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MICEのひと

【インタビュー/PR】規模とニーズは多種多様。コミュニケーションを増やし精一杯応えていきたい 松山観光コンベンション協会・藤本さん

※2025年1月20日、21日 取材
※松山市からの依頼を受けて記事を作成しました。

松山市のMICEについて3回にわたり紹介してまいりました。さてイベント開催にあたり確認しておきたいのは、窓口支援体制ではないでしょうか。公益財団法人 松山観光コンベンション協会 コンベンション推進部 MICE推進課長 藤本研之介さんに、MICE支援サポートや、過去の開催実績について伺いました。インタビュー形式でお届けします。

「松山市ってどんなまち?」と思われた方は、文末にたっぷり紹介していますので、最後までご覧ください。

目次

MICE誘致をさらに強化。支援制度拡充&市と協会の連携

松山市はMICE誘致を積極的に推進するため、2024年度誘致の調整役となる「MICE誘致推進官」を設置し、松山観光コンベンション協会を中心に戦略的な支援策を展開しています。2020年度にはMICE誘致・開催に能動的な活動を行っているモチベーションの高い都市として観光庁から選定。将来的に日本の都市の競争力の引き上げを図ることを目的として誘致・開催における機能の強化に向けた、国の支援事業が実施されました。

2023年度にはコロナ禍を経て「松山観光コンベンション協会 MICE指針」を策定。地域一体となった愛媛・松山の魅力を活かしたMICE開催に向けたビジョンを共有することで、誘致を推進しています。


松山観光コンベンション協会  藤本さんにお聞きしました

ここからは、公益財団法人 松山観光コンベンション協会 コンベンション推進部 MICE推進課長である藤本 研之介さんにお聞きします。

松山観光コンベンション協会 藤本さん
2000年度に松山市役所入庁。2012年度から3年間松山観光コンベンション協会に出向しMICEに従事。2023年度から再び協会に出向し、地元ステークホルダーや近隣都市との連携強化などを中心にMICEの推進に取り組む。

MICE TIMES ONLINE 編集長 藤井
2021年株式会社イザンのインターンシップでキャリアをスタート。松山市のFAMツアーに取材で参加しました。松山は今回2回目。松山市で特に好きな食べ物は「鯛めし」。卵にくぐらせて鯛のお刺身を食べる贅沢感はたまりません。食べるためだけに松山市に行きたいです。

FAMツアー(ファムツアー)
国や自治体などが観光誘致を目的として、旅行会社やメディア、インフルエンサーなどに現地視察してもらうツアーのこと

MICE誘致で地域経済活性化へ。平日集客の課題をどう解決?

–松山市がMICE誘致をする理由や背景はありますか

藤本さん:松山市には道後温泉や松山城をはじめとする豊富な観光資源があり、年間約555万人を超える観光客が訪れます。しかし、訪れるのは休日に偏りがちで、平日の集客が課題となっていました。「MICE」は平日の開催も多く、交流人口の平準化にも繋がること、また地元への経済効果が非常に大きいものです。その効果は宿泊・飲食・交通・観光など多岐にわたって波及します。安定した集客を見込むべく、MICE誘致を積極的に進めています。
地元大学の先生方もMICEに理解のある方が多く、特に国際会議などは学生にとっても、松山にいながら国際交流ができる機会とご理解いただいています。豊富な観光資源や学術拠点がある強みを活かし、MICEを通じて地域経済の活性化へと繋げたいと思います。


地元連携×広域連携でさらなる誘致強化へ

–松山観光コンベンション協会のMICE戦略と、取り組みについて教えてください

藤本さん:大きく分けて、2つの戦略を推進しています。

1.地元のステークホルダーとの連携強化
地元の宿泊施設や会場、交通機関、観光事業者などとのネットワークを強化し、さまざまなニーズに対応できるような体制づくりに注力しています。国際会議や大規模な学会を誘致・支援するためには、関係者全員の協力体制が欠かせません。

2.近隣都市との広域連携
海外からの参加者が長期滞在する場合、松山市だけではプランを組むのが難しいことがあります。そのため、近隣都市とも協力して地域をまたいだコンテンツを企画。

2023年には、広島観光コンベンションビューローさんと連携し、広島と松山を組み合わせたMICEのFAMツアーを実施しました。2024年度は、今治市観光課さんと連携し「IME2025」に参加したり、四国4県のコンベンション協会と民間事業者が連携し「One Team 四国」としてMICEのFAMツアーも実施しました。2025年度以降は、今治で開催される展示会「バリシップ」の会場で今治市さんと一緒に海外に向けて情報発信ができればと考えています。


「松山市で開催してよかった」主催者からの声が生む、MICE誘致の強みとは

–松山市ならではの強みは何でしょうか

藤本さん:学会の主催者から「松山市での開催がよかったから、他の主催者にもおすすめしておきましたよ」と言われたことがあります。サポートさせていただくMICEは、1つ1つ内容が異なるため、主催者、地元ステークホルダーとのコミュニケーションをしっかりととる必要があります。

満足のいただけるMICE開催に向けて、ニーズに合わせてワンストップに支援をすること、そして、これまで松山市でMICE開催をしていただいた主催者とのつながりを大切にしていることが我々の強みです。


受付会場で順番待ちが発生するほど人気「みかんジュース蛇口」の貸出

–松山市の支援サポートについて教えていただきたいです

藤本さん:開催決定後から伴走しながら会場の手配、宿泊施設の紹介、観光コンテンツの提案など、一括してサポートさせていただくとともに、松山市らしさを演出するための会場装飾や物品などの貸出・提供を行っています。

二之丸史跡庭園 ガラディナーの様子

開催計画 前・会場の紹介・視察のサポート
開催前・地元事業者のご紹介(印刷、宿泊、ケータリング、設営、交通機関)・コンベンション開催助成金の申請・コンベンションバッグやパンフレット、衣装の提供・当協会の機関紙、ホームページで広報・宣伝
開催当日に向けて・サポートスタッフの紹介・観光情報の提供・物産販売の紹介・ユニークプログラムの手配(郷土芸能や飲食アトラクション、松山マドンナ大使など)

藤本さん:「みかんジュース蛇口」の貸出は松山市ならではのユニークプログラムとして好評です。受付会場に設置するだけで話題を集め、順番待ちが発生するほどです。

みかんジュース蛇口
MICE開催施設ガイド:https://jccb.or.jp/cb-pamphlet/wp-content/uploads/sites/2/2018/12/えひめコンベンション施設ガイド.pdf


開催経費への助成金について


藤本さん:
当協会では延べ宿泊者数に応じて、大会開催経費に充当できる助成金制度を設けています。大会規模にもよりますが、基本助成額では、50人泊以上が対象となり、県の助成金も含めると最大170万円まで助成しています。要件を満たせば基本助成金額に合わせて、加算金額もあります。

助成金は主催者を支援するだけでなく、松山市にとってメリットとなることをお願いする意味もあります。その1つが「市民公開講座等加算金」です。学会等が開かられた際に、市民向けの講座を実施した場合に加算して助成するものです。市民にとっては松山市にいながら、様々な分野のお話が聞ける場になるからです。当協会としても市民のためのMICEになるよう、取り組んでいるところです。

MICE補助金制度:https://www.mcvb.jp/convention/support/subsidy.html


松山市MICEの成功事例。学生と地域が支える国際会議の舞台裏

過去の開催実績について

藤本さん:2024年度の具体的な事例や取り組みについてご紹介しますね。

コンクリート工学年次大会2024
展示会の様子

公益社団法人 日本コンクリート工学会様開催の「コンクリート工学年次大会2024(松山)」が2024年6月に、3日間にわたって開催されました。新型コロナ禍明けでリアルでの参加者がどれくらいになるか分からないこと、宿泊施設・空港・JRの駅と、会場が少し離れたところにあるなど、大会期間中のシャトルバスの運行計画は予測がつかないところがありました。開催当日、総来場数は当初見込んでいた3,000人を上回り、5,000人となったことから急遽シャトルバスの増便行うことで「スムーズに解決してくれて助かった」と喜んでいただきました。


地元学生が国際会議運営を経験・サポート「MICEサポーター制度」

アジア生物学教育協議会第29回隔年会議(AABE2024)というアジア諸国を中心とした国際会議が行われ、全体参加者が約240名、うち日本国外から8か国、約80人が集まりました。

これまでMICE開催のサポートのために、ボランティアスタッフの紹介をしておりましたが、新型コロナ禍後からスタッフの確保がなかなか大変でして…。そこで、松山市の大学に通う学生を対象にメンバーを募集し、大会前、中、後の3段階で関わってもらいました。これらは、MICE人材の育成、最終的には当協会の「MICEサポーター」として大会後も関わってもらえるスキームの実証実験の場となりました。

事前研修では座学だけではなく和蝋燭の職人さんのところへ行き、地元の文化について学んだり、大会に関わる飲食事業者も加わりハラルやヴィーガン対応の講習を実施ししたりと、MICEならではの視点で研修を組みました。あまり馴染みのないMICEに触れてもらう機会を、大会主催者である愛媛大学の先生方のご協力のもと、実施できました。これまでのMICE関係者に加え、新しく加わっていただける方、興味を持たれる方も巻き込みながら、松山のMICEを盛り上げていきたいです。

ちなみに今回の取組は、観光庁の支援事業として実施。東京で行われた支援事業の報告会で「伴走支援部門」を受賞したことは、我々はもちろん、今回の事業に携わっていただいた関係者にとっても励みになっています。「MICEサポーター制度」として、今後も大会のサポートをしていく予定です。


新しい価値が生まれるようなMICE開催をサポートしていきたい

–今後のビジョンはありますか

藤本さん:各都市のMICE関係者が日々、自都市への誘致に励んでおられるかと思います。我々が大事に考えていることは、主催者が安心で快適にMICE開催ができること、そこに「松山らしさ」をもってサポートをすることです。そのためにも、できるかぎり主催者や地元ステークホルダーとのコミュニケーションを増やし、大会を終えるまで伴走サポートしていきたいと思います。

温泉地ならではのリラックスした雰囲気の中で、リアルな交流を通じて、新しい価値が生まれるようなMICE開催をサポートしていくこと。これが松山市のMICEのビジョンです。


藤本さん、インタビューにご協力いただきありがとうございました!
さて、後半は松山市のMICE開催都市としての魅力をおさらいしましょう。

いで湯と城と文学のまち松山市に「ようおいでたなもし」

【キーワード】ようおいでたなもし
愛媛県松山市の方言で、「ようこそいらっしゃいました」という意味

松山市MICEの特徴をおさらいします。松山市は愛媛県の県庁所在地であり、四国最大の都市です。人口は約50万人。温暖な瀬戸内海気候で年間の平均気温は16.8℃ほど。雪が降ることはほとんどなく、1年を通じて比較的過ごしやすい地域です。

1.豊富な観光資源による満足度の高いアフターコンベンション、エクスカーションの提供

数々の歴史遺産や文化施設、観光資源を有しており、その代表的なものが国の重要文化財にも指定されている「松山城」です。また、日本最古といわれる「道後温泉」は、観光経済新聞社が主催する「にっぽんの温泉100選」で2位にランクイン(2024年度)。2024年7月に本館の全館営業が再開し、国内外から多くの観光客が訪れる名湯です。

道後温泉本館

俳人・歌人として名高い正岡子規をはじめ、夏井いつき、種田山頭火など多くの文学者を輩出してきました。小説家の夏目漱石が執筆した『坊っちゃん』など、文学との深いつながりを感じさせるスポットが市内各所に点在しています。しまなみ海道や内子・大洲などへのアクセスも良好で、アフターコンベンションの選択肢が豊富です。
参加者が温泉に浸かって疲れを癒やせることや、歴史や文学の空気感に触れられる点は、松山市ならではの強みだと思います!

2.コンパクトで移動もスムーズ

会議施設や宿泊施設、観光施設などが市内中心部に集まり、空港や駅からは路面電車やバス、徒歩でも簡単に移動ができます。中四国圏域からのアクセスも容易です。

道後温泉駅

松山市へのアクセス です。
引用:令和6年 松山観光コンベンション協会MICE指針 より

飛行機(松山空港発着)

都市・地域所要時間便数
東京(羽田)約90分12便/日
東京(成田)約110分3便/日
名古屋(中部)約70分3便/日
大阪(伊丹)約50分11便/日
福岡約45分4便/日
韓国・釜山(AIR BUSAN)約75分3便/週
韓国・仁川(JEJU air)約95分1便/日
韓国・台北(EVA AIR)約145分2便/週

※ その他鹿児島、沖縄便もあり

鉄道(JR)

岡山(岡山駅)約165分13便/日

フェリー

広島(広島港)約70分9便/日
山口(柳井港)約150分12便/日

※ その他小倉(福岡)便もあり ※ 広島はスーパージェットの便数

3.玄関口JR松山駅がリニューアル

2024年9月にJR松山駅の新駅舎がオープンしました。商業エリア「だんだん通り」や、新駅舎の西口には多言語対応やITを活用した窓口対応ができる「観光案内所」が新設。インバウンド旅行者を含む来訪者への対応ができるようになりました。

4.研究施設や学術機関が充実

市内には11の大学やキャンパスがあり、愛媛大学を筆頭に研究施設や学術機関が充実しているため、学会やシンポジウムなどの開催も盛んに行われています。愛媛大学が中心となって誘致してきた「第29回 高圧力科学と技術に関する国際会議(AIRAPT-29)」の2025年開催が決定し、同大会は、JNTO(日本政府観光局)から「国際会議誘致・開催貢献賞 誘致の部」を受賞。こうした学術面でのポテンシャルが高いことも、松山市がMICEを推進する上で大きな強みとなっているのです。

5.松山らしい食の体験

松山は瀬戸内の豊かな食材と郷土料理がいただけます。代表的なのが、愛媛の名物「鯛めし」。昆布だしで炊いたご飯と鯛を混ぜ込む「松山鯛めし」と、新鮮な鯛の刺身を特製ダレと卵黄に絡めて食べる「宇和島鯛めし」の2種類があります。地元の銘酒とともに、鯛や瀬戸内の鮮魚、砥部焼の器を使った料理など、愛媛・松山らしい“おもてなし”を味わえるのが魅力です。MICEの会場選びとともに、食の体験も特別な時間を演出するポイントになります。

アクセスの良さ、温泉、文学という観光資源の充実、食事など、特別な要素がそろったMICE都市です。国内主要都市からの直行便や高速道路・鉄道を利用すればアクセスもしやすく、出張ついでに観光や温泉を満喫するといった組み合わせも実現可能です。ぜひ、今後のMICE開催地として、松山市を選択肢のひとつに入れてみてください。


Editor’s note 市と観光コンベンション協会が積極的に協力し合

松山市は今後も積極的にMICEを誘致していくと教えていただきました。国際会議や大型学会だけでなく、企業が実施する小規模な研修やインセンティブツアーにも丁寧に対応することで、MICE開催地として選ばれる都市を目指しています。

さらに、地域全体でMICEに取り組もうという機運が高まっており、松山市と松山観光コンベンション協会がそれぞれの立場で積極的に協力し合っている姿が印象的でした。今回のインタビューには松山市の観光・国際交流課の山本さんにも同席いただきました。「松山市で開催したい」という主催者の声があるのも納得です。


「MICE TIMES ONLINE」では今後も松山市の最新情報を追いかけ、FAMツアーで得た気づきや体験をもとに、お届けしてまいります。

団体名:公益財団法人 松山観光コンベンション協会
所在地:〒790-0004 愛媛県松山市大街道3丁目2-46
電話:089-935-6711
お問い合わせフォーム:https://www.mcvb.jp/oshirase/inquiry.html
団体名:松山市 観光・国際交流課
所在地:〒790-8571 愛媛県松山市二番町四丁目7-2 本館8階
電話:089-948-6986
E-mail:kanko@city.matsuyama.ehime.jp

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