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【取材】高松MICE最新事情をコンベンションビューローに聞く/あなぶきアリーナ・サンポート・島体験をフル活用してサステナビリティなMICE開催を訴求

2025年2月に開館した中四国最大規模のMICE施設『あなぶきアリーナ』により、香川県高松市は MICE都市として一段と飛躍しました。高松駅周辺のウォーターフロントエリア『サンポート高松』には、G7大臣会合のメイン会場として使用された『かがわ国際会議場』をはじめ、コンベンション関連施設が集積。アクセスの良さと瀬戸内の景観が魅力です。

近年の開発でJR高松駅周辺の様子は見違えたようになった

今回は、公益財団法人 高松観光コンベンションビューロー コンベンション推進部 部長の岡崎充男さんに、高松ならではのMICE戦略やこれまでの実績、MICEの誘致に必要なものは何か、そして今後の展望についてお聞きしました。

高松観光コンベンションビューロー 岡崎さん
2025年MICE推進部の部長に着任。着任1年目の今、地元高松のためにMICEの誘致に奮闘中。どうやってMICEの認知を上げるか、市民への浸透をどのようにするかなどの課題に日々向き合っている。

高松観光コンベンションビューロー
https://takamatsu.or.jp/

聞き手は『MICE TIMES ONLINE』の目加田です。
“たびに関わる人を応援する”を事業理念に掲げていた株式会社イザンにて、2017年からゲストハウスや宿泊施設の立ち上げ、運営業務に取り組む。自分でも宿泊施設を運営したいという思いから、2018年瀬戸内・香川県に移住。2019年春から高松市の女木島(めぎじま)にて『女木島ゲストハウス&カフェMegino』を運営しています。

目次

海と街が近くアクセス良し 瀬戸内の多島美を望める高松の魅力

ー高松市のMICE開催地としてのセールスポイントは何でしょうか

岡崎さん
「海が目の前に広がる瀬戸内海の穏やかな海のすぐそばで会議やイベントができるという特別なロケーションですね。瀬戸内の多島美を堪能しながら、心に残るコンベンションを開催していただけます。また利便性が高く整備されたアクセス環境も大きな利点です。
サンポートエリアはJR高松駅の目の前で、高松港もすぐそばにあります。主要な駅から港が近いというのも高松の魅力で、高松港を拠点にして海の航路があり、小豆島や女木島、直島などへ行くフェリーの乗り場が集まっています」

高松港女木島・男木島行き乗り場・待合所

東京と台湾・香港・韓国の直行便

高松空港からはリムジンバスで約40分。国内3路線(羽田、成田、沖縄)と国際5路線(ソウル、上海、台北、台中、香港※2025年5月現在)し、首都近郊エリアからもアクセス良く、国際交流の窓口にもなっています。

都市・地域所要時間便数
東京(羽田)約80分13便/日
東京(成田)約80分3便/日
沖縄約110分1便/日
韓国・ソウル約100分2便/日
中国・上海約120分4便/週
台湾・台北約160分7便/週
台湾・台中約180分5便/週
香港約220分1便/日

あなぶきアリーナ外観 妹島和世+西沢立衛 / SANAA 設計による曲線美が特徴の屋根が目を惹くデザイン
あなぶきアリーナ 提供:(公社)香川県観光協会

「あなぶきアリーナ」や大学キャンパス サンポートエリアの賑わい

ー四国の玄関とも言われる高松駅では、2024年3月に新商業ビル『TAKAMATSU ORNE(タカマツオルネ)』がオープンし、駅周辺がますます賑わいをみせていますね

岡崎さん
「最大収容人数10,000人のメインアリーナを有する多目的施設『あなぶきアリーナ』が完成し、すでに大規模なライブイベントが開催されています。県内外から多くのファンの方々が高松を訪れてくださり、賑わいを感じますね。さらに、2025年4月にはJR高松駅前に『徳島文理大学高松駅キャンパス』も開校し、若者が歩く活気のあるまちへと変化しています」


ユニークベニューの実例や島や街中など高松全体の活用

高松や周辺のホテル、ユニークベニュー

岡崎さん
高松駅から徒歩圏内には宿泊施設や飲食施設も十分にあります」

JR高松駅から2.5km圏内にある宿泊施設

ホテル33軒
客室数4482室
宿泊人数7180人

出典:NEXT UP TO KAGAWA https://www.kagawa-mice.jp/library.html

栗林公園(掬月亭) 提供:(公社)香川県観光協会

ーMICEにおいて、レセプションやバンケットに使われる「ユニークベニュー」も注目されています。どのような場所が活用されていますか

岡崎さん
「レセプションやバンケットで利用される香川県のユニークベニューとしては、
・栗林公園(高松市)・やしまーる(高松市)・史跡高松城跡玉藻公園(高松市)・ことでん電車内 貸切りパーティ があります」

うみまち商店街 卸市場での縁日風バンケットの実例と課題

ーこれまでのユニークベニューを使った事例を教えてください

岡崎さん
「高松市の『うみまち商店街』の卸市場で国際会議のバンケットを行いました。倉庫のシャッターを開けて、奥に大漁旗をずらりと並べて、屋台・縁日風の演出を取り入れました。マグロの解体ショーや焼き鳥屋、浴衣の着付けコーナー、金魚すくいなども用意して、日本の縁日の雰囲気を楽しんでいただきました」

「うみまち商店街」でのバンケットの様子

ーユニークでインパクトのある日本らしい演出で、国際会議に参加された海外からのゲストの方々は楽しまれたでしょうね

岡崎さん
「そうですね。特別な体験ができたと参加者の方の好評なご意見もいただきましたが、課題も見えてきました。”市場”という場所のイメージから、参加者は『もっと魚が見れると思っていた』との声もありました。また、観光庁の補助金を活用して実施したのですが、今後こうした催しを補助金なしでパッケージ化し、いくらで販売できるかという点も大きな検討課題です。

現状の主催者が依頼し、事業者が応える、という関係性から一歩進んで、”コンベンションビューローと事業者の皆さんと共に”何ができるか、何をやりたいか”を前向きに考えられる体制づくりが必要だと感じています。ただ、それを実現するのは非常に難しい部分でもあります。双方がMICE事業の当事者意識を持ち、継続可能な連携をどう築いていくかが今後の鍵です。

もう1つの課題としては、香川県には魅力的なユニークベニューが数多くありますが、着席なら150名程度、立食なら250名程度で利用でき、雨天でも開催可能で、なおかつ一般的なホールなどではなく”ユニークベニュー”である、となると選択肢が限られているという点が挙げられます。
そんな条件をクリアできたのが『四国水族館』です」

女木島 提供:(公社)香川県観光協会

まちと島を使ったユニークベニューのアイデア

岡崎さん
「2025年6月に実施されましたが、事業者さんがとても前向きに取り組んでくださったおかげで、巨大な水槽の前にテーブルを設置する演出など、さまざまなアイデアが実現できました。こうして一緒にMICEのイベントを盛り上げてくれる事業者さんがいると、とても心強いですね」

ユニークベニュー(Unique Venue):詳しくはこちらから
https://micetimes.jp/mice-9-unique/

岡崎さん
「主催者と高松を視察中、停泊しているしましま模様のフェリー『めおん』を見て、『貸し切ってどこへ行けるのか』という言葉がヒントとなり、女木島の『鬼の館』でのレセプションやめおん号の貸切運航、サンセットクルーズなどを組み合わせた案を現在調整中です。

ほかにも、活気ある地方の商店街ということで注目されている『丸亀町一番街のドーム広場』にて、レセプションの実証実験が予定中。こうした島や、街など高松全体を使ってのアイデアを考え、MICEの恩恵や経済効果が地元に波及できるように、参加者の皆さんにも“高松でしか味わえない体験だった”と感じてもらえることを目指しています」


八栗寺 提供:(公社)香川県観光協会

MICEの誘致に向けた戦略と「おもてなし」

インバウンド強化と国際会議の経済波及効果

ー高松市がMICEを誘致する大きなメリットはなんでしょうか
岡崎さん

「MICEの恩恵や経済効果が地元に波及できるという点ですね。MICEの”E=イベント分野”は、アリーナ開業とともにプロジェクションマッピングなども行われ、今後の展開も見通しがあります。
一方で、より強化していきたいのが、”C=コンベンション”の分野です。コンベンションは一般の観光とは分けて考える必要があり、2−3年先のスケジュールに対して営業活動を行います。中四国エリアで開催地を回している学会もあり、開催地に高松を選んでもらえるよう、地道にアプローチを続けています。実を結ぶのは10年後ということもありますが、長期的に取り組む価値があると感じています」

ーMとIの分野についてはいかがでしょうか
岡崎さん
「企業MICEの”I=インセンティブ旅行”についても力を入れていきたいところです。国内だと大体1泊2日のプランで、1日目はホールや会議室などで会議や表彰式”M=ミーティング”をして、翌日エクスカーションをするという形が一番多いです。
香川ならではの体験プログラムとしては、『うどん打ち体験』や『丸亀うちわ作り体験』、盆栽で有名な鬼無地区での『苔玉作り体験』、栗林公園での『抹茶体験』などがあります」

エクスカーション(excursion):詳しくはこちらから
https://micetimes.jp/mice-14-excursion/
Youtube「Takamatsu Convention & Visitors Bureau」チャンネルより

ー島✕MICEも瀬戸内ならではの魅力ですね。
私が運営している女木島の施設にも、企業研修の一環としてご利用いただくことがあります。島に滞在しながら、海ごみ清掃やBBQ、ピザ作り体験などを通じてチームビルディングを目的としたプログラムを実施する企業さまがいらっしゃいます

岡崎さん
「人を大切にすることが、企業にとってますます重要なテーマとなっています。いかに優秀な人材を確保し、モチベーションを高められるのかに関心が高まっています。その意味でも、インセンティブ旅行は非常に有効な施策ですし、開催地としての魅力も問われるようになっています。さらにこの分野を盛り上げるには、旅行会社さんと一緒にプランを組んだり、企業に直接売り込みに行くような営業活動も必要だと感じています」

ー今後、特に注力したい方向について教えてください
岡崎さん
「今後は国際会議を中心としたMICEのインバウンド誘致にさらに力を入れていきたいと考えています。四国の中でも特に香川県は、近年宿泊数が大きく伸びており、高松空港への国際直行便の増便もあって、海外からのゲストの滞在日数が着実に伸びています。
国際会議の参加者は通常7〜8日ほど滞在することが多く、家族を帯同するケースも多いため、経済効果が非常に高いです。滞在中のすべての日程が会議というわけではありませんので、合間に地域の魅力を体験してもらえるようなエクスカーションをさらに充実させていきたいです」

引用:FUSOグループホールディングスのプレスリリースより

2027年夏開業予定『マンダリンオリエンタル瀬戸内』に寄せる期待

岡崎さん
「インバウンド誘致の観点から注目されているのは、世界的最高級ホテルブランド『マンダリンオリエンタル瀬戸内ー高松』が2027年夏には開業予定であることです。世界的にも有名なラグジュアリーブランドで、香川県初の5つ星ランクのホテルとなります。”瀬戸内海の多島美が素晴らしい、他にはない魅力がある”と評価され、東京に続く国内2件目の開業地に高松が選ばれたことは大変光栄なことです。今までと違った客層である、世界の富裕層にもご来訪いただける機会が広がると期待しています」

多様なニーズへの対応と地域全体のレベルアップー香川県観光協会によるハラル・ヴィーガン対応支援

ーこれまで高松が選択肢に入っていなかったような客層が増えると、食事面でも対応が求められそうですね。香川県・高松ではどのような取り組みが進んでいますか

岡崎さん
「食文化への対応も進んでいます。ベジタリアン、ハラル対応などをやっていかなくてはいけないという意識は、地元の事業者さんの中でも高まってきており、香川県観光協会が『ハラル・ヴィーガン対応の協議会』を立ち上げました。メニュー作りや食事に対応する施設側への支援体制の構築が始まっています。

『マンダリンオリエンタル』のような世界基準のサービスを提供するホテルの登場は地域事業者にとっても良い刺激になります。食の対応やサスティナブルな取り組みに対する意識の向上が、事業者全体で高まる機運があります。
さらに言えば、富裕層向けのインセンティブトラベルの開発も必要ですね。その中で、サスティナブルな取り組みや意識を持ってもらうという方向に高松市は力を入れています」


サスティナビリティへの取り組みとGDS-Indexへの参加

国際的指標に登録して取り組みを可視化

ー高松市のMICEにおけるサスティナブルな取り組みについて教えてください

岡崎さん
「高松市はGDS-Index(Global Destination Sustainability Index)という国際的な指標に登録しており、これはSDGsの観点からどこまで取り組みが進んでいるのかを可視化するシステムです。このGDS-IndexはICCA(International Congress and Convention Association)という国際会議協会の基準とも連携していて、国際会議の開催地を選定する際にも、サステナビリティの評価が重要な判断基準となりつつあります。主催者の方々の間でも、”環境配慮型の都市で開催したい”という要望が高まり、開催地選びにおいてGDSのスコアが影響するケースが増えています。

参加者の方々も、そういったサスティナビリティの分野に関心が高まっていて、海外では会議でペットボトルの水が配れることは少なくなってきました」

高松市役所前のウォーターサーバー

ー高松市だと港や駅前、高松市役所などにマイボトルに水を入れられるウォーターサーバーが設置されてきましたね
岡崎さん
「はい、少しずつですが進んできています。さらに会議でも紙媒体資料をやめてデジタル資料にしたり、少しでも環境負荷を軽減する方向へと進めていく必要がありますね。これは私たちだけではなく国や行政としても連携して取り組む必要がある課題です。

たとえば、高松空港でも脱炭素を目指した拡張工事の計画がありますが、ぜひ今現状のGDSスコアが足りてない部分を改善できるようお願いしている状況です。
GDSスコアにおいて高松は次のような結果になりました
・2023年:世界100都市中66位 高松市の評価パフォーマスンス達成率53%
・2024年:世界48位(日本国内3都市中1位)高松市の評価パフォーマスンス達成率66.9%

GDS-Indexでは『環境』『社会』『サプライヤー』『DMO(観光地域づくり法人)』の4つの観点で評価されますが、DMOの評価は私たちコンベンションビューローの活動が直結しているため、非常に大きな責任を感じています。

※出典:第二回施設関係者定例会の資料「11月30日プレゼンテーション資料」

MICEセミナーで「SDGsカードゲーム」も活用

ー2025年3月に行われた香川県MICE推進協議会主催の「かがわMICEセミナー」では“サスティナビリティの本質を体感し、未来へのアクションを考える”というテーマが掲げられていました。どのような内容だったのでしょうか

岡崎さん
「第一部のワークショップではカードゲーム『2030SDGs』を通じて、サスティナビリティの考え方を体験的に学ぶ機会をつくりました。ゲームを通じて、参加者の皆さまが”自分のできるサスティナブルなアクションは何か””ビジネスの現場でどのように活かせるのか”などを考えてもらうきっかけになったと思います。
第二部のパネルセッションでは、MICE開催地としての地域のサスティナビリティの取り組みの重要性についてお話し、他都市の取り組みの事例や、高松市の取り組みを紹介し、今後の方向性を共有する場となりました」


高松丸亀町壱番街前ドーム広場 提供:(公社)香川県観光協会

高松におけるDMOの役割と、地域のプレイヤーのチームワークの必要性

地域の民間事業者との連携について

ー高松市のMICE誘致の取り組みと、民間(宿泊事業者や飲食店)との連携について教えてください
岡崎さん
「その連携の中心的な役割を担うのがDMO(Destination Management Organization)です。地域全体の資源や特色を把握した上で、各事業者や行政との連携を図りながら、観光地域の“経営”を担う存在です。私たちコンベンションビューローも、DMOの一部機能を担っています。DMOの役割は、ただイベントを呼び込むだけでなく、地域全体を知った上で、地域の関係者と連携し、地域の方向性を考えて、一緒に対応を取っていくことにあります。

コンベンションビューローや観光協会が、街の人と一緒に方向性を作っていくというイメージです。主催者も事業者も行政も、皆それぞれの目的があり、それを上手く達成するために、いかに協力試合、地域としての価値を最大化していくかが重要なのです」

ーそのようなマインドを統一して、地域に浸透させるのはとても難しいところですよね。人やイベントを誘致する営業も大変ですが、それ以上に地域関係者が同じ方向を向くための「意識の共有」や「価値観の醸成」には、人間対人間の話になるので、時間と労力が必要だということですね
岡崎さん
「まさにその通りで、だからこそDMOという存在がとても大切なんですね。地域を知り、人を知り、人と人とのつながりを大切にしながら、高松にどういった素材があるかを知り、何を活かせるかを見極めることがDMOの本質です」

商店街を支えるプレイヤーがDMOのトップに就任

ー2024年4月から、高松丸亀町商店街振興組合の古川理事長が高松観光コンベンションビューローの理事長に就任されたと伺いました。現場を熟知した方がトップに就かれることは、とても心強いですね
岡崎さん
「はい、古川理事長は「まちづくりのプロフェッショナル」であり、現場感覚を持ったリーダーですので、行政からの信頼も厚く、わたしたちも心強く感じています」

「やらされ感」では続かない。自走できる地域を目指して

岡崎さん
「MICEの受け入れ体制を構築するにあたって、最も重要なのは”自走できる地域づくり”です。
上から言われたからやっている、協力している、という感覚では”やらされ感”が出てしまい、長続きしません。関係者や事業者の皆さんに、当事者意識をいかに持ってもらう方法を模索しています。それには、旗振り役やキーパーソンとなる人の存在が不可欠で、やる気がある人が少人数でもいるかどうかが大事です。
MICE誘致においては、”ハコモノ(施設)”が整うのは必要条件ですが、それだけでなく、整った今はソフト面の充実が求められています。

香川県観光協会の会長の言葉を聞いて、”おもてなし”の心をどう形にしていくのかが重要だと感じました。現場の声に耳を傾けながら、聞いて改善点を見出していきたいです。わたしたちがどれだけ営業活動を行って、イベントを1度は持ってくることができたとしても、そこで参加者や主催者が香川県・高松に ”また訪れたい” ”ここでMICEに参加・開催できてよかった” と思ってくださらなければ、次の機会に繋がりません

そこには、施設や環境の整備というハード面の充実だけではなく、人の心の温かみが感じられる”おもてなし”が必要なのです。インバウンドの海外からのゲストにも、一歩引かずに自然体で触れ合って欲しいと思っています」


上空から見たあなぶきアリーナ 提供:(公社)香川県観光協会

ワンストップ支援と販売戦略

高松観光コンベンションビューローの支援体制

ーワンストップでのサポート体制について詳しく教えてください
岡崎さん
「サンポートエリアでも県と市がそれぞれ管轄する施設があり、主催者側にとっては申請や調整が煩雑になりがちです。そこで、わたしたち高松観光コンベンションビューローではワンストップ支援体制を整えています。 具体的には、会場の仮押さえまで当方で対応し、本申請は主催者の方から申し込みをしてもらう形になりますが、事前準備や調整業務を一括でサポートします。
開催期間中も万全のサポートを整えており、会場やユニークベニューの選定・プランニング、施設の利用調整、設営事業者等の紹介まで幅広く対応しています。

また、エクスカーションとして使えるプチ旅のプラン提案も行います。サンポート地区のランチマップや、『さぬきうどん食べ歩きMAP』の提供、託児所の紹介や保育士さんの手配なども行っています。主催者のニーズに応じた細やかな支援を心がけています」

ー出口戦略、販売先の営業についてはどのようにお考えですか
岡崎さん
「コンテンツ、つまり”入口”となる企画や体験は作れても、それだけでは長続きしません。”出口=販売戦略”までしっかり整えないと、持続可能な産業になりません。受け入れる側がコンテンツの磨き上げをしつつブラッシュアップに注力する一方で、それを”誰が・どこに・どう売るのか”という視点も同時に持たなければならない。入口と出口の両輪を意識して整備していくことが不可欠で、大学との連携も大切です。」

高松市と香川県の開催支援補助金

ー高松市と香川県の開催支援補助金について教えてください
岡崎さん
「補助金は税金を原資としているため無制限ではありませんが、現時点では申請された案件について可能な限り補正予算を組んで対応しています。全国的に見ても、かなり充実している方です。
具体的には、国際会議の開催支援補助金は、高松市から最大500万円、香川県からも最大500万円、合計最大1,000万円の支援が受けられます。国内大会に対する補助金も、昨年度までは上限100万円でしたが、現在(※2025年4月現在)は180万円に引き上げられました。
アリーナの開業により、大型MICEの受け入れが可能になった今、香川県・高松市ともに力を入れて支援を行っています」


瀬戸大橋 提供:(公社)香川県観光協会

四国、関西エリアとの連携と展望

四国全体としての取り組みはどのようになっているのか

岡崎さん
「観光庁の事業として実施された『One team四国』は、MICEの”MI=Meeting・Incentive)”分野における独自の事業やツアーコンテンツを開発する取り組みでした。有識者を招いての体験ツアーも実施し、その体験をいかに販売につなげていくかが現在の課題です。今後はさらに連携を深め、香川―徳島間、愛媛―高知間といったモデルコースを開発・定着させることを目指しています。

加えて、情報発信の強化や ”どこに” ”誰に” 販売していくかという点も大切です。インバウンド向けの商品開発を進めていますが、インバウンドといってもターゲットをアジアに絞るのか欧米に広げるのかなど、販路戦略を明確化していく必要があります。まずは、海外の旅行会社へのアプローチを強化し、四国全体を組み込んだツアー造成を進めていく計画です」

万博で盛り上がる大阪や神戸エリアとの連携は?

岡崎さん
「インバウンド向けにはJR西日本と連携した『JTRweb』を活用し、観光客向けに『レール付き観光パス』を販売しています。内容としては、訪日外国人に関西空港駅から高松駅までの5日間の乗り放題のレールパスと、玉藻公園をはじめとした高松の観光や体験・飲食・物販のパスをオンライン販売するというものです。大阪・関西万博に合わせて訪日外国人観光客の流れが瀬戸内まで広がることを期待しております」

高松市の眺め 提供:(公社)香川県観光協会

最後に:MICEでむすぶ人とまちの未来

今後の展望はMICEを通じた「人と街をむすぶ」サステナブルな地域づくり

ー最後に、今後のMICE高松市の展望についてお聞かせください
岡崎さん
「やはりサスティナビリティなまちづくりを目指していきたいと思っています。地元の負担を必要以上に増やすことなく、持続可能な形での観光都市をどう実現していくか考えていきます。
たとえば、高松であれば『希少糖』に関する学会、あるいは今後力を入れていく『宇宙産業』に関連したカンファレンスなど、地域と親和性の高いテーマのMICE誘致を進めることで、学識者と地域住民との交流が生まれることを期待しています」


Editor’s note 記者の声

MICEは人と人が出会い、新しいつながりをつくる場。地域に変化をもたらすきっかけにもなります。高松は、世界に誇れる瀬戸内海の景観を持ち、新たに駅ビルやアリーナが完成し、街の賑わいが増しつつあります。こうした資源を活かして人を呼びこみ、地域の人々が自分たちのまちに誇りを持てるようになることも、MICEのもたらす大切な効果のひとつです。
今回のインタビューを通じて、MICEの開催が高松の魅力を再認識する契機となること、そして地元の方を中心に、郷土の良さをおもてなしに活かそうと、まち全体で挑戦を重ねている姿が印象的でした。

訪れる人と地域の人が出会い、ともに未来を描くーそんなMICEのあり方が、高松の次のステージを形づくっていくことでしょう。高松からMICEの力でひらかれる”共創のまちづくり”。その歩みを、これからも追いかけていきたいです。

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