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イベントの取材・レポート

【レポート】「大阪モーターサイクルショー2025」モーターサイクルショーシーズン緒戦。メーカーの戦略や周辺市場…二輪車市場回復のヒントを探ってきました

日本最大級のオートバイイベント「モーターサイクルショー」が、今年も大阪・東京・名古屋の3都市で開催されます。最新モデルの発表やカスタムバイクの展示に加え、試乗体験や業界関係者との交流の場として、多くのバイクファンやビジネス関係者が集う一大イベントです。日本は世界をリードするオートバイメーカーが集結する国であり、国内外の市場に影響を与える存在です。本記事では、「大阪モーターサイクルショー2025」から、日本のバイク産業の現状や各メーカーのマーケティング戦略を探ります。
※3/22(土)訪問

国内二輪車市場のいま:2024年の市場は、コロナ禍で生まれた需要の反動から縮小に転じる

日本自動車工業会(自工会)の発表によると、2024年の国内二輪出荷台数は前年比15%減の約31.9万台となり、21〜23年に盛り上がった“コロナ禍バイクブーム”が一巡した形です。中でも125cc超250cc以下の軽二輪クラスは4割近く大幅に落ち込み、原付二種や小型二輪も2〜3割の減少となっています。一方、都市部や高齢ユーザーの実用ニーズに支えられた原付一種は微増となり、排気量クラスによって明暗が分かれました。

シェアリング型の電動キックボードや電動アシスト自転車といったモビリティの普及が需要を圧迫しているとの見方もあります。2025年以降、各社がどのように市場回復に向けた道筋を歩むのかを見つけることも、モーターサイクルショーの見どころのひとつです。

マーケティング&ブランディング戦略

「ブランドらしさ」がメーカーの個性を生む?メーカー3社のお話

各メーカーは単に性能やデザインで差別化するのではなく、ブランドが持つストーリーや価値観を明確に打ち出し、ファンの共感を得ることに注力しています。以下は、お話を伺った三社のメーカーの特徴を簡単にまとめたものです。

メーカーブランド戦略
Honda「普遍的な乗りやすさ」— 幅広いライダーが楽しめるモデル展開
Kawasaki「Fun to RIDE」— スポーツバイクのダイナミックな走り
Yamaha「市場ごとに異なるアプローチ」— ヨーロッパでは快適性、アジアではEVバイク

こうしたブランド戦略は、単なる製品の違いだけでなく、顧客のライフスタイルや価値観と結びつくことで、より強いファンベースを生み出しています。それぞれの戦略を詳しく見ていきましょう。

Honda:オートバイのド真ん中「CB」開発者の熱い思い

「CB」は、Hondaが長年作り続けている、扱いやすく信頼性の高いオートバイシリーズです。初心者からベテランライダーまで幅広く愛され、街乗りやツーリングなど、さまざまな用途に対応できるのが魅力です。
「CB1000F」コンセプトの開発者によるトークショーでは、その存在感や力強さが強調されました。市場での人気が示すように、開発には熱い思いを持つ社員が多く、1〜2日間会議室にこもって徹底的に議論を重ねたそうです。多様な意見をまとめ、最終決定に至るまでのプロセスには大変な苦労があったと語られました。

しかし、その熱意があったからこそ実現したコラボレーション もあります。「BEAMS CULTUART」とタッグを組んだプロジェクトでは、若者に絶大な人気を誇るグラフィックデザイナー・GUCCIMAZEを起用。開発陣が「CB」への思いを胸に、「BEAMS CULTUART」に直談判し、クリエイティブシーンに深く根付いた特別なオートバイが誕生しました。
「CB」とは 「Creative Benchmark」。常に時代の最先端を追いかけ、「オートバイの中のオートバイ」を追求し続ける存在です。

特設サイト:https://www.honda.co.jp/motorcycleshow/

Kawasaki:『Fun to RIDE』ハイブリッドでもオートバイ バイクに乗る楽しさは忘れない

「EV(電気自動車および二輪を含む)」という言葉を知らない人は、今やほとんどいないでしょう。地球温暖化が進むなか、環境負荷の少ないモビリティの開発が加速しています。
こうした潮流のなかで誕生したのが、「ニンジャ7ハイブリッド」。世界初の量産型ストロングハイブリッドモーターサイクルです。EVモデルの 「ニンジャe-1」も登場し、次世代のオートバイの可能性を広げています。
「ニンジャ7ハイブリッド」は、三つの走行モード(EV / エコ / スポーツハイブリッド)を搭載。次のようにシーンに応じて自由に切り替えられます。

  • EVモード … 夜遅くの住宅街で静かに走行
  • スポーツハイブリッドモード … 視界の開けた道路でパワフルな走り

「e-boost」ボタンにも注目です。押すと、約15秒間、加速と最高速が向上します。まるでゲームのようなこの機能が、オートバイの楽しさを一層引き立てます。Kawasakiが掲げる『Fun to RIDE』のビジョンのもと、環境対応と走る楽しさの両立を目指し、独自の進化を続けています。

Webサイト:https://www.kawasaki-motors.com/ja-jp/

Yamaha:市場によって異なるターゲット。モデル開発にも影響

アジア地域で人気の原色の車体

Yamahaでは、市場ごとの需要に応じた製品開発を進めています。陸続きで長距離移動が可能なヨーロッパでは、快適性を重視したモデルが人気。一方、インドネシアをはじめとするアジア各国では、通学や通勤の移動手段としてのEVバイクの需要が高まっています。テレビ東京の番組『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』にも登場する「エレクトリックコミューター E-Vino」は、海外展開も進んでいます。

日本国内では、ライフスタイルやトレンドに合わせたデザイン性が重要視されます。お姉さんの隣に見える「XSR900」の日本限定カラーは、淡い色合いが特徴で、特に若者に人気。学生らしき来場者が次々と写真を撮る姿が見られました。
市場ごとのニーズを細かく分析し、ターゲットに最適なモデルを展開することで、世界市場での競争力を高めています。

特設サイト: https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/event/mcs2025/

企業ブースの演出とブランド訴求の工夫

各メーカーが独自のブランドメッセージを伝えるために工夫を凝らしたブース演出を展開していました。最新モデルをただ展示するだけでなく、大型ビジョンを設置し、走行シーンを具体的にイメージすることが可能になります。

オートバイが生み出すカルチャーとライフスタイルの広がり

オートバイの開発や企業ブースの演出など、メーカー各社がどのようにブランドの魅力を発信しているのかを見てきました。しかし、こうした企業の取り組みが実際にライダーたちにどのような影響を与えているのかも重要な視点です。単なる移動手段ではなく、ライフスタイルの一部として楽しむ人々が増える中で、ツーリングやコミュニティ活動、さらにはSNSを通じた情報発信のあり方も変化しています。
ここでは、ライダーの視点からバイクが生み出す文化やライフスタイルの広がりについて深掘りします。

児島ジーンズ:デニム生地×バイクカルチャーのベストな相性

国産ジーンズ発祥の地・岡山県倉敷市児島で誕生した株式会社フックのブランド、児島ジーンズ。『Hondaを穿く』をテーマに、これまで複数回コラボし、本イベントでは第2弾の「スーパーカブ」シリーズを展開しました。協業は、過去のモーターサイクルショーでの出展がきっかけだったようです。イベントがビジネス創出の場として機能する実例ですね。コラボ商品に使用されるデニムは厚さ13オンスほどで、一般的なジーンズに使用されるオンスです。

「ヘビーオンス」

コラボ商品以外にも、ジーンズが”バイク好き”の心を掴むポイントが随所にあります。「ヘビーオンス」と呼ばれるデニム生地は 21オンスと非常に分厚く、薄い生地に比べ、丈夫で防風性も高いことから、ライダーに支持されています。

こちらの切り替えデザインのボトムスには、エンジンの熱がこもるというライダー特有の悩みを解決する仕掛けがあります。内股部分に宇宙服にも使われる素材を採用し、外部の熱を遮断する緩衝材として機能するのです。ジーンズとライダーの親和性の高さがうかがえます。

Webサイト:https://eshop.kojima-genes.com/

鉄馬とカモシカ:バイク乗り専用のヘアオイルを開発

ファッションアイテムだけではありません。走行中、風に煽られて乾燥してしまいがちな髪のためのヘアオイルが開発されました。オイル本来の保湿力を重視しながらも、軽いテクスチャーが追求された製品です。
女性ライダーは少数派ですが、大手が手がけにくいニッチな市場にアプローチすることで、ライダー特有の悩みを解決。求めている人には深く刺さると言います。私自身もテスターを使用しましたが、しっとり感と香りの持続性が抜群でした。普段はYouTubeでオフロード動画を配信するという、鉄馬とカモシカ。こちらも要チェックです!

Youtubeチャンネル:https://www.youtube.com/user/lamp0018

Insta360:全方位を撮影 バイクシーンを彩る

世界シェアトップを誇る360度カメラブランドのInsta360 は、「日常をよりよく記録する」というビジョンのもと、VR市場からスタートし、現在ではバイクユーザーの期待にも応える製品を展開しています。
バイクの走行中はカメラを構えることができないため、ハンズフリーでの撮影を可能にする機能が充実。音声認識機能では「録画開始」「録画停止」と声をかけるだけで撮影可能になり、ピースサインをするだけでシャッターが切れる「ジェスチャー撮影」も相性がよさそうです。ライダーは安全を確保しながら、自撮りとは思えないダイナミックな撮影ができます。

専用アプリにはAIを活用した自動編集機能が搭載されており、手軽にプロレベルの動画を作成できるのも魅力です。
近年、Insta360は認知度向上のため、イベントへの出展を強化。実際にカメラを手に取り、その機能を体感できる機会を増やしています。ユーザーが「撮る楽しさ」と「見返す感動」をより身近に感じられるよう、今後も新たな技術革新を続けていくはずです。

公式サイト:http://www.insta360.com/

Editor’s Note:ものづくりとブランド戦略 イベントから学ぶビジネスのヒント

各メーカーのマーケティング戦略に関して

「大阪モーターサイクルショー2025」を取材してみて、バイクに詳しくない私にとっても、企業がどのようにブランドを構築し、市場を開拓していくのかを学ぶ貴重な機会になりました。日本のバイク産業が世界的に大きな影響力を持っていることを改めて実感するとともに、大手メーカーだけでなく、中小企業や異業種とのコラボレーションが活発に行われている点も興味深かったです。

日本のバイク産業が長年築いてきた強み(高品質・豊富なモデル展開)に加え、環境対応や新市場開拓を急ピッチで進めていることもよくわかりました。一方、EVシフトの波や若年層のバイク離れなど、課題も少なくありません。
今後は、メーカー同士だけでなく、スタートアップや異分野企業との連携によるイノベーション創出も行われるかもしれません。趣味・ライフスタイル提案による新しいユーザー層の獲得も必要でしょう。インバウンドや万博などの大型イベントを活用し、世界市場を意識したマーケティングや異業種コラボも進むことで、日本のバイク産業が再び活気を取り戻すシナリオ、ぜひ見てみたいです。

新しいバイクとの付き合い方が生まれ、新ファン層獲得への取り組み

若年層へのアプローチとして、大阪・東京両会場では、2.5次元アイドルグループ「すとぷり」のさとみがアンバサダーに就任。彼が担当するテーマソングやスタンプラリー企画が実施されました。スタンプラリー完遂者が特典を受け取るコーナーで話を聞いたところ、イベント2日目の昼過ぎ時点で約450名が参加していました。
会場には、全身レザーアイテムを身にまとったイケオジライダー、大学生グループ、さらには「痛バ」を持つオタ活女子まで、実に多様な層が訪れていました。女性や若年層には「バイ活」と呼ばれる新しい動きも見られるといいます。バイク車体以外の周辺市場には現代風のバイクとの付き合い方が形になってあらわれていました。街を走る「バイク:モーターサイクル」を見る目が変わりそうだと思えた取材でした!

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