【取材】FOOD STYLE JAPAN 2026〈関西〉:万博後のフードビジネスの未来。「捨てる・手間・当たり前」を減らすサステナブルな取り組み
インテックス大阪で1月28日(水)・29日(木)に開催された「FOOD STYLE JAPAN 2026〈関西〉/ラーメン産業展 in Kansai」。大阪・関西万博を終えて、関西のフードビジネスはどこへ向かうのか。出展者へのインタビューから、サステナブルを「顧客や従業員に選ばれるための強力な付加価値」へと昇華させる戦略が見えてきました。
FOOD STYLE JAPAN 2026 開催概要
FOOD STYLE Kansai 実行委員会(所在地:東京都港区、運営:株式会社イノベント)は、2026年1月28日(水)・29日(木)の2日間、インテックス大阪 1・2号館にて「FOOD STYLE JAPAN 2026 <関西>/ラーメン産業展 in Kansai」を開催します。人手不足、コスト高騰、属人化など外食・小売業界が直面する経営課題に対し、デジタル技術を活用した解決策を提案する「<外食・小売>DX・経営支援EXPO」(Supported by レストランテック協会)を特設。業界のデジタルトランスフォーメーションを推進する最先端のソリューションとサービスが一堂に集結します。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000039.000163340.html
会期:2026年1月28日(水)・29日(木)10:00~17:00(最終日は16:00まで)
会場:インテックス大阪1・2号館
同時開催:ラーメン産業展 in Kansai
主催:FOOD STYLE Kansai 実行委員会
公式ホームページ:https://foodstyle.jp/kansai/


2025年・昨年の取材記事はこちら
https://micetimes.jp/report-food-style-kansai2025/
地域ならではの特色をブースづくりに色濃く反映。一丸となり魅力を伝えようとする「熱」を感じる
初日1月28日の11時ごろ会場に到着。受付を済ませると、会場まで赤いマットが敷かれ、並ぶ場所・方向が一目瞭然です。“ランウェイごっこ”をする参加者の姿があり、気持ちを盛り上げる装置としての機能も果たしていました。

会場に入ると、香ばしい匂いが漂い、ジューッと焼く音が聞こえてきます。フードの展示会ならでは、試食を出していないブースはほとんど見当たりません。比較的ラフな服装の方が多く、小気味よい関西弁や笑い合う声があちらこちらから響いてきました。




県や市など自治体単位で出展しているところが多く、特に高知県のブースは、鳴子や提灯をモチーフにした装飾がお祭りのような雰囲気を演出しています。11時・13時・15時には、レポーターが各出展商品を紹介する様子がリアルタイムでモニターに映し出される「プレゼンテーションタイム」を実施。一丸となって盛り上げていこうという気概が伝わってきました。

セミナー:千房代表の中井氏「万博が外食産業に残した3点。国際化・サステナブル・価値競争をどう活かすか」

千房株式会社代表取締役社長・中井貫二氏による「大阪・関西万博後の食ビジネス最前線~新たな市場機会と戦略~」に参加しました。
万博での出展時のエピソードを「吉村知事はマヨビームが上手かった」と笑いを交えながら紹介。そして、万博が外食産業に残したものとして
- 食の国際化
- サステナブル経営
- 価格競争の時代から価値競争の時代へ
――の3点を挙げました。
国際化について、海外観光客が記入することの多いGoogle口コミは「4,800件すべてに返信をしている」という同氏。多様な食文化に対応するため、ハラールのメニューだけでなく、お祈りをする場所を設置した店舗を作ったことを紹介しました。
デジタルはあくまで手段。「すべての基軸は人にある」

業界全体の課題となっている人手不足の打開のためには、IT化やDX化、外国人やシニア層の雇用が必要であると同時に、会社と従業員との価値観の共有が「サステナブル経営に不可欠」と力を込めます。
「フードテックは、あくまで人の付加価値を高めるための手段。すべての基軸は人にある」とお話をされていたのが印象的でした。
最後は、課題が山積する飲食業界に「負けへんで、絶対ひっくり返したる」と、自社商品のお好み焼きにかけたスローガンを掲げ、降壇。セミナー後、名刺交換に長蛇の列ができていました。
出展者インタビュー:規格外食材が創出する新たな顧客体験
伊織麦酒道場:アップサイクル×クラフトビール。地域と共生するOEMの提案

伊織麦酒道場の道場主・相澤伊織さんは、兵庫県養父市の地域おこし協力隊への参加をきっかけに、同市へ移住。一人でビールの生産・販売を行っています。350mL瓶450本分の小ロットから生産可能で、各地の特産品を使用したクラフトビールのOEMに対応。要望に合わせて味を細かく調整でき、これまでライムやメロン、山椒といった素材をビールとコラボレーションさせてきました。
現在注力しているのが、出荷できない農産物を使ったビールの製造。形が悪い・傷がある農産物でも、果汁さえ取れればビール造りに使用できます。
「その土地でしか買えない・飲めないもの」という希少価値に加え、農産物の廃棄ロス解消に。サステナブルでありながら、特産品のPRも実現する商品として、新たな販路を求めて本展に参加しました。

殺陣を取り入れたパフォーマンスで、PRのサポートを行うユニークなサービスも行っている相澤さん。各地のビアフェスで披露し、人気を博しています。「クラフトビールに正解はない。意外な組み合わせにも対応できるので、廃棄されるものから価値を生み出せれば」
合同会社とあっせ:常識を覆す生プリンが挑む廃棄ゼロの価値競争

「非常識な!?生プリン」と書かれたポスターに多くの人が足を止めていたのは、合同会社とあっせのブース。賞味期限は120日間、28度以下であれば常温での持ち運びや保存が可能という、常識を覆すプリンです。従来の常温保存できるプリンは硬い食感のものが多い傾向にありましたが、なめらかな食感を実現。保存料は無添加で、レトルトカレーと同様の技術で殺菌することで驚異の長期保存を可能にしました。

独自の商品名やデザインシールに変更したり、地域の牛乳や卵を使ったオリジナルレシピにしたりと、OEM利用に柔軟に対応。賞味期限の長さは、品切れや廃棄の心配を少なくできるメリットもあります。
同社は、兵庫県芦屋市で20年以上お土産として親しまれている「芦屋ぷりん」を販売しています。ひとくち試食させていただくと、濃厚なプリンの味はもちろん、トロッとした食感をしっかりと楽しめました。“生もの×OEM”という、相性の悪そうな組み合わせを、独自の技術と長年培われた品質の良さで成立させた商品。展示会の記念品や観光地のお土産、ホテルラウンジのデザートと、さまざまな場での展開が期待されます。
三陸わかめ屋ムラカミ:規格外わかめを新感覚の洋食に。フードロスを価値に変える

三陸わかめ屋ムラカミは、塩蔵わかめをメインに扱う会社です。世界三大漁場の一つといわれる環境で育つわかめは、肉厚で栄養価が高いと好評です。しかし温暖化の影響により、黄色くなったり傷ついたりしたわかめが増加。多いときで3割ほどが選別作業中に廃棄されているといいます。

規格外わかめを有効活用しようと生まれたのが「チーズdeわかめ」です。フリーズドライ加工したわかめをチーズやオリーブオイル、アーモンドと組み合わせ、「わかめといえば和食」のイメージから脱却。生野菜にそのままかけたりパンに塗ったりパスタと和えたりと、わかめの新しい可能性を提案しています。
「ホテルの売店に置けば、SDGsへの意識をアピールできます。食べた人が『自分も環境保護に貢献している』という感覚を持てることも、大切な要素だと考えています」
株式会社タカダ:最後まで海の恵みをおいしく。低コストと高品質を両立する寿司ネタ

株式会社タカダが展開するのは「海の端っこ」。寿司ネタをスライスするときに出た端材を活用した商品です。うどん・そばのセットメニューやホテルのバイキングにうってつけの「棒寿司」、付きだしや小鉢にそのまま利用できるチューブタイプ、のりに乗せて巻くだけの「巻き芯」などが展示されていました。

寿司ネタの高品質な味は保ちながら、本来捨てる部位を使用しているため安価に設定されていることが特徴。特殊な容器を採用し、冷凍・解凍してもお米が硬くなったり白くなったりせず、ふっくらと食べられます。解凍してパックを剥がすだけで、包丁不要。初心者の従業員でも扱いやすく、ピークタイムの提供に重宝しそうです。「最後まで海の恵みをおいしく」の理念が形になった商品を、多くの来場者が試食していました。
株式会社匠:「捨てて当たり前」を器が変える。コストダウンと環境負荷低減にも寄与する強化磁器

有田焼で有名な佐賀県から出展していた株式会社匠は、大阪を中心に、関西の飲食店のロゴ入り食器をたくさん展示。「あの店の!」と発見する楽しみがありました。

「フードロスって、器から変えられる」と同社は提案します。刺身などを食べるときに小皿に出す醤油は、一人分なら残ってもほんのわずか。しかし、毎日の積み重ねによって、一升に及ぶ大量の醤油を破棄している店もあるといいます。
多くの飲食店と取り引きのある同社が、現場の声を聞き、角度をつけた醤油皿を設計。一般的な皿なら20ccほど入るところを、6〜10cc程度に。見た目の満足感はそのままに、醤油の使用量と廃棄量を大幅に減らせます。特定の位置にロゴを入れれば、無意識のうちに「隠さないように」醤油を注ぐようになるという、心理的効果もあります。

給食用の食器を長年取り扱ってきたノウハウを生かし、素材は割れにくい「強化磁器」を採用。ロゴが剥げにくい「イングレース」技法を併用した長寿命の器は、長期的なコストダウンと環境負荷低減にも寄与します。高級路線の有田焼を納品している企業から希望があれば、窯元を巡るツアーを開催。「より大切に扱おうと思った」と声があがるといい、社員の意識改革にもつながっています。
取材を終えて:フードロス活用とオペレーション改善が「捨てる・手間・当たり前」を再設計する
会場を歩いて実感したのは、サステナブルが「正しさ」ではなく、選ばれる理由として提案に組み込まれていたことです。試食に人が集まるブースほど、環境配慮を前面に掲げるのではなく、味や使い勝手、売りやすさまで一緒に設計していました。
印象的だったのは、フードロス対策が理念ではなく、現場の負担を減らす工夫とセットで語られていた点。規格外食材の活用、長期保存、端材の商品化、器の形状による“残り”の抑制など、切り口は違っても「捨てる・手間・当たり前」を見直す発想につながっていました。
MICEに引き寄せれば、「食」は開催地の記憶そのものです。捨てない工夫がオペレーションをラクにし、体験価値も上げていく。その循環を、今回の取材でいくつも見ました。セミナーで聞いた「すべての基軸は人にある」という言葉どおり、最後に体験を決めるのは現場の運用と人の動きでした。




