1. HOME
  2. MICEキャリアナビ
  3. MICE業界のことを知る
  4. 【取材】”日本で働きたい”万博スタッフのキャリア・ワークショップ「楽しかった万博」を「実りある未来のグローバルネットワーク」に。大阪・関西万博オーストリア館
MICE業界のことを知る

【取材】”日本で働きたい”万博スタッフのキャリア・ワークショップ「楽しかった万博」を「実りある未来のグローバルネットワーク」に。大阪・関西万博オーストリア館

大阪・関西万博は9月時点で総来場者数が2500万人を突破。その舞台を支えるのは、多国籍のスタッフたちです。今、スタッフの「次のキャリア」を見据えた動きが静かに、確実に進んでいます。

expo-0930

6か月の会期に合わせて来日したスタッフは、日本語を学び、日本で働くことを願って現場に立っています。問題はその先。会期が終わったあと、どう日本社会とつながり続けるのか。

9月30日、オーストリア館で開催された異文化キャリア・ワークショップを取材しました。参加者は万博スタッフを中心に20~30名、事前登録は約60名にのぼりました。現場の様子をお届けします。

expo-0930

異文化キャリア・ワークショップの概要

2025年9月30日、オーストリア館の2階レストランで19時から開催されました。内容はビザの基礎、求人リサーチ、日本式の履歴書・職務経歴書の作法、ネットワーキングなど。イベントは終始英語で進行されました。

expo-0930

スケジュール

19:00-19:25 チェックイン/ネットワーキング

19:25-19:30 オープニング・トーク

19:30-20:35 ワークショップ/講演会
ゲスト講演:ジェトロ 野澤拓郎「外国人プロフェッショナルの受け入れ」
ゲスト講演:国際弁護士 古川智祥「日本におけるビザの概要」
GLOCATALYST講演会:「履歴書って何?日本における履歴書・職務経歴書のリアル」
YOLO JAPAN 鎌田真有:仕事紹介サービス イントロダクション

20:35-21:00 ネットワーキング

21:00 フィニッシュ&クロージング

expo-0930
expo-0930
登壇者


expo-0930

主催:GLOCATALYST(グロー・カタリスト)学ぶ・準備する・つながる

万博の現場でHR支援(多言語・管理人材の採用)やナショナルデー、式典運営の統括を担うチームがGLOCATALYST。キーワードは「万博の恩恵を“楽しい”だけで終わらせない」。日本が好きで、日本語を学び、万博以降も日本で働きたいと願う多くのスタッフに寄り添い、そのセカンドキャリアを支援しています。

expo-0930

GLOCATALYST Sandra WOHLAUF氏
「ワークショップを通じて、将来に向けた新たな機会を創出したいと願っています。本日の目的は3つ。
1つ目は、日本のビザの現実について”学ぶこと”。日本のビザ制度の現実や、日本の労働市場がどうなっているのかを知ることです。
2つ目は”準備すること”。日本の履歴書や職務経歴書の書き方、雇用主に自分をどう見せるかといった話をします。
最後に”つながること”。ここにいる専門家や企業、参加者同士とのネットワークは、強力なツールになります。

私たちは求人検索サービスでも、就職フェアを行う会社でもありません。私たちが目指すのは、支え合える“ネットワーキングのコミュニティ”をつくることです」


expo-0930

JETRO 大阪本部 総務部長 野澤拓郎氏:外国人プロフェッショナルの受け入れ

野澤氏は、アメリカ・ワシントンD.C.に3年、オーストリアに7年滞在。日本貿易振興機構(JETRO)では20年以上、活動されています。
「私たちJETROは、日本の政府機関として、70年にわたり貿易と投資を支援してきました。本部は現在東京にありますが、JETROの歴史は大阪から始まっています。日本企業からは“自社に合った専門家を見つけるのに苦労している”と相談を受けます。だから才能ある外国の方と、採用する日本企業を支援しています」

expo-0930

野澤氏が紹介したのは、JETROが運営する人材データベース。スマートフォンでも利用でき、登録不要・無料で公開されています。
invest Japan jetro Webサイト:https://www.jetro.go.jp/en/invest/

「このデータベースで“日本企業を探す”をクリックすれば、条件ごとに企業を絞り込むことができます。対象となる“専門家”とは、学士号以上を持っている方や、母国で専門学校などを通じて特別なスキルを身につけた方を指します」

expo-0930

起業を目指す人への選択肢「スタートアップ・ビザ」

「日本で起業家になりたい方はいますか?日本で会社を設立したい人のために“スタートアップ・ビザ”という特別なビザがあります。これは6か月間有効の一時的なビザで、その間に法人登記など事業開始の準備を進めることができます。従来の“経営管理ビザ”は最短1年だったので、スタートアップ・ビザは新しい挑戦へのハードルを下げるものです」

expo-0930

国際弁護士 古川智祥氏:日本におけるビザの概要

参加者は”どうすれば合法的に日本に滞在できるのか”について気になっているようでした。法の枠組みを理解するのはキャリアを築くうえで欠かせません。

expo-0930

万博ビザについて

・活動範囲は万博に関連する業務に限定(準備・運営・解体など)
・在留期間の満了日は、パスポートに押された上陸許可証印または在留カードで確認できる

「万博閉会後も、パビリオンの解体作業などで日本に滞在する必要がある場合は、在留期間の更新を申請することができます。ただし、ビザは自動的には更新されないため、出入国在留管理庁への申請が必要です」

expo-0930

万博ビザ期間満了後の選択肢は4つ

1.万博ビザの更新
2.別の就労ビザへの変更
3.出国準備ビザ(30日間)
4.出国

そのほか、「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「高度専門職」など、日本で働くための就労ビザの種類について紹介されました。

就職活動に向いたビザがある

1.日本の大学卒業者向け
日本の大学を卒業し、卒業前から就職活動を継続している場合、卒業後最長1年間、就職活動のためのビザを取得できる可能性があります。

2.世界のトップ大学卒業者向け
指定された世界トップランクの大学リストに含まれる大学の卒業生は、卒業後5年以内であれば、最長2年間の就職活動(または起業準備)のためのビザを申請できます。


expo-0930

GLOCATALYST 代表 松尾氏:履歴書って何?日本における履歴書・職務経歴書のリアル

結論は次のとおり。

履歴書=間違いがないことが大前提。
職務経歴書=スキルと結果を示し、面接で活用するもの。
ポートフォリオ=違いを“視覚化”して伝えるツール。

「履歴書は、日本で応募するための“ライセンス”のようなものです。完璧に書いてあればマイナス点はつかない。しかし有利になるわけでもありません。重要なのは“間違いがないこと”。一方で、職務経歴書は、キャリアを説明するための書類です。具体的に書くことをお勧めします。企業はあなたのキャリアだけでなく実績を知りたいからです。万博での経験は大きな強みになります」

さらに推奨されたのがポートフォリオ
「あくまで私のやり方ですが、ポートフォリオを作ってください。スキルを視覚化するのに非常に良いからです。採用担当者は全ての書類を丁寧に読むことはできません。だから理解をしてもらいやすくすること。採用担当者は神ではなく、私たちと同じ人間です。どうか怖がらないで」

expo-0930

万博での経験は自己PRに最適

「日本では多くの人が万博を知っています。『私は万博で働いていました』と言えば、担当者の多くは『おお!どこで?何をしていたの?』と会話を広げてくれるでしょう。これはチャンス。半年間、日本で働いた事実自体が強みになるのです」


expo-0930

YOLO JAPAN:243カ国34万人以上が利用する外国人向けウェブプラットフォーム

同社は大阪・新大阪に拠点を置き、243カ国34万人以上の外国人が利用する、日本最大級の外国人向けWebプラットフォームを運営しています。「万博でのお仕事は楽しかったですか?日本で働き続けたいですか?」という問いかけから始まったプレゼンテーション。参加者の多くが手をあげました。

鎌田氏「皆さんが万博で楽しく働けたことを嬉しく思います。そして、まだ日本で働きたいと思っている方も多いはずです。ただ、日本での就職には難しさがありまして…。他の国とは大きく異なり、日本独自のビジネススタイルを理解する必要があるんです」

expo-0930

そのうえで、提供するサポートについて紹介されました。

1.質の高い企業とのマッチング
公開されない求人を持つ優良企業と直接連携し、外国人のスキルに合った仕事を紹介。競争が少なく、就職のチャンスが広がる

2.面接・履歴書の徹底サポート
日本語での履歴書作成を一緒にチェックし、面接練習を通じて「企業が知りたいこと」を具体的にアドバイス。多くの利用者がこの準備で面接突破を実現

3.就職後のアフターケア
就職はゴールではなくスタート。職場文化や人間関係の悩みについても継続的に相談を受け、就労の定着を支えます

Webサイト:https://www.yolo-japan.co.jp/

expo-0930


expo-0930

現場の切実な声「私たち、どうしたらいいの」

ワークショップ後半は、参加者と登壇者による質疑応答が行われました。将来のキャリアを見据えた切実な質問が次々と寄せられました。

expo-0930

Q.日本で会社を設立できるのか

ポーランドで起業しようと考えていたのですが、日本では無理だろうと勝手に思い込んでいました…。

A.「後ほど個別で回答します。“invest Japan jetro”と検索すれば、日本で事業を立ち上げるための基本的な規制や、事業開始にかかる費用のシミュレーションなどが分かります。日本で新しいビジネスを始める方を喜んでサポートします」


expo-0930

Q.万博ビザの有効期間内であれば、万博終了後でも出国・再入国はできますか?

関心が集まったのは「万博ビザ(特定活動)で出国後、再入国できるのか」という問題です。

参加者の女性は「万博の期間は10月13日まで。ビザは来年4月まで有効です。仕事はないけれどビザ自体は有効という期間が日本で何ヶ月も続くことになります。この状態で一時帰国すると、再入国できない可能性があるのでは。

9月に日本から出国し、戻ってきた際に、再入国するためにまだ仕事に就いているかどうかを確認されました。万博終了後に出国すると、戻ってこれないかもしれません」と問いかけました。

expo-0930

A.「滞在する必要がある限り、滞在することができます。それが基本的な条件です。ただ、日本への再入国の際に入国審査官が『万博は既に終了しているので、ここに滞在する理由はない』と判断し、日本の再入国を拒否する可能性はあります。 

JETROの野澤氏は「この件は万博協会を通じて入国管理局に確認します。明確な答えをくれるとは保証できませんが、最善を尽くします。最悪、私が政治家になって制度を変えるしかありませんが(笑)」と会場を和ませつつも、課題の根深さを浮き彫りにしました。


expo-0930

Q.JETRO求人データベースに掲載される企業の選定基準は何でしょうか

私は既にJETROの求人データベースを利用しています。掲載されている企業が自社のウェブサイトでは求人を出していないという問題に時々遭遇します。掲載の基準はありますか。

expo-0930

「良い質問ですね。基本的に、企業側が「外国人人材を雇用したい」と主張すれば、どのような申し込みも受け付けています。すぐにでも外国人人材を雇用したい企業と、データベースに登録しているだけの企業があり、差があることを私も十分に理解しています。まずは”検索条件”を活用してみてください。もし適しているかが判断できない場合は、私かJETROオフィスにご連絡ください」


ネットワーキングでは個別に相談する様子が見られました

expo-0930
expo-0930
expo-0930
expo-0930

Edito’s note:万博で働くスタッフをどう迎え入れるのか。つながるのか。

ワークショップに集まっていたのは、語学力やホスピタリティ、多文化理解を兼ね備えた優秀な方ばかりでした。けれども現実には、万博は半年間の有期イベント。会期が終われば、日本で働きたいと願う多くのスタッフは次の道を探さねばなりません。日本企業の側にも「外国人採用の実務が分からない」といった壁がたしかに存在しています。

人材はいる。経験がある。にもかかわらず、出会えていない――。日本で働きたい人がいるのに、これはあまりにも惜しい。だからこそ、今回のような取り組みは、現場と企業をつなぐ“ハブ”として非常に重要だと感じました。

MICE(万博)によって、人、モノ、金、情報が集まります。ビザの有効期限が切れてしまう前に、どう日本社会に迎え入れるのか。私たち一人ひとりがその恩恵をどう活かすのかが問われています。

expo-0930
expo-0930

関連記事:大阪・関西万博

大阪・関西万博関連の記事はこちら
韓国有望スタートアップに出会えるイベント
Aichi Sky Expo特集
お問合せはこちらから
スマホアプリができました
過去記事から探す
カテゴリー