
中国最大級のデジタルエンタメ見本市「ChinaJoy」2024年開催内容と2025年の最新情報- 知っておきたい市場トレンドとビジネスチャンス
今回は、中国はもちろん、アジア最大級のデジタルエンターテインメントの祭典「ChinaJoy(チャイナジョイ)」に迫ります。ゲーム業界の方はもちろん、普段あまりゲームイベントに関わらない皆様にも、この巨大イベントの魅力とビジネスチャンス、そしてアジア市場のダイナミズムを知っていただきたいです。

ChinaJoyとは? アジア最大級のデジタルエンタメ総合展
ChinaJoy(正式名称:中国国際数碼互動娯楽展覧会、China Digital Entertainment Expo & Conference)は、「アジア最大級のデジタルエンターテインメント総合イベント」です。その影響力はドイツのGamescomや日本の東京ゲームショウと並ぶとされるほど、成長著しいイベントです。
2004年に北京で第1回が開催され、第2回以降は毎年夏に国際ビジネス都市・上海の「新国際博覧中心(SNIEC)」で開催されています。
当初はオンラインゲームが中心でしたが、現在ではゲーム、コミック・アニメ、ネットビデオ・音楽、eスポーツ、デザイナートイ、そして最新のソフトウェアやハードウェアまで、デジタルエンタメの最前線が一堂に会するプラットフォームへと進化しました。
ChinaJoyの主催には、中国音像与数字出版協会(CADPA)などの業界団体に加え、中国国家新聞出版署や上海市人民政府といった政府機関も後援・指導として関与しており、官民連携がその規模と成功を支えています。
MICE視点で見るChinaJoyの構造:B2CとB2Bの二本柱
このイベントは、単なるファンのお祭りではなく、MICEイベントとしての機能が強く意識されています。会場は明確に二つのエリアに分かれており、これがChinaJoyの大きな特徴です。
BTOC(Business to Consumer)インタラクティブエンターテイメントホール
一般来場者向けエリア。最新ゲームの試遊、華やかなステージイベント、コスプレなどが繰り広げられ、熱気に満ち溢れます。ブランド認知度の向上や消費者データの収集に直結します。
BTOB(Business to Business)ビジネスホール
国内外の企業が商談目的で集まるビジネスエリア。企業ブランド、製品、技術、資本のマッチングが活発に行われます。過去には専用のマッチングシステムも導入され、多額の意向契約額が記録されるなど、パートナーシップ構築や投資誘致、市場参入のための集中的な環境を提供します。
このB2CとB2Bの二元的な構造が、多様な目的を持つMICE参加者にとっての価値を高めているのです。

2024年実績:過去最高の来場者数を記録し、完全復活を証明
ChinaJoy 2024(7月26日~29日開催)は、その成果も目覚ましいものとなりました。総来場者数は延べ36万7,000人を超え、コロナ禍前の2019年の記録を上回り過去最高を更新。国際的な参加も活発で、31の国と地域から743社の企業が出展し、海外企業の比率は約43%に達しました。
これらの数字は、ChinaJoyがパンデミックの影響から力強く回復し、国際的なイベントとしての地位を盤石なものにしたことを明確に示しています。MICE業界にとって、これは大規模対面イベントの価値が再確認されたポジティブな兆候と言えるでしょう。
ChinaJoy 2024
項目 | 詳細 |
---|---|
総来場者数 | 367,000人以上(2019年超え・過去最高) |
来場者数成長 (前年比) | 約9%増 |
来場者の中心層 | 18歳~49歳(全体の68.4%) |
総出展社数 | 743社(前年比約50%増) |
参加国・地域数 | 31 |
海外出展社比率 | 約30% |
展示総面積 | 130,000平方メートル |
2024年の3大トレンド:未来を形作るテクノロジーと市場
1. 中国ゲーム市場の最新動向
イベントで発表された2024年上半期の中国ゲーム産業レポートによると、市場売上は1,472億元(約3兆円)、ゲームユーザー数は過去最高の6億7,400万人に達し、安定成長を維持しています。ジャンル別ではRPGがシェアを落とし、シミュレーションや放置系ゲームが伸びるなど、プレイヤーの嗜好の多様化が鮮明になりました。
2. AIGC(AI生成コンテンツ)がもたらす開発革命
AIはゲーム開発の「不可欠な部分」となり、開発効率を劇的に向上させています。NPC(ノンプレイヤーキャラクター:自分が操作しないキャラクターのこと)の挙動生成から背景制作、さらにはUGC(ユーザー生成コンテンツ)エディターへの統合まで、その応用範囲は拡大。「すべてのプレイヤーをクリエイターにする」という可能性は、新たなビジネスモデルやイベント形式の創出に繋がるでしょう。
3. IP(知的財産)活用の絶大な効果
市場競争が激化する中、既存IPの活用が極めて効果的であることが改めて示されました。データによると、IPコラボはゲームのDAU(デイリーアクティブユーザー)を11%増加させる効果があります。バンダイナムコエンターテインメントのブースでは「ONE PIECE」や「機動戦士ガンダム」といった強力なIPが多数展示され、絶大な集客力を証明しました。
日本企業の存在感:多様化する中国市場へのアプローチ
国際色豊かなChinaJoyにおいて、日本企業の存在感も際立っていました。
- ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE):中国の開発スタジオを支援する「China Hero Project」のタイトルを展示し、中国市場への深いコミットメントを示しました。
- バンダイナムコエンターテインメント:人気IPを活用した多彩なゲームや商品を展示し、多くのファンを魅了しました。
- SNK:中国パートナーと連携したeスポーツイベントを展開し、多角的なアプローチを実践。
- ホンダ:自動車メーカーが出展し、異業種からの注目の高まりを象徴しました。
これらの事例は、日本企業がローカライズ、eスポーツ連携、IP活用など、多様な戦略で中国市場に関与していることを示しているといえます。

併催カンファレンス「CDEC」の重要性
ChinaJoyと同時開催される「中国国際デジタルエンターテイメント産業カンファレンス(CDEC)」も見逃せない要素です。国内外のトップ経営幹部が集い、業界の未来を議論する権威ある場であり、展示ホールで見たトレンドが、ここではより戦略的な視点から語られます。2024年は「新たな質の高い生産性が産業の高度化を推進する」といったテーマが掲げられ、AIやグローバル化戦略が議論の中心となりました。
ChinaJoy 2025 開催概要と展望

では、今年の第22回となるChinaJoy 2025は、どのようなものになるのでしょうか。
ChinaJoy 2025 開催概要
公式Webサイト https://en.chinajoy.net/#/englishPage/englishHome
項目 | 詳細 |
---|---|
正式名称 | 中国国際数碼互動娯楽展覧会 |
開催期間 | 2025年8月1日(金)~4日(月) |
会場 | 上海新国際博覧中心 (SNIEC) |
スローガン | 「聚・你所愛!」(集え、あなたの好きなもの!) |
2025年のスローガンは「聚・你所愛!(Gather What You Love!)」に決定。これは多様な「好き」を持つ人々を包摂し集める場である、というメッセージが込められています。
【2025年の注目ポイント】
- 国際化のさらなる強化:世界各国から優れたデジタルエンタメ作品や先端テクノロジーを集め、交流と協業を促進。
- 新エリア「創作者专区(Creators Zone)」:人気クリエイターとファンが直接交流できる場を設置。
- 「ChinaJoy AIGCカンファレンス 2025」:テーマは「夜明けの光(The Light of Dawn)」。AIの最先端トピックが議論される予定。
このように早い段階で開催情報が確定・告知されるのは、イベント運営の成熟度と信頼性の高さを物語っています。
日本企業の出展はどうなるの?
まだ各社から公式発表はありませんが、これまでの出展実績などからどのような企業が出展するのかを見ていきましょう。
まず、ソニー・インタラクティブエンタテインメントは出展継続を示唆しています。思わぬ新作の発表もあるかもしれません。バンダイナムコエンターテインメントも昨年同様に強力IPを引っ提げて登場しそうです。ガンダムやONE PIECEのタイトルは中国でも人気を博しています。『鬼滅の刃』『ソードアート・オンライン』のアニプレックス、『龍が如く』のセガ/アトラス、『モンスターハンター』のカプコンあたりが出展の見込みがあります。
団体ブースも用意されていて、各社がこの枠で出展することも予想されます。これから発表される情報を楽しみに待ちたいですね。
ChinaJoy 2025 活用のススメ
ChinaJoy 2025は、業界関係者にとって、アジア市場を理解し、ビジネスを創出する上で非常に大きな意義を持ちます。また、BtoBとBtoCを融合した大型国際見本市の運営という点で、MICE関係者にとっても参考になることが多いかもしれません。
- 市場理解と参入のプラットフォーム その圧倒的な規模とAIGCのような最新トレンドへの注力は、成長市場への参入・拡大を目指す企業にとって他に類を見ない機会を提供します。
- 国際的なネットワーキングのハブ 日中交流プログラムのような取り組みも活発です。MICEのサービスプロバイダーは、翻訳サービスや国際ネットワーキング企画などを通じて、こうした交流を促進するビジネスチャンスを見出せます。
- イベントテクノロジーのショーケース 最先端のデジタルエンタメイベントとして、革新的なエンゲージメント向上ツールやデータ分析などが活用される可能性が高いです。自社のイベント運営の参考になるベストプラクティスを発見する機会にもなります。
ただし、海外ゲームの運営には政府承認(版号)が必要という規制上のハードルや、現地特有のマーケティング手法の理解など、中国市場特有の課題も存在します。現地のパートナーシップ構築が成功の鍵となり、B2Bエリアでのネットワーキングが極めて重要になるでしょう。
まとめ:中国ゲームのグローバル化と巨大な中国市場の魅力。
ChinaJoyは、アジアのデジタルエンタメ市場の計り知れない可能性を肌で感じられるイベントです。巨大な市場規模、膨大なユーザーベース、そして規制や競争といった課題がある中でも継続的に成長し成功を収めている事実は、業界全体の回復力と適応力の証でもあります。
そして、ローカル(中国)のゲームコンテンツのグローバル化の可能性と、より多くの国際的なタイトルを中国のユーザーに紹介することに焦点を当てると予想されます 。このテーマは、中国のゲームがますます国際的な評価を求め、また中国市場が外国のゲームにとって依然として魅力的であるという、グローバルゲーム市場の進化するダイナミクスを反映しています。
「集え、あなたの好きなもの!」を体現するChinaJoy。中国発のデジタルエンタメの熱気と最先端を体感できるこの祭典は、グローバルMICEイベントとしても、今後ますますその存在感を高めていくことでしょう。