
世界最大級のゲーム展示会「gamescom(ゲームズコム)」2025年8月20日~24日、ドイツ・ケルンで開幕/イベントの歴史とこれから 日本企業の出展情報もご紹介
ドイツ・ケルンで毎年開催される「gamescom(ゲームズコム)」は、単なるゲーム展示会の枠を超え、世界最大級のコンピュータ&ビデオゲームイベントとして、また欧州最大のビジネスプラットフォームとしての地位を確立しています。業界関係者向けのB2B(企業間取引)と、一般のゲームファン向けのB2C(消費者向け)というユニークなハイブリッドモデルを採用しており、多様なステークホルダーのニーズに応える複合的なエコシステムを構築している点が最大の特徴です。MICEの観点からも、その運営ノウハウや経済波及効果は世界トップクラスであり、国際イベントの成功事例として注目されています。

第1回は2009年、gamescomの歴史と成長
黎明期から世界最大規模へ
gamescomは、もともと2002年から2008年までライプツィヒで開催されていた「Games Convention」を前身とし、イベントの規模拡大に伴いケルンメッセへ移転・改称されました。2009年8月にケルンで第1回が開催され、当時約24.5万人もの来場者を集める成功を収めています。その後、年々規模を拡大し、2010年代半ばには世界最大のゲームイベントとしての地位を確立しました。2013年には来場者数が初めて34万人を突破し、2018年には約37万人、そしてパンデミック前の2019年には史上最多となる約37.3万人の来場者を記録しています。

パンデミックを乗り越え、さらに進化する
2020年と2021年は、新型コロナウイルスの影響によりオンライン開催となりましたが、この期間に培われたデジタルでの経験とインフラは、物理イベント再開後に巧みに統合され、強力なハイブリッドモデルを確立する礎となりました。
リアル会場での開催は2022年に復活し約26.5万人が来場、2023年には約32万人、そして2024年には約33.5万人へと着実に回復しています。この成長の背景には、eスポーツトーナメントやコスプレコンテスト、インディーゲームエリアなど、ゲームコミュニティのニーズに応えるための継続的なフォーマット導入と、常にコンテンツを革新し続ける姿勢があります。
運営は会場運営のプロフェッショナルであるKoelnmesse GmbHと、ドイツのゲーム産業を代表する業界団体game – The German Games Industry Associationが共同で行っています。

gamescom イベントとしての特徴
gamescomは、その巨大な規模と国際性、そして多岐にわたるプログラム構成が大きな特徴です。
参加者層と国際性
gamescomは、年次にもよりますが概ね30万人規模の来場者数を誇ります。一般のゲームファンに広く開放された「エンターテインメント(一般)エリア」と、業界関係者に限定された「ビジネスエリア」に分かれて開催されます。ビジネスエリアでは、世界各国のゲーム企業の商談やメディア向けのクローズドなプレゼンテーションが行われ、開発者・パブリッシャー・バイヤー・ジャーナリストら業界関係者の交流の場となっています。
特に注目すべきはその国際性で、2024年には出展企業数1,462社のうち、実に71%がドイツ国外の企業でした。国別の共同出展ブースであるナショナルパビリオンも多数設置され、世界中の国々がgamescomを自国産業のショーケースとして重視していることが伺えます。また、会期開幕直前には、欧州最大級のゲーム開発者向けイベントである開発者会議「devcom Developer Conference」も併催され、ゲーム開発者同士のカンファレンスが盛んに行われます。

多彩なプログラムとコミュニティ重視の哲学
gamescomでは単にゲームの展示・試遊が行われるだけでなく、ゲームファンの祭典として多彩な催しが用意されます。会場内外のステージではeスポーツ大会、ゲーム音楽ライブ、コスプレコンテストなどエンターテインメント要素に富んだイベントが連日開催され、来場者を楽しませます。優れた新作タイトルを表彰する「gamescomアワード」の授賞式や、ゲーム業界が社会・経済と交わるテーマについて議論する「gamescom会議(gamescom congress)」といった公式プログラムもあり、産業イベントとしての側面も持ち合わせています。
さらに、gamescomは徹底したコミュニティ中心主義を掲げており、「ゲームの祝祭」と称される理由の一つとなっています。熱心なファンが主役となるコスプレコンテスト、インディー開発者の才能が披露される広大なインディーゲームエリア、ゲームの歴史を体感できるレトロゲームエリアなど、専門性の高いコミュニティに応えるための専用ゾーンが設置されています。近年では、ポッドキャストのライブ収録や音楽ライブが行われる「ソーシャルステージ」や、アナログゲームファンのための「カード&ボードゲームエリア」が新設されるなど、コミュニティの関心の変化に敏感に対応し、常に新しい体験を提供し続けています。
gamescomの強力なマーケティング手法として機能しているのが、著名なゲームジャーナリスト、ジェフ・キーリー氏がホストを務める大規模なオープニングショー「gamescom: Opening Night Live(ONL)」です。このショーは全世界にライブ配信され、大手パブリッシャーによる世界初公開情報や大型タイトルの新トレーラーが発表される場となり、イベント全体のメディア露出と話題性を最大化しています。また、ケルン市全体を巻き込む「gamescom city festival」が開催され、街全体が祝祭的な雰囲気に包まれることで、単なる産業イベントではなく、開催都市の文化と経済に深く根ざした一大文化イベントとしての地位を確立しています。

昨年開催:gamescom 2024の開催概要と実績
直近に開催されたgamescom 2024は、数々の記録を塗り替え、パンデミック後のゲーム業界の活況を象徴するイベントとなりました。
過去最高の出展社数と広範なリーチ
2024年のgamescomは、2024年8月21日から25日の日程で開催され、パンデミック後の本格的な盛況ぶりが話題となりました。来場者数は約335,000人に達し、前年2023年から増加。ビジネス来場者は約32,000人を数え、そのうち50%がドイツ国外からであり、特に北米と日本からの参加者増が顕著でした。
出展社数は64か国から1,462社と史上最多を記録し、2023年比で19%増という大幅な伸びを示しています。海外からの出展社比率は71%に達し、その国際性・業界カバレッジの広さでも改めて注目されました。会期中はドイツ連邦デジタル大臣や欧州各国の政府関係者が来場し公式に開幕を宣言するなど、産業イベントとしての存在感も示しています。
オンライン配信にも力を入れており、初日の目玉となるライブ番組「gamescom: Opening Night Live(ONL)」は全世界で4,000万回以上視聴され、イベント全体のビデオ総視聴回数は5億4,700万回を超えるなど、デジタルでの視聴者数が爆発的に増加しました。これは、物理イベントの価値を損なうどころか、その価値を増幅させる「デジタル乗数効果」が存在することを証明しています。

注目タイトルとアワードのハイライト
2024年の主なトピックとしては、エンターテインメント面で多数の新作発表・最新情報公開が行われ、世界中のゲームファンの注目を集めました。特に初日のONLでは、Gearbox Softwareによるシリーズ最新作『Borderlands 4』の発表や、人気ストラテジーシリーズ最新作『Sid Meier’s Civilization VII』のティザー公開が大きな話題となりました。また、『Call of Duty: Black Ops 6』(アクティビジョン)の最新ゲームプレイ映像披露や、カプコンの新作『モンスターハンターワイルズ』の続報公開、さらに新規タイトルでは『Mafia: The Old Country』(2K Games)や『Dying Light: The Beast』(Techland)といった多彩なジャンルの作品プレミアが行われています。
出展社の顔ぶれも注目に値し、Microsoft/Xboxがベセスダやアクティビジョン・ブリザードを伴い広大なブースを展開したほか、エレクトロニック・アーツやスクウェア・エニックスといった大手企業が、数年のブランクを経て独自の大型ブースを構えて復帰しました。これは、gamescomのプラットフォームとしての価値が業界内で再評価されていることを示唆しています。
公式のgamescomアワード2024では、カプコンの『モンスターハンターワイルズ』が「Best PlayStation Game」や「Most Epic」などノミネートされた4部門すべてで受賞を果たし、最大の勝者となりました。また、Supermassive Gamesとバンダイナムコによる『リトルナイトメア3』も「Best Visuals」「Best Audio」「Best Xbox Game」の3部門を制し、高い評価を得ています。これらの結果は、日本の大手パブリッシャーが制作するAAAタイトルの世界的な競争力の高さを改めて証明しました。
gamescom 2025 展望と日本企業の存在感
2024年の成功を受け、gamescom 2025への期待はかつてなく高まっています。

gamescom 2025 開催概要
会期:2025年8月20日(水)~8月24日(日) 初日の20日(水)はビジネスデイです。
会場:ドイツ・ケルンメッセ(Koelnmesse, Cologne, Germany)
主催:Koelnmesse GmbH と game – The German Games Industry Association
公式Webサイト https://www.gamescom.global/en

開催概要と主要パブリッシャーの動向
2025年のgamescomは、2025年8月20日(水)から24日(日)にドイツ・ケルンメッセで開催が予定されています。会期に先立ち、8月19日(火)にはキックオフイベントである「gamescom Opening Night Live」が開催されます。また、開発者向けカンファレンス「devcom」は8月17日(日)から19日(火)にかけて実施される予定です。
2025年における最大の戦略的トピックは、2024年の不参加を経て任天堂(Nintendo)が復帰することです。同社は2023年以来2年ぶりの参加となり、欧米ゲームファン・業界双方にとって大きなニュースです。任天堂は次世代機「ニンテンドースイッチ2」(Switch 2)を2025年に発売、gamescom会場でその新ハード向けタイトル(例:『メトロイドプライム4 ビヨンド』など)の最新情報やデモプレイがお披露目される可能性があり、大いに注目を集めるでしょう。任天堂の復帰は、物理イベントでの直接的なマーケティングを重視する同社の戦略を反映しています。

対照的に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は6年連続で公式な出展を見送ることを発表しており、これは自社主催のデジタルイベント(State of Playなど)を情報発信の主軸とするSIEの戦略を反映しています。しかし、SIEが直接出展せずとも、キックオフイベント「Opening Night Live(ONL)」やサードパーティのブースではPlayStation向けタイトルの発表が多数行われるため、プラットフォームとしての存在感が完全に消えるわけではありません。
任天堂以外の主要企業も例年どおり多数参加すると見込まれています。Xbox(マイクロソフト)やUbisoft、EA、Capcom、Bandai Namco、SEGA、Square Enixなど、世界的パブリッシャーが最新作・大型プロジェクトのプロモーションにgamescomを活用する予定です。ONLでは注目作のトレイター公開などが予告されており、大きな注目を集めています。コナミは特に『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』の試遊可能なデモ出展を明言しており、大規模なブース展開が期待されます。

日本企業の存在感と拡大するエリア
日本企業の動向という点では、前述の任天堂の参加表明に加え、バンダイナムコやカプコン等も欧州市場を意識した出展を強化しており、日本発のコンテンツがグローバルな舞台で発信される好機となるでしょう。
特に注目されるのが、経済産業省の支援事業の一環として、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)が主催する「ジャパンパビリオン」が、インディーエリア内に設置されることです。このパビリオンは、海外展開を目指す日本の中小ゲーム企業や個人開発者にとって、国際市場への足がかりとなる重要な機会を提供します。2025年は選考を通過した10のデベロッパーが出展し、試遊台を通じて自社のタイトルを世界中のファンやビジネスパートナーに披露する予定です。これは、日本のAAAタイトルだけでなく、多様で創造的なインディーゲームシーンの存在感を世界に示すための、官民一体となった戦略的取り組みと位置づけられます。
gamescom 2025では、エンターテインメントエリアにHall 8が追加されるほか、インディーエリアがHall 10.2に拡張されるなど、新たな会場拡張も予定されています。また、東南アジア初のパートナー国としてタイが参加し、会期中にモバイルで使えるデジタル・ロケーションファインダーの導入や、Fortnite Creator Championship、Die Techniker Prime League決勝などのeスポーツ新フォーマットも発表されています。
日本企業出展情報 プレスリリースより
「gamescom 2025 ジャパンパビリオン出展」ジャパンパビリオン参加10作品が決定!


Out of Skull(事業者名:イノナカゲームス)
Wizlite: Everybody loved RPGs(事業者名:株式会社5次元)
CASSETTE BOY(事業者名:株式会社ワンダーランドカザキリ)
G’AIM’E × タイムクライシス+(事業者名:達成電器株式会社)
SAEKO: Giantess Dating Sim(事業者名:SAFE HAVN STUDIO)
Jelly Troops(事業者名:Nukenin株式会社)
SKY THE SCRAPER(事業者名:古淵 寮)
戦場のフーガ3(事業者名:株式会社サイバーコネクトツー)
DRIFTED ドリフテッド(事業者名:UrbanFox)
BANDIT KNIGHT(事業者名:GameFloat)
※詳細はこちらから https://www.vipo.or.jp/news/46620/
(映像産業振興機構(VIPO)プレスリリースより)
コナミデジタルエンタテインメント:欧州最大級のゲームの展示会「gamescom 2025」出展内容を決定



主な出展タイトルは、グローバルで展開する『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』『SILENT HILL f』『Yu-Gi-Oh! TRADING CARD GAME』。ONL内では『SILENT HILL f』新トレーラーの公開を行う予定。ブースでは『METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER』が発売前に試遊できるほか、『Yu-Gi-Oh! TRADING CARD GAME』(日本名:『遊戯王オフィシャルカードゲーム』)の新商品も体験プレーできます。
任天堂、出展を公式アカウントで発表。詳細は不明
翻訳「カレンダーに赤いマークを: 任天堂は2025年に再び@gamescomに出展します。8月20日から24日まで、ケルンで皆様をお待ちしています!」
Rot im Kalender anstreichen: Nintendo ist 2025 wieder auf der @gamescom. Wir freuen uns, euch vom 20. bis 24. August in Köln begrüßen zu dürfen! pic.twitter.com/8B3ibgOyBu
— Nintendo DE (@NintendoDE) May 19, 2025
カプコンが贈る新感覚のSFアクションアドベンチャー『プラグマタ』試遊出展予定

2026年発売予定の話題作についてリリースの中で「gamescom 2025への試遊出展が決定!各地で開催されるゲームショウへの出展も計画中!」と発表されています。まだまだ謎が多い同作ですが、実際に遊べるとなると、どんなゲームなのか少し見えてきそうです。
続報は公式Webサイトで https://www.capcom-games.com/pragmata/ja-jp/

まとめ:世界最大級のゲームショーは8月開幕!日本企業の動向にも注目です
gamescomは2009年の誕生以来、欧州のみならず世界のゲーム業界・ファンにとって欠かせない一大イベントへと発展してきました。その歴史と実績が示すとおり、来場者規模・国際性で他に類を見ない存在であり、展示会・カンファレンス・フェスが融合したユニークな「ゲームの祭典」として支持されています。
MICE業界の観点から見ても、gamescomはリアルイベントとデジタル展開の相乗効果を最大化する「デジタル乗数効果」の成功事例であり、大規模な国際イベント運営における重要な教訓を提供しています。また、コスプレ、インディー、ボードゲームといったニッチなコミュニティに特化した体験を提供し、「祭典のなかの祭典」を創り出すことで、イベント全体の魅力を高めています。環境への配慮として「gamescom goes green」という包括的なサステナビリティへの取り組みも展開しており、MICE業界における先進的なモデルケースとなっています。
今年2025年も、任天堂の復帰や多数の注目タイトル発表、そして日本企業の積極的な参加により、多くの新情報やビジネスの出会いが生まれる場となることが予想されます。gamescomは今後もゲーム産業のみならず、イベント産業全体に大きなインパクトを与え続けることでしょう。
※写真はgamescomの提供によるものです。(Photo: Koelnmesse / gamescom / Author)
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