
【レポート】KYOTO MICE TRADESHOW 2025 海外から有力バイヤーを招き、京都MICEの商談会を開催
公益財団法人京都文化交流コンベンションビューローは、2025年2月19日(水)から21日(金)に「KYOTO MICE TRADESHOW 2025」を開催しました。本商談会は、MICE関連事業者と海外有力バイヤーが直接商談を行い、新たなビジネスの可能性を切り開く場です。2024年の初開催では、大型国際会議やインセンティブツアーの京都誘致に成功するなど、大きな成果を上げました。
今年の商談会の様子はどのようなものか、会場にお邪魔しました。参加したMICE関連事業者のお話も伺ったので、合わせてレポートします。
海外からMICEを招くにあたり、日本の地域・都市は様々な取り組みを行っています。ユニークベニューの活用、地域らしさを魅力的な体験コンテンツにする、地域の規模に応じた提案、関係者の連携強化など多岐にわたります。本商談会は会場にユニークベニューを活用しており、FAMツアーも実施。バイヤーにMICE開催地としての魅力を伝える工夫がされています。

会場【フォーチュンガーデン京都】は1927年建設、京都らしいユニークベニューのひとつ
京都のユニークベニューといえば、二条城や仁和寺のような寺社を思い浮かべるかもしれません。しかし、京都には近代の名建築が多く残されていて、それらは店舗やホテル、文化施設、住宅として広く利用されています。「フォーチュンガーデン京都」はそのひとつです。京都市中心部に位置する歴史的価値の高い西洋建築を活用した多目的施設です。1927年に建設された島津製作所旧本社ビルを2012年に改装してオープンし、関西建築会の父とも呼ばれる武田五一の設計による建築美が今も息づいています。レストランやウェディング、パーティースペースとして利用されるほか、MICEのユニークベニューとしても注目を集めています。
公式Webサイト https://www.fortunegarden.com/
ユニークベニューについて詳しくはこちら
【MICEの基礎知識(9)】特別な体験を提供する、ユニークベニューについて
https://micetimes.jp/mice-9-unique/

商談会はリラックスした和やかな様子で進行
商談会には25の海外バイヤーが招待され、18のMICE関連事業者が参加しました。15分単位のセッション19回設けられていました。会場となる「THE CONTINENTAL ROOM」(ザ コンチネンタルルーム)は気品あふれるインテリアが目を引きます。会場が持つ雰囲気が、参加者のリラックスした対話を促しているようでした。商談会でよく見られるブースを区切るパーティションもなく、手が空いている方同士での意見交換をされているのも多く見られました。あらためて会場選びはイベントにおいて、とても大切だと実感しました。

商談会後はガラパーティーを開催
商談会が終わってからは、フロアを移してガラパーティーが催されました。ガラパーティーは「Gala」とも呼ばれ、華やかで特別なパーティーを意味しますが、MICEではイベントの前後でよく行われています。MICEの場合は特別な格式ばったイベントというよりも、ネットワーキングや交流の場として位置づけられることが多いです。フォーマルな雰囲気を保ちつつも、厳格なドレスコードはなく、ビジネス交流を目的とした食事会といった位置づけが一般的です。
商談会の続きのような和やかさでありつつも、ドリンクやフードがあることでより打ち解けた様子に見受けられました。バイヤーの皆さんがスムーズに会話を進める様子を見ていると、その高いコミュニケーションスキルが印象的でした。
参加されたMICE関連事業者にお話をうかがいました

ホテルに求められる期待値が高くなっている
THE HOTEL HIGASHIYAMA KYOTO TOKYU マーケティング&セールス マネジャー 宮下様
「ホテルに求められているものが、これまでよりもレベルの高いものになっています。コンシェルジュがいるのは当たり前で、お茶やお寿司を作るといったことはすでによくご存知。そちらのホテルではどんな特別なことができるのかと聞かれます。”ラーメンを作りたい”といったご要望もお受けしたことがあります」と、ホテルが提供するサービスへの期待値が高くなっていることをお話いただきました。MICEで来日される方は、そのままFIT(海外個人旅行)として旅行されることもあり、年々ニーズが多様になっていることがうかがえます。
他のホテル事業者も同様のことをお話されていました。ホテル単体では提供が難しいサービスの実現には、こういった場で他の事業者との関係を強化していくことも大切なのかもしれません。
「THE HOTEL HIGASHIYAMA by Kyoto Tokyu Hotel(京都東急ホテル東山)」は2022年7月に開業。2025年1月10日より「THE HOTEL HIGASHIYAMA KYOTO TOKYU, A Pan Pacific Hotel」へ名称変更。グローバルなマーケティング戦略を進めています。
ホテル公式Webサイト https://www.tokyuhotels.co.jp/higashiyama-h/

ホテルや旅行業者ではない異色の参加者。京都デニムの挑戦
京都デニム 取締役 宮本様
MICE関連事業者として参加されているのはホテルや旅行業者、イベント業者が中心ですが、「京都デニム」といった名前は一際異彩を放っていました。どういった狙いで参加されたのでしょうか。「今回、初めて参加しました。たしかに少し毛色が違うかなと思いましたが、今が好機と捉えました。バイヤーの方の反応もよかったです」とのこと。
職人さんが自ら出ていくのは難しいため、こういった場を活用して、新しいチャレンジをされていることが伝わってきました。京都デニムさんは、着物に使われる京友禅染めの技法を、デニム生地の衣類や鞄などに施し、”本物”の製品を丁寧に作っていらっしゃいます。MICEの重要な要素である「地域らしさ」を体現する存在として、非常にふさわしいと感じました。MICEに可能性を見出す新たな分野からの事業者の参加は、MICEの裾野の広がりを感じられてうれしいです。
京都デニム Webサイト https://kyoto-denim.com/

京都文化交流コンベンションビューローの方のお話
「アジアを中心に国際会議やインセンティブツアー等の開催決定権を持つ有力な海外バイヤーを招聘し、京都のMICE事業者と商談を行う「KYOTO MICE TRADESHOW」を実施しました。商談会開催前には、これから京都でのMICE開催を検討するバイヤーや市内事業者に対し、京都観光モラルの紹介、マナー順守、時期・時間・場所の分散等を呼びかけるなど、単に京都でのMICE開催を目指すだけではなく、市民生活と調和したMICE開催を呼びかけました。
昨年度は、本事業を通じ、国際会議やインセンティブツアー等既に数件のMICEの開催が決定するなど、成果が出ています。商談会後もフォローを行い、京都への誘致・開催支援に努めて参ります」

公益財団法人京都文化交流コンベンションビューロー
Webサイト https://meetkyoto.jp/ja/

単独から連携へ 多様化するニーズにMICE事業者が応じるために
「KYOTO MICE TRADESHOW 2025」では、ユニークベニューの活用、和やかな雰囲気の商談会、異業種の参入など、地域MICEの進化を象徴する取り組みが随所に見られました。
バイヤーのニーズは常に変化しており、地域特有のユニークな体験が求められています。そのため、地域の事業者が海外バイヤーと直接対話できる場は非常に貴重です。また、ニーズの多様化により、単独の事業者では対応が難しいケースも増えており、こうした商談会は、事業者同士の連携を促進する場としての役割も果たしていくでしょう。
今後、このような取り組みが全国へと広がることで、日本各地のMICEがさらなる発展を遂げていくことに期待したいです。