他の業界志望でもMICE業界は選択肢になる。逆にMICE業界志望でも、広く社会をとらえよう。情報を効率よく集める方法 就活で差をつける企業研究の進め方【MICEキャリアナビ】
MICE業界は、総合力と実行力が求められるダイナミックな世界です。長らく観光業やホスピタリティ産業の一部として狭義に捉えられがちでしたが、現代では商社、コンサルティング、IT、行政といった多岐にわたるセクターが交差する「メタ産業」としてその本質が再定義されつつあります。他業界を第一志望とする学生の方にとっても、MICE業界は将来どの業界に進むにしても通用する「ポータブルスキル」を圧倒的な密度で獲得できる場として捉えるべきであり、キャリアの形成期に検討する価値は非常に高いです。本記事では、MICE業界を志望する皆さんが、どのように情報を集め、業界への理解を深めていけば良いかを、具体的なアクションプランとして解説していきます。

職種名ではなく「事業の本質」で企業を深掘りする
MICE業界でのキャリアを考える上で、最も重要なステップは、たとえば表面的な「イベントプランナー」という職種名にとらわれず、各企業や団体がどのようなビジネスモデルで価値を生み出しているかを深く理解することです。MICEは「産業インフラ」であり、その業務形態は多岐にわたります。
自身の志向に合わせた企業選定の視点
MICE関連企業の事業内容は、学生が志望する他業界の特性と共通項を持っています。自身の志向に合わせて、MICE企業を分類して研究することで、その仕事の解像度を高められます。
展示会主催会社→特定の商材を持たない総合商社のような存在?
もしあなたが「グローバルな規模感」や「ゼロからのビジネス創出」に魅力を感じるのであれば、大規模展示会主催会社の業務を深く研究すると良いでしょう。展示会主催会社は、資源やエネルギーといった「モノ」ではなく「ビジネス機会」の取引を行っており、実質的には「特定の商材を持たない総合商社」として機能しています。市場調査に基づき「次に流行る産業」や「統合が必要な分断された市場」を特定し、巨大な空間を数百億円規模の商談が成立する「市場」へと変貌させる、市場創造型のビジネスモデルです。
一方で、「知的生産活動」「クライアントの課題解決(ソリューション)」「論理的アプローチ」を重視する傾向がある方は、PCO(Professional Congress Organizer)や企業イベントの企画制作部門に注目してください。これらの部門は単なる「手配業」から脱却し、「コミュニケーション・デザイン・コンサルティング」へと業態を進化させています。クライアントの抱える本質的な課題の抽出(現状分析)から、解決のためのコミュニケーション戦略の立案(戦略策定)、そして最適な手法の設計(施策設計)といったコンサルタント同様のプロセスが求められます。

業界のリアルを知るための具体的なアクション
MICEの業務は、予算管理、マーケティング戦略策定、海外との交渉、そして現場での危機管理など、非常に幅広く、企画立案から現場運営まで一貫して携わることで多彩な能力が身につくのが特長です。MICE業界のリアルを知るには、いくつかの具体的なアクションが有効です。
OB・OG訪問をキャリアハブとして活用する
MICE業界で得られる能力や経験は、他業界への強力な「パスポート」となるため、MICE業界は「キャリアハブ」であると言えます。情報収集において最も推奨される方法のひとつが、OB・OG訪問などを通じて実際の業務に触れることです。
訪問時には、若手が担当するプロジェクトにおいて、具体的にどのような「裁量権の大きさ」を持っているのか、また、取引相手となる「カウンターパート(省庁、業界団体トップ、出展企業CEO、クライアント企業の社長や役員クラスなど)」の多様性を確認することをおすすめします。入社数年の若手でも特定のセクターの責任者として予算管理や戦略策定を任されるなど、「ミニCEO」としての経験を積めるMICE業界特有の構造を理解することで、自身がどのようなビジネスパーソンに成長できるかの解像度を高められます。
関連業界を横断的に研究し視野を広げる
MICEで培われる能力は、高度な論理的思考力と実行力、そして対人折衝能力であり、これらは業種を超えて通用するポータブルスキルです。MICE業界以外のキャリアを志望する学生にとっても、MICEで培ったプロジェクトマネジメント能力やコミュニケーション力は、コンサルティングファームやIT業界で高く評価されるでしょう。
「イベントを創る」スキルが活きる場はMICE専門企業以外にも広く存在します。大手広告代理店のイベントやプロモーションを専門とする部署、新商品発表会などを手掛けるPR会社、BtoBマーケティング企業などがそれに該当します。また、JTB、HISなどの旅行大手にはMICE専門部署があり、インセンティブツアーや大型研修旅行の企画運営を行っています。このような関連業界の求人や事業内容も横断的に研究することで、MICE業界での経験を将来どのように活かせるかというキャリアパスの選択肢がぐっと広がるはずです。

MICE業界の情報収集で就活の成功を掴む
MICE業界は、日本が国家戦略として振興しており、今後も成長が期待できる分野です。若手のうちから数千万円から数億円規模のプロジェクトの損益責任を持ち、他業界では30代後半から40代の管理職クラスが担う業務に匹敵するプロジェクトマネジメント経験を早期に習得できる環境です。
特定の業界に絞らず、MICE業界を「ポータブルスキル」を圧倒的な密度で獲得できる絶好の機会を得られる場として捉えることができるでしょう。企業の本質を見極め、OB・OG訪問を通じてリアリティのある情報を得て、あなたのキャリア形成にMICEを活かしていきましょう。世界中の人々を繋ぎ、ビジネスを動かし、社会を変える力を手に入れたいと願うすべての野心的な人材に対し、MICE業界はその門戸を広く開いています。



