大化したいです。
例えば出展者は、展示会の開催前から来場者とデジタル上で接点を持ち、当日の成果に繋げられる。来場者も事前にウェビナーや企業情報を通じてチェックできる。でも、来場後にその日訪問したブースやサービスを比較検討したうえでレポートするのは大変ですよね。記憶を頼りに「あの会社よかったな」って思い返したり、あとから思い出して資料請求をしたり。
我々の展示会だと、どのブースを回ったかの記録や評価を残しておけるんです。資料も事前にダウンロードできるので、展示会後の億劫な作業が少なくなります。結果として課題解決のための意思決定が早くなる。
このような今までにない価値提供を行うことで、ご満足いただける展示会を作っていきたいです。
インタビュー後、「隣に弊社も出展しているんです」と教えてくれた萩原様。「自分たちが出展者になることで新しい改善点も見えてきて、いい展示会作りにつながります。主催企業は出展してみるといいですよ!」とおっしゃっていたのも印象的でした。福岡開催には、どのようなテクノロジーや出展者が集まるのか注目したいです。
MICEに便利なツールも出展!記者注目のブース3選
ここからは、記者が注目した出展企業3社と製品を紹介します。AIを用いた業務改善がトレンドの「DX 総合EXPO 2024 冬 大阪」において、人とのつながりを特に感じられる製品を出展していた3社です。
- 社会課題の解決に取り組みながら、寄付人口を増やすことに注力する「GOJO」
- タスクを絶対にやらせる「コンプル」
- 「TOKYO MICE テクノロジー導入ガイドライン」にも掲載された、D&I、多言語翻訳対応コミュニケーション支援ツール「VUEVO(ビューボ)」
サービスの特徴やツールの生まれた背景などについて伺いました。
「VUEVO」は、条件に当てはまれば東京都の「次世代型MICE開催資金助成」の対象になります。東京都でのMICE開催に興味のある方はぜひご覧ください。
寄付をカジュアルに。社会課題の解決に尽力する「GOJO」:コングラント株式会社
企業の社会貢献活動をドライブするスマート寄付アプリ「GOJO」を提供する、コングラント株式会社の代表取締役、佐藤正隆様に話を伺いました。
──「GOJO」について教えてください。
「GOJO」は「互いに協力」の互助です。
元々寄付を集めるための決済、支援者の管理システムを提供していました。それらのおかげでたくさんのネットワークができたので、社会的投資の困り事を解決するために「GOJO」を作りました。マーケットは小さいかもしれないですが、人々を助けたい思いをもっとスムーズに表現できるように。カジュアルに寄付が行われる世の中にしたいです。
──「GOJO」にはどのような特徴がありますか。
「GOJO」ではSDGsや人権、子どもの教育、女性支援など、キャンペーンを作って寄付を募れます。企業で導入すると、自社の従業員がどのような社会課題に興味関心を持っているかがわかることが特徴ですね。
──「DX 総合EXPO 2024 冬 大阪」に出展した狙いはありますか。
僕たちのアプリはすごくニッチなので、大企業にもっとPRしたくて出展しました。普段は東京の展示会に出展していますが、会社自体は大阪にあります。これからも大阪での営業を続けるので、年に1回くらいは大阪でも、と思い出展しました。
寄付をもっとカジュアルに、寄付人口を増やすために「GOJO」を提供しているコングラント株式会社。お話の中で、「寄付は自身のバックグラウンドにも関わりがある」「昔の自分と同じような体験をしている人の役に立ちたい、助けたい、と考える人が多い」とおっしゃっていたのが印象的でした。
「過去を振り返る機会になったり、同じような背景を持つ人とつながることで、過去の出来事と今の自分がつながることもある。ある意味での社会のセーフティーネットにもなる」と語ってくれました。
コングラント株式会社:https://congrant.com/jp/index.html
GOJO:https://expo.bizcrew.jp/event/12083/module/booth/304735/266639?pcode=2024-win-osaka-BIJ-Psearch
「社員が面倒がる依頼を、絶対やらせる」:株式会社ThinQ Healthcare
「社員が面倒がる依頼を、絶対やらせる」のワードに惹かれて、株式会社ThinQ Healthcareのブースを訪問しました。
ビジネスデベロップメントマネージャーの清水龍太様に話を伺うと、途中で「タスクに関する2:6:2の法則」を知っていますか、と問いかけられました。詳しく聞くと、
- 最初の2は「タスクを依頼されたらすぐに手をつけて完了させる人」
- 次の6は「リマインドをすれば期限を守ってくれる人」
- 最後の2は「期限を守らないやらない人」
の三つにわかれるそう。規模や業種が違っていても、おおよそ「2:6:2」の割合になるそうです。「最後の2」の人に手を焼いている企業に導入してもらいたいサービスが、株式会社ThinQ Healthcareが提供する「コンプル」です。
──「コンプル」が生まれた背景をお聞かせください。
実は、弊社でも「2:6:2の法則」に困っていました。手を替え品を替え改善に取り組み、自分たちでシステムまで作りました。それでも解決できなくて。「これは永遠の課題だ」ということになり、外に向けてサービス化したのが背景です。
自分たちの痛みから作っているサービスなので、お客様からとにかく「あるある!」と共感してもらえます。今まで気合いと根性でリマインド業務に取り組んでいた方から「これを待っていたんだよ!」とおっしゃっていただくこともありました。
──「コンプル」はどの部分の評価が高いですか。
メールやチャット、アプリなど様々なツールからバラバラに送られてくるタスクが整理されて、いつまでに何をするかの全体像がわかる部分です。抜け漏れが減るので、お客様に一番評価いただいています。「コンプルで依頼しなかったらもう俺はタスクしないぞ」って言う人がいるぐらい、評判がいいですね。
──今後、「コンプル」は進化する予定はありますか。
あります。進化するしかないですね。というのも、チラシにも書いている「絶対にやらせる」を追求したいからです。
残念ながら「コンプル」を入れても、タスクが100%完了することが少ないんですね。0.5割はタスクをやらない人が残るので、タスクを100%完了するためにどうするか。そこに取り組みます。
それと、利用シーンが変わってきている部分もあって。例えば全社員向けに使いたい企業もあれば、特定の部署にのみ導入したい場合もあるので、それぞれの要望に合わせられるバージョンアップを今後予定しています。
株式会社ThinQ Healthcare:https://cmpl.jp/company
コンプル:https://cmpl.jp/
MICEで使いたい「VUEVO」:ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
会話を視覚で確認できる、D&I、多言語翻訳対応コミュニケーション支援ツール「VUEVO」。「TOKYO MICE テクノロジー導入ガイドライン」にも掲載された、最新のテクノロジーです。
東京都及び(公財)東京観光財団は、都内で開催するMICEにおいて、先端テクノロジーを有効に活用することで、会議運営等の効率化や会場に足を運ぶことが困難な方の障壁を取り除くことなどを促進し、次世代型のMICEの確立に向け取り組んでいきます。
このため、MICEの主催者の皆様向けに、「TOKYO MICE テクノロジー導入ガイドライン」を策定しましたので、お知らせいたします。
引用元:https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/01/27/16.html
MICEについて詳しくはこちらの記事をごらんください。 【MICEの基礎知識(1)】MICEとは
誰が何を話したかが、表示される文字でわかります。会議の議事録を取る際に便利になるだけではなく、聴覚障害を持つ方にも役立つでしょう。リアルタイムでの翻訳機能もついていて、海外の方がいる場合でも一台あると便利です。
写真手前の黒い丸い機械は「VUEVO」を使うためのワイヤレスマイクです。どなたか1名のスマートフォンやタブレット、PCにアプリをインストールし、ワイヤレスマイクと接続するだけで、間にある赤い板(本当は透明ですが、LEDライトを使用している関係で写真では色がついてしまうそう)に、リアルタイムで話している内容が表示されます。
説明をしてくださったView of Voice事業部 Directorの佐治様と一緒に使ってみました。
話した文言がほぼ間違いなく表示されて、文字も読みやすかったです。外国から来た方や聴覚に障害のある方はもちろん、展示会のようにガヤガヤとした場面でも重宝するツールだと感じました。
「VUEVO」をMICEで利用したい場合、開催するMICEが下記ページ内に記載されている項目に当てはまると「次世代型MICE開催資金助成」の対象になり得ます。
詳しくは「MICEテクノロジー導入ガイドライン・助成|東京都」をご覧ください。https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/01/27/16.html
ピクシーダストテクノロジーズ株式会社:https://pixiedusttech.com/
VUEVO:https://vuevo.net/
多言語翻訳ツールにご興味を持たれた方は、「KOTOBAL」「ポケトーク」を紹介した記事も併せてご覧ください。
■取材を終えて「Editor’s note」
主催者インタビューの萩原様がおっしゃっていた「主催者側が実際に展示会に出展して、課題や改善点を探していること」に感銘を受けました。何度も展示会を開催し、出展者に成果を提供。規模の拡大を続けていて、開催・運営の成功を収めています。成功した展示会の再現を続けるだけではなく、実際に出展して課題を探し改良を続ける姿勢は、自分自身、見習って取り入れたい部分です。
また、なにかの企画やアイディアを出す時に「自分の体験や悩み、困りごとから考える」というのは、基本の考え方であり、多くの方が実践している方法でしょう。
萩原様や「コンプル」の清水様のお話から、自身の持つ課題や悩みを元に企画を考えると、斬新でユニークで、共感を得られるものが生まれるのだとよくわかります。2025年最初のアイディアは、2024年に感じた悩みや困りごとを元に考えてみてはいかがでしょうか。