【取材】東京ミッドタウン・ホールで企業独自カンファレンスを開催 ユーザー&パートナーとの共創を加速させるソラコム
独自カンファレンスに関心のある企業の方、企業独自カンファレンスの誘致に関心のある施設の方へ
企業1社が主催するカンファレンスは大企業だけのものではありません。設立2014年、売上高124億円・従業員数約200名(2026年3月期)の株式会社ソラコム(ブランド名はSORACOM)は、2026年7月7日に東京ミッドタウン・ホールで第11回目となる年次イベント「SORACOM Discovery 2026」を開催しました。
ソラコムが独自カンファレンスに取り組む意義は「新サービスの発表と提供開始の場」「パートナーと事例紹介の場」「実物を見て触り意見交換する場」の3つにあります。東京ミッドタウンという開催場所は、セッション会場とブース展示会場の隣接、参加者2,000人規模の収容能力、個別ミーティングのための会議室、付近にホテル宿泊施設もあり六本木駅直結の利便性などを考慮して選定されました。
独自カンファレンスに関心のある企業の方、企業独自カンファレンスの誘致に関心のある施設の方の参考となるように、このイベントの概要と主催者の思いをレポートします。
SORACOM Discovery 2026、主催者はソラコム

IoTデータ通信プラットフォームを世界で提供する株式会社ソラコムは、2014年11月に設立、2015年9月にサービスを開始。現在は世界200以上の国と地域で合計1,000万回線以上のユーザーにサービスを提供しています。利用目的は、車両管理、スマート工場、ガス・電気メーターの自動記録、現場作業の効率化、見守り端末をはじめ多岐にわたります。
ソラコムは、サービス開始翌年の2016年から自社カンファレンスを毎年開催し、多くのパートナーと参加者を惹きつけてきています。東京ミッドタウンで開催された「SORACOM Discovery 2026」には、1,700人を上回る参加者が集い、30社以上のパートナー展示と15以上のセッションが行われました。
自社カンファレンスの3本柱 ― 新サービス発表・事例共有・リアル交流
ソラコムはなぜ毎年、大規模な自社カンファレンスに取り組んでいるのでしょうか。同社テクノロジ・エバンジェリストの松下享平氏と広報マネージャーの田渕恭子氏にお話をうかがいました。お二人が強調したのは、「新サービスの発表と提供開始の場」「パートナーと事例紹介の場」「実物を見て触り意見交換する場」の3つの意義です。
(1) 新サービスの発表と提供開始の場

「私たちの事業は、開発者の皆さんにIoTプラットフォームサービスを使っていただくことによって成り立っています。新サービスを多くの開発者に知っていただくためには、ワクワク感が大切です。ソラコムの最初のサービス開始と発表は、2015年9月30日、ITpro EXPO(日経BP社が主催するIT総合展示会)の会場で行いました。2016年からは毎年、自社カンファレンスで新サービスを発表しています」

「午前の基調講演で発表した新サービスは、午後には展示会場のソラコム自社ブースでデモし、来場者は実際に体験ができます。セールスやソリューションアーキテクト(顧客担当の技術者)だけでなく、開発エンジニアもブースに立って説明し、質問に答えます。発表と同時に新サービスに触れることは、IoTに関わる方がソラコムのカンファレンスに行きたいと思う大きな動機になっているのです」
(2) パートナーと事例紹介の場

「IoTはあくまで技術です。大切なのは、企業の困りごとの解決に役立つこと。ソラコムに関心を持っていただくためには、まず、どのような業界でどのような使い方があるのか、ユースケースを知ってもらう必要があります。Discoveryという名前は、最先端の技術や事例を探す・見つける、という意図から付けられました。基調講演では、ソラコム幹部の3人と活用している企業のゲストスピーカー3人とが交互に登壇します」

「ソラコムは開業時からiot-usecase.comという自社ウェブサイトでIoT事例の紹介に取り組んできています。しかし、ホワイトペーパーなどの事例集は、あくまで情報です。イベントだと現場感があります。IoTを使って困りごとを実際に解決している企業、取り組んできた人が会場で話し、デモすることによって現場感が伝わります。主人公はソラコムではなく、登壇し展示する人、来場した人、IoTを活用している皆さんです」
(3) 実物を見て触り意見交換する場

「コロナ禍の2020年から2022年はオンライン開催。オンラインとリアルのハイブリッド開催となった2023年には、会場開催日に7トラック(会場)で40以上のセッション(講演)を行いました。しかし、セッションの時間にも多くの来場者が展示ブースに留まっていました。情報提供よりも、現物を見て触り、出展者やソラコムのスタッフと会話することに価値があるのだと実感しました。コミュニティの集まりというのが参加者の皆さんの期待だと思います。そこで2024年からは、展示会場を大きくとり、リアル開催のみに絞る判断をしました。2026年は、セッションのトラック数も3つに限定しています」

「展示会場にはソラコムのブースもあり、新サービスの開発を担当したエンジニアがアテンドしています。通常、お客様との打ち合わせはセールスとソリューションアーキテクト(顧客担当の技術者)が行いますが、Discovery当日は開発エンジニアが直接に企業の開発者やビジネス関係者と話す貴重な機会です。当日に発表した新サービスにどのような印象をもったのか、使ってもらえそうなのか、どんな改善が求められるのか、お客様の声を聞きます。通常の商談の席では、契約や費用のことなどセンシティブな話題もあります。Discoveryでは、こうした話題はなく、未来の可能性に向けてお互いに気持ちが盛り上がり、仲間感がありますので、開発エンジニアは純粋なフィードバックを得られるのです」
会場として東京ミッドタウン・ホールが選ばれる理由
ソラコムは2024年から3年連続で東京ミッドタウン・ホールでDiscoveryを開催しています。その主な理由は、セッションと展示の一体的な規模感、交通や宿泊飲食など参加者の利便性、付随するミーティング施設の充実にあります。

「東京ミッドタウン・ホールは、地下鉄六本木駅に直結しています。Discoveryへは首都圏だけでなく全国から来場されるので、駅が近くて分かりやすく、周囲に宿泊施設や飲食店があるのもよいです」

東京ミッドタウン・ホールは総面積1,310㎡。当日は全体をソラコム1社で使用しています。ホールA(面積770㎡)をセッション会場として、ホールB(面積540㎡)をパートナーと自社の展示会場として、その中間にあるホワイエ(ロビー)は開発者向けのプロトタイピング実演コーナーとして使用することで、セッションとブースの構成が半々のレイアウトを実現しています。
「セッションと展示会場を一続きで使えて、参加者は自由に行き来できます。サイズ感もよかったので、2024年から継続して利用しています」

「もう一つ重要なことが、Discoveryのメイン会場以外にも、同じ施設内に会議室が充実していることです。当日は、東京ミッドタウン・カンファレンス(会議施設)をパートナー企業やユーザー企業向けのミーティングやイベントなどで活用できるのがメリットです」
一般展示会と自社カンファレンス ― それぞれの意義
SORACOM Discoveryは、年に一度の大規模な自社カンファレンスですが、それ以外にもソラコムは開発者やパートナーとのコミュニティ・ミーティングを定期的に開催しています。最後に、MICE視点から、一般の業界展示会と自社カンファレンス、それぞれの意義についてうかがいました。
認知を広げる一般展示会にパートナーと出展

ソラコムは、東京ビッグサイトで開催された「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2026」「Japan IT Week 2026」「建築・建材展 2026」、幕張メッセで開催された「総務支援EXPO 2026」など、産業界の展示会にも出展しています。
「一般の展示会は、これまでソラコムを知らなかった人も立ち寄っていただけるので、新しい認知を得る機会としても重要です。自社カンファレンス、Discoveryへの集客にもつながります」
伝えたいことをストレートに打ち出せる自社カンファレンス

「年間を通じて多くのイベントに参加していますが、ソラコムが自社カンファレンスにこだわるのは、自分たちが伝えたいことをストレートに打ち出せること、それが一番の理由です。一般の展示会も重要ですが、ブース来場者数やセッション聴講者数など、どうしても全体として追いかけなければならない数字があります。自社で開催するイベントでは、今、どのような情報をIoTのお客様や開発者に届けなければならないのか、数字よりもお客様の期待を第一にセッションも展示も組み立てることができます」
取材を終えて ― AI時代の今、企業イベントへの期待
筆者は、SORACOM Discoveryには2024年にも参加し、今回が2度目になります。最新情報はオンラインでも得ることができますが、現場感と仲間感はリアルイベントならではです。また、企業の想いと現場感・仲間感を一つの空間・時間のなかで実感できるのは、企業の独自カンファレンスならではの醍醐味です。
情報だけ知りたければ生成AIに聞けばよい。録画されたオンライン・セッションは倍速で見る。そのような時代だからこそ、単なる新商品発表会やセミナーを超えて、企業を中心としたコミュニティの仲間が集うカンファレンスに注目していきます。
取材先概要
株式会社ソラコム | SORACOM, INC.
事業内容:IoTプラットフォーム「SORACOM」の開発・提供
設立:2014年11月10日
上場:2024年3月26日、東京証券取引所グロース市場
本社所在地:東京都港区元赤坂1丁目5−12 住友不動産元赤坂ビル 9階
ホームページ:https://soracom.com/
SORACOM Discovery 2026
株式会社ソラコムが主催する国内最大級のIoTカンファレンス。2016年7月から毎年開催され、2026年7月7日の開催が第11回目となる。会場は東京ミッドタウン・ホール。セッション数は15以上、パートナー展示数は30社以上、1,700名以上が参加した。
ホームページ:https://discovery.soracom.jp/2026/