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【取材】FOOMA JAPAN 2025 レポートVol.2 スタートアップゾーンにはAI・微生物・陸上養殖…革新的な技術が集結

世界最大級の食品製造総合展「FOOMA JAPAN 2025」。その中でも、東7ホールに設けられた「スタートアップゾーン」は、まさに「未来の食のカタチを共に創ろう」という企業がひしめく魅力あふれる展示が見られました。

第1弾のレポートでは業界を長年支えてきた老舗企業に焦点を当てましたが、今回は対照的に、革新的なアイデアと技術で未来を切り拓こうとするスタートアップ企業が集う、このエリアの様子をレポートします。

開催概要

名称:FOOMA JAPAN 2025
目的:食品機械・装置および関連機器に関する技術ならびに情報の交流と普及をはかり、併せて食品産業の一層の発展に寄与することとし、「食の安全・安心」に関心が高まる中、食品機械の最先端テクノロジー、製品、サービスを通して、「食の技術が拓く、ゆたかな未来」を提案する。
会期:2025年6月10日(火)~13日(金)4日間
時間:午前10時~午後5時
会場:東京ビッグサイト 東1~8ホール
テーマ:Touch FOOMA, Taste the Future
主催:一般社団法人 日本食品機械工業会
公式Webサイト https://www.foomajapan.jp/

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スタートアップゾーン「発見と体験の場」

スタートアップゾーンは小さなカウンターテーブル程度の限られたスペースであっても、どのブースにも常に来場者が途切れない状況でした。隣接する会場ではピッチプレゼンが連日開催され、多くの観客が企業のプレゼンに真剣に耳を傾けています。

来場者が応援したい企業に投票する「スタートアップグランプリ2025」も開催されるなど、ここはまさに「革新技術が拓く、食の可能性」を肌で感じられるエリア。未来のビジネスパートナーとの出会いを求める熱気が満ちていました。

FOOMA JAPANで出会う
“革新技術が拓く、食の可能性”

イノベーティブなアイデアやテクノロジーでビジネスを展開するスタートアップが数多く出展。
食の新潮流との出会いや、ビジネスへの新しい発想を得たり、革新的なアイデアを持つ企業と交流ができるゾーンです。

公式Webサイトより引用

公式Webサイト スタートアップゾーン https://www.foomajapan.jp/startup/

今回はこのスタートアップゾーンから、特に気になった3社のブースを取材。各社が持つユニークな技術と、それが食品製造業の未来にどう貢献するのかを見ていきましょう。


注目のスタートアップ3社:それぞれの挑戦とビジョン

フレンドマイクローブ:微生物の力で油を分解、サステナブルな未来へ

名古屋大学発のスタートアップ、2017年設立のフレンドマイクローブは、微生物の力で海水中の油脂を高効率に分解する革新的な技術を開発しました。ブースでは、油を入れた水が微生物の力でわずか8時間後にはほとんど分解されるという驚きのデモ映像が紹介されていました。

この新しい技術は、廃棄物の削減、コスト削減、そしてCO2排出量削減に繋がり、持続可能な社会の実現に大きく貢献します。今回で2回目の出展となる同社は、技術を共に広めていけるパートナーとの出会いを求めています。来場した食品メーカーや機械メーカーから、工場が抱える油に関するリアルな悩みを聞ける貴重な機会になっているそうです。

ブースを訪れるのは食品業界の方々。食品メーカーや食品メーカーの工場などに機械を卸している機械メーカーも多く訪れるため、食品工場などが抱えている悩みや課題を教えてもらえるということです。

株式会社フレンドマイクローブ Webサイト https://friendmicrobe.co.jp/

感性AI:人間の「感性」をAIで分析、食感開発にも応用

京王電鉄と電気通信大学の合弁で2018年に設立されたAIベンチャー、感性AI社。AIを用いて人間の「感性」を可視化するユニークなサービスを展開しています。

ブースでは2つの主要サービスを紹介。一つは、パッケージデザインなどを見た一般の人が感じる「親しみやすさ」といった印象をAIが予測分析する『アナリティクス』。そしてもう一つが、布地やレザーなどの「触り心地」をデータ化し、メーカーの試作開発を支援するサービスです。

今回のFOOMA JAPANで特に焦点を当てているのが、後者の「触り心地」を分析する技術の食品分野への応用です。食べ物の「食感」をデータで分析することで、単なる「食べやすさ」の追求だけでなく、食べた時の楽しさや嬉しさといったウェルビーイングに繋がるような、新しい食感開発に貢献できると考えています。

「感性」というニッチな分野だからこそ、専門性の高い本展示会に着実に出展し、認知度を広げることが最大の目的です。現在は特に重要度が高いと位置づける食品業界の開拓に力を入れており、様々な企業との連携を模索しているそうです。

今後のビジョンは壮大です。現在は食感を「分析」する段階ですが、将来的には「どのような配合で作れば、狙った食感が実現できるか」までを提示する、いわゆるマテリアルズインフォマティクスのような領域へサービスを発展させたいと語ります。企業の試作開発をより効率的・高速化するサービスへと昇華させ、AIと感性の力で食の新たな可能性を切り拓いていく姿に期待が集まります。
※スタートアップピッチプレゼンの写真撮影について、同社のご了承をいただいています。

感性AI株式会社 Webサイト https://www.kansei-ai.com/

ARK:陸上に「海」を創る、未来の養殖システム

ARKは、「どこでも誰でも陸上養殖を始められる」ことを目指し、小型の陸上養殖システムを開発・販売するスタートアップです。自社で設計・製造する水槽プラットフォーム(ハードウェア)と、スマートフォンで水質管理ができるアプリケーション(ソフトウェア)を組み合わせ、すでに全国17府県に41台の出荷実績を持っています。

ユーザーは、新規事業として参入する企業から、道の駅やホテルといった既存サービスとの連携を図る事業者、大学の研究機関まで多岐にわたります。2023年の販売開始と同時に、セールスリード獲得とお披露目の場としてFOOMA JAPANへの出展を開始しました。世界最大級のイベントへの挑戦は「スタートアップゾーン」の存在が大きな後押しとなったと言います。出展の反響は大きく、国内での注文や紹介に繋がっているほか、イギリス拠点を軸としたグローバルな問い合わせにも対応しています。

創業は2020年。水産業界でITコンサルティングに携わっていた創業メンバーが、現場の課題解決にはITだけでなく「装置」そのものが必要だと痛感し、起業に至りました。その背景からシステムにはIoT技術がふんだんに活用されており、センサーで計測した水質データをどこにいてもスマホで確認できるなど、高度な利便性を実現しています。

現在は設備販売が中心ですが、次のフェーズでは自社システムで育てた魚の販売も手掛ける計画です。そして究極の目標は、陸上に無数の「小さな海」を創り出すこと。世界の7つの海に次ぐ「8つ目の海」を陸上に実現し、疲弊した海洋環境を休ませるという、未来を見据えたコンセプトを掲げています。

株式会社ARK Webサイト https://www.ark.inc/


スタートアップゾーンから感じる手応え

今回の取材を通して、FOOMA JAPAN 2025のスタートアップゾーンは、食の未来を形作るアイデアとテクノロジーが結集する、活気あふれる「発見と体験」の場であることを改めて実感しました。スタートアップゾーンがあるから出展した企業、実際に商談につながった実績がある企業もあり、出展者にも期待されている企画ということもわかりました。

各社が紹介するユニークな技術は、単なる効率化に留まりません。それらは人手不足、環境問題、新たな価値創造、食料安全保障といった、現代の食品業界が直面する複雑な課題に対する、具体的で力強いソリューションとなる可能性を秘めています。

業界を支える老舗の知見と、常識を打ち破るスタートアップの情熱。この両輪が噛み合うことで、より豊かで持続可能な食の未来が拓かれていく。そんな確かな手応えを感じました。

※取材担当 二宮

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